[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
検索
alic 独立行政法人農畜産業振興機構
野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 地域とともにつくり、持続可能な生産と消費を確立するために ~パルシステムの「お料理セット」の取り組み~

【特集】持続可能な野菜の生産・流通・消費 野菜情報 2022年8月号

地域とともにつくり、持続可能な生産と消費を確立するために ~パルシステムの「お料理セット」の取り組み~

印刷ページ
パルシステム生活協同組合連合会 常務執行役員 高橋 宏通
高橋 宏通

1 はじめに

 家庭を築き、子供が生まれて家族が増え、子供には「安全で安心な食事を」と考え、生協に加入する方が多い。時代の変化の流れとともに共働き世帯が増加する中でも、「子供の食事はきちんと料理をしたい」という組合員の声に、パルシステムとして何を提案していくか、「くらし課題解決」として何ができるのかということを念頭に議論を重ね、特に声の多かった「メニュー選定、調理時間」の解決策として、お料理セット(写真1)開発の取り組みが2014年より始まった。

008b

 お料理セットの開発に当たって最も大切にしたことは、パルシステムの理念に沿った商品開発をすることであった。国産の野菜や肉を使用することはもとより、産直原料を積極的に使用することがパルシステムらしさと重きを置いてきた。パルシステムは、事業の発足時点で産直に力を入れており、全国の産直産地(注)とともに環境保全型農業を強力に進めてきた。それらの農産物を有効活用し、食料の自給率向上にも寄与していくことを目指している。

(注) 当会が定めた「産直協定」を交わし、栽培内容の公開、交流、環境保全型農業をともに推進していくことを双方で確認している産地。

 また、お料理セットの魅力の一つとして、調味料もセットになっている事が挙げられる。料理が苦手だという方からは「味付けのバランスがうまくいかない」などの声もあり、良い素材をさらにおいしく食べていただくために調味料にもこだわった。調味料が付いていることで、味付けが1回で決まり、時短で、誰でも失敗なくおいしく作ることができる。この調味料も、化学調味料不使用でパルシステムが求める仕様をクリアしたものであり、調味料の小袋のみを販売して欲しいとの要望があるほど人気の調味料である。
 お料理セットのスタート時には、十数アイテムだった調味料も、メニューや味のバリエーションを求める声が多く寄せられたことにより、現在では30アイテム以上を開発した。

2 商品開発から製造までの一貫生産

 2014年より本格展開したお料理セットだが、よりパルシステムらしいお料理セットを作るため、2017年9月に群馬県邑楽郡板倉町に自社工場となる「パルシステム板倉食品加工センター」を稼働させた。関東近郊の産直産地や納品センター(埼玉県の岩槻、神奈川県の相模)にも遠くなく、東北自動車道ICからも近いというアクセスの良さに加え、なんといっても決め手は良質な地下水が豊富にあることで、この地での建設を決定した(写真2)。

009a

 当センターでは、野菜の洗浄には3~4度に冷却した地下水を使用し、鮮度を保っている。殺菌には野菜の風味を損ないにくいとされる電解次亜水を使用している。電解次亜水は、薄い塩水を電気分解して作られる次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする弱アルカリ性で、殺菌・除菌を目的とした有効塩素濃度が低濃度の殺菌性電解水である。殺菌の際、野菜に匂いが付くことがなく、作業者にも優しい。鮮度保持のため、加工のスピードも、野菜に包丁を入れてから通常24時間以内に個包装まで行うことを徹底している。
 野菜の芯や汚れを取るなどの下処理はすべて手作業で行い、野菜のカット自体も9割は手作業となるが、触れる回数が多いと素材を傷める可能性もあるため、最低限の触手で正確にカットし、品質保持に努めている。この手間や時間が含まれた価格に納得して利用してもらうためにも、商品の品質は最重要視している。
 自社工場のメリットは、すべて自社で管理できることである。使用する青果や畜肉原料の産直比率を高めることはもちろん、産直原料を使用した加工品やPB(プライベートブランド)商品をお料理セットに取り入れることで、パルシステムならではの商品づくりが可能となった。また、現場運用は実務のプロ集団であるグループ会社の株式会社パルラインに担ってもらうことで、物流から製造管理まですべて自社で完結することができた。
 現在は、週40アイテムを、当センターと製造委託工場を合わせ7カ所で製造している。お料理セットという一つの商品作りのために、7社が定期的に集まり、品質向上のための対策会議や意見交換を行い、組合員の満足度が高まる商品づくりを心掛けている。

3 産直産地との取り組み

 当センター開設時より、お料理セットで使用する青果原料の産直原料比率の向上が目標となっている。自社工場を設立後、コロナ禍の影響を受けて内食傾向が近年続いたこともあり、お料理セットの受注も年々伸長し続け、2021年度では900万点を超える利用となった(図)。産直産地の青果取扱量も増加し、2018年4月時点の当センターでの産直原料比率は30%であったが、2018年度年間では42.6%まで伸長した。

010a

 産直産地では、すでに青果での出荷計画を軸に作付けをしていることから、お料理セット用に出荷できる野菜の量の確保が困難な時もあった。そこで、2019年からは近郊の産直産地に協力いただき、お料理セットの中でも使用量の多いキャベツとにんじんについて実験的に加工向けの作付けを進めている(写真3)。また、規格外サイズのにんじんやさつまいも、巻きのあまいはくさいなど、青果では出荷できないが加工原料としては問題のない品質の野菜を有効利用するため、これらの規格基準の目合わせを産地と連携して行い、産地の余剰青果も効率よく活用し、圃場(ほじょう)の歩留まり向上に繋がる取り組みを行っている。これらの取り組みは、圃場の有効活用につながり、生産段階の食品ロスの削減にも貢献している。

011a

 産直産地からお料理セットへの出荷量が総合的に増える状況を作っていくことが、産直産地の生産・出荷の安定化につながると考えており、お料理セットの製造委託先にも産直産地の青果原料を使用してもらうことで青果全体の安定化に努めている。
 この取り組みと共に、各産地のお料理セットへの出荷量も徐々に向上し、当センター開設当初の産直産地の取引は24産地36品目であったが、2021年度では29産地44品目となり、自社工場での青果使用量に対する産直原料比率(製造使用量の重量ベース)は72.9%まで向上した。
 今後も、国内の自給率向上、産直産地の安定した生産のためにも、お料理セットの出荷量の増加に伴い作付面積を拡大していけるよう産直産地と連携して進めていきたいと考えている。

4 サステナブルな取り組み

(1)食品ロス問題
 食品ロスの視点でいえば、パルシステムのお料理セットはスーパーなどの市販品とは違い、1週間前に注文を受けて注文数を製造する受注生産となり、その無駄のない仕組みが、パルシステムの無店舗事業の強みともいえる。しかし、受注生産といえども青果の場合は歩留まりも考慮して納品するため、どうしても青果原料が余剰になる場合がある。
 当センターの売上高(百万円)当たりの食品廃棄物の発生量は、開設当初の2017年度(6カ月間)実績が350キログラム、以降、年間で2018年278キログラム、2019年205キログラム、2020年179キログラム、2021年156キログラムと減少を続けている。
 直近の実績の156キログラムは、農林水産省が定める食品廃棄物の業種別目標値(そう菜製造業:211キログラム)を下回る水準となっている(参考文献)。廃棄率の削減に当たっては、製品の品質を考慮し、野菜の外葉や芯などまで商品に使用するというような方法ではなく、作業者のカット技術の向上のほか、長年の産直事業で培った産地との関係などから、鮮度が高く傷みがない良質な原料を調達することや、組合員の受注数と製造現場に入荷した原料の歩留まり(製品率)などを細かく調整して、なるべく原料を余らせず、傷みが生じる前の新鮮な状態で回転良く使用することなどで対応している。
 また、家庭で野菜を切った時の端材やキャベツの芯など、料理に使えない部分はどうしても生ごみとして出されるが、お料理セットとして工場で野菜をカットして発生した食品廃棄物はすべて、堆肥化を行うリサイクル施設での処理を委託している。専門業者にて3カ月程度かけて、市販の家庭菜園用肥料などにリサイクルされている。廃棄物とは別に、毎週一定数発生する食用可能な原料残については、近年要請が増加しているフードバンク、子ども食堂や生活困窮者の方への炊き出しなどの事業に使用いただくことで社会的利用を図っている。

(2)プラスチックの削減
 当センターでの商品開発当初は、野菜毎にプラスチック包材で個包装したものをセットしていたが、プラスチックゴミ軽減の観点から、調理の工程で同時に炒める、または煮るものは、ミックス野菜にして一緒に梱包する工夫をした。このことによってプラスチックの小袋を削減できるうえ、調理する側もいくつも袋を開けなくて良いため手間が省けるという利点がある。
 さらに、お料理セットの盛り付けにプラスチックトレーを使用しているが、これはお届け後に回収しており、回収後はリサイクル原料となり、再びプラスチックトレーの原料となって、現在55%が再生原料になっている。このトレーtoトレーの取り組みが出来るのもメンバーシップで行っているわれわれの強みであり、商品配達時に回収することで組合員も負担なくリサイクルに参加できる。現在トレーの回収率は75%程度で、他のリサイクル回収品よりも高い傾向にある。
 今後は、より環境への負荷削減を目的に、プラスチックトレーから紙トレーに切り替えて、リサイクルが出来る仕組みを考え、委託工場にも順次紙トレーへの切り替えや、プラスチック総量の削減に取り組んでいただくことで、お料理セット全体でのプラスチック使用量の削減を計画している(写真4)。

012a


012b

5 おわりに

 お料理セットの簡単・便利・時短といった特性で料理の負担となっていた部分が解決し、さらにこの商品を利用することで環境にも優しい取り組みに参加できる。作る楽しみとサステナブルの両方を実感できるお料理セットは、今後も組合員の中に浸透していくと考えている。

参考文献
農林水産省ホームページ〈https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/hassei_yokusei.html〉(2022年6月16日アクセス)

高橋 宏通(たかはし ひろみち)
パルシステム生活協同組合連合会 常務執行役員 地域支援本部長
【略歴】
1960年 東京都生まれ。
1982年 茨城 栃木労働生活協同組合に入協。
1990年 首都圏コープ事業連合(現パルシステム連合会)に移籍。
2008年 同社常務取締役
2011年 パルシステム連合会に移籍、食糧農業政策室長、産直推進部長、事業広報部長、広報本部長を歴任し、2021年より現職。



このページのトップへ

Copyright 2016 Agriculture & Livestock Industries Corporation All rights Reserved.