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【特集】持続可能な野菜の生産・流通・消費 野菜情報 2022年8月号

野菜に係る「みどりの食料システム戦略」について

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農林水産省 農産局 園芸作物課 園芸生産第2班 課長補佐 土橋 勝
土橋 勝

1 はじめに

 地球温暖化による気候変動や大規模自然災害の増加などを背景に、温暖化ガス排出抑制など持続可能な社会の実現に向けた動きが世界的に加速している中、わが国においては、令和元年5月にプラスチック資源循環戦略の策定、令和3年10月に政府の地球温暖化対策計画の改訂などが行われている。
 わが国の食料・農林水産業については、温暖化・自然災害の増加、生産者の減少・高齢化などさまざまな課題に直面している一方で、さらなる輸出増加のポテンシャルが高いこと、二酸化炭素の吸収源をはぐくむ重要な産業であると同時に、地域資源を活用した再生可能エネルギーなどにより、温室効果ガスの排出削減にも貢献できること、最新の科学技術により、食料不足や気候変動対応などのSDGsの目標達成につながることなど、世界が直面する課題の解決に向けて大きな可能性を有している。
 国内外のあらゆる産業において、SDGsや環境への対応が必要となり、企業価値にも影響するといわれる中、わが国の食料・農林水産業においても的確に対応する必要がある。
 このため、令和3年5月に農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため、中長期的な観点から戦略的に取り組む政策方針として、「みどりの食料システム戦略」を策定し、本年4月には「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」(みどりの食料システム法)が成立したところである。今後はこれらを踏まえ、より一層、化学肥料・農薬の低減などの環境負荷の低減と生産力の維持・向上を加速的に進めていくこととしている。

2 野菜生産における課題

 わが国の野菜の生産面積・収穫量は、約45万ヘクタール、1126万トン(令和2年)で、1年を通して日本全国で野菜が生産されている。野菜の多くは露地で生産されているが、周年での安定供給や早期出荷することを目的に施設栽培も行われている。
 また、多種多様な品種・品目が開発され、各作物の特性や地域の気象状況などに応じた栽培方法が確立されていることから、生産に必要な肥料・農薬などの資材もそれに応じてさまざまなものが使われている。
 肥料について、野菜生産における一戸当たりの経営費に占める肥料費の割合は、品目や地域により異なるが、統計データから単純に計算するとおおむね1~2割となっている。しかし、全国の野菜生産量を踏まえれば、全体では相当量の肥料が使われていることになる。このほか、苗などを育成するためのポットやほ場に敷くマルチシート、農薬などの資材も多く使われている。
 このため、野菜生産においても他の作物と同様に「みどりの食料システム戦略」を踏まえ、温室効果ガスの排出削減、化学農薬や化学肥料の低減、有機農業の拡大、スマート農業をはじめとするイノベーションの導入などによる高い生産性と持続性を両立する生産体系への転換が重要な課題とされており、生産力の維持・向上を図りながら、環境負荷を低減していくためには、積極的に新しい技術を取り入れていくことが必要不可欠となっている。
 特に、施設園芸では、冬期の加温や光合成促進(CO2施用)に化石燃料を使用しており、化石燃料の燃焼により排出されるCO2の削減が大きな課題である。このため、みどりの食料システム戦略においては、「園芸施設については、2050年までに化石燃料を使用しない施設への完全移行を目指す」という高い目標を設定している。目標達成のためには、化石燃料のみに依存しないハイブリット型の施設・設備の導入により、温室効果ガス排出量の削減を図りつつ、最終的にゼロエミッション(注)型園芸施設の実現に向けて技術開発を進めることが重要となっている。
(注)リサイクルを徹底することにより,最終的に廃棄物をゼロにしようとする考え方。

3 「みどりの食料システム戦略」技術カタログ

 こうした課題に対応するため、農林水産省では近年開発された技術で、「みどりの食料システム戦略」に掲げた温室効果ガス削減、化学農薬・肥料低減、有機農業拡大などに係る目標の達成に貢献し、現場への普及が期待される技術をまとめた「技術カタログ」を作成して、ホームページなどで紹介しているところである。このうち野菜については、温室効果ガス関係で9種類、農薬関係で27種類、肥料関係で16種類、有機農業で6種類などの技術が掲載されている。
 ここで掲載された技術は、国の研究機関のみならず、都道府県の試験研究機関などで開発されたものも含まれており、一部開発中のものもあるが、ほとんどが市販化済みのものである。マニュアルなどの技術情報も公開されており、その技術の概要や効果だけでなく、導入に当たっての留意点や普及の状況、市販化されている場合は価格帯などの情報も掲載されており、生産現場で参考にしやすい、実用的なものとなっている。また、これら技術を開発した試験研究機関などの連絡先も掲載されているため、実際の利用に当たっては、これらに問い合わせることも可能である。
 今回は、技術カタログの中から、露地野菜と施設園芸に関する技術について、いくつか紹介する。まずは露地野菜関係として、(1)施肥量の低減を実現する「土づくりと減肥のための緑肥利用マニュアル」(2)化学農薬の低減を輪作で実現する「ブロッコリーと輪作によるナス半身萎凋病(いちょうびょう)の発病抑制」―技術を参考までに抜粋して添付した。
 また、施設園芸関係として、(1)土壌中の可給態リン酸を有効活用することで減肥を実現する「キュウリ促成栽培における基肥リン酸施用要否のための可給態リン酸基準」(2)化学農薬を削減する「園芸用施設への微小害虫の侵入を抑制する新防虫ネット」技術(3)暖房設定温度を下げても減収しない株元加温技術を紹介した「促成ピーマンにおける株元加温による設置作業の省力化技術」―を、抜粋して添付した。これら以外にも参考となる技術情報が紹介されているので、是非、ホームページを参照されたい。
(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/catalog.html)
 今後、野菜生産において、生産力の維持・向上と環境負荷の低減の両立に役立てていただければ幸いである。

4 さいごに

 今、世界では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うサプライチェーンの混乱に加え、ロシアによるウクライナ侵略等に伴う小麦やとうもろこしなどの穀物や農業生産に必要な原油・肥料などの生産資材の価格高騰、輸出の規制といった安定供給を脅かす事態が生じている。今後の世界情勢を見ても不透明な状況である中、引き続き、野菜を安定的に生産し、供給していくためには、海外への依存度の高い原油や化学肥料、ビニールといった資材の使用量を減らし、イノベーションなどによる高い生産性と持続性を両立する生産体系への転換を図ることが重要である。野菜生産現場における資材の利用状況を踏まえると、温室効果ガスの排出削減や化学農薬・肥料の低減、有機農業の拡大など取り組むべき課題は山積している。農林水産省としては、取組を加速化するべく、さまざまな施策を講じてまいる所存である。

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5 参考:「みどりの食料システム戦略」技術カタログより、野菜関係の技術の一部を抜粋







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