気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年2月、世界で排出される温室効果ガスのうち、8~10%は食品ロスに由来し、21~37%は食料システムから排出されたと推定している。2021年3月付「Nature」では、食料システムからの排出は25~42%と推計された。たとえ今すべての化石燃料の使用をやめても、食料システムからの排出量だけで、今世紀半ばには、地球の気温上昇はパリ協定の目標である上限1.5度を超える(2020年11月発行「Science」)と予想されている。
世界中の食品ロスを仮に一つの国に例えると、中国、米国に次いで、世界第3位の温室効果ガスの排出源となる。温室効果ガスは、気候変動を悪化させ、異常気象は農畜水産物の生産を困難にし、自然災害による世界の経済損失は400兆円を超える。地球温暖化を逆転させる方策100位までを集めた「ドローダウン」プロジェクトでは、「食品ロス削減」は第3位となった。
グローバル化した現代の食品産業において、われわれの食べる食品は世界の食料システムとつながっている。世界のある場所での食品の需要は、何千キロも離れた土地の開拓を促す。アマゾンや東南アジアの熱帯雨林が焼き払われ、大豆やパームヤシの大規模農園が開拓される。環境に負荷をかけて農作物を栽培し、高所得国に運ばれたそれらが、結局食べられることもなく捨てられている。食料自給率37%(カロリーベース)の日本は、食料の60%以上を海外からの輸入に頼っている。また、日本の「フード・マイレージ
(注1)」は一人当たり6628トン・キロメートル(2016年)であり、米国(2001年1051トン・キロメートル)やフランス(同1738トン・キロメートル)の4~6倍である(図2)。「エコロジカル・フットプリント
(注2)」をみると、世界中の人が日本に住む人と同じ生活をするには、地球が2.9個必要ということになる(2017年現在)。
(注1) 食料の輸送量と輸送距離を定量的に把握することを目的とした考え方。食品の生産地と消費地が近ければフード・マイレージは小さくなる。
(注2) 地球の環境容量を表す指標。通常は生活を維持するのに必要な一人当たりの陸地および水域の面積として示される。