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話題 野菜情報 2021年12月号

冷凍食品(100+1)周年を迎えて~冷凍野菜のさらなる進化を目指して~

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一般社団法人日本冷凍食品協会 総務企画部 部長 森実 俊彦
一般社団法人日本冷凍食品協会 総務企画部 森実俊彦

1 日本の冷凍食品の(100+1)年の変遷

 日本の冷凍食品事業は、昨年100周年を迎えており、2021年は101周年に当たる。過去100年にわたる日本の冷凍食品の発展を踏まえ、これから新たな世紀が始まることから、本年を(100+1)周年と位置付け、冷凍食品のさらなる進化を目指していきたいと考えている。
 冷凍食品の歴史は、北海道の森町が発祥の地である。現在の家庭用冷凍食品に近い商品は昭和初期にはすでに販売されていたが、戦後に、新たな業務用需要の創出とともに、冷凍食品は急速に発展を遂げる。
 発展へのエポックとして、業務用では、昭和29年に学校給食法制定による学校給食での採用拡大、32年に南極観測昭和基地での越冬用食料としての採用、39年の東京オリンピックの選手村で採用、45年の万国博覧会での飲食店での使用、50年代のファミリーレストランなど外食産業の展開でクローズアップされたことなどが挙げられる。また、家庭用では、戦後、20年代半ばに百貨店で冷凍食品売場が創設されたことに始まり、38年にスーパーマーケットで初めて冷凍食品売場が開設されて飛躍的に広がったことが挙げられる。また、30年代から、“三種の神器”であった家庭用冷蔵庫が急速に普及したこと、その後の電子レンジの普及が冷凍食品の拡大に大きく寄与した。
 現在の日本の冷凍食品市場規模は、当協会の調査では、令和2年の国内生産量が155万1000トン、国内生産額(工場出荷額ベース)が7028億円、当会会員企業の調理冷凍食品の輸入量が25万6000トン、金額が1568億円、また、財務省貿易統計による冷凍野菜輸入量が103万2000トン、金額が1867億円であった。これらを合計した総消費量は284万トン、金額では1兆463億円であった。また、コロナ禍の影響により、2年の国内生産額は、初めて家庭用が業務用を上回った。
 2年は、国内生産量がコロナ禍で減少したが、10年前との対比では、数量は10.8%の増加、金額では11.8%の増加と伸長している。また、国民1人当たりの冷凍食品の消費量は、平成2年に10キログラムを超え、昨年は22.6キログラムであった。この数値は10年前と比べると3.4キログラムの増加となっており、フランス、イタリアなどを上回ったが、米国、イギリスなどと比べると、まだ6割程度であり、今後も拡大が期待されている。

2 日本の冷凍野菜の変遷と現状

 日本の冷凍野菜は、昭和10年代半ばには、グリーンピース、そら豆、ほうれんそう、はくさい、キャベツなどが登場した。そして、当時の軍需物資として取り上げられたことが大きなエポックとなった。その後、30年代前半になると、えだまめ、いんげん、そら豆、きぬさや、グリーンピースなどが百貨店で販売されるようになり、さらに、スーパーマーケットの急成長によって、冷凍食品売場の増加に伴い、冷凍野菜も拡大した。
 冷凍野菜の国内生産量は、35年は1369トンだったが、徐々に増加し、49年に5万トン、平成2年に10万トンを超えた(図1)。



 しかしながら、主要品目の生産数量では、コーンが52年のピーク時で1万9131トン、かぼちゃが52年に1万8767トン、ポテトが54年に3万8661トン(図2)といったように、主要品目の数量のピークは昭和に多く、平成以降は伸び悩み、令和2年の冷凍野菜の国内生産量は6万6000トンであった。



 一方、財務省貿易統計による冷凍野菜の輸入量は、43年は1109トンであったが、53年には国内生産量を超えた。翌54年には10万トンを超え、平成29年には100万トンを超えた(図3)。



 昭和50年代以降、冷凍野菜の供給は輸入品が大勢を占めるようになり、現在、9割以上を占めている(図4)。



 また、国別では米国からの輸入が圧倒的であったが、次第に、多品目の栽培が可能で供給力に優れた中国での開発輸入が加速度的に進み、平成12年以降は、おおむね中国が米国を上回って推移している(図5)。



 また、品目別にみると、米国からはポテトが圧倒的に多いのに対し、中国からは、ほうれんそう、さといも、ブロッコリー、えだまめ、おくらなど多品目の冷凍野菜が輸入されている。
 最近10年間では、上位2国を除いた主要国として、タイが横ばい、カナダが減少、エクアドル、ベルギー、オランダなどが増加している(表1)。



 品目別に見ると、令和2年のポテトの輸入量は36万トンと輸入量全体の35.2%を占めている。また、近年、ブロッコリーの増加が目立っている(表2)。



 前述のように、冷凍野菜の輸入量は大幅な増加傾向で推移しているが、平成20年に発覚した中国産冷凍餃子中毒事件により、同国産が大幅に減少した。その後、次第に回復し、全体では、22年に80万トン、24年に90万トン、29年には100万トンを超えた。

3 コロナ禍での冷凍野菜および今後の可能性

 昨年、コロナ禍での家庭用冷凍食品は、家庭内での調理が大幅に増加し、使用頻度の増加、多面的な使用など、新たな需要や使用方法に変化が生じた。また、新たに冷凍食品の良さに気づいた、あるいは非常食としての新規顧客の獲得も進んだ。そうした中、今後の課題として、新規顧客に一過性ではなく継続的に利用されること、あるいはさらなる新規顧客獲得などが求められており、そこへの新たなアプローチや展開が必要となっている。
 一方、業務用の回復にはまだまだ時間がかかりそうである。外食産業では、緊急事態宣言・まん延防止対策などによる休業や時短営業が継続され、企業の社員食堂などの産業給食では、在宅勤務が定着し、食数は元には戻らない状況などが継続している。学校給食でも、昨秋にはおおむね再開したが、短縮授業や時差通学、あるいは始業の遅れなどもあり、完全には回復していない。当協会の調査では、デリカ総菜でも冷凍食品の使用頻度が減っている。しかしながら、当協会が実施中の学校給食調査では、より調理が簡便な商品などが求められる傾向が出てきており、冷凍食品の今後の増加も期待される。
 昨年前半、家庭用の冷凍野菜は購入額が大きく増加した。また、廃棄ロス、家庭内ごみの問題が問われる中、ロスや廃棄物が少ない冷凍野菜への注目がますます高まり、昨年後半以降も緩やかな増加を継続している。
 一方、業務用の冷凍野菜では、昨年よりいくらか回復はしたが状況は厳しいままである。しかしながら、急速に増加しているテイクアウトやデリバリー業態では、冷凍野菜が長時間保存でき、下処理不要でそのまま使えることで、あらためて注目を集めている。いずれにしろ、今後のコロナ収束後に向けて、新たな展開や今までにない提案を行っていくことが求められている。
 冷凍食品は「手抜き」とネガティブに言われることが依然として多く、当協会ではその認識を変えるべく「冷凍食品は手抜きではなく手間抜きである」をキャッチフレーズとして、栄養のある冷凍食品を上手に使うことをアピールしている。そうした中、昨年、「冷凍餃子は手抜きだ」と夫にいわれた主婦のSNSでのツイートに、冷凍食品メーカーが反応して始まった「冷凍餃子 #手間抜き論争」があった。そのメーカーの反応に、「いいね!」が44万件、動画再生数が90万回にのぼり、昨年のPRアワード(注)でシルバーを受賞するなど、大きな話題を呼んだ。また、今年の東京オリンピックの選手村食堂で、海外選手の多くから、冷凍餃子が「世界一おいしい餃子」としてSNSを通じて発信され、冷凍食品の認識も大きく変わりつつある。
 
注:優れたPR事例を選考・顕彰することで、PRの普及と発展に寄与することを目的に、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会が毎年実施している。


 
 冷凍野菜は、「手抜き」と言われる以外に、ブランチング(短時間、熱湯に漬けたり、蒸気を当てて鮮度を保つ手法)や冷凍によって、栄養素や味が損なわれる、冷凍は新鮮でないなどのイメージが根強くある。当協会では、ブランチングは、野菜の酵素の不活性化や貯蔵中の変質・変色を防ぎ凍結による組織の破損を防ぐものであること、例えば、マイナス18度以下ではほうれんそうなどでのビタミンCの貯蔵中の減少は極めて緩やかであり、生鮮品と比べても遜色がないことなどを説明している。
 また、冷凍野菜は最適(旬)の季節に栄養価が高く鮮度の良い原料を加工するため「冷凍だから新鮮」であること、使いたい量だけ手軽に使えて余ったものも保存できること、下処理してあるため調理時間も短縮でき、家庭ごみや洗い物が少なくなること、種類が豊富にあるため料理メニューのバリエーションの広がりに役立つことなどをアピールしている。このような冷凍野菜のメリットが浸透してきたことも、消費の増加に繋がってきたと思われる。
 国産冷凍野菜の生産量が低迷している要因としては、昭和50年代半ば以降、国内品が輸入品に比べて割高であることが顕著となり、輸入品との価格競争力の劣勢が大きくなっていったこと、国内の原料作物の安定供給や数量確保などが難しくなっていったことなどが挙げられる。しかしながら、国産需要は、家庭用では量販店、業務用では学校給食などで根強くある。
 一方では、国内で冷凍野菜事業への参入には多額の投資が必要となること、生産での人員確保の問題、人件費、輸送保管費などのコスト等の問題もあるが、輸入品にはない新たな価値創造、より発展した契約栽培などによる安定供給(実需者により対応した生産)、新たな商品開発などにより、さらなる発展の可能性が十分あると考えられる。



 
森実 俊彦(もりざね としひこ)
【略歴】
昭和61年4月 食品メーカーに入社
令和2年4月 一般社団法人日本冷凍食品協会に入会
令和2年6月より現職
 



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