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話題 野菜情報 2021年9月号

第4次食育推進基本計画について

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農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課 課長補佐 齋藤 将司
齋藤将司

はじめに

 令和3年度からおおむね5年間を計画期間とする第4次食育推進基本計画(以下:4次計画)が令和3年3月に食育推進会議で決定されました。4次計画は、平成28年度に内閣府から農林水産省に食育推進に関する事務が移管されて初めての食育基本法に基づく基本計画となります。

第1 基本的な方針(重点事項)

 4次計画では、以下の三つを新たな重点事項としています(図1)。

図1

(重点事項1)生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進
 社会における高齢化の進行の中で、健康寿命の延伸が国民的な課題です。成人男性の肥満や若い女性のやせ、高齢者の低栄養など、各世代において課題があるため、子供から高齢者まで切れ目のない、生涯を通じた心身の健康を支える食育を推進します。
 
(重点事項2)持続可能な食を支える食育の推進
 国民が健全な食生活を送るためには、その基盤として農林水産業や食品産業が持続可能であることが不可欠ですが、地球規模での気候変動に伴う異常気象の増加など、それが脅かされる事態となっています。そのため、「持続可能な食を支える食育の推進」では三つの視点「食と環境の調和:環境の環(わ)」「農林水産業や農山漁村を支える多様な主体とのつながりの深化:人の輪(わ)」「日本の伝統的な和食文化の保護継承:和食文化の和(わ)」から成り立つ、三つの「わ」を支える食育を推進します。
 
(重点事項3)「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止が求められる中、ICTなどのデジタル技術を有効活用して効果的な情報発信を行うなど、新しい広がりを創出するデジタル化に対応した食育の推進が重要です。
 
 また、持続可能な世界の実現を目指すため、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が世界的に高まり、持続可能性の観点から食育も重視されていることから、国民の心身の健康と持続可能な食を相互に連携して総合的に食育を推進します。

基本的な取組方針

 4次計画では、基本的な取組方針として7つを定めています。第3次食育推進基本計画(以下「3次計画」という)から項目の変更はありませんが、「食育推進運動の展開」でのデジタル技術の活用の記載など、時代に即した内容を追加しています。

第2 食育の推進に当たっての目標

 食育を国民運動として推進するためには、国や地方公共団体、学校などをはじめ、多くの関係者の理解の下、共通の目標を掲げ、その達成を目指して連携・協働して取り組むことが重要です。
 より効果的で実効性のある施策を展開していくため、国民運動として食育を推進するにふさわしい定量的な目標値を主要な項目について設定しています(図2)。
 以下が、3次計画から新たに追加・見直しをした目標です。
 
図2

目標5 学校給食における地場産物を活用した取組等を増やす
 学校給食で地場産物などの活用を推進し地場産物を活用した指導などを通して地域の自然や文化、産業、生産者、食に関する子供たちの理解を増進させるためには、地場産物の活用などと食育を一体的に推進することが重要ですが、3次計画では、指導に関する目標がなかったため、新たに具体的な目標値(6)を追加しました。
 また、3次計画の学校給食における地場産物・国産食材を使用する割合については、現場の努力を適切に反映するとともに、地域への貢献などの観点から、算出方法を3次計画の食材数ベースから金額ベースに見直しました。食材数ベースでは、メインの食材とそうでないものも同じ扱いとなってしまい、現場の努力が反映されづらいという課題があったことを受けてのものです。また、地場産物の生産量の地域間格差が大きいため、各都道府県が創意工夫を発揮し、現行以上の推進を目指すよう、各都道府県が現状値よりも維持・向上しているかという観点での目標としています。
 
目標6 栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす
 具体的な目標値として「(11)1日当たりの食塩摂取量の平均値」「(12)1日当たりの野菜摂取量の平均値」「(13)1日当たりの果物摂取量100g未満の者の割合」の3項目を追加しました。これらは、健康寿命の延伸を目指す「健康日本21(第二次)」でも目標となっていますが、達成していない状況です。そのため、食育の目標としても設定し、食育関係者における取組を促していきます。
 
目標11 産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす
 農林水産業や農山漁村を理解し、自らの課題としてその将来を考え、主体的に支え合う行動を促すべく新たな目標を追加しました。例えば、地元産品や、被災地の産品など自分が応援したい地域の産品や、応援したい生産者を意識して選ぶことなどを想定しています。
 
目標12 環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす
 次に、環境への負荷を減らすために環境に配慮した購買行動を促すべく新たな目標を追加しました。国民の食生活が自然の恩恵の上に成り立つことを認識し、環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶことは、環境への負荷を減らし、持続可能な食料システム(フードシステム)の構築につながります。
 
目標14 地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民を増やす
 地域や家庭で受け継がれてきた郷土料理を調理し、さまざまな場面で食べることにより、将来にわたり、着実に料理や味、食文化を次世代へ継承していくことが重要であるため、「㉒郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている国民の割合」を目標値としました。
 
 その他、3次計画から引き続き目標になっている「地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やす」については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため短期的には地域などでの共食を積極的に推進することは困難であるものの、5年の計画期間を通して、「新しい生活様式」に対応しつつ実現したいと考えています。
 また、「朝食を欠食する国民を減らす」については、健康上の理由から朝食摂取が困難な子供に配慮し、安易に目標値の達成のみを追い求めることのないよう留意する旨追記されました。

第3 食育の総合的な促進に関する事項

 食育の総合的な推進については、以下の7項目において、国および地方公共団体などはその推進に努めることとされています(図3)。
 3次計画から新たに追加した項目は以下の通りです。

図3

1.家庭における食育の推進
 自宅での料理や食事の増加を踏まえ、「在宅時間を活用した食育の推進」を追加しました。
 
3.地域における食育の推進
 ここでは新たに、「職場における従業員等の健康に配慮した食育の推進」「地域における共食の推進」「災害時に備えた食育の推進」という項目を追加しました。
 また、「食品関連事業者等による食育の推進」では、地域の飲食店や食品関連事業者などの連携を通じて、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事や地域の食文化を反映させた食事を入手しやすい食環境づくりに取り組むよう努めるとともに、地域の農林水産物を活用し、地域の食文化や健康などにも配慮した持続的な取組(ローカルフードプロジェクト(LFP))の創出推進や、野菜や果物摂取を促すため、カット野菜、カットフルーツなど新たな需要に向けて、加工設備への支援を行い、とりわけ現在食べていない人が手に取りやすい食環境づくりに取り組むことが新たに追加されました。
 
4.食育推進運動の展開
 ここでは、「全国食育推進ネットワークの活用」と「『新たな日常』やデジタル化に対応する食育の推進」の二つを追加しています。「全国食育推進ネットワーク」は、企業や生産者などの食育関係者が連携・協働するプラットフォームです。最新の食育活動の方法や知見の情報共有などを行っておりますので、皆さまもご参画をお願いします。(https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/network/index.html
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 二つ目については、SNS活用やインターネット上でのイベント開催および動画配信、オンラインでの非接触型の食育の展開などを推進することとしています。
 
5.生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等
・「農林漁業者等による食育の推進」
 農林漁業体験は、国民の食生活が自然の恩恵と、食に関わる多くの人たちに支えられていることへの理解や関心を深めるために重要です。農林漁業者などは教育現場と連携・協働して教育ファームなどの多様な体験の機会を積極的に提供するよう引き続き記載しています。オンラインでの活動を実体験と組み合わせるなど新たな取り組みを進めることが必要となっています。
・「環境と調和のとれた持続可能な食料生産とその消費にも配慮した食育の推進」
 SDGs時代にふさわしい農林水産業・食品産業を育成するためには、環境と調和した生産方法で作られた農林水産物・食品を消費することが、消費者の幸福や満足度の向上につながるとともに、その評価が農山漁村に還元され、環境と経済の好循環が生まれるという社会システムへの転換が必要です。
 我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」が令和3年5月に策定されました(図4)。

図4

 有機農業をはじめとした持続可能な農業生産や持続可能な水産資源管理など、生物多様性と自然の物質循環を健全に維持し、自然資本を管理し、または増大させる取り組みに関して、国民の理解と関心の増進のため普及啓発を行います。

おわりに

 食育は、さまざまな分野にまたがっており、多くの関係者や国民の方々の連携・協働が不可欠です。新たな計画の下、より一層食育が推進されるよう、皆さまの御協力をお願い申し上げます。4次計画のリーフレットは以下のサイトをご参照ください。(https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/4_plan/index.html
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齋藤 将司(さいとう まさし)
【略歴】
平成21年農林水産省入省。再エネ、災害・危機管理、国際業務、輸出促進、米穀流通監視を担当。
この他、復興庁へ出向し楢葉町や農林水産業の復興等に従事。
令和2年4月から現職につき、第4次食育推進基本計画の作成に携わった。