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話題(野菜情報 2020年10月号)


加工・業務用野菜の生産振興に関する補助事業について

農林水産省 生産局園芸作物課
園芸流通加工対策室 園芸生産流通支援対策係長 加藤 昂

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1 はじめに

本稿では、令和2年度当初予算事業における加工・業務用野菜の生産支援に対する補助事業の概要について紹介します。必ずしも次年度事業において、今回ご紹介した補助事業と同内容での実施は保証されませんが、補助事業への理解を深めるための導入としてご覧いいただければと思います。

2 加工・業務用野菜の現状

加工調理品などに用いられる加工・業務用野菜、野菜の国内需要の約6割を占めるまでに増加しており、単身世帯、高齢者世帯、共働き世帯の増加といった変化は、利便性や簡便性といった消費者ニーズという形で加工・業務用需要の増加に現れています。

さらに、近年はミールキットなど既にカットされた野菜や肉、調味料などの食材セットした商品が広がりを見せるなど、外食需要から内食需要までニーズは多様化しています。一方で国内の産地は、農家戸数の減少はもとより、近年の多発する気象災害などにより作柄が不安定となっていることなどから、実需者のニーズに対して十分な対応ができておらず、輸入品が一定の割合を占めている現状にあります。広がりを見せる加工・業務用需要に国内の産地が応えていくためには、安定的で持続的な生産・流通体制を構築することがますます重要になるものと考えられます

3 対策の概要

令和2年度の当初予算に基づく加工・業務用野菜の生産振興対策は、引き続き、実需者ニーズに対応した園芸作物の生産を拡大するため、水田を活用した新たな園芸産地の育成、まとまった面積での機械化体系などの導入、端境期の出荷などに取り組む産地の育成などの支援を行っております(持続的生産強化対策事業のうち「時代を拓く園芸産地づくり支援」)。また、今年度より行っている対策としては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の中で、安定供給の課題を解決するための「新たな生産事業モデル支援タイプ」を実施しているところです。対策の概要は次のとおりです。

(1)強い農業・担い手づくり総合支援交付金のうち「新たな生産事業モデルの支援タイプ」

本事業は、地域農業者の減少や天候不順の多発などを克服しながら国産品への需要を満たす生産・供給主体の確保が急務であるとの問題意識のもと、実需者と産地のつながりの核となる「拠点事業者」と、農業者・産地が協働する中で、年間を通じた安定的な供給体制の構築を目的とするものです(図1)。

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事業実施主体は拠点事業者であり、支援メニューは、図2にある1から3までの取に加え、農業用機械や農業用ハウスのリース導入などが可能です。さらに、事業目標の達成に必要な集出荷貯蔵施設や農産物処理加工施設などの施設整備の実施が可能です。

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本事業における「拠点事業者」とは、広域に展開する農業法人や流通事業者など、連携する産地へ指導・支援とともに供給調整などの施設の運営を行い、①生産安定・効率化機能②供給調整機能③実需者ニーズ対応機能―のつの機能について具備・強化していく者としています。

(2)時代を拓く園芸産地づくり支援

本事業は、マーケットインの発想で、実需者ニーズに対応した園芸作物の安定的な生産と供給を実現するため、①米、麦、大豆などの土地利用型作物から園芸作物への作付転換により新たな園芸産地を育成すること(=水田農業高収益作物導入推進事業)②加工・業務用野菜への転換や輸入品が増加する国内産の端境期において出荷を可能とする生産技術の導入などを推進すること(=端境期等対策産地育成事業)―を通じて、新たな園芸産地を育成していくことを目的とした事業です(表1)。

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前者は全国規模で実施する事業(全国推進)と都道府県規模で実施する事業(都道府県事業)とに分かれます

ア 水田農業高収益作物導入推進事業 (全国推進)

県域を越えたまとまった規模で、安定的な生産と供給が可能な水田地帯から園芸作物産地への作付転換に向けて、①協議会の設置と運営②先進的な生産技術などの普及に向けた取り組み③先進的な出荷技術の普及に向けた取り組み―のつの取について支援するもので、事例調査や実証試験、栽培技術の向上に資するセミナーの開催などを行うことができる事業です。

これまで、本事業の活用により、収穫機械の実演会やセミナーの開催が複数の野菜品目で行われています。

イ 水田農業高収益作物導入推進事業 (都道府県推進)

本事業も水田地帯から園芸作物の産地化を実現するための事業であり、同一県内での取に対して支援するもので、導入産地における実情に応じてつのメニューが選択できます。つは産地における園芸作物の導入に当たっての第1歩を踏み出すための事業である「園芸作物導入促進事業」、もうつは本格的な生産の取について支援する「園芸作物転換強化事業」です(表2)。

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ウ 端境期等対策産地育成事業

本事業は、輸入野菜からのシェア奪還を見据え、国内産が需要に応えきれていない品目を対象野菜(表3)として、事業の取期間である3年の間に、①実需者ニーズに対応した生産・流通体系の構築と出荷期間の拡大のための取り組み②作柄安定技術の導入のための取り組み―を一体的に実施するもので、これらの取り組みを後押しするため、事業の対象面積に応じて10アール当たり15万円が補助されます。ただし、事業対象面積は、対象品目毎に加工・業務用野菜については10ヘクタール以上である点に留意する必要があります。

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支援される補助金は、3年間の取に必要な補助金として、通常は取の1年目に一括して補助されます。なお、1品目当たり7500万円(50ヘクタール相当額)が上限となります。

3)その他の支援対策

これまでに紹介した支援策の他、生産から流通までの各段階に応じた支援策を展開しております。例えば、つは、生産の効率化を図るための事業として「スマート農業総合推進対策事業のうち「次世代につなぐ営農体系確立支援」」があります。これは、施設園芸産地におけるデータ収集や分析機器の活用、既存のハウスのリノベーションなど、データを活用した生産性・収益向上につながる体制づくりについて支援するものです。

もうつは、流通段階の効率化を図るための事業として「食品等流通合理化事業のうち「農産物等物流業務効率化モデル形成事業(青果物流通技術実証等の取組事業)」」があります。これは、人手不足が問題となっている輸送事業者の負担を軽減し、効率的な農産物の物流システムを構築するため、ICT技術を活用した出荷管理の実証や共同輸送体制の実証といった取を支援するものです。

4 さいご

実需者に安定して加工・業務用野菜を届けていくためには、消費者やメーカーなどからのニーズを把握していくことはもとより、ICT技術の導入やまとまった規模での生産体制の構築に加え、出荷規格の簡素化、適時に出荷できるストックポイントの整備、物流の効率化のための共同輸送など、サプライチェーン全体をかんして産地の課題を解決していく必要があります。

さらに、新型コロナウイルス感染症の発生は、国内外の生産や物流、消費生活までにも影響を及ぼしており、産地は新たな課題に直面しております。引き続き、産地の実情を踏まえながら、年間を通じた国産野菜の供給に向けた体制作りを支援できるようにしてまいりたいと考えております。

なお、園芸作物全般の事業の情報は、農林水産省のトップページから「生産局」のメニューのうち「野菜・果樹・花き」を選択して「園芸作物(野菜・果樹・花き)」のページをご覧ください。

URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/index.html

加藤 昂(かとう たかし)

【略歴】

平成23年農林水産省入省。

北海道農政事務所農政推進課(事業担当)、農林水産技術会議事務局研究開発官付(食の安全担当)、消費者庁消費者政策課(消費者基本計画担当)などを経て、平成30年7月から現職。


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