独立行政法人農畜産業振興機構 理事長 佐藤 一雄
謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
alicの業務につきまして、旧年中は皆さまのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
昨年は、夏期の西日本を中心とした集中豪雨、大阪府北部地震や北海道胆振東部地震、秋に日本列島を縦断した台風21号、24号などによる災害が多かった年でもありました。これらにより、多くの方が被災されたほか、農作物、家畜、農畜産業関連施設にも多大な被害が発生しました。被害に遭われた皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
alicは、昨年4月から、第4期目となる向こう5年間の中期目標期間に入りました。今次の中期目標期間においても、これまでに培ったノウハウ等を活かしつつ、alicに与えられた使命を確実に果たしていきたいと考えております。
さて、わが国の農林水産業をめぐっては、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)」が昨年12月30日に発効となりました。
一方、日EU経済連携協定(EPA)承認案についても、12月の国会で審議され可決されました。政府は本年2月の発効を目指していると聞いておりますが、同協定が発効すれば、alicが担う業務を取り巻く環境がさらに変化することとなります。
本年1月から開始された農業保険法に基づく収入保険制度とalicが実施する野菜価格安定制度とは選択加入とされているため、生産者の自由な経営判断により必要なセーフティネット対策が選択されるよう、alicとしても周知を行ってきたところです。
この一年間の野菜の動向を振り返りますと、昨年1月から3月は年明けの低温と降雪により全般的に生育が遅れ、価格が高めに推移したことから、一時的に輸入が増加する品目も見られました。その後、生育が回復するにつれて、価格は平年を下回りましたが、6月下旬から7月上旬の西日本豪雨、8月から9月の台風による倒伏や日照不足等により全国的に入荷が少なくなり、にんじんやだいこんなどが高い状況が続きました。秋冬野菜については、台風の到来時期が早く播き直しが間に合ったことに加え、10月から11月は平年に比べて暖かい日が続いていることから順調な出荷が続いております。
野菜は、国民の食生活に欠くことのできない食材ですが、このように天候の影響を受けて、作柄が変動しやすく短期間に価格が大きく変動するという特性を有しています。alicとしても価格の変動を注視しつつ、安定した生産を継続できるよう、野菜価格安定対策事業や諸情勢に対応した対策を引き続き実施して参ります。
高齢化の進展、単身世帯化、共働き世帯などの増加により食の外部化や簡便化志向が進み、国内仕向け量に占める加工・業務用の割合は高まっております。このようなニーズに対応することを目的として、本年も引き続き、加工・業務用野菜への転換を推進する産地の支援を推進してまいります。
alicでは、毎年8月31日の「野菜の日」にちなんで「野菜シンポジウム」を開催し、野菜の魅力について発信してきております。今年もこの「野菜の日」の意義を多くの人に知っていただける機会を設ける予定です。
また、alicでは内外の農畜産物に関する情報の収集・提供を行っていますが、新たな国際環境の下で、その重要性は一層高まるものと考えています。国内情報の分野では野菜の市況、輸出入、消費などの最新データに加えて、安定生産に資する技術や生産現場での取り組みに関する情報を本誌やホームページを通じて提供してまいります。
alicではこれからも、生きていく上でなくてはならない大切な「食」を支えていくために、農畜産業・関連産業に携わる方々を応援し、消費者の皆様に農畜産物が安定的に届けられるよう努めてまいりますので、引き続きご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
本年が皆さまにとって希望に満ちた明るい年となりますことをご祈念申し上げて、新年のごあいさつといたします。