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話題(野菜情報 2018年11月号)


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冷凍ほうれんそうの機能性表示について

株式会社ジェイエイフーズみやざき
代表取締役専務 税田 勇

はじめに

平成22年4月20日、畜産が盛んな宮崎県中央部のぐんで、家畜の伝染病「口蹄疫」の疑いのある牛3頭が確認され、その後、感染は急速に周辺の飼育農家へ拡大し、本県にとって未曾有の多大な被害をこうむる事態になりました。8年経った今でも昨日の事のように記憶がよみがえる出来事として残っています。

株式会社ジェイエイフーズみやざきは、その被害のあったエリア内に、口蹄疫で被害を受けた畜産農家の所得確保や進行する葉たばこ廃作跡地の有効活用などを目的に、「露地野菜の産地づくり」と「冷凍野菜事業」を柱とした新たなビジネスモデルの構築へ向け設立されました。

工場を先に作り、その後、その周囲に新たなほうれんそう産地を作る、という他では例を見ない取り組みだったと認識しています。

宮崎産の冷凍ほうれんそうの生産・販売実績

工場は23年8月に稼働開始し、今年で年目を迎えました。現在は、西都市、川南町、国富町の農家64人(96ヘクタール)の契約農家より12月から5月にかけて原料となるほうれんそうを仕入れ、冷凍加工した製品を周年にて販売しています。

調理しやすいサイズにカットされた冷凍野菜は、時短や手軽さを求める消費者から人気を集め、安全面からの国産野菜の需要の伸びもあり、30年度は約13億円と過去最高の販売実績を残すことができ、事業も軌道に乗ってきたところです。

圃場シミレーションが原料部門の腕の見せ所

栽培面においては、原料となるほうれんそうの歩留まりを重視し、生育に通常の青果用ほうれんそうの2~3.5倍の時間をかけ、草丈は45センチメートル以上と青果用よりも大きく成長させます。時期によっては60センチメートル以上となることもあり、青果用ほうれんそうを見慣れた方には何の野菜か判断つかないかと思います。生育期間中は、日々3名のフィールドコーディネーターがじょう(約260筆)を巡回し、生産者・JA営農指導員と生産管理工程の確認をしながら安全・安心につながる適正な品質管理に努めています。

品種は、生食用と同じものを使っており、寒い時期に露地で時間をかけてじっくりと生育するため、食味や栄養性が向上する効果も得られており取引先からも好評です。

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収穫作業は、受け入れ工場の処理能力と連動するため、計画的に行います。計画に基づき、JA出資の法人による機械収穫にて1日約1ヘクタールペースでスピーディーに進めています。そのため「収穫時期と量を予測してしゅを行う」圃場シミレーションが当社の原料部門の腕の見せ所となっています。

原料の持ち込みは鮮度保持との戦い

原料を栽培する圃場を当社の半径20キロメートル以内とすることで、収穫30分以内に工場に持ち込み、洗浄・ブランチング(加熱処理)・カット処理などの後に急速冷凍処理を行っており、その結果、味と香り、栄養を新鮮なまま閉じ込めることを可能としました。

また、品質を担保するために、ほうれんそう契約農家全戸と、農産物の国際認定規格「グローバルGAP」のグループ認証を、工場もFSSC22000を取得し、安全性や品質面での「お墨付」を得た中での取り組みを農家、JAと共に進めています(図1)。

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機能性表示食品への挑戦

機能性表示への取り組みを始めたのは、「生育期間が長い分、通常品よりも光の刺激から目を保護するとされるルテインを多く含んでいるのでは」と目を付けたのがきっかけでした。そこで、機能性表示食品制度が始まった27年に準備を始めました。

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国の事業(革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト))に係る研究として宮崎県やJA宮崎経済連、一般社団法人食の安全分析センターおよび一般社団法人宮崎県ジェイエイ食品開発研究所と連携し、栽培方法や肥培管理の検証に着手し、長い生育期間が成分量を増やすことを突き止めました。そして、解凍・調理後も一定の成分量を維持できるか調査した結果、170グラムの冷凍ほうれんそうを食べれば、1日の摂取量目安とされる10ミリグラムのルテインを摂取できることを確認したところです。

認可においては、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の研究レビューを科学的根拠として活用させて頂いたことにより、当初の想定より早い30年3月に消費者庁へ届け出ることが可能となり、同年5月に受理されました。

今回、緑黄色野菜および冷凍食品でも初の取組みとなるため、その付加価値を消費者および取引先へ発信し評価頂き、それで得たメリットを農家へ還元することで、生産基盤を維持できる仕組みづくりを目指していきたいと考えています。

冷凍野菜・緑黄色野菜では全国初の機能性表示食品の認定

成分のバラツキが生じやすい青果物では「機能性表示食品」のハードルは高いとされていましたが、グローバルGAPなどによる統一的な生産管理ができている「宮崎育ちのほうれんそう」だからこそ、冷凍野菜全国初の取り組みとなったと考えます。

これまでは、「安全・安心」はもちろん、おいしさ、抜群の鮮度に評価を頂いてきましたが、今後は、「健康」というキーワードを加えた商品として、目に見える形で訴求していきたいです

光の刺激から目を守るとされる「ルテイン」は、電子機器のあふれる現代社会においてニーズは大きく、消費者の健康的な食生活を支える一助になれば幸いと考えています。

税田 勇(さいた いさむ)

【略歴】

平成 6年 宮崎大学農学部卒業

平成 6年 JA宮崎経済連に入会

       生産資材部門、営農振興部門、管理・企画・広報部門、大阪営業所にて主に農産・園芸事業に携わる

平成30年~㈱ジェイエイフーズみやざき    代表取締役専務


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