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話題(野菜情報 2018年9月号)


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豊洲市場への移転と食品安全システム認証の取得について

東京シティ青果株式会社 取締役総務部長 青木 満

はじめに

弊社は、現在築地市場で青果物を扱う卸売業者です。昨年、平成29年12月20日に全国の青果物卸売会社として初めて、食品安全に係る国際的な認証であるFSSC22000(注1)を取得しました。また、農林水産省が推進している日本発の食品安全システムであるJFS-E-C規格審査(注2)の認証も合わせて取得いたしました。

注1:FSSCは、Food Safety System Certificationの略。オランダの食品安全認証団体 FFSC(Foundation for Food Safety Certification)が開発。食品製造業界のあらゆる組織に向けた、食品安全システムの規格。

注2:国際的に通用する我が国の認証スキームで、3段階ある規格要求事項の最上位規格。

食品安全への取り組み

今、食に対しての安全安心の確保が時代のニーズとなっています。生産者の皆様が丹精込めて作った生鮮青果物を安心して消費者の皆様にご提供する事が弊社の社会的使命と考えております。このため、常日ごろから、「食の安全安心」を第一に掲げ、産地・出荷者の皆様が築地市場に出荷される青果物を大切に扱い、仲卸業者・売買参加者様などのお客様に丁寧に届けることが最も重要で大切な事であることを肝に銘じ、役職員一同、心を込めた集荷・販売をするよう徹底しております。

振り返りますと、今から4年近く前の平成26年12月に東京都より28年11月7日に豊洲市場へ移転するが正式に発表されましたが、弊社では2年前の26年11月から開設者である東京都のご指導の下、豊洲市場における『品質・衛生管理マニュアル』を作成し、28年9月に作り上げ、豊洲市場での食品安全への取り組みの準備を整えておりました。今般取得しました両認証は、当時の品質・衛生管理の考えがベースとなっております。

ところが、皆様ご存知の通り、28年8月末に移転延期が決定した事によって、築地、豊洲の安全安心について、さまざまな議論が行われました。現在では、開場日は本年10月11日に確定しましたが、移転延期直後はいつ移転なのか解らない状況が長く続きました。その間、豊洲市場に対する風評被害などもあり、生産者の皆様、消費者の皆様に多大なご心配をお掛けする事になってしまいました。

FSSC22000の認証への取り組み

築地市場の水産卸の第一水産株式会社が平成28年にFSSC22000の認証をいち早く取得された事が大きな後押しとなり、弊社も昨年の29年4月から年内の認証取得に向け、プロジェクトチームを作り推進してまいりました。

チーム編成に当たりましては、各営業部を中心に管理部門・物流対策部も加え社内一丸態勢で臨みました。当初チーム編成は、若手社員を中心にとも考えましたが、各部の部長(責任者)と若手社員(実務担当者)の2名体制合計16名体制で編成し、決めた事を上から下まで同じ認識をもって実行することを念頭に取り組みました。

取得に向けての具体的な取り組み

弊社の場合は、生鮮青果物中心に営業を行っているので、「鮮度保持と安全・安心な青果物の提供」を遂行することが前提になりますが、これらをHACCPの考え方に従い、「危害」、具体的には軟弱野菜などについては予冷庫の温度管理をどのように行うかを社員全員に浸透させ日々管理しております。

また、常に衛生を心懸け、服装にも気を配り、汚れがちな作業においても常に清潔感を保たせること、社員が出社し卸売場に向かう際には必ず手洗いをする事を励行させること、卸売場に於いては青果物をじかに置くことを禁じ、必ずパレットの上に乗せることを義務付けました。

青果物は、ほとんどの物が段ボールに詰められており、青果物そのものがじかに触れる事はありませんが、だからと言って許される事ではありませんので、これらのことを徹底しました。

実務面につきましては、移動競売など、パレット置きが難しい場合においては、パレットの代わりにシートを敷きその上に青果物を並べ販売しております。また、検品などにより青果物に触れなくてはならない場合は、食物アレルギー事故防止のために、作業の際はビニール手袋を着用作業が終了次第廃棄することとし、アレルギー物質が他の青果物に付着しないよう徹底ました。

情報面につきましては、開設者からの食品衛生に関する情報機関のSQM(注3)の活用や、行政・産地からの残留農薬の基準値超えや放射線汚染の情報について社内での情報共有を的確に実施るため、従来の書面の回覧他、パソコン(PC)の社内掲示版を活用しました。

管理については、記録管理を徹底させました。毎日、部長以上の朝礼を欠かさず実施し、そこで、食品安全チームの各営業部門・物流部門、営業推進部の執行役員から、管理日報の提出と、問題が発生した場合の対処策を講じております。

また、このシステムで重要なものは、記録を残すということで、日々の業務を検証し、結果をもとに改善を積み重ねるというものです。

このようにして食品安全に対する危害を未然に防ぎ、お客様に安全安心を届けるというもので、昨年、29年12月20日に審査会社の審査を受け、奇しくも東京都が豊洲市場の移転日を発表した同日にFSSC22000とJFS-E-C規格の認証を同時に取得することができました(図1~3)。

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この事は、生産者(川上)・消費者(川下)両方のお客様に対してどのように安全安心を見える形で示すことができるかということを役員はじめ社員一同考えて、実践した結果ではないかと思っております。

今般の認証取得では、通常では1年間費やさなければ中々取得できないところわずか半年間で取得できた事は、「食品安全チーム」のみならず、役職員、管理職等管理部門を含め全社一丸となって取り組んだ成果であると自負しております。

注3:Safety and Quality Managerの略、安全品質管理者。食品の安全性を確保するため、東京都が中心となり、平成15年度より運用されている市場情報伝達システム。中央卸売市場における食品の安全性を確保するため、危害発生時の情報共有や衛生管理、食品安全のための研修会を実施している。

さいごに

認証取得後まだ間もない状況ではありますが、食品安全チームの各部の部長と実務担当者が中心となって、各部ごとの部会で研修会や勉強会を開催し社内の啓蒙活動積極的に行っております。

また、認証取得を目指した

①HACCP義務化への対応

②社員の意識改革(豊洲市場移転を機に)

③風評被害の払拭(築地市場および豊洲市場)

④輸出事業への取り組み

などの目的に向けて日々努力しております。

4月からは、社員の名刺に「東京シティ青果食品安全方針」を刷り込み、一人一人の社員に自覚を促すとともに、お客様にもアピールしてます。

また、国際認証を取得しても、半年または年に回は審査が実施され、3年後には、更新審査もあるなど、この適合証明・認証取得は、「はじめの第一歩」に過ぎないということで、今年4月からは、外部の学識経験者を招き入れて、総務部に「衛生管理課」を新設しました。食品安全の維持・管理、さらなる改善のため、自主検査、職員に対する研修、専門的知識を持った職員の育成と豊洲市場での認証取得に向けマニュアルの整備、豊洲での食品衛生基準など鋭意準備中で、来年、平成31年2月の取得を目途に取り組んでおります

青木 満(あおき みつる)

【略歴】

昭和32年生まれ

昭和563 大東文化大学 法学部 卒業

昭和564 東京築地青果株式会社入社 総務部配属

平成1410 東京シティ青果株式会社 総務部第1課長

       (築地市場の卸売会社、東京中央青果(株)と東京築地青果(株)社が統合し東京シティ青果(株)設立。)

平成244 同社 総務部長

平成274 同社 執行役員総務部長

平成276月 同社 取締役総務部長

平成294月 同社 取締役総務部長新市場対策室長、物流対策担当 現在に至る


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