一般社団法人 日本惣菜協会 参与 富山 武夫
少子高齢化、女性の社会進出、単身世帯の増加などを背景に惣菜産業は今や9兆8000億円を超え、中食・惣菜の果たす役割や期待はますます大きくなると同時に、関連事業者は社会や消費者の信頼を高めるためにも常に良質で安全な商品を提供し、健全な食生活に寄与することに努力している。
一般社団法人日本惣菜協会(以下「当協会」という)は、その使命を達成するための業界団体として、中食・惣菜事業者への支援を行うために、行政への提言・食産業に携わる全ての方に向けた教育プログラム(惣菜管理士、デリカアドバイザー、ホームミールマイスター)の提供、食品表示法や景品表示法に対応した事業者向けガイドブックの作成、品質管理体制づくりのサポート、市場分析の使命を遂行し、さらなる中食・惣菜産業の社会的地位の向上を目指している。
また、アメリカ穀物協会が2011年に作成したレポート、FOOD2040「東アジアの食と農の未来」によると、日本が家庭外で消費される食の外部化比率は、2010年の40%弱から2040年には75%にもなると予測されている。
なお、当協会は、1980年より惣菜に関する調査研究を開始し、2004年の創立25周年を機に「惣菜白書」として発刊を開始した。さらに2015年に35周年記念事業として、惣菜産業の新たな社会的役割を見据え、10年後の中食・惣菜産業の課題や方向性を探り、業界指針となるような「中食2025」の策定を行っている。そうした状況を踏まえて、以下に惣菜白書などに基づく最近の惣菜市場の動向を紹介する。
○惣菜の定義
当協会における惣菜の定義は、「惣菜とは、そのまま食事として食べられる状態に調理されて販売されるもので家庭、職場、野外などに持ち帰って、調理加熱されることなく食べられる、比較的消費期限の短い調理食品をいう。ただし、容器包装後低温殺菌処理され、冷蔵にて1カ月程度の日持ちする調理済包装食品を含み、調理冷凍食品、レトルト食品(包装後加熱調理殺菌食品を含む)など、比較的保存性の高い食品は含まれない。」としている。
2016年の惣菜のトータルマーケットは9兆8399億円となっている(表1)。このうち、「コンビニエンスストア(CVS)」が前年比105%の3兆1134億円、「食料品スーパー」が同104%の2兆5417億円と引き続き拡大し、他の業態は横ばいもしくは微減となっている(表2)。
中でも、袋物惣菜は、冷蔵庫で保管すれば1カ月程度も保管でき、種類も多くなっていることから、2012年に1996億円であったが、2016年には6546億円と4年間で3倍以上の伸びを示している。
業態別構成比では、「CVS」が2015年以降「専門店、他」を上回りトップとなり、2016年は、全体の32%、「専門店、他」が30%、「食料品スーパー」が26%の順になっている(図)。また、同時に行った3年後(2019年)の惣菜売上高の予測を見ると、「食料品スーパー」が11%の伸び、「CVS」が9%の伸び、「総合スーパー」、「百貨店」は横ばいとなっている。
売上高構成比を見ると、2016年は、「米飯類」が49%で1位、「一般惣菜」が25%で2位、「袋物惣菜」が3位で9%、4位が「調理パン」で8%、5位が「調理麺」で8%となっている(表3)。
今後のカテゴリー別の取扱い予測について、弁当および袋物惣菜を例として見てみる。
(1) 弁当
全ての業態で拡大すると回答した者が最も多く、「CVS」は100%、「食料品スーパー」は87%、「百貨店」は80%となっている(表4)。「惣菜専門店」「総合スーパー」「食料品スーパー」では、変わらないと答えた者が若干見られた。また、現在弁当を取り扱っていない惣菜専門店は、わからない、現在と同様に取り扱う予定はないとの回答だった。
(2) 袋物惣菜
「CVS」と「総合スーパー」が拡大するの回答が最多で、縮小するは「食料品スーパー」で7%、変わらないが「百貨店」で80%、「総合スーパー」で40%、「食料品スーパー」が33%となっている(表5)。一方、「惣菜専門店」は、54%が取り扱う予定はないとしている。
業態別に見ると、全ての業態で「健康」が1位または2位を占めている。次いで、「栄養バランスのとれた」商品が百貨店を除き、1位から3位を占めている。「野菜が多く含まれた」も惣菜専門店、食料品スーパーで1、2位となっている。その他食料品スーパーは「減塩」商品を2位に、百貨店は「国産」「高齢者向け」を2位、3位に挙げている(表6)。
首都圏、近畿圏、中国・四国圏、北陸圏でそれぞれ消費者が今後購入したいと思う惣菜を聞いたところ、全てのエリアで1位は「家庭で作りづらい惣菜」、2位から5位は「野菜が多く含まれた惣菜」「栄養バランスのとれた惣菜」「国産の食材のみを使用した惣菜」「添加物を使用していない惣菜」となっており、今後、商品開発する際の重要な参考になると思われる(表7)。
昨秋から今年にかけての台風、低温などの影響による野菜の価格高騰については、惣菜企業にとっても大きな影響があった。数社の会員企業から聞き取りしたところ、天候不順の影響で、「野菜の量が少なく品質が悪い」「CVSのカット野菜は飛ぶように売れている」「輸入に切り替えた」などの声が聞かれた。詳細は、以下の通り。
●野菜の高値の影響が出ている。今は、契約を基に出荷してもらっており、販売価格の値上げは、企業努力でしのいできたが、このまま続けば値上げせざるを得ない。
●野菜だけでなく米も高騰。人手も不足しており対応に苦慮している。CVSのカット野菜は飛ぶように売れている。
●天候不順の影響で、野菜の量が少なく品質も良くない。
●野菜が足りなくて影響は出ているが、今のところ欠品するところまではいっていない。
●国産の野菜が高いので、輸入に切り替えて何とか対応しているところ。
以上、2017年版惣菜白書を中心に惣菜・中食産業の概要および、昨年から今年にかけて野菜の価格高騰への対応などについて述べてきた。
政府においても産業競争力会議において、外食・中食産業における活性化、・生産性向上をテーマとし、労働生産性の向上、品質の向上などを通じた付加価値の向上、日本食文化を軸とした海外展開、農林漁業をはじめとする異業種との連携強化、ロボットなど新技術の活用など多様な労働力の確保を通じた事業基盤の整備などを推進することとしているところである。
また、日本惣菜協会のホームページアドレスは以下のとおりなので、参考にしていただければ幸いである。
http://www.nsouzai-kyoukai.or.jp/
富山 武夫(とみやま たけお)
【略歴】
香川県出身
日本大学法学部Ⅱ部卒
1970年農林省(中国四国農政局)入省 以降、関東農政局、食品流通局、野菜供給安定基金(現農畜産業振興機構)、消費・安全局消費・安全政策課、中国四国、関東農政局食品課長を経て2008年生産局園芸作物課野菜調整官として野菜価格安定、需給調整対策に携わる。
2012年農林水産省退職、同年一般社団法人日本惣菜協会 事務局長、参与として現在に至る。