農林水産省 大臣官房統計部 経営・構造統計課 センサス統計室 鹿野 龍巳
1 はじめに
2015年農林業センサスは、食料・農業・農村基本計画および森林・林業基本計画に基づく諸施策並びに農林業に関する諸統計調査に必要な基礎資料を整備することを目的として実施した。
以下では、農林業活動を営む農家や会社等の活動主体の動向を把握した農林業経営体調査結果の中から、農業経営体全体と野菜生産を主体とする農業経営体の動向について、その概要を紹介する。
2 全体と野菜生産を主体とする農業経営体の動向
(1)農業経営体数
農業経営体のうち、家族経営体数は134万4千経営体で、5年前に比べて18.4%減少した一方、組織経営体数は3万3千経営体で6.4%増加した(表1)。
農業経営体のうち法人経営数は2万7千経営体で、5年前に比べて25.3%増加した。
特に、組織経営体の法人経営数は2万3千経営体で、5年前に比べて33.4%増加した。この結果、組織経営体に占める法人経営の割合は69.1%となった。
また、法人経営の内訳を見ると、会社法人数は1万7千経営体、農事組合法人数は6千経営体となり、5年前に比べてそれぞれ27.6%、53.1%増加した(図1)。
野菜の単一経営(注)ごとに農業経営体数をみると、露地野菜単一経営は家族経営体の減少により農業経営体数は7万7279経営体で5年前に比べ5.0%減少するものの、組織経営体を中心とした法人経営の進展により、法人経営数は1340経営体で77.0%増と大幅に増加した(表2)。
また、施設野菜単一経営においても傾向は同様であり、5年前に比べ農業経営体数は4万2248経営体で9.6%減少するものの、法人経営数は1341経営体で37.7%の増加と着実に法人化が進展している(表3)。
注:「単一経営」とは、主位部門の農産物販売金額が8割以上の経営であり、例えば「露地野菜単一経営」とは、農産物販売金額の8割以上を露地野菜による販売金額が占める経営をいう。
(2)農業経営体当たりの経営耕地面積の状況
経営耕地のある農業経営体の1経営体当たりの経営耕地面積は2.5ヘクタール(北海道26.5ヘクタール、都府県1.8ヘクタール)で、5年前に比べて16.0%(北海道12.9%、都府県14.5%)増加した(図2、表4)。
また、経営耕地面積に占める借入耕地面積の割合は33.7%となった。
野菜の単一経営について、農業経営体当たりの野菜類の作付規模を見ると、露地野菜単一経営の1経営体当たりの野菜類作付延べ面積は140アールで、5年前に比べて9.6%増加した。また、施設野菜単一経営の1経営体当たりの野菜類作付延べ面積も56アールで、5年前に比べて10.8%増加した(表5)。
(3)農産物販売金額規模別に見た農業経営体数の状況
農産物販売金額規模別に農業経営体数を見ると、5年前に比べて3000万円以上層で、規模が大きくなるにしたがって増加率が高くなっている(図3)。
野菜の単一経営について、農産物販売金額規模別に農業経営体数を見ると、露地野菜単一経営は、5年前に比べて1000万円以上層で、施設野菜単一経営は3000万円以上層で増加している(図4)。
(4)農業生産関連事業の状況
農産物の直接販売や加工などの農業生産関連事業を行う農業経営体数は25万1073経営体で、5年前に比べて28.6%減少した(表6)。
農業経営体のうち、家族経営体は24万1697経営体で29.8%減少している。一方、組織経営体は9376経営体で32.1%増加した。
農産物販売金額規模別に農業生産関連事業を行う農業経営体数を見ると、5年前に比べて5000万円以上層で増加している(表7)。
また、消費者への直接販売を除く農業生産関連事業収入規模別に農業経営体数を見ると、1000万円以上層が9.6%となっており、特に、組織経営体では33.7%となっている(表8)。
野菜の単一経営について、農業生産関連事業を行う農業経営体数を見ると、露地野菜単一経営は1万8568経営体で、5年前に比べて17.3%増加した。また、施設野菜単一経営は7988経営体で、7.8%増加した(表9)。
(5)雇用労働の状況
農業経営体の常雇いは22万人で、5年前に比べて43.3%増加した(表10)。
また、臨時雇い(手伝い等を含む。)は145万6千人で33.1%減少した。
この結果、雇用労働総延べ人日は3.5%増加した。このうち、組織経営体では、常雇いの延べ人日の割合は80.3%となっている。
また、常雇いを年齢階層別に見ると、45歳未満が42.4%を占めている(表11)。
野菜の単一経営について、常雇いを見ると、露地野菜単一経営は1万6416人で、5年前に比べて65.3%増加、施設野菜単一経営は3万3272人で、60.9%増加した(表12)。
また、常雇いを年齢階層別に見ると、45歳未満の割合は露地野菜単一経営は49.5%、施設野菜単一経営は42.3%となっている。
3 おわりに
今回の調査結果からは、全体的な傾向と同様に、野菜の単一経営体においても、家族経営体が減少する一方、法人経営や組織経営体の着実な進展、経営規模や雇用労働の拡大がみられたところである。
今回ご紹介した雇用労働は農業経営体の労働力の一部であり、農業経営体の労働力には、家族経営体の世帯員労働や組織経営体の経営者・役員等(協業経営等の構成員労働を含む。)の労働もあるため、それらも含めた詳細な集計結果は、今後、随時刊行される報告書や当省ホームページにおいて掲載していくのでご参照ください。
なお、2015年農林業センサスを実施できなかった東京電力福島第1原子力発電所の事故による避難指示区域(平成26年4月1日時点の避難指示区域)内の福島県楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村および飯舘村の全域並びに南相馬市、川俣町および川内村の一部地域の結果(平成22年調査時点で5542農林業経営体が所在。)は平成27年値に含まれていないことにご留意ください。