独立行政法人農畜産業振興機構
理事長 宮坂 亘
謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
昨年10月に、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)の理事長に就任しました宮坂亘です。当機構の業務につきまして、旧年中は皆様のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
近年の農畜産業をめぐる情勢は、高齢化の進展や後継者不足、さらには円安による生産資材の高騰などにより、厳しい状況が続いています。こうした中、当機構は生産者の経営安定、需給の調整や価格の安定を図るためのさまざまな事業を実施しています。また、法人ガバナンスの向上を図るため、昨年4月、内部統制委員会を新たに設置し、危機管理、情報セキュリティなどの強化に取り組み適正かつ的確な事業の実施に努めてまいりました。
昨年は農畜産業をめぐる環境などが大きく変化した年でもありました。
3月に農林水産省は新しい「食料・農業・農村基本計画」を策定し、これに沿った生産者の経営所得の安定を図る他、輸出拡大に向けた取り組みの強化、6次産業化の促進などの攻めの農林水産業を目指す政策が実施されています。
また、10月には環太平洋経済連携協定(TPP)が、5年半にわたる交渉の末に大筋合意に達しました。関税撤廃を原則とするTPP交渉にあって、重要5品目を中心に関税撤廃の例外などが措置された一方で、一部の品目で関税削減・撤廃などが行われる内容となっています。この大筋合意を受け政府は、農林水産業の体質強化や経営安定対策の充実・強化を柱とする国内対策を盛り込んだ「総合的なTPP関連対策大綱」を11月に策定し、関連予算が政府予算案に盛り込まれました。
さて、野菜について昨年一年間を振り返りますと、春先の低温、多雨、日照不足の影響、また夏期の台風や長雨などの天候不順の影響から、出荷量が減少し、需給が総じて引き締まった状況となったことから、春先から秋にかけて価格は全体として平年を大きく上回って推移しましたが、秋には好天に恵まれる日も多く、一部の品目は出荷量が増大し、価格も落ち着きを見せ、平年を下回る水準となりました。
野菜は、国民の食生活に欠くことのできない食材ですが、このように天候の影響を受けて、作柄が変動しやすく、短期間に価格が大きく変動するという特性を有しています。当機構としては、野菜の価格が低落した場合にも、次年度以降も安定した生産を継続できるよう、野菜価格安定対策事業や諸情勢に対応した対策を、今年も引き続き実施してまいります。
また、このような野菜の価格変動の特性を踏まえ、年3回野菜需給協議会を開催し、向こう3~4カ月の主要野菜の需給・価格見通しを、消費者を含めた関係者に対して発信しております。今後も輸出促進の視点を含めた適時適切な情報の収集提供に努めてまいります。
近年の需要動向を見ると、加工・業務用の国産野菜へのニーズが高まっています。当機構では、加工・業務用野菜生産者の経営安定と所得確保および消費者に対する国産野菜の安定的な供給の確保を目的として、平成26年度から加工・業務用野菜生産基盤強化事業を実施しています。本年も引き続き、加工・業務用野菜への転換を推進する産地に対する支援を中心に推進してまいります。
当機構は、国の重要な施策を担う機関として、これまでもその時代に求められた役割を果たすべく、さまざまな事業を機動的かつ効率的に実施するよう努めてまいりました。TPP関連対策についても、国の方針に基づき、現場に近い組織としてこれまでのノウハウを生かして、一連の流れの中で当機構の役割を確実に果たしていきたいと考えておりますので、引き続き、皆様のご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
本年が皆さまにとって希望に満ちた明るい年となりますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつと致します。