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話題(野菜情報 2015年5月号)


鉄道コンテナによる青果物輸送

日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)
取締役・鉄道ロジスティクス本部営業統括部長・営業部長
真貝 康一

青果物の流通をめぐる状況

 青果物の流通経費は、農林水産省の資料によると農業経営費の約3割を占め、物流の効率化は生産者の経営にとって大きな課題である。

 近年の燃料価格高騰の影響により、例えば、北海道や北東北、九州から首都圏までという遠距離の輸送費は、既に2割から3割増加している。

 また、青果物輸送に限ったことではないが、平成25年秋ごろより長距離を運転するドライバーの不足も顕在化し、全国各地でトラックが確保できない状況になっており、42年度を見通すと、約9%のドライバーの需給ギャップ(需要量約95.8万人、供給量87.2万人)が解消できない状況が続くものと予測されている。

 こうしたことから、近年、農産品および青果物をはじめさまざまな品目で、JR貨物を使った鉄道輸送の引き合いが急速に増えている。

鉄道コンテナによる青果物輸送

 当社は、鉄道コンテナにより平成26年度に2154万トンの物資を輸送しているが、そのうち農産品および青果物は208万トンと全体の約10%を占めている(表1)。鉄道コンテナ輸送は大量輸送に特性を発揮することから、米のほか、ばれいしょおよびたまねぎなどの重量野菜が、青果物輸送のうち約7割を占めており、特に、北海道発のばれいしょ、たまねぎは、近年では最も高い比率で増えている。

 また、鉄道コンテナ輸送は、トラック輸送に比べ、長距離になるほどコスト的に割安になるのが特徴であり、今までは北海道―関東・甲信越以西、東北―関西・中国、九州―関東・甲信越といった長距離で利用されることが多かった(表2)。しかし、昨今のドライバー不足や燃油価格の高騰の影響もあり、区間によっては、一般に中距離と呼ばれる400キロメートル程度でも鉄道コンテナ輸送の競争力がある状況となっており、鉄道へのモーダルシフトが進んでいる。

青果物輸送に対応したコンテナの開発

 青果物輸送では、一般的な密閉タイプのコンテナのほか、換気可能なコンテナや、冷蔵温度(注)を保てるコンテナもよく利用される。基本的に、鉄道コンテナ輸送で使用されるコンテナのサイズは、12フィートコンテナ(内容積18.6平方メートル、積載重量最大5トン)であるが、トラックから鉄道にモーダルシフトする際は、大型トラックとほぼ同容積の31フィートコンテナ(内容積48平方メートル、積載重量最大13.8トン)も検討されることが多い(写真1)。

 ただ、当社が所有するのは密閉タイプおよび換気可能なコンテナで、冷蔵温度を保てる保冷コンテナは所有していないため、使用の際は、レンタル事業者のものを使用することとなる(写真2)。前述の通り、青果物の鉄道コンテナ輸送の需要は高まってきているため、コンテナ製作メーカーやレンタル事業者などはその需要を取り込むためにも、保冷機能を高めたコンテナや、ドライアイス不要で冷蔵温度の輸送ができる蓄冷式コンテナ、4トン車の冷凍機と同じものを装着した温度管理コンテナなどの導入を進めている。

注:5度から15度程度の温度帯

 当社においても、商品管理の高度化などの昨今の消費者ニーズに対応するために、当社自身で厳格な温度管理が可能になるよう、新しい温度管理輸送システムを技術開発すべく検討を進めている。

 また、農林水産省においても、産地からの青果物の輸送手段の確保という喫緊の課題解決のため、平成26年11月に「青果物流通システム高度化研究会」を立ち上げて、トラックドライバー不足に対応した、鉄道へのモーダルシフトを強力に推進する方針を打ち出している。当社としても、それに応えるために最先端の品質管理技術を実証し、大型低温設備や多段階温度管理が可能なコンテナの導入による新たな輸送システムの構築を今後も推進していきたい。

 

プロフィール
真貝 康一(しんがい こういち)


【略歴】
昭和53年4月 株式会社日本興業銀行入社
平成19年4月 日本貨物鉄道株式会社入社
平成23年6月 同常務執行役員東北支社長などを経て
平成26年6月 同取締役鉄道ロジスティクス本部営業統括部長・営業部長




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