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話題(野菜情報 2014年9月号)


加工・業務用野菜の安定供給に向けた取り組み強化

全国農業協同組合連合会 園芸総合対策部
部長 野﨑 和美

野菜の生産流通状況

 平成23年の国産野菜の作付面積は、43万ヘクタールとなり、2年の60万ヘクタールと比べて29%の減少となった。23年の生産量も1182万トンとなり、2年と比べると26%の減少になっている。野菜は、国内の生産減を輸入でカバーしており、25年(概算)の自給率は79%まで落ちている。

 野菜の供給純食料は、日本人1人当たり25年(概算)で92キログラムと、2年の108キログラムから大きく減少している。また、世帯構成も変化しており、単身世帯と2人世帯の比率は22年には58%まで上昇し、高齢者の世帯比率も、20年前から比べると9%から21%と、倍増している。また、職業を持つ女性の比率が6割にもなり、環境変化の中で食の簡便化志向へと、消費が大きく変わってきている。

 食の外部化率は22年で45%になり、30年後には70%になるとの推計もある。野菜の用途別需要では、加工・業務用が家計消費用を上回って56%まで拡大してきている。カット野菜の市場規模は、最近では、1800億円とも1900億円ともいわれ、業界の情報では、ここ2~3年では、年間の伸び率が20~30%になっているともいわれている。

 野菜の輸入は、近年増加傾向にあるが、加工・業務用のニーズに、国内の産地が十分に対応できていないことが要因のひとつであるといわれ、国内の加工・業務用野菜の産地作りおよび販売が急務となっている。

全農の新たな取り組み

  全国農業協同組合連合会(以下、「全農」という。)の園芸販売実績1兆600億円のうち、直販の取り扱いは2800億円。そのなかで、加工・業務用の販売額は300億円強で、今後、これを500億、1000億円と増やしていかなければならない。その加工・業務用の販売額をどう拡大していくか。その分野に自ら飛び込んでいくのも、ひとつの方法ではないかということで、キユーピー株式会社と合弁で、株式会社グリーンメッセージ(以下、「グリーンメッセージ」という。)を設立した。神奈川県にある全農青果大和センターの跡地に第1工場を建設し、稼動は来年の5月で、このあと第2、第3工場の建設まで視野に入れており、3工場体制で10年後には100億円まで売上を伸ばしていく予定である。取り扱うのは、業務用のサラダ野菜で、外食・中食を中心に特化していくこととしている。

 目指すところは、加工・業務用野菜を通じた国産野菜の消費拡大であり、ここで得られた製造・販売のノウハウを産地にフィードバックしながら、産地の生産振興に役立てていきたい。

産地づくりの進め方

  従来の市場流通では各都道府県のブランドがあり、産地間競争が行われてきた。しかし加工・業務用の対応は、協調販売、リレー出荷を重点に、産地間の連携を図ることが基本的な進め方になる。

 具体的には、東北、関東甲信越、東海・近畿・北陸、中四国、九州の5ブロック別に、都府県本部や経済連の担当課長などをメンバーとしたブロック別の直販連絡会議を設置し、各ブロックのエリア内で取引先を開拓しながら生産振興につなげていく。

 加工・業務用向けの契約栽培の単価は一定価格であり、反収の向上で収入をカバーするような提案をしていくわけで、それを高い運賃をかけて遠くまで運ぶとなれば、実需者が要望する価格をはるかに上回ってしまう。各ブロック内で低コスト物流を組み立てれば、実需者が要望する価格に近づけていくことができる。さらに、ブロック内でお互いに連携をとりながらの営業展開や、リレー出荷を組み立てることができれば、実需者にとっても産地にとってもメリットが生まれる。これが、ブロックごとの安定的な供給体制の構築を進める狙いで、それぞれの都府県本部や経済連での先進事例や優良事例をブロック内で共有しながら、各産地で工夫をこらして運用できるような体制づくりを支援していく。

 特に、加工・業務用として使われるキャベツ、たまねぎ、長ねぎ、にんじん、レタスを重点5品目に設定し、時期別および品目別に複数産地化を図りながら、リレー出荷を組み立てる。産地作りには、まず経営のシミュレーションを作成し、それを各産地に提案する。加工・業務用対応が初めての産地であれば、品種の比較試験などから始め、モデルほ場を設置し、実際にスタートするまでには3年くらいはかかるものの、経験のある産地は、即スタートという形で進めていくことになる。

各産地との連携方法

 全農では、作業工程や収支、資材や農業機械の導入、土壌診断、生産履歴管理などの生産者に対する提案を「パッケージ提案書」という形でまとめて産地に提案し、加工・業務用向け産地の対応強化を目指している。全農園芸総合対策部では、まず「全国版」を作り、それを各都道府県の実情にあわせてパッケージ提案書に作り変える支援をしている。

 加工・業務用向けの安定供給に向けた専用産地作りは、取り組みが進んでいる産地とこれからの産地というように、産地によって進度が違うため、進捗状況に合わせて提案していく。これから取り組むという産地は、農協の生産部会に契約栽培というものを理解してもらうことから始めなければならない。そこで、「パッケージ提案書」やモデルほ場、実証ほを作りながら、少しずつ意識改革を進めていく。販売ルートは、園芸総合対策部や全農青果センター、グリーンメッセージなどと連携しながら共同営業を行い、県内の加工・業務実需者に地産地消の提案を進める、あるいは市場との連携によって加工・業務用向けの対応を進めるなどで開拓していく。

 すでに取り組みが進んでいるところは、大規模生産者や農業生産法人への提案をさらに拡大していく。安定経営を望む大規模生産者に対しては、契約栽培、契約販売の提案によって、「自分たちの顧客」「自分たちの工場」という意識を持ってもらうことが重要である。また、取り組みが進んでいる都道府県では、販売で都道府県とのリレー出荷の組み立てを十分理解してもらうことと同時に、ブロック別連絡会のリーダー的な役割を担ってもらう。このような形で加工・業務用野菜の安定供給に向け、連携を強化し産地作りを進めていくこととする。

 今回の新たな取り組みであるグリーンメッセージの設立、カット野菜の製造は、加工・業務用野菜の対応強化への第一歩であると考えている。

プロフィール
野﨑 和美(のざき かずみ)


【略歴】

茨城県出身
1981年 茨城県経済連入会以来、園芸販売事業、
      園芸直販事業、加工業務開発に携わる。
2003年 全農茨城県本部園芸部VF課長
2007年 全農茨城県本部園芸部長
2010年 全農茨城県本部管理部長
2012年 全農茨城県本部副本部長
2013年 全農園芸総合対策部長



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