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〔特集〕国産野菜の冷凍加工に向けた取り組み(野菜情報 2014年7月号)


冷凍食品における国産野菜の消費拡大に向けて

パルシステム生活協同組合連合会
事業広報部 部長 髙橋 宏通

1 はじめに

 パルシステム生活協同組合連合会(以下、「パルシステム」という。)は、1都9県(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城、群馬、福島、山梨、静岡)にまたがる10の地域生協を会員とする事業連合です。パルシステムは、「組合員の暮らし課題解決」や「組合員の暮らしの生涯をサポート」という事業コンセプトに基づいて、組織拡大を続けており、会員組合員世帯総数は130万世帯、2013年度の会員総事業高は約1930億円です。冷凍野菜(果実含む)は23億4000万円で、そのうち、国内産直品は約10億円、その他国産品と合わせて約70品で国産品を取り扱っています。輸入品の大半は、国内で収穫できない果実(ブルーベリー、マンゴーなど)で、野菜のほとんどを国産品で開発しています。

  パルシステムは、店舗事業展開をせず、個人対応型無店舗事業に特化しています。全国の生協に先駆けて「ライフステージ別暮らしの提案」を行い、事業の柱に「産直と環境」を据えて、組合員参加と産地・生産者との連携で「環境保全型農業」を積極的に推進しています。またパルシステムでは、食料自給率の向上を目的に事業を構築しています。

2 なぜ「国産」にこだわるのか

  一般の冷凍食品の原料は、その大半が輸入野菜に頼っています。パルシステムでも、商品開発にあたり、原料を国産や産直品にこだわると、必ずといっていいほど「市販品」との価格差が大きな課題となります。安さのみを追求すると、輸入原料にかないません。しかし、パルシステムでは、「安さの裏側にあるもの」「大量生産―大量消費がもたらしたもの」「原料を輸入にたよるその先は」「遺伝子組み換え問題」などの課題を、広く社会に問題提起していくことが重要と考えます。

  パルシステムが商品づくりの指針としてきた、5つの「商品づくりの基本」や「7つの約束」を体現するパルシステム商品を通じ、多くの組合員とともに「食のあり方」「安全・安心」「食料自給率」などについて考え、行動提起をしていきます。

3 パルシステムの「ほんもの実感!」くらしづくりアクション

 国産にこだわるのであれば、当然、価格以外の価値を伝え、多くの消費者に理解、共感を得なければ、事業は成り立ちません。パルシステムは、食べものや食べることは「本物」でなければならないと考えます。パルシステムの考える「本物」とは、「商品づくりの基本」にうたっている通りであり、こうした商品づくりに取り組む「本物の仕事」をする人々としっかりとつながり、商品の後ろに物語が見えることこそが、他にない価値だと考えます。

①パルシステム商品を「選ぶ」ことで世の中が変わる!

  市場の価格競争が激化し、命の源である食やくらしの安全も脅かされかねない現在、見せかけの安さや便利さに惑わされず「選ぶ」ことは、自らの健康や暮らしを守るためにもますます大切な視点となり、国内の生産者や地域、製造現場を支える大きな力にもなります。この組合員の「選ぶ」を応援するため、「安全・安心」な暮らしと持続可能な食生産を支えるパルシステム商品の価値を伝え広めます。心豊かな暮らしを楽しみながら世の中を変えることができる、消費者が行使できる最大の権利であり、選挙で投じる1票にも勝る大きな力になり得る、「買い物は1票」を提案していきます。

②パルシステム商品をつくる生産者・メーカーと会おう・話そう!

  商品づくりの物語を共有し、「作り手」の想いを伝え広めるため、産地やメーカーの皆様から直接話を聞く機会を増やし、組合員、職員との距離を近づけます。
経済効率のみを重視することのない、生産、製造のこだわりや努力を知り、その価値を実感し広めます。

③パルシステム商品をおいしくムダなく使いこなそう! 

  パルシステムの商品(ほんもの)を楽しみ、おいしく、ムダなく最大限に活用する、経済的で心ゆたかなくらしのあり方を提案し、多くの組合員とともにその価値を考えていきます。
ユネスコ無形文化遺産への登録により、世界からも認められた「日本食」の価値を見つめ直し、気候風土に根ざした食のあり方や、保存食などのくらしの知恵を伝え残します。
「もったいない」について改めて考え、安売り商品を衝動的に大量購入し食べ切れずに廃棄してしまうのではなく、週1回の計画購入でパルシステムの商品を上手に使いこなすくらしを提案します。

4 パルシステムの冷凍食品の考え方

  便利な「冷凍食品」こそ、その後ろにある物語を知ろう!

  忙しい毎日の中では、心にゆとりを持たせてくれる冷凍食品を上手に取り入れるのも、今に生きる私たちの暮らしの知恵かもしれません。そのとき思い浮かべたいのが、その食品が手元に届くまでのプロセスと、そこに関わっている人々のことです。消費者が手にとりやすい価格を追求するばかりに、安価な原材料で効率優先で作られることも多い冷凍食品は、時に、食への不信という社会問題を引き起こすことさえあります。

  そんな中、パルシステムが大切にしてきたのが、化学調味料不使用はもちろん、添加物をできるだけ使わないこと。そして生産者の顔が見える産直原料の使用を進め、作り手との関係を大切にすることです。

  「便利さ」だけをただ追うのではなく、その先に広がる食の未来まで見据え、パルシステムは豊かな社会に向けて歩みを進めていきます。産直の目的を『健康で安心なくらしに貢献し、生産者と消費者がともに生活者として農業の持つ多様な価値を見直し、環境保全・資源循環型の食と農をつなげた豊かな地域社会をつくること』としています。パルシステムでは、青果でおなじみの、産直提携産地と連携して冷凍野菜を開発しています。千葉県の農事組合法人和郷園、群馬県の野菜くらぶ株式会社(以下、「野菜くらぶ」という。)、宮崎県のイシハラフーズ株式会社(以下、「イシハラフーズ」という。)などいずれも、原料の野菜の生産には農薬削減、土作りなどこだわったものを使用しています。そして、生産者と消費者のコラボレーションによる地域社会づくりを目指しています。このようにしてできた産直原料の冷凍野菜は多くの組合員に支持され安定的な売り上げを記録しています。

5 食品ロスを削減するための取り組み

  いま、問題になっている食品ロス。パルシステムでは、食品ロスを削減する取り組みを積極的に推進しています。「もったいないプロジェクト」、具体的には、

①消費者と生産者の距離を縮める。消費者は生産者のことを考えて消費する。消費者のレベルアップ!

②暮らし方、食べ方、購入の仕方を変える。

③必要なものをムダなく購入し、使い切る。保存食、食材の使い切り術。

④家庭に届く前の廃棄を減らす。食べられるのに捨てられる物を食卓に登場。
などを実践しています。

  「もったいない」をテーマとした組合員参加の商品開発。規格外などで「食べることができるのに捨ててしまう」食品を商品化しています。

・茎の長めのブロッコリー

  カット済みの便利な冷凍ブロッコリーは、形やサイズをそろえるために茎の部分が大幅にカットされています。「茎の部分も甘みがあっておいしいのに、捨ててしまうなんてもったいない!」という思いのもと、群馬県の産直産地、野菜くらぶと提携して開発。

・冷凍さつまいもスティック

  大き過ぎたり、曲がっていたりして一部加工品向けに取引されるもの以外は、廃棄されてしまう規格外のさつまいもを商品化したものです。

・九州のさといも

  冷凍さといもは一般的には、ピンポン玉のように白くて丸く、形もサイズもそろっているものが多く見られます。しかし、生のさといもの形がいびつでゴツゴツしていることからもわかるように、形とサイズをそろえるために、皮むきの段階で、食べられる場所を含む多くの部分を捨ててしまっているのです。その量、重量比でなんと70%。「見た目だけのために、食べ物を捨てるなんてもったいない!」という思いのもと、パルシステムが冷凍野菜の加工メーカーであるイシハラフーズとともに開発したのが、廃棄部分を減らした「九州のさといも」です。イシハラフーズでは、「きれいな球形にしようと思ったら、皮を厚くむかなければなりません。原料も安価な外国産のものを買い付けてくるのが普通でしょう。本品は自分の農場で作ったさといも。5割を機械でむいて、どうしても残る部分は手でカットしています。人手を使う方がコストは高くつきますが、やっぱり作物を無駄にはしたくない」と語ります。むいた後の皮は、自社農場で土にすき込み、肥料として活用。「廃棄率5割でも多い、と感じられるかも知れませんが、普通は産業廃棄物として捨てるしかない。私たちは、畑から持ってきたものは、すべて畑に返しています。決して無駄にはしません」。むいた後のさといもは、当然サイズはバラバラ。大きさをそろえてむいた市販品と違い、サイズごとに分別してから、それぞれ温度と時間を調節し、湯通し加工しています。茶色いところが残ることもあり、「やや土くさい」との声もありますが、「さといもというのは、土の中になるものなので、これこそが風味だ、と考えてもらえるとうれしいです」。

6 冷凍野菜以外にも積極的に産直野菜を活用

 冷凍食品は加工度が高くなればなるほど、その原料の素性が消費者には見えにくくなります。パルシステムでは産直産地の野菜を活用した加工品の開発が進んでいます。(産直原料開発プロジェクト)

・「おいもがほくっと牛肉コロッケ」 

  本気で作りたいから、ばれいしょも牛肉も産直にしました。

  冷凍コロッケといえば手軽な総菜の代表格ですが、原料や製法までは見えないことがほとんどです。一方、本品の原料のばれいしょには産直産地・大牧農場(北海道)の男爵いもを使用。収穫時に生まれる規格外のものを活用しています。「とはいえ、どんなものでもいいというわけにはいきません。本品の加工に適したサイズや傷の程度を決め、基準に合ったものだけをていねいに選り分けています」。牛肉も、北海道の産直牛肉を使用。「牛肉の脂にうまみがあるので、その風味を生かせばおいしいコロッケができると考えました」と製造元の株式会社ニチレイフーズ。化学調味料を使わなくても、砂糖やしょうゆという家庭にあるような調味料をベースに充分なおいしさが出せたと胸を張ります。加工品だからこそ顔の見える原料を大切に、シンプルに作りたい。このコロッケには、そんなパルシステムの本気が詰まっています。

・「煮込んでおいしいロールキャベツ」

  お母さんの代わりに手作りしました。

  キャベツと豚肉に産直原料を使い、工場で職人がしっかりと手巻き。忙しいお母さんの手間をグンと省いて、家庭で手作りしたような味に仕上げました。

7 最後に 生産者、消費者一体となった「食づくり」

 パルシステムは「安全でおいしい食べ物」(売り物ではない)をお届けすることを基本としています。食の安全性向上には当然コストがかかります。しかし昨今の低価格競争化で高い商品は売れない状況が続いています。米業界でも、減農薬米のような付加価値のついた米は売れない、売りにくいといわれています。このゆがんだ状況を打破しなければなりません。そのためには、食の安全性のメリットを受ける、消費者、流通、小売でも、そのコストを負担する仕組みが必要と考えます。消費者にとって、安全性の向上が見えにくい状況の中、その違いを広報し、理解していただき、買い手市場、消費者主権の安全性確保からの脱却を図る必要があります。消費者も生産現場に踏み込み、生産者も一緒になって、食をつくりあげていくことが問われていると考えます。

 



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