株式会社タニタ
代表取締役社長 谷田 千里
タニタでは、野菜たっぷり、カロリーと塩分ひかえめの定食を社員食堂で提供しています。レシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」(大和書房刊)が、シリーズ累計532万部(2013年5月現在)を超えるベストセラーになり、2011年2月には東京丸の内にレストランもオープン。2年目を迎えた現在も、整理券を配布するほどの繁盛店となっています。
レシピ本の副題が「500kcalのまんぷく定食」ということや、ダイエット効果を伝える声やテレビ番組の影響もあるのか、「野菜たっぷり」と「塩分ひかえめ」という特徴は、「カロリーひかえめ」に比べて、あまり知られていないかもしれません。実はこの「野菜たっぷり」が低カロリーと塩分ひかえめを支えています。
タニタは体重計、体脂肪計、体組成計や歩数計、活動量計など、さまざまな健康計測機器を製造、販売しています。人のからだは、食事によるカロリーの摂取と活動(運動)によるカロリー消費のバランスによって、太るもしくは痩せます。このため、タニタでは食事、運動、休養などの活動と体重(からだ)をはかることで、行動変容を促していく健康管理を推奨しています。そのベースとなっているのが、1990年に開設したベストウェイトセンターというクリニックを併設した施設で、栄養指導や運動指導を行ってきたことです。現在、センターは閉鎖して、「からだカルテ」というWEBサービスや女性専用30分フィットネス「フィッツミー」へ移行し、センターにあった食堂は社員用としてリニューアルして、継続してきました。センターでの食事は、糖尿病患者向けに低カロリーと減塩のみを重視したため、リニューアル当初は、おいしくなく、量も少ないため、満腹感が得られないということで人気も低かったそうです。そこで、健康や栄養のみでなく、満足度を意識したメニュー作りにシフトしてきました。
タニタの社員食堂のレシピは、「主菜、副菜2品、汁物、ご飯の5品で構成される定食スタイル」「エネルギーは1食500キロカロリー前後」「野菜をたっぷり1食150~250グラム使用」「塩分量は1食3.0グラム前後」が基本のルールです 。
カロリーを抑えるため、油分、脂身は極力控えて調理をしています。具体的には、普通のレシピでは油で揚げるところをオーブンで焼いたり、下ごしらえで余分な脂身や鶏肉の皮を取り除いたりして、カロリーダウンをしています。この手間を加えることで、かなりのカロリーダウンが可能ですが、ただ油分を控えると、コクがなくなってしまいます。また、カロリー以外にも塩分も押さえているので、慣れない方には物足りなく感じがちです。
油分と脂身を極力控え、塩分は3グラム前後にしながら、おいしさを実現する秘訣は「だし」を使うことですが、そのほかに、香味野菜をたっぷり使う、種実類を上手に使うことによって、味にアクセントをつけています。例えば、「チキンのごまサルサソース定食」では、ごまで香ばしさを出したうえで、トマトとたまねぎ、レモン、タバスコを使ったサルサソースをアクセントにして、塩分や油分を控えた中でおいしさを実現しています(写真1)。
また、野菜はあえて大きめにカットして、歯応えが残るゆで具合にすることで、かむ回数を増やし、満足感を出しています。ごぼうやれんこん、だいこんなどの根菜類やブロッコリーやきぬさやなどのそのまま食べる「丸ごと野菜」など、身近な食材を多用しています。
もちろん野菜を多用するのは栄養が豊富という理由もあり、1食あたり緑黄色野菜を含めて野菜を150~250グラム使うようにしています。野菜に含まれる栄養を摂取するとともに、野菜の色鮮やかさが視覚から満腹感と満足感を生み出してくれる効果もあります。
タニタの社員食堂のレシピでは、厚生労働省の健康日本21(栄養・食生活)において、提唱されている1日の野菜摂取目標の350グラムの約半分を1食で摂取できるようになっていますが、日々の生活で野菜の量を意識することはなかなか難しいのが現実だと思います。そこで、野菜の摂取量がはかれるデジタルクッキングスケールを商品化しました(写真2)。この商品は、簡単に目標値が設定でき、達成量までのグラム数と達成度が分かります。また、楽しみながら野菜を食べていただくこと考え、目標値を達成するとウインクが表示されます。
タニタの社員食堂はメニューも調理法も昔から日本人が食べていた、野菜中心のシンプルな基本食です。薄味に秘められた素材の旨みを味わっていただくレシピで、新鮮な季節の野菜は欠かせません。メニューに使われる食材を各地の特産野菜などで置き換えて、地産地消メニューとして試していただくこともおすすめです。是非、野菜をもりもり、おいしく食べて、健康づくりをしていただきたいと思います。
略歴
昭和47年(1972) 6月6日生
平成 9 年(1997) 佐賀大学理工学部卒業
平成 9 年(1997) 株式会社ニュートン入社
平成10年(1998) 株式会社船井総合研究所入社
平成13年(2001) 当社入社
平成17年(2005) タニタアメリカINC 取締役
平成19年(2007) 当社 取締役就任
平成20年(2008) 代表取締役就任