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話題(野菜情報 2013年3月号)


農業経営の安定化・
地域農業活性化の取り組み

新函館農業協同組合 代表理事組合長
畠山 良一

 JA新はこだては、北海道南部渡島半島を一円とする2市12町の行政区を抱える広域JAであり、北海道の中でも温暖な気候に恵まれ、水稲をはじめ畑作・青果・花卉と北海道各地で生産されているほとんどの農産物が生産されている。また、酪農畜産も盛んで、北海道農業において先駆的な地域である。

 しかし、農業形態は前段でも申した通り、地域により大きく異なっている事から、地域の特性を生かした農業振興を7つの基幹支店を中心に取り組でいる。

 当農協においても、農地の減少、農業者の高齢化、担い手不足などにより農畜産物を生産する力そのものが低下しており、地域農業生産活動や組合員の農業経営基盤の弱体化が懸念されている。各地域における基幹作物の生産量の停滞・減少も見られ、産地の維持が難しくなっている。これらの現状を踏まえ、持続可能な地域農業を堅持するため、「組合員意向調査」を行い、地域の抱える問題や課題を整理した上で、第3次地域農業振興計画を策定した。策定に当っての基本的なスタンスは、「組合員に頼られる営農センター」をキャッチフレーズとし、7基幹支店単位でそれぞれ取り組んでいる。しかし、「農業者担い手育成対策」は全店共通の重要課題と位置付け取り組んでいる。

取り組み内容

「担い手養成講座の開講」

 地域農業を担う後継者、青年部員を中心とした「地域独自の担い手養成講座」を開講し定期的に勉強会を実施している。内容は地域毎(営農類型)により異なっているが、農協が研修カリキュラムを決めるのではなく、担い手(後継者)が何を学びたいのか?何を習得したいのか?を聴き取り、受講者(担い手等)の思いをカリキュラムに取り込んでいる。また、内容によっては外部より専門家等を招き研修を行っている。

 また、勉強会終了時には、より良い勉強会が実施できる体制づくりを考え、受講生より振替シート(感想)の提出を求めながら取り組んでいる。

 その他にも平成22年度より海外視察研修を実施している。この研修は、先進諸国の農業情勢を実際に肌で感じ地域農業に対する問題意識、地域農業の振興発展に資する事などを目的に実施しており、次世代を担う青年農業者の育成に農協役職員と共に取り組んでいる。

 地域農業振興については、水稲部門では農地集積による団地化を図るとともに、道南ブランド米「ふっくりんこ」を中心とした作付面積の安定を図り、さらに需要にあった他品種との組み合わせを生産部会と協議して取り進め、高品質・良食味米生産に努め安定生産体制を確立した。

 地元消費者等からの評価も得ており、一人当たりの米消費量が低迷するなか、「ふっくりんこ」を筆頭に管内で生産された米穀の需要は年々増加しており、生産者所得向上につながっている。

 また、地域農業振興対策として農業独自のハウスリース事業を平成20年度から展開しており、主にトマト、にら、ほうれんそう等の園芸作物地域の維持拡大を実践している。

 トマト・にら・ほうれんそうの3品は各行政の支援により共選施設が整備され、特ににらは全道一の生産面積と生産量を誇っている。具体的な取り組みとしては、市場に対する占有率を高めるために販売期間の延長や1束単位で生産者がトレース出来る仕組み、独自のGAPを導入するなど、農業生産基盤の強化が図られている。

 特に共選施設の集約を取り進めており、品目によっては生産者の経費削減が図られ、さらには安定供給体制が高まった事により収益性が向上した。

 さらに一部地域では農業振興公社を設置し、農家の労働力軽減、作物の集約化を図り、生産量の拡大や有利販売に取り組み一定の評価を得ており、集落営農および法人化へ向けての機運が高まってきている。

 酪農畜産部門においては、粗飼料生産の外部化と搾乳作業を補完する休日型の酪農ヘルパー制度を確立している。「はこだて和牛」等の地域ブランド確立と生乳生産の維持拡大に向けた多種多様な取り組みを実践している。

 また、各地域、各部門の共通課題は、農繁期における深刻な労働力不足であるが、農機具等の導入を図り労働力軽減に取り組んでいる。しかし、最終的に「人の手」が必要不可欠であり、生産者からの要望は年々増している。対策として無料職業紹介事業に取り組み、地域住民の雇用の場を確保することで、組合員と地域住民の要望にも対応し高評価を得て一定の成果を上げている。また、外国人技能実習制度を活用した制度にも取り組んでいる。

 このほかにも色々な取り組みを行い一定の成果を上げているが、当初述べたように高齢化や担い手不足による農業者人口の減少に歯止めは掛からず、耕作放棄地の増加も懸念される厳しい状況にあり、「人と農地」の確保をいかに進めるかが課題である。第3次地域農業振興計画が最終年(平成25年度)となることから、平成25年度は第3次計画の検証を行い、第4次地域農業振興計画を地域組合員および農協役職員、関係機関と協議を重ね立案し、計画をまい進する事が農業経営の安定化さらには地域農業の活性化につながると確信している。

プロフィール
畠山 良一(はたけやま りょういち)


  1950年北海道生まれ。97年(旧)渡島大野農業協同組理事を経て、2002年13JA広域合併により新函館農業協同組合理事、03~06年まで代表理事専務、06~08年まで代表理事副組合長を経て、08年より代表理事組合長に就任。JA合併時より数々の役職を歴任。
 JA新はこだての基本理念「夢ある農業作りと心豊かな地域づくり」「未来に向けた事業展開とたゆまぬ研究開発」「情熱とチャレンジ精神をもった人づくり」を掲げ、組合員および地域社会から支持、愛されるJAを目指している。




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