野菜の農業産出額は平成22年度で2兆円を超え、作物部門別では、米を抜いて1位となっていますが、野菜の生産・流通を取り巻く情勢は、大きく変化し、それに対応する施策が求められています。ここでは、これらについて紹介させていただきます。
我が国の野菜消費量は、平成23年度の国内消費仕向量でみると13,416千トンで、10年前と比較して9割程度となっています。この消費の内訳をみると、昭和50年度では、4割であった加工・業務用の需要が平成22年度には、6割に増加するとともに、加工・業務用需要に占める国産割合は、家計消費用がほぼ100%であるのに対し、7割程度となっており、この割合も低下傾向で推移しています。今後、野菜の自給率向上を図るには、この加工・業務用需要にいかに国産野菜で対応できるかということになっています。
生産構造が変化する中で、流通構造も変化しています。例えば、いわゆる八百屋さんといった小売店での販売が減り、食料品スーパーや全国・地域で販路を確保している量販店が大量の野菜を確保した上での販売が主流を占め、量販店の中には、独自のプライベート商品を企画・販売する動きが多くなっています。卸売市場では、せり取引が減少し、相対取引が増加する中で、量販店が出資した農業生産法人が野菜生産を行うといった動きも見られます。今後は、このような流通構造の変化に対応した施策を講じていくことが必要となっています。
野菜生産においても、他品目と同様に、農業従事者の減少や高齢化が進行しており、65歳以上の従事者が約4割に達しています。こういった状況の中で、最近では、猛暑や予想しづらい豪雨等の気象災害が多く発生していますが、担い手の減少によりきめ細かい排水対策等が実践されずに、産地での生産力の低下が見受けられます。このように国内産地の生産力が脆弱化する中で、それを補完するように野菜の輸入量が増加しつつあります。最近の野菜の輸入量をみると、平成23年は227万トンで、過去最高を記録した平成17年(252万トン)の水準に迫っています。
さらに、最近では、中国での野菜生産にあっては、GAPやトレーサビリティシステムの導入等により、安全性の確保に関しては、我が国の生産よりも高い意識で実施されているという声も加工食品メーカー等から聞こえてきます。
加工・業務用野菜の安定した供給経路を構築するためには、生産者側と食品メーカー等の実需者の抱える不安を払拭するシステムを構築することが必要です。
このためには、自らリスクを負い、実需者の多様なニーズに対応するよう、原材料を選別・調整・加工・保管する機能を有する者・組織として位置づけられる中間事業者の育成・確保が必要です。この中間事業者を介した安定した供給経路を構築する必要があります。
さらに、生産者側の意識を改革した上での産地体制の整備が必要です。言い換えれば、生産者側の「加工用はすそ物対策」という意識からの脱却や通年供給のために「産地間競争から産地間連携」といった意識の移行が必要です。このことを踏まえ、実需者側の定時・定量・定品質・定価格のニーズに対応できる生産体制を整備する必要があります。加工・業務用の生産には、低コスト・省力化生産が極めて重要であり、最近では、ほうれんそうやキャベツ等で実用開発されつつありますが、新技術を導入した機械化一貫体系の実現が急務となっています。
一方、野菜価格安定制度にあっては、野菜経営のセーフティネットとして運用されていますが、最近、加工・業務用のセーフティネットとしても充実すべきとの要請が強くなっています。特に、加工・業務用の契約取引価格は生鮮用に比較して安価な場合が多く、加工・業務用の生産に取り組もうとする場合に、生産者の不安を払拭できるセーフティネットが必要といった要請が多くなっています。これらの不安全てを払拭できるものではありませんが、平成25年度予算概算要求にあっては、加工・業務用野菜の出荷を拡大しようとする産地に対する保証の充実を図るため、生産者負担の軽減を図った上で、最低基準額の引き下げを可能とするよう要求をしているところです。
今後は、加工・業務用野菜の安定供給に資するよう、先進事例の調査や生産者・実需者側等の要請を十分踏まえて、どういったセーフティネットが良いのか検討していく必要があります。