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話題(野菜情報 2012年9月号)


特産の白ねぎ再生による地域農業振興への取り組み

鳥取西部農業協同組合
代表理事組合長 谷本 晴美

 鳥取県西部は、管内の高冷地と平坦地の標高差のある地形を生かしながら、優良品種の更新などで一年中出荷できる周年体制に取り組み、全国でも有数の白ねぎ産地として市場から高い評価を頂いている。管内では、鳥取県とともに白ねぎをメインにした料理を取り扱う飲食店やホテルなど30店舗を「白ねぎ料理の店」として認定し、県内外に白ねぎのPRを積極的に行っている。

 平成23年度は、山陰を襲った記録的豪雪や台風などの自然災害の影響もあり、管内産白ねぎの生産出荷実績は栽培面積244ヘクタールで、出荷数量200万1528ケース(1ケース3キロ)。近年は、生産者の高齢化や後継者不足、農業所得の減少や生産費用の高騰など農業全体を取り巻く環境は厳しさを増し、生産出荷量の減少、耕作放棄地の増加などが問題となっている。そのため農地流動化の促進や特産農作物の生産振興対策、担い手農家の育成・確保を総合的かつ一体的に取り組むことがJA(農業協同組合)として果たすべき大きな役割であった。

 鳥取県内には平成22年現在で、耕作放棄地が1431ヘクタール、JA鳥取西部管内でも802ヘクタールあると言われている。管内でも、特に白ねぎ栽培が盛んな弓浜地区における耕作放棄地の面積は354ヘクタールと大きく、同地区は農業機械が入れない区画整理が困難な場所に耕作放棄地がいくつも点在している状態であった。耕作放棄地は景観を損ねるだけでなく地域としても深刻な問題であった。

 JA鳥取西部は、耕作放棄地の解消および農地の流動化を図るべく、米子市と大山町から承認を受けた農地利用集積化事業実施団体として、平成23年5月10日に米子市夜見町に遊休農地対策センターを立ち上げ、行政などと連携しながら遊休農地の解消に取り組み始めた。事業年度途中からということもあり、必要な農機などが十分揃っているとはいえない状態からのスタートではあったが、同センターや営農センター職員の手によって地元農家から借り受けた、雑草が生い茂る耕作放棄地や遊休農地などを地元農家から借り受けたトラクターなどで開墾し、農作物が作付け可能な状態に回復させていった。

 JA鳥取西部では、同センターによって再生した中間保有地を活用し、坊主知らずねぎ苗の増殖に取り組んだ。坊主知らずねぎは、管内の白ねぎ出荷が品薄となる5月下旬から6月上旬に収穫が可能な品種。再生農地18アールに苗9000本を定植させ、2万4000本まで増殖させ、その苗は白ねぎ農家に提供した。優良ねぎ苗の提供は安定出荷につながり、産地の維持にも大きく貢献している。同センターでの平成23年度の活動では、そのほかに、農地所有者代理事業による農地の斡旋を405アール、売買など事業による農地の中間保有で甘藷を53アール栽培、農地の再生72アールを行った。

 また、JAが本腰を入れて遊休農地の解消に取り組んでいることが認知されるようになると、地域から「規模拡大のために再生した農地を貸してほしい」「作付けができなくなってあきらめていたがもう一度農業に取り組みたい」「定年を機に新しく農業を始めたいので農地を使わせてほしい」などの声が次第に出てくるようになり、地域農業活性化としての成果もあらわれ始めた。

 特産白ねぎのさらなる振興を図るため、JA鳥取西部では、平成24年を「白ねぎ再生元年」と位置づけ、5ヵ年の生産振興目標を策定し、生産力の向上や担い手の育成、農地の流動化を行政など関係機関と連携して取り組んでいる。平成28年には、管内産白ねぎの栽培面積を300ヘクタールまで拡大し、出荷数量254万1000ケース、新規就農者60人増加を目指す。

 弓浜地区では、行政の支援のもとモデル事業として今年の4月から3ヵ年の「弓浜農業・未来づくりプロジェクト事業」を展開している。平成24年度は、弓浜地区の3ヘクタールの「耕作放棄地の解消」を目指し、無トンネル栽培技術や緑肥との輪作、かん水による夏越し対策、坊主知らずねぎ優良苗の更新など「生産性の向上」、機械・設備の基盤整備や雇用受入れ農家などの確保、研修制度の充実など「新規就農者の確保」に取り組む。

 平成24年3月には、国の耕作放棄地再生利用緊急対策を活用して遊休農地対策センターにトラクターなど大型農機を導入、営農活動の範囲が飛躍的に広がった。同センターによる中間保有地を再生・活用し、新規就者の研修や規模拡大希望者への斡旋、新規導入品種の試験栽培などに取り組み、新規就農者および規模拡大農家の増加・定着による白ねぎなど特産物生産の維持・拡大、ブランド強化などを目指していく。

再生した農地に特産白ねぎの苗が植えられていく


プロフィール
谷本 晴美(たにもと はるみ)


 昭和25年鳥取県生まれ。昭和43年米子市農業協同組合へ入組。平成10年に鳥取西部農業協同組合共済部長、平成14年に営農部長を務める。平成19年に代表理事常務、平成20年より代表理事専務を経て、平成23年7月1日より代表理事組合長に就任。




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