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話題(野菜情報 2012年5月号)


「地域を元気にする6次産業化、その方向性」

農林水産省食料産業局産業連携課
課長補佐 大橋 聡

〈はじめに〉

 「6次産業化」という言葉が耳慣れないと感じていらっしゃる方もまだまだ多いのではないかと思います。この言葉はここ数年の間に農林水産業界に出てきたキーワードの一つであり、1次産業、2次産業、3次産業が融合・連携したさまざまな取り組みのことをいいますが、基本形としては、農業者が自ら加工や販売も手がけることにより農産物の付加価値を高め、所得を向上させていく取り組みのことをいいます。1と2と3は足し算でも6になりますが、1次産業が欠けてゼロになると成り立たないという意味で掛け算だといわれています。
 また、農山漁村には農林水産物はもとより、美味しい水や空気、美しい風景、バイオマス、自然エネルギーなどさまざまな資源が存在しています。これらの農山漁村の資源も生かした6次産業化により、1次産業が地域経済を活性化させる原動力となっていくことも期待されます。

〈六次産業化法に基づく事業計画の認定〉

 六次産業化法が平成23年3月に施行されて以来、さまざまな農林水産物を活用した事業計画が698件認定されていますが(24年2月末時点)、野菜を活用した事業の割合が33%と最も高くなっています。野菜のブランド化を図り付加価値を高めて直接販売する取り組みや、加工についてはパウダーやペースト、漬物、ジュース、ドレッシング、スイーツなど幅広い取り組みが見られます。規格外品や未利用部分を有効活用する加工品や、高品質な農産物を原料にしてプレミアム感を付加した加工品もありますが、いずれにしても「消費者ニーズを踏まえた売れる商品作り」が重要となってきます。

 6次産業化の推進に関して食品製造業者にアンケート調査を行ったところ、国内マーケットにおいて今後有望とされるのは、「地域ブランドのある農林水産物を原料に用いた加工食品」や「地域特産の農林水産物と高い加工技術が組み合わされた加工食品」、「健康増進のイメージ・効果がある加工食品」でした。また、海外マーケットで今後有望とされる商品特性、機能特性については、「高所得者層をターゲットとする日本食の高品質・健康イメージを生かした加工食品」とした回答が多く、このようなところに6次産業化事業者のビジネスチャンスがあると考えられます。

〈6次産業化の支援メニュー〉

 農林水産省では、6次産業化を推進させるための支援メニューとして大きく3つ、ソフト面とハード面の補助事業、そして新しい取り組みとしてファンドの創設があります。ソフト面では農業者の新商品開発や販路開拓に係る費用(資材購入費や成分分析検査費、パンレット作成費など)を支援します。ハード面では、法認定を受けた農業者が事業計画を推進するために必要な加工・販売のための機械・施設などの整備に係る費用を支援します。また、各地域で先導的に6次産業化に取り組む農業者(ボランタリー・プランナー)や、新商品開発や販路開拓に詳しいコンサルタント(6次産業化プランナー)などが、農業者からの相談に対応いたします。
 そしてファンドを創設し、出資という形で農業者への資金面を支援していくことを検討しています。ファンドは、農業者が加工業者や流通業者などの他産業と合弁で立ち上げた事業体に対し出資を行います。補助金だと対象施設や資金用途にさまざまな縛りがかかってくる面もあるのですが、出資金であれば柔軟に資金を活用することができます。また、農業者と2次、3次産業者がリスクを共有しながら共同の事業を手がけ、利益を同じように共有することで、事業者間のパートナーシップを強化することも期待されます。

 6次産業化の推進はまだ始まったばかりですが、地域発で地域資源を生かした地域が元気になる取り組みをたくさん生み出したいと考えております。


プロフィール
大橋 聡(おおはしさとし)


平成8年 農林水産省入省
  19年 JETRO上海センター農林水産部長
  22年 総合食料局食品産業企画課課長補佐
  23年から現職




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