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話題(野菜情報 2012年3月号)


トヨタ生産方式を活用した農業

農業生産法人 株式会社 TKF
代表取締役 木村 誠

 近年、農業の問題点はいろいろなところで取り上げられている。理由は簡単で、生業として成り立たたず、辞めていく農家が多いことに尽きる。一般的な農家は、土地を所有し、食べ物は自ら生産しており、生活していくことにはあまり困らない。早朝から夕暮れまで農作業をして、夕食を食べてから出荷作業、そこまでやってもサラリーマン一人分の手取りもとれるかどうかである。野菜の価格が見合わないのである。これからも離農者はますます増え、耕作放棄地は増えるばかりで、日本の自給率も下がっていくことは目に見えている。一方、農業をビジネスチャンスと捉え、農地、生産量を増やし、販売を伸ばしている農業生産法人も多くみられる。TKFはベビーリーフを主体に販売先と事前に数量と価格を決めてから作付けし出荷している。採算ベースの価格を維持するため、こだわりをもつ
商品として、有機栽培を選び14年間この農業という職を生業としてきている。しかしながら常に経営が安定しているわけではなく、どちらかというと苦しい時期の方が多いのが現状である。販売、農地、人、技術がバランス良く成長していれば言うことはないが、常に何かが足りない状況である。とくに安定した品質、出荷数量を維持し続けるのは、自然相手の農産物では難しいといわれている。その部分を安定することがすなわち経営も安定しているといえるであろう。
 TKFが目指すところはまず、農産物の生産で経営が成り立つことを第一に考えていることである。主体となるのはベビーリーフでそのほか、取引先から依頼されて栽培可能なものはできるかぎりチャレンジして、品目をひとつひとつ増やしていく方針である。有機栽培で差別化が図れる野菜が中心である。価格はなかなかこちらの希望通りにはいかないことが多いが、こちらの努力で利益を生み出すことも大事であると考えている。包材、段ボールなど少しでも安く入れられるように仕入れ先もいろいろと常に検討しているが、農業でもっともコストとなるのはやはり人件費である。この人件費をいかに削減するかが農業を事業として成り立つかどうかの分岐点である。TKFのこれまでは、夫婦2人でやりきれない規模になったところで収穫のパートを雇用し始め、さらに拡大するときには管理もできる社員の雇用をはじめた。社員雇用を始めた時はなかなか定着しなかったが、現在、社員の福利厚生が少しずつ充実するにつれて定着してきている。そのほかの取組としては地域循環型農業の実践および障害者の雇用、耕作放棄地の再生などにより農業を社会貢献と結びつけることを積極的に行っている。農業にやりがいを感じ、その働きに見合う待遇、そして社会貢献につながること、将来に向けて魅力ある業種であることを証明すべく会社を目指しているのがTKFである。会社として維持していくためには、当然のことながら利益を出し続けることである。
 私が農業を始めて8年目を迎えたときの平成18年から3年半の間、トヨタと勉強会を経験させていただいた。世界一の企業とも言えるトヨタからどんな指導を受けたか、それは決して難しいことではなく、ごく当たり前のことであった。そのほとんどが無駄とりとカイゼンである。普通経営者であれば自然と意識するところだが、トヨタはそれが徹底していた。出荷現場では、それまでパートがそれぞれ単独で行っていた作業をライン化することや、無駄なものの排除、在庫管理などを徹底的に指導していただいた。また生産現場では、ハウス内の作付けで畝間やハウスの空スペースにもっと種をまけないか、さらには空中を収穫物の移動に使えないかなど、これまで常識と思っていたことのカイゼンまでも指導を受けた。当時は指摘されたことすべてをすぐにカイゼンとはいかなかったが、それから現在まで、ひとつひとつカイゼンし、また今後もカイゼンを繰り返し、トヨタとの勉強会は現場でいかされ続けることであろう。


プロフィール
木村 誠(きむらまこと)

昭和41年5月
 東京都板橋区生まれ、その後埼玉県川口市で育つ
平成3年3月
 早稲田大学理工学部工業経営学科卒業
平成3年4月
 大原簿記学校公認会計士課
平成4年4月
 ㈱臨海セミナー入社(横浜市)
平成7年5月
 ㈲川田研究所入社(つくば市)
平成10年4月
 それまで2年半務めたつくば市の㈲川田研究所を退職し、
 新規就農 夫婦2人で木村農園開始
平成16年3月
 販売会社として有限会社TKF設立 生産は木村農園のまま継続
平成19年3月
 農業生産法人 株式会社TKFとして1本化
平成22年2月
 TKF第7期売上 3億円

就農の理由
 実家は歯車加工の自営業であったためか、学生のころからサラリーマンよりも将来的には自営業を目指し、専攻も工業経営学科で簿記学校にも通い経理の勉強に力を入れてきた。
 友人の父親でいわゆるミネラルの研究をしている会社に興味をもち入社し、経理から営業、すべて経験させてもらった。その会社の商品に農業用ミネラル液というものがあり、それをもって農家さんに出入りすることになった。農業の問題点、野菜作りの難しさ、楽しさを感じ、平成10年11月に農業を自営業としてやっていこうと決断した。

では、どんな農業をやっていくか・・・
 農薬と化学肥料を使わない農業を信念としてやっていこうと。




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