日本生活協同組合連合会
常務理事 飯村 彰
生協にとっての「産直」は、消費者と生産者との直接の結びつきの中で、食べ物を作り、豊かな食生活を築こうとするもので、その取り組みには、50年近い歴史があります。
今、私たちは、これまでになく「食」と「農」の在り方が問われる時代を迎えていますが、私たち生協は、長年にわたり築き上げた消費者と生産者との信頼関係に基づくこの「産直」を通じて「食」と「農」を考え、たゆまぬ努力を続けています。
その取り組みは幅広く、「品質保証」「産地交流」「地産地消」「共生支援」「環境保全」「食糧自給」の6つのテーマからなり、食のみならず、農業の在り方や自然環境の在り方など多方面にも影響を及ぼすものであると考えております。
以下に、6つのテーマに即して、生協における「産直」の取り組みを紹介します。
近年、流通システムが多層化・複雑化して、食べ物の安全性を確保することが難しくなっていますが、生協の産直では、生産者および流通事業者と一緒に取り組んできたノウハウの蓄積をもとに、確かな商品づくりに取り組んでいます。
具体的には、日本生協連・産直事業委員会の場で開発・改善を進めて来た「農産物品質保証システム」を活用した点検活動も徐々に拡大し、「適正農業規範」による点検活動を実施している生協(事業連合を含む)の数は、2007年度では、コープネット事業連合やコープ九州事業連合をはじめ11生協で、約780産地となっています。
生協産直は、生協組合員と生産者が直接交流できる場を多種多様なかたちで設け、生産者と生協組合員の相互の理解を促進しています。生協組合員が、産地を訪問するイベントや生産者が生協を訪問する交流会だけでなく、生協職員の産直産地での研修も進められています。
また、パルシステム神奈川ゆめコープの「田んぼの学校、畑の学校」の開設や、いわて生協の「ポラン農業小学校」の開設なども展開されていて、子供たちが農業体験を通して、食と農の大切さを学習しています。
多くの生協において、地域内における食と農の循環をつくる試みが進められています。
みやぎ生協では、産直提携先のJAみどりで生産する小麦「ゆきちから」を使った生麺や乾麺を組合員に供給しています。福島県生協連では、県内の生産者(JA)やメーカーと提携して「大豆の会」を立ち上げ、福島県内で収穫された大豆を原料とした納豆、味噌、醤油などの商品を開発し、県内の生協組合員に供給しています。
そのほかにも、地場ブランドをつくるさまざまな取り組みも行われており、多様な地場商品の開発と供給促進活動が進められています。
生協産直は、生産者と共に進むことを基本とし、励まし合い、問題が生じたら一緒に解決策を考え、ときには買い支え、ときには募金を贈ってきました。
がんばっている北海道の生産者を応援しようと、2004年にスタートした「コープさっぽろ農業賞」では、応募者の生産物を積極的に扱っています。
消費者は、農産物生産の過程で使われる農薬や過剰な肥料投与による環境への負荷に対して大きな関心を寄せています。
生協産直は、環境保全型農業を推進する生産地と連携を深め、有機・特別栽培の米や青果物を積極的に扱ってきました。2007年度の生協全体の供給実績は、JAS有機米5.9億円、JAS有機青果21.1億円、特栽米237億円、特栽青果230億円でした。
飼料用米の取り組みは、水田活用によって耕作放棄対策に資すると同時に、飼料自給率および食料自給率の向上にも貢献します。
飼料用米を養豚に使う取り組みの先進事例に、生活クラブ連合会・JA庄内みどり・平田牧場が連携して開発した「こめ育ち豚」があります。パルシステム連合会も、ポークランドグループと提携して「日本のこめ豚」を供給しています。「こめたまご」の商品開発もコープネット事業連合、東都生協、京都生協など、各地の生協で始まっています。
また、京都生協では、鳥取県畜産農協と提携して、飼料用稲とエコフィードを組み合わせた飼料を与えて生産した牛肉を2001年から扱っています。
私たち生協は、「自立した市民の協同の力で 人間らしいくらしの創造と 持続可能な社会の実現」を21世紀の理念に掲げ、これからの社会の変化に対応していくこととしています。食においては、消費者が協同の力で、安全・安心な食品を求め続けることが、持続可能な農業による食品の供給および豊かな食生活の実現へとつながるのではないかと考えており、今後とも、全国の生協が一丸となり、豊かな食生活や社会の実現に向けて活動してまいります。