全国農業協同組合連合会長野県本部
生産販売部長 寺沢 寿男
〈はじめに〉
現在、本県には10品目、14種別、46産地の野菜指定産地があり、対象野菜の計画的な生産と出荷に努めています。しかし、これらを中心に本県野菜生産の現場を見る時、葉洋菜類への作付け偏重、天候の影響による不安定な作柄、連作障害、労働力不足や担い手の高齢化の他、輸入野菜等の増加に伴う競合の激化など数多くの課題点も浮かび上がってきています。
このような中で、今後も総合的な野菜供給産地としての役割と責任を果たし、全国に向けて新鮮で安全な野菜を安定供給し続けるため、私ども長野県JAグループには多くの対応が迫られています。特に生産面においては、(1)野菜需要を見据えた地域別・時期別適正生産の推進(2)多様化する顧客ニーズに対応した、総合品目供給産地作り(3)安全・安心で環境にやさしい野菜の生産(4)競争力のある産地作り(5)気象変動に負けない高品質野菜の生産と安定供給体制の強化を図り、輸入野菜等との競合に打ち勝てる強い産地作りが急がれます。中でも、担い手を重視した国の施策への対応と、課題の多い輸入野菜よりも安全な国産野菜を求める声への対策は、長野県のみならず、全国の産地で急ぐべき重要課題となっています。
〈信頼に応える産地づくりを目指して〉
最近、テレビ・新聞等で輸入農産物や輸入食品の事故や問題点を扱った報道を目にする機会が増えています。このことから農産物の安全に対する消費者の皆さんからの高い関心が伺えます。こうした報道と並行し、販売の現場でも国産野菜を要望する声が高まっています。これを国産野菜にとっての「追い風」、とする意見も多く聞かれます。確かに国産野菜にとっては、価格以外の面で商品価値が見直されてきていることは歓迎すべきことです。しかしその一方で、国産野菜にはこれまで以上に安心・安全に関して高い信頼度が求められてきており、産地・生産者にかかる負担も多大になってきています。
長野県JAグループでは安心・安全・高品質を生産・販売の柱として、産地の「顔が見える取引」に努めてきました。私達は今後もこの考え方を基本として生産販売に取り組んでいきますが、さらに高いレベルで求められている、安心・安全にかかわる産地信頼度の向上に関しては、組織としての体制を強化して個々の生産者の負担軽減と全体的な信頼度の向上を図っています。
〈長野県JAグループの取り組み〉
〈消費地・産地双方でさらなる協力を〉
昨年施行されたポジティブリスト制度及び今後導入が進められるGAPに係る産地側の取り組みについて、一般消費者の皆さんを始め、流通関係者の皆さんにも広く実態を理解いただきながら、安心・安全な野菜の供給体制づくりに向けた協力関係を築いて参りたいと考えています。「ポジティブリスト制度に違反しないこと」が野菜の安心・安全の根拠ではなく、前述のとおり生産から流通まで「制度を高い信頼度で守れる体制があること」が、安心・安全の根拠につながっていると考えるからです。
安心・安全対策に限らず、担い手を重視した国の新制度の施行に見るように、現在国内産地には各々の状況に応じ、産地自らの責任において努力することが求められています。私ども産地でも、こうした動きの中で長野県JAグループに求められている役割と責任について、今後もパートナーシップを築いていただける関係者の皆様と共に、確実に果たして参りたいと思います。