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漬物の需要拡大に向けて



全日本漬物協同組合連合会
専務理事 長友 冨士男


1.最近の漬物の需要動向
 総務省「家計調査」によると、近年の漬物の需要動向は、個別品目(「梅干し」、「だいこん」、「はくさい漬」)の購入数量、購入金額ともに減少し、漬物全体の購入金額も着実に減少傾向を続けており、特に最近年は著しく落ち込んでいます。

 また、漬物の品目別生産動向を示す「漬物の生産量統計=食品産業総合動態基本調査」(社団法人食品需給研究センター)では、漬物の代表とされる「たくあん」が長期低落傾向を示し、最近はそれに代わって浅漬タイプや「キムチ」が大きく増加しています。

 「たくあん」の長期低落の要因は、(1)浅漬類を中心に漬物のバラエティーが増加したこと、(2)たくあんと相性の良い米(ごはん)の消費量の減少に歯止めがかからないこと、(3)販売単位(一本売りや半本売り)が消費家計の家族構成にマッチしていない、等の理由が想定されます。

 「キムチ」の増加については、辛味食品のブームの中で、家庭における消費増も要因でしょうが、鍋料理、トッピング、焼肉店等の外食産業の需要が全体の増加を大きく押し上げたとされています。

 最近の特徴として、健康というキーワードの下に最も安定的な品目とされていた梅干し(梅漬け)、酢漬けのらっきょう、しょうがが、ここにきて生産量が大きく減少しており、全ての漬物が消費低迷の中で、苦しんでいる状況であるといえます。

 一方、このような中で塩蔵原料や製品輸入の状況をみると、塩蔵原料全体では、最近年、若干減少傾向にあります。他方で、製品輸入(通関コードが特掲(細分)されていないため数量は明確でない)については、最近年の国内量販店等の過剰ともいえる低価格競争の進行が、製品輸入を増加させているといわれています。

2.漬物の需要拡大に向けた課題とその対応方向
 前述のように、現在の漬物業界は、消費の低迷と利益計上ができないほどの過剰な低価格競争に苦しんでいますが、業界のリーダーからは、反省も含めて次のようなことが提言されています。

○ 本来の低価格競争は、需要を喚起し、量を拡大させる(パイを大きくする)効果を生み出すものであるが、最近年の商品の飽和状態の中では、量を拡大させる効果は期待できないというのが、業界としての実感である。どこまで我慢できるかの体力競争をしているようなものであろう。

○ 過剰な低価格競争は、品質を低下させる結果となり、そのことが消費者の消費離れを起こさせるという悪循環に陥っている側面もあるのではないか。
  いずれにしても、このような状況から早く脱却し、漬物本来の原料や製造技術へのコダワリを基にした製品作りを進め、本来の品質競争の時代に入ることが極めて重要である。

○ また、同業者間のシェアーの取り合いではなく、他業種(例えば菓子業界、総菜業界等)とのシェアー競争を目指すべきであること。
  もちろん、この提言が課題の全てではなく、他にも需要拡大に向けた課題は他にも多々あると考えられます。例示的に示すと次のようなものが掲げられます。

○ 漬物への理解を深めてもらう。
  生活習慣病が大きく取り上げられる中で、医者や栄養士等からは塩分の取りすぎへの注意がなされますが、その標的に挙げられる代表が漬物ということです。
  しかしながら漬物業界は早い時期から漬物の低塩化に取り組み、現在の漬物は梅干、梅漬けの10%程度の塩分という例を除けば、殆どの漬物が2~3%の塩分であることの理解がされていません。この誤解を解くことは業界としての大きな課題です。

○ 改めて漬物の価値が問われている。
  漬物は野菜や果実を美味しく食べるための加工技術の一つでありますが、従来から加工技術そのものに特化しがちで、漬物という食べ物についてのアピールは十分でなかったという反省があります。
  そこで「漬物とは?」のキャッチコピーを例示してみます。

 * 「塩と酢」は、野菜や果実の旨さを最大限に引き出す力があるとされています。だから、「塩と酢」を上手に活用した漬物は旨いのです。また、野菜等を丸ごと利用しますから、野菜の栄養素が生きています。
 * さらに、発酵の工程を経ることによって、風味豊かで、栄養的にも優れた食品となります。改めて発酵は漬物のキーワードといえます。
 * 野菜をたくさん食べることが提唱されています。漬物は野菜の嵩(かさ)を小さくし、たくさん食べるための加工技術ともいえます。
 * 漬物は、その原材料を通じて、古くから地域農業に密接に結びつき、また季節感豊かな食文化として、地域に深く密着しています。

 最後に漬物原料の対応動向についてですが、原料原産地表示の義務化は、一方で国内産原料への回帰を促すことにもなり、特に国内産原料使用イメージの強い製品では、その強化が図られました。また、原料や製造方法へのコダワリをもつことによって製品の差別化を図ることが、今後の漬物業界の一つの大きな方向性であるとされています。当然、国産原料への志向は最も大きな課題です。特に浅漬原料は、原料問題が最大の関心事で、漬物業界は歴史的に早くから契約栽培や契約取引を推進した業種でありますので、契約取引の重要性は十分理解しています。

 現在、直面している課題は、新たな産地づくりと契約取引の中での気象の影響による原料の不作時の対応です。特に、漬物全体の3割以上を占める浅漬の原料は、卸売市場へ出荷されるものと漬物原料が同一(品種)であることから、不作時には市場への出荷が中心となってしまうという問題があります。

 いずれにしても、漬物原料の産地づくりに、あるいは、安定した原料供給につながる制度的枠組みづくりに産地側やそれを支援する行政側に大きな理解を得たいと考えています。話合いの場の必要性も痛感していて、これらを是非とも具体化したいと考えています。




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