１．野菜の品種登録の出願件数
　昭和53年に種苗法が制定され27年が経過、平成16年度末では、出願総数が18,203点、登録点数が13,185点、近年の年間出願点数は1,000点を超えており、制度が完熟しつつあります。

　野菜の出願数はこれまで1,230件、全出願数に対する割合は７％です。グラフは品種登録出願件数の推移を示しています。他の園芸作物に比べて多くありません。主に、いちご等の栄養繁殖野菜、えだまめ等の自家受精野菜の出願がほとんどです。F１品種が主流の多くの野菜は、親品種を自身で管理することで品種の権利を守ることができることから、品種登録せずに流通している実態があるからです。近年は全出願数の４％台で推移しています。

　出願者別では、後述する登録状況でも分かりますように、他の作物に比べ、都道府県の出願に占める割合の大きいことが特徴です。

図１　品種登録出願件数の推移

２．近年の野菜の登録品種の特徴

　平成16年４月から17年11月までの野菜の登録公表品種をみると、品目では、とくに、いちご、トマトが多く、次いでメロン、レタスが多かったことが特徴としてあげられます。

　主な野菜の登録公表品種は、次のとおりです。

　いちごは、20品種登録公表しました。登録数が最も多い野菜で、半数以上が四季成り性品種で、四季成り品種の育種が盛んになってきました。スーパーの店頭でカリフォルニアいちごを見かけるようなりましたが、種苗の世界でもアメリカの品種が出現してきました。

　トマトは、いちごの次に多く17品種で、そのうち、10品種が生食用、４品種が加工用、２品種が台木用、１品種が中間母本です。７品種がカゴメ（株）からの出願で、うち「ＫＧＭ991」等５品種は果皮が薄い新しいタイプのトマトです。「あばれん坊」、「華の鈴」等３品種は栄養繁殖性品種です。

　メロンは、いちご、トマトに次いで多く、９品種で「オベロン」以外は道・県の育成品種です。北海道は、６品種の耐病性品種を登録しています。

　レタスは、７品種で登録品種は全てクリスプタイプです。

　すいかは、３品種とも独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構で育種した小玉すいかで、輸送性に注目して育成した品種です。

　かぶは、２品種で、地域特産野菜ということもあり地域性に根付いた特性があります。

　だいこんは３品種で、３品種とも辛みだいこんで、ここ近年の辛みだいこんの人気に応じたものがでてきているということでしょう。「カザフ辛み」は外国からの導入品種を改良したもの、他の２品種は在来品種を改良したものです。

　平成16年４月以降現在までの野菜の出願状況を見てみますと、上述の野菜以外に、からしな、在来なたね、さといも、ねぎ、ふき、うど、えんどう、しょうが、西洋わさび、たまねぎ、たらのき、にら、にんじん、はくらん、ほおずき、わけぎの16種類が出願されており、多種多様となっています。
　
３．育成者の権利の拡大
　法律的に規制法であった種苗法が平成10年に権利法に改正され、名実ともに知的財産権を守る法律に改正されました。これまでの間、育成者権の拡大が順次図られ、対象植物範囲の拡大（467種類→全植物）、仮保護制度の導入、権利保護期間の拡大（15年→20年→25年、永年作物にあっては18年→25年→30年）、違法植物体の輸入禁止措置の確立、加工品への権利拡大等が行われました。これからも育成者権は強化・拡大されていくと考えられます。

　多様な特性を持つ品種が、各国で育成されています。

　育成者の汗の結晶であるこれらの品種を、生産者がその特性を活かして栽培を行い、そしてその収穫物が食生活を豊かにすることを期待しています。

　登録品種の利用にあたっては、種苗法を遵守しましょう。

　さらに詳しく知りたい方は、農林水産省のホームページの「生産：品種登録情報　http://www.hinshu.maff.go.jp/」をご覧下さい。



主な品種ごとの登録公表品種