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今月の話題


おいしさ考

農畜産業振興機構 総括理事 米田 実


1 グルメブームといわれて久しい。「おいしいもの」がもてはやされ、こだわり食品、こだわり料理ばやりである。毎日のようにテレビでも「おいしい店」、「おいしい料理」が紹介され、料理人の社会的地位の向上にも目を見張るものがある。日本中の、いや世界中の料理人がおいしいものを提供すべく日々努力している。

2 それにしても印象に残る料理のなんと少ないことか。誤解をおそれずに申し上げれば、「おいしいもの」を作ろうとして、結果的に、「まずくないもの」が作り出されていると思うことがあるのは、果たして私だけだろうか。

3 逆の例を紹介したい。私の郷里の三重県には伊勢うどんなるものがある。ご承知の方もいらっしゃるかと思うが、私なりに特徴をいうと、コシがあってはいけない、色はうす黄色が基本、つまり、白ければ白いほどいいというものではない、タレはヒシオで黒く、甘辛い、要するに、近年世間を風靡している讃岐うどんの対極にある食品である。もちろん人によって好き嫌いが分かれる食品であるが、熱狂的ファンがいるのも事実である。思えば、世界3大珍味といわれるキャビア、フォアグラ、トリュフのいずれも相当に癖がある、いや、特徴のあるものである。

4 眼を野菜に転じてみると、

(1) 私が子供の頃、水菜はもっぱら漬物用であった。それが、しゃぶしゃぶとの相性の良さを売りにして、短期間のうちに全国区の食品になり、今や、サラダ用としても特徴付けが行われている。

(2)大阪土産ナンバー1の地位がたこ焼きから水ナスに変わったとのことである。漬物用、サラダ用に特化した、あるいは特徴付けした販売戦略の成功例であろう。

5 『「おいしさ」とは言挙げするものではなく、味わって決めるもの、個人的なもので共通項はない。』との意見もあろう。確かに「おいしさ」とは曰く言い難いものであろうが、「おいしさ」を追求する関係者各位の努力が、「まずくないもの」つくりに向かうことなく、「特徴あるもの」つくりに向かっていただければ、少なくとも私の食への満足度は高まることであろう。



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