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緊急野菜供給対策の実施について

独立行政法人農畜産業振興機構
野菜業務第一部 調整課長 佐々木 昇
野菜業務第二部 契約取引推進課長 当銘 守兼


 野菜は、生育期間が短く気象条件の影響により作柄や作期が変動しやすいことや、長期保存ができないことなどから、短期間で供給量や価格が大幅に変動するという特性を有しています。

 特に本年は、相次ぐ台風の襲来、産地の切り替わる10月に入ってからの長雨、日照不足等の影響により、野菜の供給量が不足し、価格が大きく上昇し、レタスなど一部の葉もの野菜については中~下旬にかけて価格が平年の5~6倍と高騰しました。10月の末からは天候の回復とともに出荷量は増加しており、価格は全体的には低下してきていますが、依然高い水準にあり、国民の消費生活に大きな影響を及ぼしています。

 また、このような価格の高騰に対応し、レタスでは10月第4週の輸入量(植物検疫の検査数量)が678トンとなるなど、一部の野菜では輸入量が増加しています。

 このような中で、農林水産省では、農林水産省災害対策本部に「緊急野菜供給対策プロジェクトチーム」(参考1)を設置するとともに、早取りなどの出荷の前倒し、軟弱野菜や不揃い品の出荷の促進などを図るため緊急野菜供給対策(参考2)を実施することとし、農畜産業振興機構においては、その一環として、軟弱野菜や不揃い品の出荷を行った生産者に対する出荷奨励金の交付事業(平成16年度冬期野菜供給確保需給調整奨励金助成事業)を11月1日から12月31日までの間に出荷されたものを対象として実施しております。

 また、当機構としても、農林水産省との連携を強化し、機構の行う関係業務の円滑な推進を図るため、「緊急野菜供給対策本部」(参考3)を設置するとともに、機構のホームページで野菜の価格情報や関係事業の実施内容などの情報提供を行っております。

 以下、これらの対策の概要(平成16年11月15日現在)を紹介します。

1 緊急野菜供給対策の概要

(1)早取り等出荷の前倒しの実施(生産出荷団体緊急需給調整事業)

 重要野菜(冬キャベツ、秋冬はくさい、秋冬だいこんなど)について、価格動向、生育状況などを勘案しつつ、生産者団体等による早取りなどにより出荷の前倒しを行います。

 具体的には、出荷する各対象市場群における指標市場(関東ブロックでは大田市場)の卸売価格が指定野菜価格安定制度の平均価格の150%以上になった場合に、全農などが出荷の前倒しなどを行って出荷量を増大させるものであり、出荷の前倒しに伴う品質低下(重量減)による損失分を補てんします(表-1参照)。

○表-1 対象品目及び交付金の単価
(単位:円/kg)

(2)軟弱野菜等の生育促進による出荷量の確保(平成16年度冬期野菜供給確保需給調整事業のうち軟弱野菜等生産出荷促進事業)

 短期間で出荷が可能となる軟弱野菜など(ほうれんそう、こまつな、しゅんぎく、きゅうり)について、ビニールの被覆、通常よりも高めのハウス温度管理などを行い、生育・着果の促進を図ることにより、当初計画を上回って大消費地域(京浜、中京、京阪神)の対象市場に出荷した生産者に奨励金を交付します(図-1参照)。

○図-1

(3)並級品(不揃い品)の出荷促進(平成16年度冬期野菜供給確保需給調整事業のうち並級野菜出荷促進事業)

 曲がったきゅうり、小玉のキャベツなどの通常では出荷されない並級(不揃いなど)野菜の出荷を奨励するため、並級野菜を大消費地域(京浜、中京、京阪神)の対象市場に出荷した生産者に奨励金を交付します(図-2参照)。

○図-2

2 機構の行う事業の実施手順

 機構では、「軟弱野菜等生産出荷促進事業」および「並級野菜出荷促進事業」を実施していますが、これらの事業の実施手順は、次のとおりです(図-3参照)。

○図-3 野菜供給確保需給調整奨励金助成事業フロー図(概略図)

(1) 出荷団体等は、「平成16年度冬期野菜供給確保需給調整事業の実施について(平成16年10月26日付け農林水産省生産局長通知)」の第3の3又は第4の3に基づき出荷計画を作成し、農林水産省生産局長の承認を受けた後に、「平成16年度冬期野菜供給確保需給調整奨励金助成事業実施要領(平成16年10月26日付け16農畜機第3206号制定)」に基づき、機構に奨励金の交付申請を行います。

(2) 機構は、申請内容を審査のうえ適正と認めた場合は、交付決定を行い出荷団体等に通知します。なお、計画内容に変更が生じる場合は、変更申請が必要となります。

(3) 出荷団体等は、対象出荷期間終了後出荷実績を取りまとめ、地方農政局長の認定を受けた後に、機構に対し奨励金の概算払請求を行います。その際、軟弱野菜等生産出荷促進事業については、出荷数量の増加を図るための対策を計画どおり実施した旨の文書の添付が必要です。

(4) 機構は、申請内容を審査のうえ適正と認めた場合は、奨励金を交付します。

(5) 出荷団体等は、対象野菜の生産者に対し、速やかに奨励金を交付し、実績報告書を機構に提出します。

(6) 機構は、実績報告書に基づき額を確定し、出荷団体等に通知します。

3 機構の行う情報提供

 機構は、緊急野菜供給対策の実施についての生産者向けの案内チラシを急きょ作成し、出荷団体等に配布した他、ホームページで

(1) 緊急野菜供給対策の概要、平成16年度冬期野菜供給確保需給調整事業の内容、手続などについての説明を掲載するとともに、

(2) 価格・入荷量(主要市場の指定野菜に係る価格・入荷量日別データ)

(3) 輸入数量(主要野菜の週別輸入検査数量(植物検査検疫統計データ))

などの情報を提供しています。

 これらの情報は、機構ホームページのトップページにある「野菜の情報」のページから直接アクセスできるようにしています。

 機構のホームページ(アドレスhttp://www.alic.go.jp/)のトップページ及び「野菜の情報」ページをご覧ください。

 

(参考1)緊急野菜供給対策プロジェクトチームの設置について

農林水産省

1 趣旨

 相次ぐ台風、10月上旬からの長雨等の影響から野菜の価格が高騰し消費者の家計に大きな影響を及ぼしており、今後の野菜の安定供給を確保し、価格の安定を的確に図る観点から、農林水産省災害対策本部に緊急野菜供給対策プロジェクトチーム(以下「プロジェクトチーム」という。)を設置する。

2 構成 

(1)プロジェクトチームは主査及びメンバーをもって構成する。

(2)主査には生産局長、副主査には大臣官房政策評価審議官(兼経営局)、大臣官房審議官(兼総合食料局、環境・兼生産局)を充てる。

(3)メンバーには下記に掲げる者をもって充てる。(ただし、メンバーについては、必要に応じて適宜追加できるものとする。)

  大臣官房   地方課長

  統計部  消費統計室長

  総合食料局  流通課長

  消費・安全局 消費・安全政策課長、表示・規格課長、

         農産安全管理課長、植物防疫課長、消費者情報官

  生産局    農産振興課長

         野菜課長(事務局)

  経営局    経営政策課災害総合対策官、普及課長

  農村振興局  設計課長

 

3 主な取り組み事項

(1)国民への情報提供等

 ・野菜の生育状況、輸入の状況、入荷量・価格の見込み

 ・市場、小売店頭の価格情報

 ・消費者・消費者団体への情報提供、相談窓口の開設 等

(2)関係者への要請等

 ・市場、小売店への安定販売の要請

 ・生産者団体等への集出荷努力の要請

 ・技術指導 等

(3)緊急供給対策

 ・早取り等の出荷の前倒しの促進

 ・軟弱野菜(こまつな、ほうれんそう等)の出荷促進

 ・並級野菜(不揃い野菜)の出荷促進 等

(4)その他

 ・ほ場の緊急排水の推進(排水ポンプの貸し出し等) 等

 

(参考2)緊急野菜供給対策について 

農林水産省

I 対策の趣旨 

 相次ぐ台風、10月に入ってからの長雨等不順な天候により野菜生産に全国的な影響が生じており、今後の野菜の安定供給を確保し、価格を安定させることが国民消費生活の観点から喫緊の課題となっている。このため、野菜の供給確保をはじめとする対策を緊急に講じる。

II 対策の概要

 1 野菜の緊急的な供給確保

  (1) 早取り等出荷の前倒しの実施

 キャベツ、はくさい等について、価格動向、生育状況等を勘案しつつ、生産者団体等による早取り等により出荷の前倒しを実施

  (2) ほうれんそう等の生育期間の短い野菜の生産促進

 軟弱野菜等(ほうれんそう、こまつな、しゅんぎく、きゅうり)について、ビニールの被覆、通常よりも高めのハウス温度管理等を行い、生育・着果の促進を図ることにより、出荷量を増加させた生産者に対して奨励金を交付

  (3) 並級野菜(不揃い野菜)の出荷促進

 曲がったきゅうり、小玉のキャベツ等の通常では出荷されない野菜の出荷を奨励するため、こうした並級野菜を出荷した生産者に対して奨励金を交付

 2 生産出荷団体等に対する出荷の確保要請

 生産出荷団体及び主要生産県に対し、各種会議の開催、担当官の主産地への派遣等を通じて、出荷量の確保等を指導・要請

 3 消費者等への情報提供

   価格動向、輸入状況、産地の生育状況等について、情報の提供

 

(参考3)

平成16年10月25日

農畜産業振興機構緊急野菜供給対策本部の設置について

独立行政法人農畜産業振興機構



1 目的

 相次ぐ台風、10月上旬からの長雨等の影響による野菜価格の高騰等に対応し、緊急に野菜の安定供給を確保するため、農林水産省等関係機関との連携を強化し、農畜産業振興機構の行う業務の円滑な推進に資するとともに、機構の対応体制を強化するため、当機構内に対策本部を設置する。

2 対策本部の構成

本部長     伊藤総括理事

本部長代理   和田理事

本部員     中山総括調整役

        戸谷総括調整役

        出田審査役

        関係部長(調査情報部長、野菜業務第1部長、野菜業務第2部長)

対策本部には、理事長、副理事長はじめ、幹部会メンバーが出席できるものとする。

1 実施の内容

(1)野菜供給確保需給調整事業の円滑な実施

(2)野菜の価格・需給動向、産地の状況等の情報の迅速な収集・提供

(3)緊急野菜供給確保対策関連の情報の提供

(4)農林水産省が講じる緊急野菜供給確保対策への協力

(5)その他

2 事務局

   事務局は、野菜業務第1部調整課に置く。

 



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