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ベジフルセブン 青果物健康推進委員会の取組み

青果物健康推進委員会
事務局長  近 藤 卓 志


1.青果物健康推進委員会設立の背景

 日本人の野菜摂取量が減少傾向にあることは、周知の事実。これは流行のような短期的なことではなく、習慣そのものが変化してきているのである。そのこと事態はたいしたことではないのだが、この結果、国民の健康生活に少なからず影響がでているから「日本人の野菜摂取不足」は重要なテーマと捉えられている。

 50年前の病気で恐れられていたものに結核がある。しかし、現代では結核で亡くなる人は少ない。国民全般に栄養が行き届いた食生活が実現しており、抵抗力がついたからだ。しかし、その反面、栄養を取りすぎることによる弊害が指摘されている。それが、生活習慣病である。がん、脳血管疾患、心疾患は三大生活習慣病と言われ、日本人10人のうち6人がこの病気で命を落としている。その根本原因のひとつが食生活である。特に、野菜不足は生活習慣病の発症に大きく影響している。(図1、2)

 このような現状をなんとか改善しようと設立されたのが青果物健康推進委員会である。委員会の会員には、全国農業協同組合の各県連、卸売市場の青果卸会社、大手から中小のスーパー、食品メーカーなど、青果物に関係する団体が横断的に参加している。つまり、「青果業界が一致団結をして、日本国民の健康生活に寄与しよう」と設立された非営利の団体である。

図1 生活習慣病患者数の推移



図2 肥満者(BMI≧25)の割合(男)の推移



2.青果物健康推進委員会の啓発活動とは?

 目的は、野菜の摂取量を増加させること。そのために、国民を主役とした運動を展開し、野菜の健康効果や楽しさ、美味しさについて情報提供などの事業を全国で行っている。

 これまで、役所や自治体などでも同様な取組みが行われてきた。例えば、「野菜を350グラム食べましょう」という運動も然りだ。しかし、このような役所的啓発の効果には疑問がある。なぜなら、「1日350グラム」と言うけれど、「誰が朝から食べている野菜の量を量っている人がいるか?」ということだ。まったく現実的ではない。だから、あまり効果がなかったのだろう。

 青果物健康推進委員会では、より効果的な啓発活動を推進している。その1つは、350グラムという量をスコア化していることだ。野菜現物の重さよりも、食べる人が食べる量を把握していることが肝心だ。そのため、量を5スコアに換算している。しかも、グラムのように細かい数字を気にすることはないのである。「おおよそ」で換算すればよい。

3.ベジフルセブンとは?

 青果物健康推進委員会が進める啓発のキャッチフレーズは「ベジフルセブン」。これは「毎日野菜を5皿分、果物を2皿分食べよう」という意味の造語だ。ベジはベジタブル(野菜)、フルはフルーツ(果実)で、それを毎日7スコア以上食べましょうという呼びかけだ。食べる人の視点で考え、細かいことにこだわらないところがポイントだ。目的は野菜の摂取量を昨日より今日、今日より明日、少しでも伸ばそうというもので、習慣化させることだ。それには、楽しみながら実践できることが必要である。(図3)

 もう少し詳しく述べると、野菜1スコアの量は、生換算で約70グラム程度とされている。70グラム×5皿分(スコア)=350グラムとなるのだが、それはあまり重要なことではない。この70グラムというのは、国民栄養調査からはじき出した数字で、現在、日本人が副菜として食べている野菜料理の平均重量がおおよそ70グラム程度であるため、野菜の基本単位となった。

4.啓発活動のポイント

 啓発活動のポイントの2つ目は、国民主役の啓発活動を心がけている点だ。委員会の会長はテレビなどでお馴染みの料理記者 岸朝子さんである。また、イメージキャラクターには、野菜のソムリエの資格を持つトップモデルの長谷川理恵さん。国民の誰もが知っている方々の協力で、できる限り多くの人たちにこの運動を認知してもらい、効果的な運動になることを目指している。

 運動を進めるうえで、マーケティング的要素も忘れていない。とくに、ターゲットの絞込みがとても重要である。野菜の摂取状況については、一番の食べ盛りがなんと、60歳代なのである。次いで50歳代、70歳代となる。通常、食べ盛りというのは、20歳代ないしは10歳代後半である。しかし、こと野菜に関しては50歳代~70歳代なのである。この世代の特長としては、「健康に気を使う」世代であることが挙げられる。テレビや雑誌の健康情報が大好きな世代でもある(もちろん個人差はあるが…)。テレビで「ニンニクは血液サラサラ」と放映すると、夕方にはスーパーの棚からニンニクを買っていく人の中にこの世代が多いのではないか。ということは、単に「野菜は健康に良いですよ」と啓発すると、この世代へのアナウンスとなってしまうのだ。啓発運動であるため、啓発する世代は「食べていない世代」でなくてはならない。それは、20歳代~40歳代だ。ところが、この世代に『健康』と言ってもあまりピンとこないのである。

 この世代に対しては、健康も良いが、プラス「美容」や「美味しさ」「楽しさ」をアピールする必要がある。委員会では、健康情報のみらず、美味しい野菜のポイントや旬、新鮮な野菜の見分け方、あるいは美味しい料理の紹介などにも力を入れている。例えば、委員会が開設しているホームページ(www.vf7.jp)には、常時400種類の野菜料理が掲載されている。

5.これまでの活動

 次に、青果物健康推進委員会がこれまでの実施してきた活動のいくつかを紹介する。

(1)消費者セミナー

 全国数箇所で一般の消費者を対象としたセミナーを開催している。これは、単独での開催ではなく、各地区の農政局や県、市、業界団体などと提携して実施してきた。兵庫県では、県、全中、全農、市場などと連携し、2000人規模のセミナーイベントを開催。漫才師の大助&花子らをゲストに迎え、楽しいイベントを開催した。宮城県では、東北農政局との共催によりシンポジウムを開催。岸朝子会長の講演のほか、歌手の早見優さんをゲストに迎えて意見交換をした。

(2)店頭告知活動

 委員会の会員のうち量販店の店舗数は約2000店舗を越える。そのうちの1500店でポスター、POPなどの貼付やテーマソングを流した啓発活動を実施した。中には試食なども行ったほか、野菜のパッケージにスコア表示をした商品を並べていた店舗もあった。

(3)ベジフルギャラリーの開催

 丸の内付近のOLや、サラリーマンを対象に、ギャラリーの開催も行なった。丸ビルに隣接するビルの1階に野菜・果物を並べたミュージアムを開催。訪れる人たちにベジフルセブンについて説明したほか、野菜を手に取り選び方などの情報を提供した。開催は3ヶ月間で、延べ3万人が来場した。

(4)小学校で食育授業の実施

 小学校5年生を対象とした食育の授業を全国各地で実施。委員会では、授業のためのマニュアルやゲームなど様々なツールなどを作成しており、小学校に委員会から講師(ベジフルティチャー)を派遣し、授業を実施した。講義のほか、料理体験なども行い、子供たちも喜んでいた。中には、嫌いだったトマトが食べれて喜んでいた子供も。周りの環境が変わると好き嫌いもなくなるのかもしれない。

6.今年度の事業計画

 今年度は、量販店などを中心に啓発活動を実施するほか、全国野菜料理レシピコンテストなども実施する予定だ。全国で行なう消費者セミナーは前年度同様に、全国10ヶ所程度で実施するほか、小学校の食育授業についても10校程度で行う予定だ。また、東京の大田市場2階にある展示ルームをベジフルセブン用に改装し、社会科見学で訪れる小学生らにも野菜啓発のためのレクチャーを実施している。

図3



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