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健康増進運動5A DAY
(ファイブ・ア・デイ)の取組み

ファイブ・ア・デイ協会(5A DAY)
事務局長  大 滝 尋 美


1.アメリカの健康増進運動5A DAYの背景と内容

 アメリカ人の死因上位3位を占める、心臓病、ガン、脳卒中の予防という目的から、長期的な調査・研究を行った結果、バランスの良い食生活と適度な運動、中でも食習慣の改善が極めて重要であることがわかりました。

 そこで、5A DAYの前身となる活動が1988年に米国国立がん研究所(NCI)とカリフォルニア州保健省(CDHS)で、がん予防の目的で野菜と果物のプロモーションを始めました。この運動が、現在の5A DAYのプロトタイプになり、1991年5月には非営利団体として農産物健康増進基金(PBH)が設立され、米国国立がん研究所(NCI)と協力のもと、「5A DAY」プログラムが全米で本格始動することとなりました。


 5A DAY(ファイブ・ア・デイ)は、アメリカ最大の官民共同の栄養教育プログラムであり、「5A DAY」のメッセージは、米国農務省が推奨する成人1日当たりの理想的な摂取量を示した「フードガイド・ピラミッド」※1が基本となっています。すなわち、これの意味するところは、「1日に5サービング」※2ではなく、正確には「1日当たり5~9サービングの野菜(3~5サービング)と果物(2~4サービング)を食べましょう」というものです。このシンプルでわかりやすいメッセージを学校、職場、流通、外食産業、メディア向けに各種のプログラムを用意し推進活動をしています。

 (※1)1992年、米国農務省が導入し、6つの食品群と摂取量をピラミッド型のイラストにしたもの。

 (※2)野菜の1サービングとは、生の葉野菜1カップ、その他の調理済み又は生の野菜1/2カップ。
     果物の1サービングとは、中サイズの果物1個、100%果汁のジュース3/4カップ。

 活動開始から10年を迎えた2001年、組織構成と活動資金を大幅に拡大するとともに、新たなキャンペーンメッセージとして「5A DAY THE COLOR WAY」を打ち出しました。これは、従来の1日5~9サービングという摂取量に加え、青/紫、緑、白、黄/橙、赤の5色の中から彩りよく選び、個々に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカル(植物化学物質)のベネフィットを提唱するものです。

 また、アメリカで成功を収めた5A DAYは現在、カナダ、オランダ、ハンガリー、ノルウェー、ニュージーランドなど世界30カ国以上で推進されるグローバルな健康増進運動として展開されています。イギリス、ドイツは「5A DAY」、デンマークは「6A DAY」、オーストラリアは「7A DAY」、フランスは「10 A DAY」というように各国の栄養における課題が異なるため目標とする数値は異なるものの、野菜、果物の摂取を増加する点は共通しています。世界保健機関(WHO)が運営に参加し、「5A DAY国際シンポジウム」※3も過去4回開催され、野菜・果物と疾病の関係に関する研究成果及び研究動向の発表や各国の活動報告や意見交換などが毎回活発に行われています。

 (※3)第1回5A DAY国際シンポジウム
     (開催地:アメリカ 開催時期:1998年10月)

     第2回5A DAY国際シンポジウム
     (開催地:アメリカ 開催時期:2001年1月)

     第3回5A DAY国際シンポジウム
     (開催地:ドイツ 開催時期:2003年1月)

     第4回5A DAY国際シンポジウム
     (開催地:ニュージーランド 開催時期:2004年8月)

2.日本のファイブ・ア・デイ協会設立

 1977年アメリカで発表された報告書「マクガバンレポート」で「脂質が少なく、ビタミン、ミネラル、食物繊維が多い、理想的な食事」として1960年代の日本の食事が紹介されました。この影響からか欧米では「日本食=健康食」というイメージがありますが、皮肉なことに、現在の日本は、高度成長期を境にライフスタイルが大きく変化した結果、食の欧米化、簡便化、外部化が進み、1人当たりの野菜消費量は、日米で逆転しています。

 厚生労働省が毎年行う国民栄養調査のデータを見ると、どの年代でも野菜の摂取量は十分ではなく、特に若年層の野菜離れが著しくなっています。

 そこで日本でも、アメリカの5A DAY運動の成果に着目し、日本人の生活習慣にあったバランスのとれた食生活の重要性を啓発するため、1998年より設立準備委員会を設け、2002年7月にファイブ・ア・デイ協会(5A DAY)が設立されました。

 協会は、非営利の会員制任意団体であり、主に会費による運営を行っており、「1日に5皿分※4以上の野菜と200g※5以上の果物を食べましょう」をスローガンに「健康日本21」や「食生活指針」と連動し、活動を推進しています。

 (※4)厚生労働省の「健康日本21」が推奨している1日当たりの野菜の目標摂取量350gを、野菜料理5皿分」(1皿約70g)に置き換えてわかりやすくしたものです。

 (※5)「果物のある食生活推進全国協議会」の提案で、200gは皮付きの重量です。厚生労働省の定める目標摂取量(皮をむいた後の可食部で150g)をわかりやすくしたものです。

 ◎ファイブ・ア・デイ協会(5A DAY)の活動目的

 ■野菜・果物の特性、機能と栄養素などの情報を活用して、健康増進への効果につなげていく。

 ■野菜・果物の特性、機能や必要摂取量について正しい知識を広めていく。

 ■野菜・果物の特性、機能をもとに、さまざまな質と量の食べ方の知識を広めていく。

 ■野菜・果物のよりよい選び方、食べ方、料理方法についての知識を広めていく。

 ■野菜・果物の知識を子どもの時から学びながら、食習慣として定着させていく。

 ■ワールドワイドの「5A DAY」と連携し、国際的がん予防運動と連動・協賛する。

3.日本の具体的取組み

 昨年の主な取組みに、TVゲーム感覚で楽しめる教育ツール「5A DAYアドベンチャーCD-ROM」があります。野菜と果物のキャラクターがサラダ工場、クッキングスクール、アドベンチャーシアターなど6つの部屋の案内役となり、42種類の野菜と果物の栄養価、生産地、歴史、料理方法などを学ぶもので、既に6,000枚以上の「5A DAYアドベンチャーCD-ROM」が800を超える全国の小・中・高等学校の社会科、生活科、総合的学習、給食の栄養指導などで活用されています。

  野菜、果物の購入先として9割以上を占めるスーパーマーケットは、重要な情報発信の場となっています。主婦層を対象に野菜・果物の摂取目安を掲載したリーフレットや短い調理時間でたっぷり野菜が摂れるレシピを配布するとともに、子供向けキャンペーンソング『食べちゃえ☆野菜 食べちゃえ☆果物 ~カモン!ファイブ・ア・デイ~』を製作し、スーパーの青果売り場を中心に流しています。作詞は『おさかな天国』のヒットで有名な井上輝彦氏、作曲は『きのこの唄』を作ったいしいゆうこ氏に依頼しました。

 また、小学生を対象に、「スーパーマーケットツアー」というプログラムを青果売場で実施しています。野菜と果物を見て、触れて、食べる体験学習ツアーで、健康を維持するために必要な栄養について学ぶだけでなく、それぞれの地域で生産される農産物の種類や「旬」を知る内容でとなっています。中でも一番の人気は、調理実習で、子供達は自分で料理を作る喜びとともに野菜に興味を持つきっかけになっています。

 今年の取組みは、新たなアプローチとして幼稚園児と園児の親、高校生対象の啓発プログラムがあります。最近よく耳にする朝食を食べない欠食は、園児の年代でも増えていると聞いています。正しい食習慣を早くから身に付けるために、園児にとって親しみやすい媒体「紙芝居」を、読み聞くうちに野菜と果物に興味を持つよう構成し、全国の幼稚園での配布を企画しています。園児の親向けには、野菜中心のお弁当レシピや、子供の成長期に必要な栄養について解説した冊子を同時に配付します。また、秋には高校生を対象に、野菜料理のレシピコンテストを開催します。審査基準は、味や見た目だけでなく、栄養バランスを重要なポイントとし、偏った食生活や過激なダイエットの弊害などにもふれていきたいと考えています。

 食習慣の改善は、短期間で結果はでる活動でないことは確かですが、継続することにより必ず成果を上げることを5A DAYの先進国アメリカが手本となって教えてくれました。世界各国の成功事例を参考に、関係各位の協力と理解を得て、今後も日本独自の野菜・果物啓発活動を確立し活動が根付いていくことを願ってやみません。

 ファイブ・ア・デイ協会(5A DAY)URL http://www.5aday.net/


 

<5A DAYアドベンチャーCD-ROM>
 

<スーパーマーケットツアー>




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