ホクレン農業協同組合連合会 市場販売課 妹 尾 勝 文
1.ホクレンの概要
(1)事業内容
ホクレンは、北海道の農業協同組合159組合を会員とする連合会であり、その中の経済事業(販売・購買事業)を担当している北海道の経済連です。
主に農畜産物の集荷販売、農業用資材・生活用品の供給、農畜産物の製造・加工販売、農業技術の開発普及、作物栽培研究などを行っており、豊かな恵みを全国の消費者に届け、良質な生産資材を農業者に供給し、農家経営の安定をはかるための事業を展開しております。
(2)園芸部門の概要
<組織>
(1)本所機能
市場販売課:全国の卸売市場への委託販売、野菜制度、消費宣伝を担当
園芸流通課:道内の実需者との取引
(卸売市場の契約取引を含む)を担当
園芸総合課:青果物の安心・安全に向けた取組み(トレーサビリティーシステム開発)
各種システム開発を担当
販売本部:(東京:本所機能を有する)
園芸販売室:道外の実需者との取引(卸売市場の契約取引を含む)を担当
青果課:東京エリアの卸売業務を担当
(2)事業所機能
道内の9支所、道外の4支店、滝川種苗生産センター、石狩野菜センター、山梨馬鈴しょサラダ工場で対応しています。
<販売・取扱高>
(1) 平成15年度の青果物の販売・取扱高は、1,545億円
(2) 販売先別の内訳は、卸売市場への委託84%、卸売市場との契約6%、直接ユーザー4%、買取販売6%となっています。
(3) 品目別の内訳は、玉ねぎ354億円(23%)、馬鈴しょ322億円(21%)、人参58億円(4%)、その他野菜(大根、長いもなど)621億円(39%)、果実117億円(8%)、花き73億円(5%)となっています。
2.北海道における野菜生産等の動向
国内の野菜生産の状況は、気象変動による豊凶の差異に伴う市況変動、高齢化や担い手不足等による作付面積の減少傾向、さらに、近年は安価な輸入野菜の急増、デフレ経済による市況の下押し傾向など不安定要因を抱えており、産地の供給力の脆弱化が危惧されています。
このような情勢の中、北海道における野菜の作付面積は、全国と同様に年々減少傾向にありますが、収穫量は増減を繰返しています。(表1)
北海道の野菜は、玉ねぎ、馬鈴しょ、人参、南瓜、食用ゆり根など古くからの品目は収穫量も多く、市場での占有率が高い位置付けにあります。最近ではこれらに次ぐ品目として大根、キャベツ、長いも、ほうれんそう、トマトなどが定着しており、多様な野菜が全国に向けて流通するようになりました。
また、ホクレンとしては、府県産地を含めた国内産地の作付生産動向、生鮮・加工調製品の輸入動向、卸売市場の販売動向及び家計調査の動向などの生産販売環境を分析し、今後の需給を見定めた上で、3ヵ年毎に品目別の作付面積指針を策定しております。平成15年から平成17年については、既に策定済ですが、大根、長いも、白菜、ほうれんそう、ブロッコリー、グリーンアスパラ、きゅうり、トマト、南瓜、枝豆、ピーマン、いちご等の増反を推進しております。
資料:北海道農林水産統計年報
注:ゆりねは収穫面積、カリフラワーは60年までブロッコリーを含む、アスパラガスは栽培面積で、14年からグリーンのみ。
3.北海道・ホクレンとしての産地の向うべき方向
(1)業務用需要への接近および販売対応力確保と強化
量販店における生鮮品販売は、停滞から減少しており、一方、中食・外食といわれる業務用需要は、野菜全体の需要の約55%を占めており今後とも伸長する見込みであります。生食対応と加工対応は両輪であることから、夫々の実需者ニーズを的確にとらえて販売することが重要であります。また、業務用実需者は、(1)鮮度や食味、サイズ等の品質の高い青果物の確保、(2)産地・生産者、仕入ルートを明確にした安全性の高い青果物の確保、(3)自社の要望を生産者へ依頼できること、(4)安定的な仕入の確立等を求めています。
さらに、食の安全が問われている中で、消費者の食の安全・安心への要望に応えていくことが国産野菜産地の使命であり、このため、トレーサビリティーシステムの開発が必要となっています。
(2) 加工実需への契約的販売展開
実需者が契約取引を実施している割合は、カット野菜企業で100%、漬物メーカーで約90%、スーパー・量販店で約80%となっており、食品加工企業や量販店では半数以上が契約取引を実施しています。
また、市場流通販売の変化に対応するため、今後とも市場経由の相対取引・契約的販売を拡大していくとともに、市場外販売の増加により加工業務需要への契約販売を拡大展開していきます。
(3) ホクレン新施設の稼動
近年の野菜消費は、量販店における生鮮品販売から弁当・惣菜等の「中食」業態への業務加工原料への販売が伸長しており、顧客ニーズも高まっております。
このような中で、大消費地である関東圏において中食需要への対応のため、「ムキ」「カット」を行う一次処理加工施設を新設し、道産野菜の販売先の確保と拡大の取組みの強化を図ることとしました。
この施設は、馬鈴しょ・玉ねぎ・人参・キャベツ等の一次加工を行い、関東一円の惣菜メーカー等に供給する予定であり、本年12月の本稼動に向け準備を進めています。
(4) 業務用野菜における国内の連携強化
系統・系統外問わず、全国の産地がリレー的に周年供給体制をとり、業務用実需者に対して国産品の定時、定量、定価取引を行い、今まで輸入品に軸足を傾けていたユーザーを引き戻したいと考えています。このように、今後とも府県産地を含めた産地との連携を強化していきます。
4.ホクレンの業務用野菜の契約取組状況
(1)<馬鈴しょ>
(1) ポテトチップ向け原料(約20万トン)については、ポテトチップメーカーと契約取引を進めており、ユーザー別の中期取扱計画を集約し産地と連携しながら、種芋品種別栽培計画との整合を図りつつ、栽培・契約条件等を提示して当該年の受渡しを行っています。
また、長期安定的な受渡実現のため、関係機関と連携し、専用品種の開発を進めています。
(2) コロッケ・サラダ向け原料(約8~9万トン)については、冷食、惣菜等のメーカーと契約取引を進めており、ユーザー別に年間の使用数量を集約し、産地別品種別供給力を試算して需給バランスを推算後、ユーザー及び産地訪問を行い取引条件を提示して、契約・受渡を行い、次年度へ向けての課題の整理を行っています。
また、ポテトチップ向け原料と同様に、行政等と連携し有望品種の開発を進めています。
(3) 特別栽培品を含めた生協・量販店等向けのユーザーPB農産物の開発・栽培・契約についての産地生産部会(生産者)等の意識を高め、これら農産物の生産を推進しています。(玉ねぎ、その他の野菜も同様です。)
(2)<玉ねぎ>
加工玉ねぎ(約13万トン)については、平成3年から加工原料用への供給が中心となっている輸入品(特に、米国産)との競合に打ち勝つために、北海道の産地が協力して「共計」という仕組みの中で、冷食、惣菜、牛丼等のメーカーと契約取引を行っています。
(3)<その他の野菜>
大根、人参、南瓜、ごぼう、レタス、キャベツ等についても、漬物、冷食、惣菜等のメーカーと契約取引を行っています。
5.今後の契約野菜における課題
(1)輸入品とのコスト競争
輸入原料との競争の中で産地での再生産価格をいかに確保していくかが重要です。付加価値がつけられる原料でなければ中長期的な契約につながらず、産地での取組みも制約を受けます。現時点では、この難題には販売力をもって対応していますが、基本的には産地の体力アップ、すなわち生産コストの削減が必要不可欠であリます。
(2)施設の充実
消費構造の変化や、需要の変化に対応が可能な処理加工施設等のハード面の充実が必要となっています。
(3)柔軟な組織体制と行政との連携強化
消費者や実需者のニーズに迅速かつ機動的に対応するには、柔軟な組織体制が必要であり、そのための意識改革、人材育成が求められています。
また、生産から流通、販売にいたるトータル的な経営感覚の醸成と積極的な参入、それらをバックアップする行政との連携強化が必要となっています。
(4) 付加価値ある商品の生産
オンリーワン商品供給体制をいかにつくり上げるか。ユーザー=ホクレン=産地(生産者)の三位一体の商品づくりを通じて、オンリーワン市場(商品)を創造していきます。
6.契約野菜制度への取組み
(1)取組の経過
国際競争に対応しつつ、将来にわたって国産野菜の供給力を確保していくためには、実需者等が求める品質・価格の野菜を安定的に供給できるよう、生産・流通の両面から構造改革を進めていくことが喫緊の課題となっています。契約野菜制度は、この構造改革対策の一環として平成14年度の法律改正により導入された制度であり、従来の野菜価格安定制度については市場委託販売のみが対象でしたが、この制度の導入によって実需者との契約取引も対象となりました。
北海道では、昨年より契約取引が多い玉ねぎと馬鈴しょについて契約野菜制度を活用しています。
(2)制度の活用方法
基本的な考え方として、契約取引を拡大し輸入野菜との競合に打ち勝っていくために契約野菜制度を積極的に活用していくととともに、品目の拡大を図っていきたいと考えています。契約取引規模が大きい玉ねぎについては、現状抱えている課題を解決できるような契約野菜制度の活用を進めていきたいと考えています。
(1) 数量確保タイプ
作柄不良による生産量減少は、作柄確定前に加工向全体数量を計画する「全道共計」の販売おいては、非常に厳しい事態となっています。
市場向(生食)から加工用への用途転用は、生食市況が一定レベルにある場合、価格の損失感が生じることから場合によっては契約数量を確保できない場合があり、次年度以降の取引にも影響を与える可能性があります。
また、数量を確保できない場合は、他(市場等)から購入する方法を取らざるを得ず、大きな費用負担を招くことになります。
これらの問題点を一定程度解消する方策として、契約野菜制度の数量確保タイプは有効であると考えられます。
(2) 出荷調整タイプ
作柄豊作時においては生産量が増加し、用途別需給調整の実施が非常に厳しくなる場合が見られ、加工用の追加販売も困難な場合は産地廃棄等をせざるを得ないという事態も考えられます。
出荷調整(産地廃棄等)は重要野菜に係る事業で実施することも可能ですが、この処理が必ずしも産地の求めるタイミングで実施できるとは限りません。契約野菜制度では、発動基準価格を満たせば短期間で出荷調整(産地廃棄等)が可能であり、交付額も少なくないことから利用しやすい制度であると言えます。
7.最後に
昨年6月に従来の考え方にとらわれずに新たな発想をもって構造的な改革を具体的に検討し実践するための組織として、北海道及び試験機関並びに玉ねぎ農協及び生産者と弊会関係部署で構成する「玉ねぎコスト削減検討会議」を全道挙げての取組みとして立上げ、生産、流通、販売での検討をしております。生産者が安心し継続的な生産を維持していけるよう、こうした生産基盤の強化への取組みや、販売体制の強化、更に消費者の求める安全安心への取組みとともに、「野菜価格安定事業」や一昨年創設された「契約野菜安定供給事業」などのセーフティネットの活用を今後とも積極的に活用していきたいと考えております。