卸売市場内の施設配置・動線計画は、組み替え機能を円滑に行うための物理的基盤となる。ベジフルスタジアムにおける動線計画の方針と動線構造について説明する。
(1)動線計画の方針
ベジフルスタジアムにおける動線計画の方針として、1)トラック動線の一方向化、2)場内物流動線の一方向化、3)場内物流における輸送機能(荷降ろし後の荷さばきおよび搬送全般)と保管機能の分離ーの3点が挙げられる。
1点目について、入荷トラックは入場後、一方通行で卸売場(西棟・東棟)へ移動して荷降ろしを行い、そのまま一方通行で出口へ出ていくように動線が計画されている。2点目について、入荷した商品に対する荷降ろし、搬入、仲卸による引き取り、流通加工、および積み込み・出荷までの動線を一方向に設定することで、各作業に関わる動線が交錯しないように計画されている。
3点目は、定温卸売場を場内物流における商品の輸送機能(荷さばきおよび搬送)を担う施設として位置付け、場内コールドチェーンのための保管機能は冷蔵庫へ分離させるという考え方である。卸売市場内における商品の円滑な移動を確保するためには、定温卸売場に置き荷(仲卸が買い上げ後、引き取っていない荷や、意図的に保管目的で置いている荷)がなく、翌日の入荷が始まるまでに確実に引き取られることが重要である。それによって、卸売場は翌日の荷さばきと搬送のためのスペースを確保でき、場内物流の円滑化が実現する。そのため、場内において商品の輸送機能を担う卸売場と、商品の保管機能を担う冷蔵庫・常温保管場所との機能分離の徹底が求められるのである。
(2)場内物流動線の構造
動線計画の第1点目のトラック動線の一方向化と、第2点目の場内物流動線の一方向化が、実際にどのように実現されているのかを図1から確認する。入荷車輌専用入口(図1(11))から入場したトラックは、荷受事務所(図1(1))に立ち寄って受け付け手続きを行った後、そこで指示された荷降ろし場所へ向かう。積み荷が主にせり品の場合、トラックは卸売場東棟(図1(3)の方向)へ進み、南東のC区画にて荷降ろしを行う。せり品は、買参人と小規模な仲卸によってせり落とされることが多い。買参人は、せり落とした商品を(4)卸売場C(せり売場)から(2)買荷保管積込所(D区画)へ搬送し、そこで積み込みを行った後、場外へ搬出する。小規模な仲卸は、せり落とした商品を(4)卸売場Cの外側に配置された自店舗へと搬送する。
積み荷が主に相対品の場合、トラックは卸売場西棟(図1(7)の方向)へ向かい、定温卸売場前で荷降ろしを行う(図1(6)AおよびB)。(7)の入荷用通路(幅20メートル、長さ220メートル)(写真4)は、2列の定温卸売場の扉前へトラックを横付けして、荷降ろし・搬入作業ができる十分な長さと幅を確保しており、同時に約20台のトラックが荷降ろし作業を行えるよう設定されている。荷降ろしされた商品は、場内物流会社である株式会社福果物流(以下「福果物流」という)によって山切り
(注4)・検品・仕分け
(注5)された上で、定温卸売場内あるいは仲卸店舗前など、指定された場所へ搬送される。
なお、このような一方向の物流動線を効率的に機能させるためには、施設配置や品目配置にも工夫が必要となる。次にこれらの工夫について詳しく説明する。
(注4)ここでの山切りは、パレット上の商品が10段や11段といった高積みされている場合に、これを7~8段に切り分ける作業、あるいはパレット上の商品を規格別に切り分ける作業を指す。いずれも検品を確実に行うために実施することが多い。
(注5)ここでの仕分けは、売先別にパレットに積み替える作業を指す。
(3)物流動線をシンプルにするための工夫
ア 仲卸店舗の構造と配置の工夫
仲卸店舗へ引き取られた商品は、仲卸店舗1階で分荷、カット・リパックなどが行われた後、仲卸店舗裏にある買荷積込所から出荷され、納品先へ配送されていく。前述した通り、定温卸売場に面した仲卸店舗の1階を物流機能に特化できることが、場内物流を円滑にするための工夫の一つである。
さらに、これも前述した通り、卸売場西棟の定温卸売場とその外側の仲卸店舗は東西方向に2列に並んでいる(図1)。定温卸売場への商品搬入、仲卸による商品の引き取り、買荷積込所からの商品の搬出までの一連の動線が直線的で交わらないため、シンプルかつ効率的となっている。仲卸店舗が格子状に固まって配置されていると、こうした効率的な動線を確保することは困難である。
イ 定温卸売場から仲卸店舗への動線計画の工夫
商品を購入した仲卸は、定温卸売場に搬入された商品のうち、福果物流によって搬送されていないものについては、自らのフォークリフトやターレットなどで仲卸店舗へ引き取りに行く必要がある。ここでシンプルな動線を確保するためには、それぞれの仲卸が中心的に取り扱う品目が店舗近くの定温卸売場にあることが望ましい。ベジフルスタジアムへの総合移転に当たっては、仲卸店舗位置が決まった後に、定温卸売場のどの区画にどの品目を配置すると、物流上、最適な配置となるかを外部コンサルタントとともに分析した。その結果を踏まえて、定温卸売場には、区画別にそれぞれ特定の品目群が割り当てられている。
また、定温卸売場と仲卸店舗の間の通路設定と運用も留意すべき点である。この通路は多くのフォークリフトなどの通行が発生するため、フォークリフトが離合できる十分な幅員を確保する必要がある。そのため、ベジフルスタジアムにおいては、この通路幅は7メートルで設定されている(写真5)。ただし、この通路はベジフルスタジアムに限らず、慣習的に、仲卸の在庫品置場、パレットや通いコンテナ置場に使われることも多く、十分な通路幅が確保できないと、場内物流を停滞させる制約となり得る。また、店舗前の通路を利用する仲卸の慣習的な行動と、仲卸荷さばき所・積込所の面積確保との間にはトレードオフの関係があるため、施設計画時の重要な考慮事項になると考えられる。
(4)卸売場と冷蔵庫・常温保管場所の機能分離の徹底
さらに動線計画を活かすためには、第3点目の輸送機能(荷降ろし後の荷さばきおよび搬送全般)と保管機能の分離も重要となる。定温卸売場は保管倉庫ではなく、日々の入荷品に対して、組み替え機能を確実に果たしていくための動線上のデポ(商品を一時的に滞留させ、荷さばき・組み替えを行う中継拠点)として位置付けられている。従って、卸売市場では、即日引き取りが場内物流における一般的な規則となっている。原則として、デポである卸売場にとどめることができる時間は、その日の荷受けから翌日の荷受けまで(おおむね昼まで)の1日である。置き荷が卸売場に残ったままだと、翌日の荷受商品の場内物流動線における障害となり、場内物流効率を大きく低下させる要因となる。動線計画を活かすためには、定温卸売場での置き荷を極力発生させない運用がまず重要であり、併せて、保管機能を担う冷蔵設備および常温保管場所を確保することも重要である。
また、入荷用通路における荷降ろしなどの荷さばきスペース(以下「荷さばき所」という)の
残荷や、定温卸売場の置き荷が残りにくい施設配置上の工夫も重要となる。ベジフルスタジアムの施設配置の特徴は、荷さばき所と定温卸売場が明確にゾーニングされ、並列配置されていることにある。定温卸売場の荷さばき所で荷降ろし・検品・仕分けされ、定温卸売場や仲卸店舗前へ搬送された後、荷さばき所には基本的に残荷は発生しない。加えて、一般に卸売市場では、入荷トラックの荷降ろし時間帯と、仲卸や買参人の商品引き取り・買荷出荷時間帯が異なっている。その結果、荷さばき所は入荷専用空間としてだけではなく、時間帯によって出荷機能も担う。仲卸が買い取った商品の、その後の場内物流動線は、仲卸店舗での流通加工を経て、その買荷積込所から出荷される一般的な物流動線だけにとどまらない。ある程度まとまった量の商品や、多少の分荷を伴う中継物流としての商品については、定温卸売場から直接、中央の入荷用通路の荷さばき所において積み込まれて出荷されている。
つまり、ベジフルスタジアムにおいては、卸売場西棟の荷さばき所と定温卸売場の並列配置、および荷さばき所に残荷がない運用によって、定温卸売場が場内物流動線上のデポとして機能しており、荷さばき所が時間帯別に荷降ろしと商品の出荷との双方にフル活用されているのである。
このような運用を成立させるためには、定温卸売場内の物流動線も確保されなければならない。定温卸売場を保管倉庫として利用するのではなく、デポとして機能するよう置き荷を残さず、保管機能は冷蔵庫・常温保管場所に分離する運用が重要であるが、この点については、後編で詳しく紹介したい。