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調査・報告 野菜情報 2026年11月号

福岡市中央卸売市場青果市場(ベジフルスタジアム)の場内物流(前編)

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九州大学大学院農学研究院 農業資源経済学講座フードシステム学分野 
教授 森高 正博

【要約】

 農産物物流を取り巻く環境が大きく変化する中、物流改善優良事例として知られる福岡市中央卸売市場青果市場(ベジフルスタジアム)は、物流機能を重視した市場再整備をいち早く行った代表的事例である。前編では、効率的な場内物流を実現する施設配置や一方向の物流動線、卸売場と冷蔵庫・常温保管場所の機能分離などの特徴を紹介する。市場内では、品目・規格・量を需要に応じて組み替える卸売市場本来の機能を支えるため、入荷から出荷までの動線が整理されており、定温卸売場を物流動線上のデポ(一時的な商品の保管場所)として位置付けることで、円滑な物流とコールドチェーンの確保を実現している。後編では、こうした仕組みを支える管理運用体制や場内物流会社による一括管理の実態について報告する。

1 はじめに

 生鮮農産物の特徴は、工業製品と対比したとき、鮮度劣化が早いこと、規格化しにくいこと、出荷量が天候などに大きく左右されることである。そのため、市場で形成される価格は日々異なる上に、乱高下もしやすい。加えて、かさばる上に単価に対して輸送コストの割合が高いことなどの特徴が挙げられる。こうした環境にうまく対処し、鮮度を維持しながら、多種多様な需要と供給を適切にマッチングさせるために、国内青果物流通では卸売市場流通体系が機能してきた。
 国内の青果物卸売市場の多くは、中央・地方卸売市場にかかわらず、建物の老朽化が進み、少なくない市場で再整備が計画中あるいは進行中である。また、青果物物流の状況に目を向けると、働き方改革関連法によるトラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)などが2024年4月から適用されたことに始まり、物流効率化法が改正され(同年5月施行)、25年4月から荷主・物流事業者に対し、物流効率化(荷待ち・荷役時間短縮、積載率向上など)への取り組みが努力義務化され、26年4月から特定事業者には中長期計画の作成・提出、物流統括管理者(CLO)の選任・届け出、荷待ち時間などの計測・報告などの義務が課されることになった。そのため、近年、特に卸売市場の物流機能については、その現状と将来のあり方に高い関心が寄せられるようになってきている。
 卸売市場の物流機能としては、産地から消費地への商品輸送の過程において、商品を「集荷」し、実需者へ向けて「分荷」していく拠点であり、そこに一部「保管」機能が追加されているというのが一般的な説明である。しかし、この説明は、時に一品目における集分荷に限定して理解される恐れがある。卸売市場で行われている場内物流の本質は、商流と連動しながら、多様な品目・規格・量の構成を需要に応じて組み替えることで、流通論におけるいわゆる「量と組合せの懸隔」を架橋する(注1)ことにこそある。具体的には、日用品と同様に、青果物などの生鮮農産物も、産地段階(工業品であれば生産工場)では、限定された品目を多数の生産者から集荷・規格化した上で大量出荷されており、一方で、消費地の小売り段階では少量多品目・複数規格の品ぞろえを行わなければならない。つまり、流通の川上と川下の間にある品目・規格・量に関する懸隔を解消するために、その構成を組み替える作業が流通の過程で必要になる。国内青果物流通においては、卸売市場がこうした流通機能を発揮する場となっている。卸売市場は、集荷された多様な品目・規格について、相対取引・せり取引などの販売および場内物流を通して、販売先ごとに必要な品目・規格・量に応じた分荷・仕分けを行うことで、商流上および物流上で上述の懸隔を解消する機能を担っている。そして、場内物流において「品目・規格・量の組み替え機能」(以下「組み替え機能」という)をいかに効率的に発揮できるかは、卸売市場の施設計画とその運用にかかっている。
 農林水産省の物流改善の優良事例として紹介される市場の一つに、福岡市中央卸売市場青果市場(以下「ベジフルスタジアム」という)がある。この市場は、物流機能を重視した市場再整備をいち早く行った代表的事例であり、福岡市内にあったそれまでの旧青果3市場(青果市場、西部市場、東部市場)を統合し、新たに造成した埋立地であるアイランドシティ(福岡市東区)に移転、2016年2月に運用を開始した。特筆すべき点として、1)卸売場の実に約84%を密閉式の定温卸売場として整備することでコールドチェーンに対応したこと(卸売市場JAS認証:「生鮮青果物の低温管理流通システム(卸売市場)の日本農林規格」〈規格番号:JAS 0011〉を取得)、2)大量物流や小売業者対応など取引形態の時代的変化に合わせた機能的な施設配置を行っていること、3)場内の物流動線が一方向で交錯しないよう明快に計画・運用されていること―が挙げられる。
 本稿では、ベジフルスタジアムについて2回に分けて報告する。前編では、ベジフルスタジアムの施設配置と物流動線を報告する。後編では、それを支える管理運用の実態や工夫について報告する。

(注1)流通における生産と消費・産業用使用との間にはいくつかの懸隔(隔たり)があり、その一つに「量と組合せ」の懸隔がある。消費者は、各家計の選んだ組合せで多様な財を少量ずつ消費する。しかし、財の生産においては、技術的条件、経済的条件などで規定された限られた種類の財を継続して生産する。そこで、個別品目の生産量と消費量、生産に都合のよい生産物の組合せと消費者が必要とする幅広い組合せとの間に隔たり(懸隔)が生じる。これを架橋(橋渡し)することが流通の果たす社会的役割の一つとされる。以上、鈴木安昭『新・流通と商業[改訂版]』(1997)有斐閣を参照。

2 ベジフルスタジアムの概要

 ベジフルスタジアムの2025年の取扱額は約804億円(福岡市中央卸売市場「市場概要 令和8年度版」より)であり、全国の市場別取扱高でも10位以内に位置する九州最大の青果物卸売市場である。同市場の青果物供給圏域は、福岡市のみならず周辺市町村(主に福岡都市圏)へも及ぶ。
 アイランドシティへの統合移転に当たっては、移転先と旧青果市場・旧西部市場の距離が遠く、特に西部市場関係者にとっては事業への影響が懸念されていたが、21年3月の福岡市都市高速6号線(通称:アイランドシティ線)の開通によって、市場アクセスの問題も緩和された。移転前後の卸売業者(以下「卸」という)、仲卸業者(以下「仲卸」という)、売買参加者(以下「買参人」という)の変化を新旧市場の数値で比較すると、表1の通りである。卸については、福岡大同青果株式会社(以下「福岡大同青果」という)による1社体制に変化はない。仲卸については、同じ資本系列の仲卸が3市場に併存する場合もあったが、特に移転に際して統合・合併することはなく、そのまま新市場へ移転している。なお、仲卸数については、開設者が当初定めた通り、新市場の仲卸店舗区画数35を全て埋めている。
 また、表1より、3市場から1市場に統合することで、卸売場面積当たりの取扱量が向上し、効率化が図られたことが分かる。市場取扱高について見ると、統合移転前の15年の3市場合計の取扱量は32万5383トン、取扱額687億7464万6000円であったが、移転後の17年には取扱量34万5772トン、取扱額709億6209万3000円となった。その後も、25年現在の取扱量30万6493トン、取扱額804億2791万7000円まで、おおむね安定的に推移している。ここで注目したいのは、旧3市場合計に対する新市場の数値を比較した時、新市場の敷地面積は旧市場のそれに対して約102%とほぼ変わらないものの、卸売場面積は約66%と約3分の2に減少していることである。商物分離があるとはいえ、大量の市場入荷商品をさばけている背景には効率的な場内物流が存在する。

タイトル: p058

3 ベジフルスタジアムの施設配置

本章では、こうした効率的な場内物流を支える施設配置について説明する。
 
(1)施設配置
 ベジフルスタジアムの市場内施設配置は、図1の通りである。図中(1)に荷受事務所があり、ここを起点として、十字に入荷用の主要通路が一方通行で設けられており、この通路を隔ててエリアが大きく4区画に分かれている。図中右下の(4)卸売場Cは、固定せり(競り)・移動せりを行う卸売場である。図中右上の(2)D区画は、買参人の買荷積込所として積み込みスペースが割り当てられているとともに、商品保管用の東冷蔵庫があり、買参人を中心に貸借されている。
 図中左側には(6)定温卸売場A・Bがあり、それぞれ1列に複数区画が配置されている。区画ごとに温度設定が可能で、15度と5度の2温度帯で運用されている。仲卸店舗は、(4)卸売場Cの外側、および(6)定温卸売場A・Bの外側に、いずれも一列に並ぶ形で配置され、そのさらに外側が仲卸の買荷積込所として位置付けられている。(6)定温卸売場A・Bに面する仲卸事務所は、物流動線を阻害しないように2階に設置されており、仲卸店舗における1階部分は仕分け・流通加工・出荷などの物流機能に特化できる仕様になっている。なお、1階と2階事務所は内部階段で接続している(注2)。
 卸売場西棟の外側には、仲卸店舗に面する形で北冷蔵庫と南冷蔵庫が設置されており、仲卸および大口買参人によって利用されている。さらに西側には、福岡大同青果の(8)バナナ加工センターが配置されている。
 また、定温卸売場は卸である福岡大同青果によって整備されており、その他の3冷蔵庫は事業協同組合(卸、仲卸、買参人組合の共同出資、事務局は福岡大同青果)によって整備されている。これら施設の整備は、農林水産省と福岡市による2分の1助成の補助事業であるが、開設者である福岡市自体は事業に関与せず、上述の整備主体が、市場関係者の意見を取りまとめ、設計・施工業者の入札実施、設計・施工の協議を行い、竣工後は自主的に管理運営(保守点検、使用料徴収など)しており、全国的にも珍しい事例である。

(注2)仲卸事務所がある2階からは、共用通路を通って、1階に降りることなく卸売場東棟屋上(3階)に整備された卸売市場関係者駐車場にアクセス可能となっている。

タイトル: p059
 
(2)定温卸売場の施設構造
 卸売場西棟の2列の定温卸売場は、その上部にある天井部分のトラス構造(注3)によって吊り下げられている(写真1)。これは、定温卸売場の荷重をその基礎部分にかけず、天井部分のトラスに分散することで、その基礎工事を軽減ないし無くすもので、設計当時この構造計画を採用したことで、1億円相当の工事費が削減されたとのことである。
 また、移転に伴い、排気ガス対策として福岡市の補助事業を活用し、ターレットおよびフォークリフトについては100%電動化が行われ、場内に共同充電所も設置されている。さらに、入・出荷のために入退場するトラックの排気ガス対策には、定温卸売場上部と施設天井との間に大きな空間が設けられ、南北からの風の通り道が確保されることで、排気ガスなどの温かい空気は上昇して天井窓から静かに自然換気される仕組みが採用されている。

(注3)三角形に骨組みを組むことで荷重の分散・支持を行う構造形式。

タイトル: p060
 
(3)冷蔵庫の設置と運用
 市場内のコールドチェーン確保のための保管を目的とした冷蔵庫は、図1に示す通り、市場内に3カ所(北、南、東冷蔵庫)設けられている(南冷蔵庫の一部の常温庫を除き5度設定)。北冷蔵庫は量販店納入を中心とした大口仲卸が閉鎖空間を1単位として賃借しており、南冷蔵庫は仲卸、大口の買参人が賃借しており、東冷蔵庫(旧市場から機能を承継)は前述の通り買参人を中心に貸借されている。南冷蔵庫はフォークリフトでの運用を前提とし、加えて、整備費の削減、冷却効率の向上、および区画変更を行いやすいように、冷蔵庫内に仕切りを作らず、賃借スペースを線引きのみで区画して、借主が必要に応じてパレットラックを設置できるようにしている。
 北冷蔵庫と南冷蔵庫は開設者が整備した建物でないため、卸売市場施設と連続した一枚の屋根を設置することができない。そこで、卸売場西棟の屋根と冷蔵庫の屋根との間は最低限の隙間とし、商品が雨にさらされることが無いよう配慮されている。
 一方で、東冷蔵庫は買参人の買荷保管積込所の中に設置されており、屋上駐車場下の空間(高さ約8メートル)を利用した2階建ての冷蔵庫である(写真2左)。天井が低く冷却効率が高い上、台車での搬入(2階へは貨物エレベータを使用)を前提としているため、粉塵が少なく衛生的なものとなっている。また、室内をネットで仕切って区画を設け、多くの買参人が小面積(約6平方メートル)からでも利用できるよう配慮されている(写真2右)。

タイトル: p061
 
(4)フォークリフトでの運用を前提とした施設計画と運用
 ベジフルスタジアムでは、フォークリフトでの運用を前提としているため、定温卸売場への入出庫時にシートシャッターおよび開口部周辺への接触リスクが高く、修繕費が大きくなることが懸念された。そこで、シートシャッターおよび開口部周辺を保護し、維持管理費用を低減するため、シートシャッターの前後にシートシャッター枠よりやや狭い開口幅の門型ガードを設置している。定温卸売場の外部側には、地中まで埋め込んで固定した金属製の門型ガードを設置し(写真3左)、定温卸売場の内側には、円柱型の基礎(配管に生コンクリートを注入した重量約1トンのもの。基礎部分の重量により高い安定性を確保する)を備えた床置き式の門型ガードを配置している(写真3右)。なお、場内の交通標識にも同様の円柱型の基礎を備えたガードポストが採用されており、破損の抑制に寄与している。

タイトル: p062
 
(5)サイン計画
 広大な卸売市場内で物流情報を管理・運用するために、卸売場などの各ゾーン・区画の位置情報をコード化することは極めて重要である。この位置コードについて、どういった案内標識を、どこに、どのように設置したらよいのかをまとめた計画を「サイン計画」と呼ぶ。ベジフルスタジアムのサイン計画では、「A1」のようにA、B、C、…と1、2、3、…の組み合わせ方式を採用している。卸売場西棟の北側エリアがA、同南側エリアがB、卸売場東棟の南側エリアがC、北側エリアがDとなっており、場内物流の起点である荷受事務所から遠くなるに従い1、2、3と番号が大きくなるナンバリングを行っている。このように、各区画に対して唯一の位置コードが割り振られ、位置情報の混乱が生じないサイン計画となっている。また、サインは柱に掲示される他、定温卸売場各区画のシートシャッターの防熱ドア外面、および各区画内壁にも表示される(写真3)。なお、EとDの発音が紛らわしいため、Eは用いず、西側のバナナ加工センターにはFを採用して区別しやすくしている。案内標識はトラック、フォークリフトおよびターレットの運転中でも見やすい大きなものが掲示されている。このようなサイン計画は、場内物流動線を機能させる上でも重要な役割を果たしている。

4 場内物流の動線計画

 卸売市場内の施設配置・動線計画は、組み替え機能を円滑に行うための物理的基盤となる。ベジフルスタジアムにおける動線計画の方針と動線構造について説明する。
 
(1)動線計画の方針
 ベジフルスタジアムにおける動線計画の方針として、1)トラック動線の一方向化、2)場内物流動線の一方向化、3)場内物流における輸送機能(荷降ろし後の荷さばきおよび搬送全般)と保管機能の分離ーの3点が挙げられる。
 1点目について、入荷トラックは入場後、一方通行で卸売場(西棟・東棟)へ移動して荷降ろしを行い、そのまま一方通行で出口へ出ていくように動線が計画されている。2点目について、入荷した商品に対する荷降ろし、搬入、仲卸による引き取り、流通加工、および積み込み・出荷までの動線を一方向に設定することで、各作業に関わる動線が交錯しないように計画されている。
 3点目は、定温卸売場を場内物流における商品の輸送機能(荷さばきおよび搬送)を担う施設として位置付け、場内コールドチェーンのための保管機能は冷蔵庫へ分離させるという考え方である。卸売市場内における商品の円滑な移動を確保するためには、定温卸売場に置き荷(仲卸が買い上げ後、引き取っていない荷や、意図的に保管目的で置いている荷)がなく、翌日の入荷が始まるまでに確実に引き取られることが重要である。それによって、卸売場は翌日の荷さばきと搬送のためのスペースを確保でき、場内物流の円滑化が実現する。そのため、場内において商品の輸送機能を担う卸売場と、商品の保管機能を担う冷蔵庫・常温保管場所との機能分離の徹底が求められるのである。
 
(2)場内物流動線の構造
 動線計画の第1点目のトラック動線の一方向化と、第2点目の場内物流動線の一方向化が、実際にどのように実現されているのかを図1から確認する。入荷車輌専用入口(図1(11))から入場したトラックは、荷受事務所(図1(1))に立ち寄って受け付け手続きを行った後、そこで指示された荷降ろし場所へ向かう。積み荷が主にせり品の場合、トラックは卸売場東棟(図1(3)の方向)へ進み、南東のC区画にて荷降ろしを行う。せり品は、買参人と小規模な仲卸によってせり落とされることが多い。買参人は、せり落とした商品を(4)卸売場C(せり売場)から(2)買荷保管積込所(D区画)へ搬送し、そこで積み込みを行った後、場外へ搬出する。小規模な仲卸は、せり落とした商品を(4)卸売場Cの外側に配置された自店舗へと搬送する。
 積み荷が主に相対品の場合、トラックは卸売場西棟(図1(7)の方向)へ向かい、定温卸売場前で荷降ろしを行う(図1(6)AおよびB)。(7)の入荷用通路(幅20メートル、長さ220メートル)(写真4)は、2列の定温卸売場の扉前へトラックを横付けして、荷降ろし・搬入作業ができる十分な長さと幅を確保しており、同時に約20台のトラックが荷降ろし作業を行えるよう設定されている。荷降ろしされた商品は、場内物流会社である株式会社福果物流(以下「福果物流」という)によって山切り(注4)・検品・仕分け(注5)された上で、定温卸売場内あるいは仲卸店舗前など、指定された場所へ搬送される。
 なお、このような一方向の物流動線を効率的に機能させるためには、施設配置や品目配置にも工夫が必要となる。次にこれらの工夫について詳しく説明する。

(注4)ここでの山切りは、パレット上の商品が10段や11段といった高積みされている場合に、これを7~8段に切り分ける作業、あるいはパレット上の商品を規格別に切り分ける作業を指す。いずれも検品を確実に行うために実施することが多い。
(注5)ここでの仕分けは、売先別にパレットに積み替える作業を指す。

タイトル: p063
 
(3)物流動線をシンプルにするための工夫
ア 仲卸店舗の構造と配置の工夫
 仲卸店舗へ引き取られた商品は、仲卸店舗1階で分荷、カット・リパックなどが行われた後、仲卸店舗裏にある買荷積込所から出荷され、納品先へ配送されていく。前述した通り、定温卸売場に面した仲卸店舗の1階を物流機能に特化できることが、場内物流を円滑にするための工夫の一つである。
 さらに、これも前述した通り、卸売場西棟の定温卸売場とその外側の仲卸店舗は東西方向に2列に並んでいる(図1)。定温卸売場への商品搬入、仲卸による商品の引き取り、買荷積込所からの商品の搬出までの一連の動線が直線的で交わらないため、シンプルかつ効率的となっている。仲卸店舗が格子状に固まって配置されていると、こうした効率的な動線を確保することは困難である。
 
イ 定温卸売場から仲卸店舗への動線計画の工夫
 商品を購入した仲卸は、定温卸売場に搬入された商品のうち、福果物流によって搬送されていないものについては、自らのフォークリフトやターレットなどで仲卸店舗へ引き取りに行く必要がある。ここでシンプルな動線を確保するためには、それぞれの仲卸が中心的に取り扱う品目が店舗近くの定温卸売場にあることが望ましい。ベジフルスタジアムへの総合移転に当たっては、仲卸店舗位置が決まった後に、定温卸売場のどの区画にどの品目を配置すると、物流上、最適な配置となるかを外部コンサルタントとともに分析した。その結果を踏まえて、定温卸売場には、区画別にそれぞれ特定の品目群が割り当てられている。
 また、定温卸売場と仲卸店舗の間の通路設定と運用も留意すべき点である。この通路は多くのフォークリフトなどの通行が発生するため、フォークリフトが離合できる十分な幅員を確保する必要がある。そのため、ベジフルスタジアムにおいては、この通路幅は7メートルで設定されている(写真5)。ただし、この通路はベジフルスタジアムに限らず、慣習的に、仲卸の在庫品置場、パレットや通いコンテナ置場に使われることも多く、十分な通路幅が確保できないと、場内物流を停滞させる制約となり得る。また、店舗前の通路を利用する仲卸の慣習的な行動と、仲卸荷さばき所・積込所の面積確保との間にはトレードオフの関係があるため、施設計画時の重要な考慮事項になると考えられる。

タイトル: p064
 
(4)卸売場と冷蔵庫・常温保管場所の機能分離の徹底
 さらに動線計画を活かすためには、第3点目の輸送機能(荷降ろし後の荷さばきおよび搬送全般)と保管機能の分離も重要となる。定温卸売場は保管倉庫ではなく、日々の入荷品に対して、組み替え機能を確実に果たしていくための動線上のデポ(商品を一時的に滞留させ、荷さばき・組み替えを行う中継拠点)として位置付けられている。従って、卸売市場では、即日引き取りが場内物流における一般的な規則となっている。原則として、デポである卸売場にとどめることができる時間は、その日の荷受けから翌日の荷受けまで(おおむね昼まで)の1日である。置き荷が卸売場に残ったままだと、翌日の荷受商品の場内物流動線における障害となり、場内物流効率を大きく低下させる要因となる。動線計画を活かすためには、定温卸売場での置き荷を極力発生させない運用がまず重要であり、併せて、保管機能を担う冷蔵設備および常温保管場所を確保することも重要である。
 また、入荷用通路における荷降ろしなどの荷さばきスペース(以下「荷さばき所」という)の残荷(ざんか)や、定温卸売場の置き荷が残りにくい施設配置上の工夫も重要となる。ベジフルスタジアムの施設配置の特徴は、荷さばき所と定温卸売場が明確にゾーニングされ、並列配置されていることにある。定温卸売場の荷さばき所で荷降ろし・検品・仕分けされ、定温卸売場や仲卸店舗前へ搬送された後、荷さばき所には基本的に残荷は発生しない。加えて、一般に卸売市場では、入荷トラックの荷降ろし時間帯と、仲卸や買参人の商品引き取り・買荷出荷時間帯が異なっている。その結果、荷さばき所は入荷専用空間としてだけではなく、時間帯によって出荷機能も担う。仲卸が買い取った商品の、その後の場内物流動線は、仲卸店舗での流通加工を経て、その買荷積込所から出荷される一般的な物流動線だけにとどまらない。ある程度まとまった量の商品や、多少の分荷を伴う中継物流としての商品については、定温卸売場から直接、中央の入荷用通路の荷さばき所において積み込まれて出荷されている。
 つまり、ベジフルスタジアムにおいては、卸売場西棟の荷さばき所と定温卸売場の並列配置、および荷さばき所に残荷がない運用によって、定温卸売場が場内物流動線上のデポとして機能しており、荷さばき所が時間帯別に荷降ろしと商品の出荷との双方にフル活用されているのである。
 このような運用を成立させるためには、定温卸売場内の物流動線も確保されなければならない。定温卸売場を保管倉庫として利用するのではなく、デポとして機能するよう置き荷を残さず、保管機能は冷蔵庫・常温保管場所に分離する運用が重要であるが、この点については、後編で詳しく紹介したい。

5 前編のまとめ

 ベジフルスタジアムが優良事例として注目されている点は、場内物流において一方向の物流動線が整備されていることである。本稿前編では、この特徴を整理するとともに、それだけでは見落とされがちな卸売場と冷蔵庫・常温保管場所との機能分離にも着目し、ベジフルスタジアムの施設配置と場内物流動線について、その計画と構造、具体的な工夫を紹介した。
 施設計画上、1)せり品と相対品でゾーニングし、場内物流動線を分けた点、2)入荷用通路、定温卸売場および仲卸店舗を並列配置した点、3)日々の物流動線上のデポとして機能する卸売場と、冷蔵保管施設との機能分離を徹底した点ーなど、総合的に計画されていることが確認された。こうした施設計画によって、円滑な商品の流れとコールドチェーンの確保ができていると言えよう。
 こうした施設計画は、青果物卸売市場において日々担われる「品目・規格・量の組み替え機能」を効率的に発揮するための基盤を提供する。もっとも、こうした機能は施設計画だけで実現されるものではない。卸売場を物流動線上のデポとして機能させ、置き荷を発生させない運営や場内物流の調整を日々実践する管理運用体制が不可欠である。そこで後編では、ベジフルスタジアムにおいて場内物流の統括的運営を担う株式会社福果物流に焦点を当て、その一括管理の仕組みと役割について報告したい。