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調査・報告 野菜情報 2026年10月号

これからの産地育成のヒント~生産者・産地に寄り添うJA・産地市場~

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青果流通経営コンサルタント 本田 茂

【要約】

 農業人口の減少という大きな課題に直面し、気候変動なども含め、産地からの供給が不安定となることが予想される今後は、産地や市場の関係者側が生産者(農家)の抱える課題を把握し支援することにより、生産者が持続的に営農でき、かつ所得の確保につなげることができると考えられる。本稿では、農家や産地の課題ごとに支援を行う農業協同組合や卸売市場、卸売業者の取り組み事例についていくつか紹介する。

1 はじめに

 青果市場流通は、一年を通して全国の産地リレーをつくり上げ、効率的かつ需給に応じた市場価格で取引するシステムをつくり上げてきた。筆者は、長年にわたり青果市場業務に携わってきたが、実務担当者としては、日々変動する規格ごとの数量と相場価格の変動に追われ、喫緊の入荷物と市場価格に集中するあまり、産地の生産者の属性や課題についてまで考える状況になかったのが実情である。
 生産者が減少し、産地からの供給が不安定となってくる今後は、市場担当者と会話する産地担当者や取引先も含めて、もっと生産者のことを知るべきだと考える。今後、野菜の産地とその関係先がどのような視点での支援ができるか、事例を踏まえて報告する。

2 農家経営の課題に向き合う産地支援者

 『野菜情報』2026年8月号では、農家の販売規模別などにより、その特徴や経営課題が異なり、規模が大きくなるほど課題は複雑化することを報告した。これと併せて、本稿では、部会をまとめる農業協同組合(JA)や、地方卸売市場を構成する卸・仲卸業者(以下併せて「産地支援者」という)ができる支援を表1、2にまとめた。

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 さらに、ここから農家が支援を求めている課題を(1)~(6)の六つの項目に整理した。この課題に対して、個別農家が農業経営を持続でき、産地が維持されると考えられる支援策を紹介する。

(1)労力負担
 全農家(農業経営体)の85%を占める販売規模が1000万円未満の経営体にとっての一番の課題は、高齢化に伴う労働力の確保である。生涯、できる限り元気で農業をしたいと思う反面、病気など万が一のときには、営農が継続できなくなる不安を常に抱えている。また、後継者がいて規模拡大する農家でも、繁忙期の作業が集中し、労働力不足から作業遅れによる収量の減少が大きな課題である。
 この課題に対し、今後、産地支援者ができることは、庭先集荷やバラ集荷により、農家の省力化を強化することである。園芸が盛んな地域では、JA系統と商系(産地市場や産地集荷業者)が、お互いに切磋琢磨しながら庭先集荷やバラ集荷サービスを行ってきた結果、農家が潤い、産地としても出荷量を維持できている例もある。
 また、近年では、市場が自ら雇用して農家への作業受託支援を行う事例も出始めた。このような取り組みこそ、農家の高齢化や、万が一のときにも安心して作業委託ができるという安心感を提供でき、自分の体力に合わせてセカンドライフを楽しみつつ、省力化により農業を継続することができる。周年作業がない農業では、周年雇用するリスクを懸念する声もあるが、近年はスポットワークの活用や選果場の仕事など、農業以外の仕事を組み合わせるなど工夫できるはずである。この取り組みこそ、多くの産地が実施すべき支援であると注目している。
 
(2)スタッフ育成・労務管理
 規模が大きくなるにつれて、パートや正社員雇用が必要となり、スタッフの育成や労務管理で困っている農家は相当数に上る。労災保険、雇用保険、社会保険、残業代などの給与計算、有給休暇管理など、事業主がなすべき業務は複雑化しており、その分の負担が増加し、多くの農家が煩わしさを感じるだろう。
 一方で、組織であるJAなどや市場の管理部は、こうした実務に精通し、社会保険労務士(社労士)と提携しているところも多い。農家の労務管理の支援として、給与計算の代行や労務管理の指導、提携する社労士に個別に相談できる場をつくることなど多岐にわたる。
 筆者は、繁忙期が一区切りした後に、農家の家族とスタッフを全員集め、作業の振り返りのミーティングを行う。終わったばかりの作業を振り返りながら、作業の反省点だけでなく、この作業は家族がスタッフに任せることができていない、では来期はスタッフに役割をどう任せていくか―を話し合う。スタッフに任せることが増えれば、やりがいにつながり、率先して動けることも増えていく。雇用側も労務管理などを外部に任せることができれば、その分スタッフ育成の時間や、今後の経営を長期的に考える時間も生まれる。こうした支援も、産地支援者ができるとよい。
 
(3)設備投資と資金繰り
 新規就農者や後継者のいない専業農家などは、今後に向けて設備投資をすべきか逡(しゅん)巡(じゅん)しがちである。返済不安から、大きな設備投資をためらう農家は多く、離農する要因の一つにもなっている。ある地方市場の事例では、新しい品目を今後ブランド化していくに当たり、選果機や管理機を市場が購入して農家に貸し出すサービスを行っている。農機具の貸し出しや、ハウス投資のリース事業などは、こうした農家の設備投資と資金繰りの大きな支援となる。資材費などが上がっている今だからこそ、強化すべき支援だと考える。
 
(4)農業経営・会計処理
 労務管理と同様に、会計処理も農家にとって負担の多い業務の一つである。白色申告のままの農家や、青色申告の10万円控除(貸借対照表を作らない)にとどまっている農家も少なくない。筆者がもったいないと思うのは、農家が会計を分析せずに申告のみで終わらせていることである。
 筆者は、決算書を見て分析することで、1)数字と現場のすり合わせを家族で共有すること、2)過去の決算書を基に予測損益や1年先のお金の見える化をすること―をすべきであると、講演する経営セミナーなどで常々訴えている。JAなどでは、複式簿記の指導や記帳代行をしているところも少なくない。今後、記帳代行で終わらせずに、農家が家族と一緒に決算書を振り返る場をつくることが大事であり、産地全体が「稼げる農業経営体」となるべく成長できるように伴走することが、できる支援の一つとなると考える。
 
(5)販路の確保
 規模が大きくなるほど、雇用するための人件費、ハウスの減価償却費などの経費が増加するため、小規模の農家より大規模農家の方が、豊作時の市場価格下落による手取りの減収が負のレバレッジ効果として作用し、経営のリスクが増加する。大規模化していく場合や、契約取引を行う場合こそ、独立行政法人農畜産業振興機構が実施する「野菜価格安定対策事業」というセーフティネットへの加入などにより、リスクを低減させておく必要も検討されたい。
 また、有機栽培に取り組む農家は、こだわりのある消費者という個別の販路を見つけている反面、個別の家に届ける配送費分が割高になり、取引の継続性に課題を抱えている。
 JAや産地市場では、平等性が重視されるため、農家に同じ販売価格を提示する意識が働きやすいが、今後は、産地の中でグループ(例えば、特徴ある栽培をするグループ、有機農業に取り組むグループ、食味重視の品種に取り組むグループなど)をつくり、グループごとに相対取引や契約取引をしてもよいのではないか。グループは、手上げ方式にすれば、平等性は確保され、部会の中に新しい挑戦を行う生産者グループをつくることは、販売先にとっても、別枠で相対取引や契約取引を行う切り口になる。特に有機野菜のグループは、産地から輸送するトラックの荷台に一部でも枠を設けてあげれば、有機野菜を求めている消費地の店に、手に取りやすい価格で届けることもできる可能性がある。
 
(6)家族間のコミュニケーションと後継者問題
 最後に、多くの農家では、家族間のコミュニケーションと後継者問題が課題となる。筆者は、農家の経営コンサルタント業務において、家族間のミーティングの司会進行をメインの仕事としている。第三者が入ることで、感情的になることを抑えられる。筆者が留意している点は、1)家族全員と公平に接すること、2)悪い部分よりも良い部分(できたこと)に注目すること、3)なるべく全員に発言してもらうこと―の3点を意識している。労務管理や会計処理を代行することなどにより、農家のことをよく知っているJAや産地市場の職員も、年に1~2回は農家の生産や販売の振り返りに参加し、支援してもらえたらよいと考える。

3 事例

2で紹介した支援策を、実際に産地支援者として取り組んでいるいくつかの事例を紹介する。

(1)山形農業協同組合~新規就農者への支援~
 2026年8月号でも紹介した通り、新規就農者の営農開始に当たっての課題は山積みであるが、山形農業協同組合(以下「JAやまがた」という)では、新たな担い手を増やすことを目的に、JAやまがたが農地とハウス設備一式を整備して、新規就農者に貸し出すというきゅうりの団地構想が始まり「JAリース農場方式」と名付けられた(写真1、表3)。

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 本事例では、最初に取り組みを始めたきゅうりを中心に紹介する。山形市は、きゅうりの産地であるが、きゅうりは労力のかかる品目であり、全国的に、高齢化による生産者減少が他の品目以上に問題となっている。JAやまがたは、以下の2種類の補助金を活用し、「水田畑地化基盤強化対策事業」により、暗渠(あんきょ)排水や井戸などの基盤整備を、「産地パワーアップ事業」により、パイプハウス86棟、暖房機、トラクター2台、畝立機2台を整備した。総事業費は3億4000万円という規模からも、当時のJAやまがたの本気度がうかがえる。
 非農家からの新規就農者18人、親元就農から新規品目へ進出する農家など3人の計21人(以下「トレーニー」という)が、このJAリース農場方式を活用した。
 1人当たりが担当する平均面積は10アールほどで、ここでトレーニングをして地域に縁を作り、規模拡大をしてステップアップすることを目的としている。山形県の普及員と連携し、県が環境モニタリング装置を設置して、勘や経験がなくても新規就農者が技術を高められるように指導を行っている。
 筆者がこの取り組みに感心したポイントは、二つある。1点目は、管内のベテラン農家にも環境モニタリング装置を設置し、ベテラン農家とトレーニーのデータ比較をしながら技術指導をしている点である。2点目は、団地での勉強会は、トレーニー全員の圃場(ほじょう)を順に回り、お互いの圃場の状況を常に比較しながら指導している点である(写真2)。

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 農家は、自らの勘と経験による技術に頼り、意外と同じ地域でも他の生産者の栽培技術を知らないのが一般的である。このような状況が、栽培技術を若手に継承できない原因の一つでもあるが、このように県が間に入ることで、データ比較やお互いの圃場を比較しながら、農家が一人で悩まずに、技術習得と仲間づくりができる環境が形成されている。
 現在では、JA農場リース方式の導入から8年が経過しているが、ここで順調に技術を習得して経営を軌道に乗せて無事に卒業し、新しい農地で規模拡大をしている農家がいる一方で、残念ながら途中で営農を断念して辞めた農家が数戸ある。
 新規就農したものの、実際にやってみて自分には向いていないと分かり、営農を辞めるという選択をすると、農業は始める段階の初期投資が大きいため、金融機関からの大きな負債を抱えることになる。再スタートも自己破産してからという状況に陥るため、農業ははじめの一歩が踏み出しにくいのが一般的である。
 このJAリース農場方式により、まず新規就農にチャレンジしてみるという環境を、県と産地がつくっていることは、産地を維持していく上で大事な取り組みである。また、山形県が、国の「産地パワーアップ事業」を活用してこのような生産者支援を先進的に行ったことで、県内外にも同様の取り組みが波及した。
 このような取り組みは、全国のJA組織でも同様の事例があるかと思うが、農家戸数が減少局面にある今だからこそ、改めて新規就農者を、そして産地を育成する取り組みとして注目される。
 
(2)株式会社須崎青果~地方卸売市場で集出荷に取り組む事例~
 高知県は冬場も温暖な環境から施設園芸が盛んで、JA系のシェアが高いものの、かつては120億円の規模を誇った赤岡市場をはじめとする産地市場も活発で、お互いに生産者の出荷物を獲得するために切磋琢磨している地域である。
 株式会社須崎青果(以下「須崎青果」という)では、役員3人の明確な役割分担をし、それぞれリーダーシップを発揮してきた。社長は、鮮度保持機能のあるにらの包装機を導入し、設備投資をしてパッケージセンターを建築し(写真3)、コールドチェーン化と品質保持に取り組み、さらに「元気な畑のごちそう」という自社のブランドをつくってきた。専務は、グループ会社の株式会社カネエイの営業トップとして、卸売市場の先の量販店に向けた相対取引を強化し、消費者ニーズに合わせた独自商品企画(なすの大袋販売など)による有利販売に努めてきた。常務は、エリアごとに生産者訪問を行い、戦略的に生産者との信頼関係を築きながら入荷元を増やしてきた。このような取り組みにより、売上高はわずか13年間で3倍以上となった(表4)。
 近年では、エリアごとに生産者の出荷金額を上位から並べ、前年と比較し経営を分析するABC分析(注)を行い、生産者ごとに書面を作成して訪問し、前シーズンの振り返りや、生産者が困っていることは何かなどを、社内でデータとして集めて営業に生かそうとしている。
 
(注)ここでのABC分析は、生産者を販売金額により層別に三つに分類する。それぞれに合ったマーケティング施策を立案することで、効率的なアプローチを行う。

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 また、日本事務器株式会社が開発した「fudoloop」というアプリを出荷する生産者にも登録してもらい、アプリを通して日々の売り立て情報を当日の午後には届けている。例えば、売れ行きから、なす1パックを5本入りにすべきか、または3本入りにすべきかを検討するなど、少しでも販売単価アップにつながるよう活用されている。そのほか、週間の相場予測など生産者が役立つ情報を提供している(写真4)。
 須崎青果に出荷する生産者において、販売規模1000万円未満の生産者が8割以上を占める一方で、同社の売り上げの50%は、1000万円以上の農家からの出荷によるものである。そこで、このような1000万円以上規模の農家に対する支援の一環として、筆者が講師を務める農業経営セミナーを令和6年から実施している(写真5)。セミナーの前後の時間やWEBミーティングで個別に面談を行い、決算書を見ながら、財務状況の点検、今後の資金繰り、雇用や事業承継など、普段はできない話ができるとの感想を得ている。今後は、複式簿記の講習会を中心とした経営セミナーなどを企画している。また、須崎青果のホームページ上で、経営に役立つコラムも発信している。筆者が知る限り、青果市場がこのようなコラムの発信や、大規模農家向けに経営セミナーを企画している事例はまだほとんどないと思われ、経営トップが先頭に立って変化に対応していこうと常に前向きに挑戦している。

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(3)丸果会津青果株式会社~アイディアで農家の所得向上~
 丸果会津青果株式会社(以下「丸果会津」という)のある福島県は、平成23年の東日本大震災時の原子力発電所事故に伴う放射性物質放出の風評被害を受けた地域である。それにもかかわらず、令和7年度の売上高は48億円(平成15年度比17.1%増)と、平成15年度の41億円から7億円伸びた(表5)。同社がある会津地方の人口は22万人という規模のため、売上高がこれほど向上したのは、さまざまな取り組みが功を奏し、健闘している市場だからだと言える。理由として、会津地方が南郷トマトなどの園芸が盛んな地域であること、買参人約50人、仲卸業者が4社おり、現在でもせりを中心に行うなど市場に活気があることが挙げられるが、このほか、以下の農家支援を行っていることも特筆すべき一因だろう。

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ア 規格簡素化した袋詰め品を首都圏の産直コーナーへ配送
 丸果会津から車で40分離れた南会津地域では、農家の高齢化が進んでおり、農協へ小ロット、かつ規格を満たす品を出荷できないという問題があった。そこで、会津よつば農業協同組合と相談し、小ロットでなおかつ規格を簡素化した上で、下郷地区にあるJA集荷場にて荷分け作業などを行い、産直用の袋に詰めて出荷してもらい、それらを丸果会津が首都圏の量販店の店舗向けごとに仕分けし、翌日には店頭に並べる取り組みを行っている(写真6、7)。

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 例えば、赤くなったトマトは通常の規格品としては出荷できないが、産直品として販売すればお金に変えることができる。このような規格外品を「さすけねえ」野菜として、量目を増やしお得感を出す工夫をして、消費地の量販店向けに販売している。「さすけねえ」とは、会津の方言で「差し支えありません」という意味で、むしろこうした地場を意識した商品の方が売れるという(写真8)。丸果会津は、現在、首都圏の量販店1社と契約し、その約100店舗に納品し、この契約で2億円の販売を維持している。
 また、この取り組みにより、高齢化した小規模農家だけではなく、大規模農家の規格外品も産直品として出荷することにより、農家の所得の確保につなげている。

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イ 有機野菜を大手量販店の有機コーナーへ配送
 一般的な観点から言うと、有機野菜生産者と市場は、本来相性が良くない。有機野菜は、規格や見栄えよりも、化学肥料を用いないなどのコンセプトを重視し、その分収量にも限界があるため、小ロットの出荷となりがちである。一方、市場流通は、消費地になるべく安く安定して供給するために大量輸送を行う効率性が重視されるため、真逆を追い求めているとも言える。
 会津地方にも有機野菜に取り組む生産者団体があったが、そこに丸果会津の先代の社長が出向き、「一人でも多くの消費者に自分たちの野菜を届けるべきではないか」と直談判し、同社の物流システムにより、大手量販店の有機野菜コーナーへ配送することを始めた。販売価格は、生産者団体が希望する手取り単価に諸経費を乗せたものとしている。ほぼシーズンを通して、同じ価格で契約するため、野菜が高騰したときは、有機野菜の方が安くなることもあるという。  最盛期には生産者33人で4000万円の売上高があったが、近年は生産者が30人を下回り、それに伴い売上高も3000万円ほどに減少した。有機野菜の販売先は、現在、東北地方に10店舗、南関東地方に10店舗ほどあり、需要に供給が追い付いていないという(写真9)。部会の生産者数は減少しているが、部会に所属していない新規の有機生産者が増え始めているそうだ。

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 このような丸果会津の取り組みの背景には、経営層が首都圏の量販店バイヤーとの商談を通して、産直コーナーのニーズについて把握していたこと、一方で農家側の課題にも目を向け、市場に出荷できない農家にどのような支援ができるかを考え、自社の中でその二つをマッチングさせるための仕組みづくりを行った。そして、何よりも実行力があったことが大きい。
 農家の課題に目を向け寄り添うことが、このようにゼロから数億円の売上高を生み出すことができる。せりを主体としているため、時間によって量販店の店舗ごとに商品を仕分ける業務を加えても、午後には帰宅でき、働きやすい労務環境が維持されている。冬は、毎日農家の巡回を行い、日々信頼関係を強めている。

4 おわりに

 これまでは、高度経済成長とともに、都市部を中心とした消費地での需要増加に対応するため、産地全体で量を集め、品質を高めて産地のブランド力を高め、優位な販売をしていく戦略をとる産地が多く、すべての生産者に平等な支援を行ってきた。しかし、近年の農業を取り巻く課題を見ると、生産者の高齢化や離農が進み、この生産者の減少を経営体の規模拡大で補ってきた。その結果、量や質を高めながら規模拡大を行ってきた一部の大規模生産者は、努力に見合った恩恵を感じられず、産地から独立して自力での販売に舵を切る者も出てきている。実際に、販売規模では、億を超えるスター農家がおり、生産から販売までを押さえ、組織化や経営管理もできる経営者が出てきている。
 しかし、農業はすそ野が広く、「地域」や「産地」を守り、維持していくという概念も大事である。代々継承する家族経営や、農ある暮らしを求めて一念発起する新規就農者、定年後に地域に戻り就農する生産者、後継者はいなくても生涯現役で農業を生きがいとして行う生産者、地域を守る責任とプライドをかけ規模拡大に挑戦する若手生産者、企業経営を目指し六次産業化やスマート農業に取り組む生産者など、さまざまな立場があり、その受け皿となるのが産地の役割であると思う。時代は、農業人口の減少という大きな課題に直面している。消費者も多様化している。これまでと同じ農業や慣習でよいのだろうか。
 本事例では、組織の強みを生かし、経営トップが信念を持ち、リーダーシップにより取り組みを始めた事例をいくつか紹介した。事例では、自社だけで完結するのではなく、普及員や専門家や取引先と連携して支援しているものもあった。
 マーケティング(営業)の基本は、ターゲットを絞りターゲットの課題を解決することである。そのためには、農家ごとの課題を一番先に聞く現場の担当者が、農家や産地の困りごとに耳を傾けて、一緒に課題解決ができないか考えながら地域や産地を活性化して欲しいと考える。
 
 
 
本田 茂(ほんだ しげる)
青果流通経営コンサルタント
HS経営コンサルティング株式会社 代表取締役
 
【略歴】
 平成7年全国農業協同組合連合会入会後17年間青果物流通の最前線に立つ。全国のJAから野菜を集め、大手量販店、生協に販売する大卸と仲卸の業務を併せ持つJA全農青果センターに勤務。日々変動する相場と需給の中で直近では26億円の販売実績を持つ。平成24年9月末でJA全農を円満退職し、17年間の青果物流通の経験と中小企業診断士の資格を活かし、農業経営支援・青果卸売市場流通の分野に特化したコンサルタントとして独立する。
 不確定要素の多い農業経営の分野でも、ビジョンと目標の設定、予測損益と毎月の進捗管理及び人材育成を農業経営者とよりそいながら強い経営体作ることを支援する。農業経営を良くするには、(1)未来の数字を見える化する。(2)毎月のミーティングでチーム力を高めること。この2点に特化している。家族や社員を大事にする家族経営の農家に頼りにされる「農家の町医者」を目指して活動している。

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