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調査・報告 野菜情報 2026年8月号

施設園芸経営体におけるコンサルタントの活用~株式会社はぐみ農園 (高知県)およびマキシマファーム株式会社(宮城県)の事例より~

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国立大学法人千葉大学大学院 園芸学研究院 教授 櫻井 清一

【要約】

 施設園芸経営では、利用施設の大型化と高度化、さらに働き手の増加を含む組織としての規模拡大が進展している。そのため、経営組織の再編に取り組む場合や、日常的な作業管理において、専門的知識を有するコンサルタントを活用するケースが増えている。今回二つの経営体の活用事例を紹介する。一つ目の株式会社はぐみ農園(高知県)では、農場の経営管理の改善にコンサルタントの意見を取り入れ、雇用労働者の役割分担の明確化や人事評価において成果を挙げている。二つ目のマキシマファーム株式会社(宮城県)では、栽培状況について、コンサルタントによる定期的な実地見聞と環境データの確認、その後の助言を受けることにより、収量の向上を実現している。

1 はじめに

 園芸作においては、従来より、プラスチックハウスやガラス室を利用する施設栽培が取り組まれている。特に近年、施設の規模の大型化や、施設内に設置される空調施設、水管理施設、培地システムなども高度化が進展している。施設の大型化・高度化に伴い、経営体自体も従業員が増え、組織として大型化や法人化が進みつつある。
 特に大型の施設を導入する場合、栽培技術の面でも経営組織の面でも、従来のレベルから大幅に飛躍した新たな取り組みを実践する必要が生じる。このため、これまでの経験で得た技術やノウハウを連続的に展開するだけでは対応できないことも多い。
 農業経営を行う上で、このような新たな段階に直面する場合には、時としてその分野の専門的知識や経験を有する技術者・専門家にコンサルティングを依頼することがある。しかし、コンサルティングを導入しても、その専門的な知見を栽培現地の施設や経営体全体の状況と比較し、調整しながら適用しないと、成果が上がらないこともある。加えて、その導入には一定の費用も要するため、どのような状況においてコンサルティングを依頼するかのポイントをまず把握することが重要である。
 本稿では、大型の施設を導入した園芸経営体において、どのようにコンサルタントが活用されているか、二つの経営体の事例を紹介しながら、コンサルティング導入のポイントを検討する。

2 施設園芸経営におけるコンサルタント活用の背景

―農研機構・田口研究員の見解を中心に―
 農業法人の経営管理問題に詳しい国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)・田口光弘氏(以下「田口氏」という)は、2025年9月に開催された日本農業経営学会シンポジウムにおいて、施設園芸経営におけるコンサルタントの利用実態についての詳しい報告を行っている(注)。田口氏によれば、施設園芸経営体がコンサルタントを利用する理由ないし背景、さらに実際の利用形態は、大きく二つのパターンに分かれるという。
 まず、施設園芸経営体では、雇用労働力に依存した経営規模の拡大が進んでいる。施設自体の大型化・高度化が進みながらも、多くの作目において、収穫は依然として手作業に依存している。また、日頃の管理作業においても、施設の大型化に対応するため労働力を増やす必要がある。小規模なプラスチックハウスによる経営で想定される、家族労働力と若干の季節雇用労働力のみでは、大きくなった施設を回すことはできず、一定数の雇用労働者を定期雇用する必要がある。そのため、小規模家族経営とは異なる組織づくりや労務管理体制の確立が求められるが、それは家族経営時代の体制の延長なり修正では簡単には達成できない。そのため、経営組織や人的資源に関する管理の知見や経験を有する専門家による、経営面でのコンサルタント業務への期待が高まっている。
 また、施設の大型化・高度化に伴い、一定規模のガラス室では、温度・湿度・CO₂濃度などを最適に保つ環境制御システムが導入されるようになった。こうしたシステムでは、施設内の環境状況が自動的にモニタリングされていることも多い。しかし、モニタリングの結果、蓄積される環境データを適切に解釈し、さらに施設自体や地域の環境特性も加味しながら最適な管理作業を実践するのは、簡単ではない。また、これまでの施設園芸経営を技術面からサポートしてきた農業協同組合(JA)の営農指導員や都道府県の普及指導員が、必ずしも大型施設を前提とした栽培技術・管理に習熟しているとは限らない。そのため、大型施設での栽培経験を有する技術者による、栽培技術面のコンサルティングの要望も高まっている。
 田口氏が指摘した、経営管理面と栽培技術面の両面についてのコンサルティングの重要性が高まっていることに関連して、特に施設園芸独自の特徴として、筆者は経営・技術両面での大幅な刷新の必要性を指摘したい。園芸施設が大型化する場合、特に合計1ヘクタールレベルに迫る大型ガラス室を整備する場合、それまでの小規模プラスチックハウスを前提とした栽培技術ないし経営組織管理(労務管理も含む)の修正という「改善」レベルでの対応は難しい。新規の栽培技術ないし組織管理システムを立ち上げ、それを運用しなければならない。こうした運営での大幅な「刷新」の必要性が生じることも、自身の経営に蓄積されていないノウハウを有するコンサルタントへの依存を高める方向に作用すると考えられる。
 
注)田口氏の詳しい報告内容は、下記の通り学術論文として公開されている。
田口光弘・中江明男「施設園芸経営における農業経営支援サービスの実態と今後の展開」『農業経営研究』64(1)、40-47、2026年

3 経営管理面におけるコンサルタントの活用

―高知県における株式会社はぐみ農園と合同会社フレーム宝珠・中江氏の場合―
 株式会社はぐみ農園(以下「はぐみ農園」という)は、高知県安芸市にて2006年に創業した。創業者の西内直彦氏(以下「西内氏」という)は新規参入者である。小規模なハウスでのトマト栽培からスタートしたが、その後ピーマンの栽培にシフトし、大型施設を導入して規模拡大を実現し、17年に法人化(株式会社)を果たした。現在、安芸市に5棟、合計127アールの施設を有するほか、25年には南国市に120アールの大型施設を1棟導入している(写真1)。これにより、高知県内でも有数の施設栽培ピーマンの経営体に成長している。従業員構成は、役員と社員計12人に加え、特定技能の資格を持った外国人材(以下「特定技能外国人」という)12人、研修生2人、パート職員12人である。なお、役員と社員12人の中にも特定技能外国人が含まれている。


 はぐみ農園は急速に経営規模を拡大したが、その過程では、家族労働者と雇用従業員との役割分担や、一部従業員の早期離職といった経営管理上の課題を経験した。そこで、より持続的な経営組織づくりのため、それまでピーマンの取引にて交流のあった合同会社フレーム宝珠(以下「フレーム宝珠」という)の中江明男氏(以下「中江氏」という)に23年より経営管理面でのアドバイスを依頼し、現在に至っている(写真2)。


 中江氏は大学卒業後、金融機関に勤務していたが、その後同級生が経営する九州の著名な大規模農業法人に転職し、組織づくりに関する業務に従事した。その経験が現在のアドバイザー業務に影響を与えているという。中江氏は16年にフレーム宝珠を立ち上げたが、当時は野菜生産者の契約販売に取り組む流通業を主たる業務としていた。ある時、契約先農家から、かつて中江氏が勤務していた前出の大規模農業法人(九州)を視察したいとの要請があった。その後も経営や組織づくりへのアドバイスを求められることが続いたため、23年から農業経営のアドバイザー業務に取り組み始めた。現在は香川県と高知県の複数の経営体を相手にアドバイザーないし支援業務に従事している。
 中江氏は業務を進めるに当たり、生産者(経営者)と対等の立場で取り組むことを重視しており、自身ではコンサルタントとは称さず、「アドバイザー」として業務に取り組んでいる。アドバイザー業務を行う際は、最初にその経営体の直近の決算報告書や青色申告の書類などを経営者とともに見直すようにしている。その上で、中江氏自身がその経営体の経営特性を把握するとともに、経営者に対して数値指標を用いた的確な成果分析を促している。中江氏の報酬は事前に相談の上、業務に従事した日数に基づいて支払われる。現在、中江氏ははぐみ農園の経営企画部にも籍を置いており、毎月の業務時間のかなりの部分を同農園で過ごしている。
 はぐみ農園において、中江氏が西内氏、および現在の代表者である由加利氏(創業者の妻、以下「由加利氏」という)とともに進めた取り組みは、いずれも経営管理ないし組織づくりに関するもので、以下の5点に整理できる。

(1)組織体制の確立:組織図を作成し、規模拡大した経営体の部署ごとの役割を明確化した。ハウス棟別、さらにエリア別に業務内容を体系的に整理した。また、従業員の組織への動機付けを高めるため、社員総会のほか、新入社員に対しては入社式を開催している。
(2)業務に応じた給与体系の確立:現在は従業員を、作業のみに従事する一般職と、より高度な意思決定にも参画する総合職に分けている。総合職には特定技能外国人も含まれる。また、作業管理区分ごとに細かく業務評価を行い、従業員の役割と実績に応じた給与を支払うルールを整えた。
(3)社内表彰制度の導入:年に一度、優れた実績を上げた従業員を表彰する制度を設けた。その際、20程度の項目をまとめた自己点検シートを提出してもらい、従業員の自主性・主体性も加味して表彰している。
(4)JGAPの申請と維持審査・更新審査:はぐみ農園ではかねてよりJGAPに関心を持っていたが、書類作成が煩雑なため、なかなか取り組めていなかった。中江氏の支援により、申請に必要な帳簿類が整い、JGAPの認証を受けることができた。JGAPは認証後も維持審査・更新審査が必要だが、その書類作成やデータ収集に関しても中江氏のサポートを受けている。
(5)その他:中江氏の支援を受けてから、各種補助金の情報収集を行い、申請に進むことができた。例を挙げると、JGAPの審査料金、イベント出店時のブースの経費、トイレの設置費用、フォークリフト・ピーマン包装機をはじめとする機械類の導入など、さまざまな場面で補助金を有効活用できた(写真3)。


 このように、はぐみ農園では経営面・人的管理面を中心に中江氏のアドバイスを受けており、その成果もすでに現れている。実際の作業・役割(役割・責任・権限)を全従業員に示して以来、従業員から日頃の作業における気付きを報告される機会が増えたという。また、日本人および特定技能外国人をはじめとする外国人材の従業員の定着率も向上した。このことに関連して、はぐみ農園における外国人材とのコミュニケーションについて付言しておく。はぐみ農園では当初、基本的に西内氏が施設栽培に関する環境データをまとめて管理していた。しかし、代表者を由加利氏に交代した頃より、環境データをなるべく従業員間で共有する方向へと改善を図っている。環境データの基本的な活用方法は、ハウス棟の現場で把握される情報の共有と、それに基づく作業指示、そしてその遂行・確認である。作業については、外国人材は全て日本語で指示を受け、その報告もLINEなどを用いて日本語で行われる。そのため、日本語の習得が極めて重要であるが、はぐみ農園では、日本語による指示を徹底することで外国人材に対し日本語学習の動機付けを高めている。実際、外国人材の学習意欲は高く、日本語能力の向上がより効率的かつ細やかな作業の貫徹につながるという相乗効果をもたらしている。
 中江氏は、はぐみ農園だけでなく現在関わっているすべての支援先農場の経営者・代表者に対し、「経営の核になる者は、単なる作業者でなく、より高次の意思決定ができる経営者に成長してほしい」と願っており、その実現のためにアドバイザー業務を継続している。

4 栽培技術面におけるコンサルタントの活用

―宮城県におけるマキシマファーム株式会社の場合―
 マキシマファーム株式会社(以下「マキシマムファーム」という)は、2016年に宮城県松島町にて創業した大型施設で、トマト栽培を営む農業法人である(写真4)。設立当初は大玉トマトを栽培していたが、収量の問題や同業者からの提案もあり、23年よりミニトマトの栽培に移行した。現在の施設面積は100アール(実栽培面積は90アール)、従業員は正社員7人、外国人技能実習生3人、特定技能外国人2人、パート職員10人の計22人である。農場長の浅野和友氏(以下「浅野氏」という)は、非農業分野から8年前(2018年)に同社に入り、現在は施設の管理を統括している。

タイトル: p075

 マキシマファームでは、ミニトマトに転換した23年より、施設トマト栽培に詳しいA氏から栽培技術と施設内の環境データモニタリングに関するコンサルティングを受けている。A氏は全国的に知られる大規模施設経営体の職員だが、以前より別組織でも水耕トマト栽培に関わってきた専門家である。浅野氏はミニトマトへの転換を検討していた頃に種苗会社が主催した学習会でA氏と知り合い、コンサルティングを依頼して現在に至っている。
 A氏によるコンサルティングを受ける前、マキシマファームは宮城県が主導した施設園芸コンサルティング事業を利用して派遣されたコンサルタントから指導を受けた経験がある。この事業は21年より2年間実施され、一定規模以上の施設を有する経営体に園芸系著名企業の技術者を年5回派遣し、農園の巡視(午前)と集合研修(午後)を経てアドバイスを受けるというものであった。研修には地元のJA関係者や農業普及指導員も同席し、知見を共有する目的もあった。しかし、浅野氏の感触としては、研修で得た知見は一般的なもので、栽培技術に関するアドバイスもマキシマファームの状況と合致しないものがあった。温度管理に関するいくつかのアドバイスを実践してみたものの、目立った成果は得られなかったという。
 一方、現在A氏から受けている栽培技術コンサルティングは、費やす時間も長く、得られる情報もより密度の高いものとなっている。A氏によるコンサルティングは、週1回のWEBでの指導と、月1回の対面での指導により構成される。週1回のWEBでの指導では、まず1週間分の各種環境データ(事前送付もあり)と、浅野氏が撮影した生長点、着果状況をはじめとする施設内の動画を共有しながら意見交換を行う。また、対面式のコンサルティングは、1泊2日のスケジュールにて実施される。最初にA氏が施設内の重要箇所を巡視する。その際、A氏は生長点や着果の状況を特に重点的に確認するという。さらに、巡視と並行して施設内の各種環境データをチェックする。特に重点的に確認するのは日射量、気温の変化と湿度である。これらは着果数と深く関連するという。日程の最後に、温度管理方法をはじめとする各種アドバイスを行う。
 浅野氏によれば、A氏の説明・助言は、自身のこれまでの栽培経験、他の農園でのコンサルティングを通じて得た知見を基とし、さらにマキシマファームの施設や立地の独自性も考慮しているため、実効性の高い情報が得られるとのことである。そして、コンサルティングで得た知見やアドバイスの実践により、実際にトマトの単収が向上し、売り上げ増加につながった。売り上げの増加分は、A氏の年間のコンサルティング料金と交通費を大幅に上回っているという。
 浅野氏は、栽培技術面でのコンサルティングに当たり、助言を受ける側の姿勢も重要であると考えている。具体的には、施設内のどこに問題があるのかを受ける側が事前に把握し、それからコンサルタントに具体的に依頼すべきであり、状況を十分に把握しないままコンサルタントに丸投げするのは適当でないと考えている。助言を受ける側がまず実態を説明し、その上でアドバイスを受けるべきと主張する。それにより、有効な助言も得やすくなるし、説明する施設の技術者=growerも成長すると考えている。

5 おわりに

 本稿では、施設園芸経営体が経営拡大を図る場面において、コンサルティングを導入することについて、その必要性が高まっている背景・状況を説明した後、二つの施設経営体における導入事例を紹介した。
 高知県のはぐみ農園では、経営管理の改善や組織づくりの場面においてコンサルティングを導入していた。また、宮城県のマキシマファームでは、施設内での環境制御に関するデータと実際の生育状況とを比較しながら、栽培技術の改善につながるコンサルティングを受けていた。
 両農園とも、コンサルティングを担う専門家側は、丁寧に現場の状況を把握し、それを自身の経験および他の事例から得られた知見と比較しながら、対象経営体の持続性に貢献し得る具体的な助言・指導を行っていた。また、コンサルティングを受ける農園の経営者・技術者も、コンサルタントに全てを任せるのではなく、施設の状況、作物の生育状況あるいは経営管理に関する現状と課題を具体的に伝え、コンサルタントから有用な解釈なり情報を引き出そうと努力していた。
 コンサルティングは、一過性の指導ではなく、継続的な改善プロセスとして機能することが理想である。状況を十分に把握しないまま、コンサルタントに判断を委ねる「丸投げ」は、有効な成果につながりにくい。コンサルティングを経営体内部の課題整理と意思決定能力を高めるための補完的な仕組みと捉え、助言の具体性や実効性を高めるためには、コンサルティングを受ける経営者・生産者側が、自身の経営や施設栽培のどこに問題意識を持っているのか、何を改善したいのかなどを十分に把握した上で、情報やデータを蓄積・整理し、説明できることが重要となる。この過程を通じて、経営者・生産者の判断力や技術力も向上していくのである。