―高知県における株式会社はぐみ農園と合同会社フレーム宝珠・中江氏の場合―
株式会社はぐみ農園(以下「はぐみ農園」という)は、高知県安芸市にて2006年に創業した。創業者の西内直彦氏(以下「西内氏」という)は新規参入者である。小規模なハウスでのトマト栽培からスタートしたが、その後ピーマンの栽培にシフトし、大型施設を導入して規模拡大を実現し、17年に法人化(株式会社)を果たした。現在、安芸市に5棟、合計127アールの施設を有するほか、25年には南国市に120アールの大型施設を1棟導入している(写真1)。これにより、高知県内でも有数の施設栽培ピーマンの経営体に成長している。従業員構成は、役員と社員計12人に加え、特定技能の資格を持った外国人材(以下「特定技能外国人」という)12人、研修生2人、パート職員12人である。なお、役員と社員12人の中にも特定技能外国人が含まれている。
はぐみ農園は急速に経営規模を拡大したが、その過程では、家族労働者と雇用従業員との役割分担や、一部従業員の早期離職といった経営管理上の課題を経験した。そこで、より持続的な経営組織づくりのため、それまでピーマンの取引にて交流のあった合同会社フレーム宝珠(以下「フレーム宝珠」という)の中江明男氏(以下「中江氏」という)に23年より経営管理面でのアドバイスを依頼し、現在に至っている(写真2)。
中江氏は大学卒業後、金融機関に勤務していたが、その後同級生が経営する九州の著名な大規模農業法人に転職し、組織づくりに関する業務に従事した。その経験が現在のアドバイザー業務に影響を与えているという。中江氏は16年にフレーム宝珠を立ち上げたが、当時は野菜生産者の契約販売に取り組む流通業を主たる業務としていた。ある時、契約先農家から、かつて中江氏が勤務していた前出の大規模農業法人(九州)を視察したいとの要請があった。その後も経営や組織づくりへのアドバイスを求められることが続いたため、23年から農業経営のアドバイザー業務に取り組み始めた。現在は香川県と高知県の複数の経営体を相手にアドバイザーないし支援業務に従事している。
中江氏は業務を進めるに当たり、生産者(経営者)と対等の立場で取り組むことを重視しており、自身ではコンサルタントとは称さず、「アドバイザー」として業務に取り組んでいる。アドバイザー業務を行う際は、最初にその経営体の直近の決算報告書や青色申告の書類などを経営者とともに見直すようにしている。その上で、中江氏自身がその経営体の経営特性を把握するとともに、経営者に対して数値指標を用いた的確な成果分析を促している。中江氏の報酬は事前に相談の上、業務に従事した日数に基づいて支払われる。現在、中江氏ははぐみ農園の経営企画部にも籍を置いており、毎月の業務時間のかなりの部分を同農園で過ごしている。
はぐみ農園において、中江氏が西内氏、および現在の代表者である由加利氏(創業者の妻、以下「由加利氏」という)とともに進めた取り組みは、いずれも経営管理ないし組織づくりに関するもので、以下の5点に整理できる。
(1)組織体制の確立:組織図を作成し、規模拡大した経営体の部署ごとの役割を明確化した。ハウス棟別、さらにエリア別に業務内容を体系的に整理した。また、従業員の組織への動機付けを高めるため、社員総会のほか、新入社員に対しては入社式を開催している。
(2)業務に応じた給与体系の確立:現在は従業員を、作業のみに従事する一般職と、より高度な意思決定にも参画する総合職に分けている。総合職には特定技能外国人も含まれる。また、作業管理区分ごとに細かく業務評価を行い、従業員の役割と実績に応じた給与を支払うルールを整えた。
(3)社内表彰制度の導入:年に一度、優れた実績を上げた従業員を表彰する制度を設けた。その際、20程度の項目をまとめた自己点検シートを提出してもらい、従業員の自主性・主体性も加味して表彰している。
(4)JGAPの申請と維持審査・更新審査:はぐみ農園ではかねてよりJGAPに関心を持っていたが、書類作成が煩雑なため、なかなか取り組めていなかった。中江氏の支援により、申請に必要な帳簿類が整い、JGAPの認証を受けることができた。JGAPは認証後も維持審査・更新審査が必要だが、その書類作成やデータ収集に関しても中江氏のサポートを受けている。
(5)その他:中江氏の支援を受けてから、各種補助金の情報収集を行い、申請に進むことができた。例を挙げると、JGAPの審査料金、イベント出店時のブースの経費、トイレの設置費用、フォークリフト・ピーマン包装機をはじめとする機械類の導入など、さまざまな場面で補助金を有効活用できた(写真3)。
このように、はぐみ農園では経営面・人的管理面を中心に中江氏のアドバイスを受けており、その成果もすでに現れている。実際の作業・役割(役割・責任・権限)を全従業員に示して以来、従業員から日頃の作業における気付きを報告される機会が増えたという。また、日本人および特定技能外国人をはじめとする外国人材の従業員の定着率も向上した。このことに関連して、はぐみ農園における外国人材とのコミュニケーションについて付言しておく。はぐみ農園では当初、基本的に西内氏が施設栽培に関する環境データをまとめて管理していた。しかし、代表者を由加利氏に交代した頃より、環境データをなるべく従業員間で共有する方向へと改善を図っている。環境データの基本的な活用方法は、ハウス棟の現場で把握される情報の共有と、それに基づく作業指示、そしてその遂行・確認である。作業については、外国人材は全て日本語で指示を受け、その報告もLINEなどを用いて日本語で行われる。そのため、日本語の習得が極めて重要であるが、はぐみ農園では、日本語による指示を徹底することで外国人材に対し日本語学習の動機付けを高めている。実際、外国人材の学習意欲は高く、日本語能力の向上がより効率的かつ細やかな作業の貫徹につながるという相乗効果をもたらしている。
中江氏は、はぐみ農園だけでなく現在関わっているすべての支援先農場の経営者・代表者に対し、「経営の核になる者は、単なる作業者でなく、より高次の意思決定ができる経営者に成長してほしい」と願っており、その実現のためにアドバイザー業務を継続している。