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調査・報告 野菜情報 2026年7月号

外国人労働者雇用の産地間リレー方式の実態と可能性          ~連携協定を組む嬬恋キャベツ振興事業協同組合と宮崎県農業法人経営者協会の取り組み~

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国立大学法人 名古屋大学 名誉教授 徳田 博美

【要約】

​ 外国人労働者を季節雇用する方法として、転職が可能な在留資格である「特定技能」が創設されたことで可能となった人材の産地間リレー方式が注目されている。この方式は、複数の産地のネットワーク下で取り組む必要があるが、2027年から新たに「育成就労制度」が施行予定であり、これは転職が可能となることから、外国人労働者が満足できる就労・生活環境を提供することが求められる。本稿で取り上げる嬬恋キャベツ振興事業協同組合、宮崎県農業法人経営者協会および株式会社ウィルテックによる連携協定は、そのために取り組むべき課題を提示(明文化)したものである。

1 はじめに

 収穫作業などの繁忙期のある野菜生産では、安定した労働力の確保が必須である。国内の労働力不足が深刻化する中で多くの野菜産地が、外国人労働力によって、不足する国内労働力を補ってきた。しかし、外国人労働者は基本的には通年雇用であり、一時的な労働ピークに対応する季節雇用労働力としては使いにくい。本報告で取り上げる高原野菜産地の群馬県嬬恋村では、厳冬期には農作業がないため、1年限りの技能実習生1号で対応してきた。
 転職が可能な特定技能制度が創設されたことで外国人労働者を季節雇用することが制度的には可能となったが、転職することで、年間を通じて就労できるようにすることが条件となる。そのため、季節雇用を必要とする農繁期の異なる産地が連携し、季節ごとに外国人労働者が産地間を移動して就労する産地間リレー方式が注目されている。その中でも、特定技能外国人の登録支援機関である株式会社ウィルテック(以下「ウィルテック」という)と、外国人労働者を受け入れる産地の農業者組織である嬬恋キャベツ振興事業協同組合(以下「嬬恋キャベツ組合」という)、一般社団法人宮崎県農業法人経営者協会(以下「宮崎県法人協会」という)によって締結された「産地間人財リレーに関する連携協定」(以下「本連携協定」という)は、先進的な取り組みである。本報告では、本連携協定に基づき、両産地の実態を報告し、産地間リレー方式の可能性と課題を検討する。

2 外国人労働者に関する制度の変遷

 まず、日本における外国人労働者に関する制度の変遷と現状について、簡単に整理しておく。
 外国人労働者に関する制度の変遷を表1に示した。
 外国人労働者を受け入れる制度は、研修という形態で始まり、1982年に在留資格「研修」が創設された。農業での受け入れが本格化するのは、93年の技能実習制度の創設からである。97年には実習期間が1年から2年に延長されたことで、農業での導入はいっそう拡大した。しかし、前述のように就労(実習)先の移動が原則として認められず、通年での就労(実習)が求められるため、季節雇用に対応するものではなかった。嬬恋村のように農作業期間が限定される地域では、作業期間が終了すると帰国する、在留期間1年未満の「技能実習1号」で毎年労働者を入れ替えるという対応を取らざるを得なかった。
 外国人労働者の需要が高まる中で、2018年に新たな在留資格「特定技能」が創設され、名実ともに労働者として外国人を受け入れる制度が創設された。「技能実習」と「特定技能」の大きな違いは二つある。
 第一は、在留可能期間が延びることである。「技能実習」では最長3年で、3号に移行した場合は通算で最長5年が可能となる。農業での技能実習生のほとんどは2号までの最長3年である。「特定技能」では、1号の在留期間は最長5年である。「技能実習」から移行した場合には、通算で8年間の在留が可能となる。さらに2号になると更新が可能となるので、実質的に期限はなくなる。「特定技能」の設立当初は、農業は1号のみであったが、23年には2号も取得できるようになった。「特定技能」では雇用期間が長くなるので、雇用の安定化につながるとともに、長期間での就労で技能の熟練性の向上も期待できる。
 第二は、転職が可能となったことである。「特定技能」では同一業種であれば転職が可能である。このことにより、農作業期間の異なる産地間を移動すること(産地間リレー)で通年の勤務先を確保できれば、継続して日本に滞在し、就労することができる。
 2024年には「技能実習」を廃止し、新たに「育成就労」を創設する入国管理法(出入国管理及び難民認定法)の改正が行われ、27年から施行される予定である。技術移転による国際貢献を制度の目的としていた「技能実習」と異なり、「育成就労」は、日本国内での労働力不足に対応した労働力の確保を目的としており、「育成就労」期間(原則3年以内)後の「特定技能」への移行を念頭に置いている。また、「技能実習」と異なり、「育成就労」では一定の要件を満たせば転職が可能となっている。
 このように外国人労働者雇用の制度は、日本での労働力不足が深刻化する中で拡充されてきており、農業においても外国人雇用の可能性が期待されている。「育成就労」では、一定の制限はあるが、転職が可能であるため、処遇や労働環境が見劣りすると転職してしまい、定着しないことも考えられるため、処遇や労働環境の改善は、これまで以上に重要となっている。

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3 産地間リレー方式の特定技能外国人雇用の特徴

 産地間リレー方式の特定技能外国人雇用とは、農繁期の異なる複数の産地が連携して、それぞれの農繁期に雇用することで、彼らに年間を通じた就労の場を提供し、従来は難しかった労働ピークに対応するための季節雇用での外国人労働者の雇用を実現するものである。
 季節雇用労働者の産地間リレーは、これまでも日本人を対象とした取り組みがあった(JA富良野、JA西宇和、JA沖縄の3者間での取り組みなど)。しかしながら、これらとの違いは、海外から来日する外国人労働者である彼らをサポートする登録支援機関も関わり、切れ目なく雇用をつなぐ必要があることである。
 本連携協定は、両産地の生産者組織間で締結しているが、実際には両組織に参加している農業者が特定技能外国人を直接雇用している。産地間リレーでは、それぞれの産地の生産者組織が中核的な役割を担っているが、雇用主は農業者であり、特定技能外国人との雇用契約も農業者が直接交わすことになる。生産者組織の役割は、登録支援機関と農業者間でのあっせん・調整と、産地全体としての特定技能外国人を円滑に受け入れるための体制づくりである。
 特定技能外国人を季節雇用する方法としては、産地間リレー方式のほかに労働者派遣方式(以下「派遣方式」という)がある。特定技能では直接雇用が基本であり、原則として、派遣での雇用は認められていないが、季節による作業の繁閑がある農業と漁業では派遣での雇用が認められており、実際に派遣で季節雇用している農業者もいる。
 派遣方式と比べた時の産地間リレー方式のメリットは二つある。第一は、産地間リレー方式は派遣方式と比べて農業者の負担費用を抑えることができることである。労働者の賃金以外に、派遣方式では派遣会社の手数料(社会保険料を含む)が、産地間リレー方式では社会保険料と登録支援機関の委託料金がかかる。ウィルテックの見積もりでは、賃金以外の経費で、産地間リレー方式の方が1日当たり200円程度低くなるとみている。第二は、派遣方式では、常に同じ者が派遣されるとは限らないが、産地間リレー方式では同一の者が産地間を移動し、基本的には同じ者を連続して雇用できるため、労働者の熟練性が高まり、作業効率の向上が期待できることである。嬬恋村の農業者は、コスト面よりもこの点を大いに評価している。
 一方、産地間リレー方式にはデメリットもある。第一は、産地間の移動は転職扱いとなり、特定技能外国人の転職にはさまざまな書類の作成など煩雑な手続きが必要となる点である。第二は、切れ目なく雇用をつなぐ必要があるが、産地間の農繁期が常にうまくつながるとは限らず、必要とする労働者数も一致するわけではないため、その調整も負担となる。要するに、産地間リレー方式はコスト面や作業の熟練性の確保ではメリットがあるが、実施するための負担も大きい。

4 3者による「産地間人財リレーに関する連携協定」

(1)連携協定を締結した3者の概要
ア ウィルテック
 ウィルテックは、大阪市に本社を置く人材面を中心に企業向けサービスを行う会社である。業務の一環として外国人材の雇用サポートサービスを行っており、入国前の日本語などの教育から入国時の手続き、就労期間のサポートなど、外国人雇用に関する全般的なサービスを提供している。「特定技能」に関しては、登録支援機関となっている。嬬恋キャベツ組合との取引から農業分野とも関わるようになり、その後、本連携協定以外にも農業産地との取引が増えている。
 ウィルテックの大きな特徴は、海外に日本語学校を設け、自社で外国人労働者の教育を行っていることである。現在、ベトナム、ミャンマー、ネパール、インドネシアで学校を運営している。本連携協定に基づいて就労している者も、この学校で学び、「特定技能」の試験に合格して来日している。学校では、来日後の就労先を念頭に置いたカリキュラムを設けており、例えば宮崎県で就労する予定の者を対象として、宮崎県や宮崎市の職員が、気候や生活上のルールなど宮崎県で働く上で知っておくべき情報を講義している。また、登録支援機関として、外国人労働者が就労している地域には、社員が常駐して現場でのサポート役などに当たっており、嬬恋村、宮崎県でも、就労期間には社員が常駐している。
 
イ 嬬恋キャベツ組合
 群馬県嬬恋村は、周知のように全国一の夏秋キャベツの産地である。2023年の夏秋キャベツの作付面積は3280ヘクタールで、村の耕地面積のほぼ8割がキャベツ畑となっている(写真1)。全国の夏秋キャベツに占める割合は作付面積で32.2%、収穫量で48.7%に達している。

タイトル: p054
 
 2020年農業センサスによる同村のキャベツ作付け経営体は、403経営体(村内の全農業経営体の79.6%)であるため、1経営体当たりキャベツ作付面積は8ヘクタール程度に達している。図1に嬬恋村の経営耕地規模別農業経営体数を示した。経営耕地面積5ヘクタール以上の経営体が全体の67.4%を占めており、嬬恋村のキャベツ生産は、5ヘクタールを超える大規模経営によって担われていると言える。しかも、嬬恋村でも経営体数は減少しており、近年はさらに規模拡大が進んでいると言える。
 
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 嬬恋村のキャベツ生産の最大の労働ピークは収穫期であり、この時期に多くの臨時労働力を必要としている。かつては学生やフリーターなど日本人を臨時で雇用していたが、雇用期間が限られる上に、早朝からの長時間労働であるため、労働力確保が難しくなってきた。そのため、労働力のほとんどは外国人労働者に置き換わっていった。
 嬬恋村農業協同組合(以下「JA嬬恋村」という)は、技能実習生の特定監理団体となっており、技能実習生受け入れの主な窓口となってきた。しかし、農協系統外出荷を行っている農家では、JAを通じた技能実習生を受け入れにくかった。そこで、系統外出荷の農家によって設立されたのが嬬恋キャベツ組合である。同組合は、08年に事業協同組合として設立され、技能実習生の特定監理団体の認可を受け、組合員農家に向けた技能実習生の受け入れ事業を始めた。現在の組合員数は33人である。その後、後述するように特定技能外国人労働者のあっせん・調整業務も行うようになった。
 JA嬬恋村では、技能実習生しか受け入れていないため、農協系統出荷している農家の中で特定技能外国人労働者を雇用したい者に対しては、嬬恋キャベツ組合の准組合員という資格を与えて、あっせん・調整を行っている。
 
ウ 宮崎県法人協会
 宮崎県は、全国有数の大規模経営が展開している地域である。2020年農業センサスでは、農産物販売金額1億円以上の経営体の割合は、北海道に次いで高く、1.9%に達している。農業部門別で農産物販売金額の多い経営体を見ると、畜産が過半を占めているが、次いで多いのは露地野菜、施設野菜である。
 宮崎県法人協会は、宮崎県内の農業法人で組織する団体であり、2007年に設立した。一般社団法人として独立した法人格を持っているが、全国組織の公益社団法人日本農業法人協会の宮崎県支部としての機能も持っており、宮崎県農業会議所内に事務所を置いている。正会員は87社であり、さまざまな農業部門の農業法人が加入しているが、野菜と畜産の農業法人が多い。
 宮崎県法人協会は、農業法人の経営を支援するための生産、販売両面に関わるさまざまな事業を行っている。その中の重要な事業に、人材確保・育成があり、外国人労働者の雇用に関わる支援もその一環となっているが、特定監理団体などの認定は受けていないため、雇用に直接関わることはなく、あっせん・調整などを行っている。また、嬬恋キャベツ組合との大きな違いは、同組合はキャベツ農家のみを対象としており、対象とする農作業内容も雇用期間もほぼ決まっているが、宮崎県法人協会は、さまざまな農業部門の農業法人に対応しているため、外国人の雇用も、畜産と野菜の両方の作業に従事させるなど、多様な形態に対応している。また、本稿で取り上げる産地間リレーでの季節雇用のみでなく、通年雇用にも対応している。
 
(2)連携協定締結の経緯
 連携協定締結の発端は、コロナ禍での嬬恋キャベツ組合の外国人労働者確保の模索である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、外国人の入国が制限されたため、1年ごとに入れ替えて受け入れてきた技能実習生1号が入国できなくなり、キャベツ収穫の労働力確保が危機的な状況となった。その対応策として、コロナ禍で母国に帰れなくなった特定技能外国人を雇用したところ、彼らは日本語でのコミュニケーションができ、理解力が高く、農家の評価が高かった。そこで、嬬恋キャベツ組合では特定技能外国人の雇用に本格的に取り組むこととなった。
 農作業が春から秋までに限られ、通年雇用が困難な嬬恋村のキャベツ農家にとって、就労目的で日本に数年間継続して滞在する特定技能外国人を雇用するには、冬場の就労の場を確保することが必須の課題であった。そこで、嬬恋キャベツ組合では、夏場に雇用する彼らの冬場の就労先を探した。最初に富山県の柿農家との間で人材の産地間リレーを始めた。その後、和歌山県のミカン農家や群馬県の施設野菜農家に産地間リレーのパートナーを広げていった。特定技能外国人の雇用を進める中で、登録支援機関であるウィルテックの存在を知り、その後、産地間リレーのパートナーとして宮崎県法人協会を紹介された。
 宮崎県法人協会の会員農業法人には、外国人労働者を雇用している者は少なくないが、さまざまな農業部門があるため、その雇用形態もさまざまで、通年雇用している者も多い。西南暖地の野菜産地のため、野菜経営体の中には冬場の労働ピークに対応する労働力が必要であり、嬬恋キャベツ組合とマッチングし、人材の産地間リレーを始めた。この取り組みを進める中で、両者にウィルテックを加え、就業環境構築のノウハウを3者間で共有することを目的とした、特定技能外国人雇用の産地間リレーの取り組みの基本事項をまとめたものが先の連携協定である。
 これ以前にも、人材の産地間リレーの事例はあったが、それらは文書による取り決めはなかったため、嬬恋キャベツ組合と宮崎県法人協会との産地間リレーは、文書に明文化された連携協定が交わされた初めての事例となった。
 
(3)3者の役割と本連携協定の内容
 3者による産地間リレーの概要を図2、3に示した。ウィルテックは海外で特定技能外国人の候補者を募集し、現地で運営している学校で教育を行い、特定技能の資格試験に合格後の入国手続きを支援する。入国後は登録支援機関として産地にも担当者を常駐させ、特定技能外国人のサポートを行う。本連携協定の対象産地に限らず、雇用期間をつなぐため他の産地のあっせん・マッチングでも中心的な役割を担っている。
 
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タイトル: p057a
 
 嬬恋キャベツ組合と宮崎県法人協会は、産地間リレー方式で円滑に特定技能外国人を雇用できるよう、ウィルテックや雇用される特定技能外国人と、雇用する農業者間での雇用人数や期間など受け入れ体制の整備と調整を担っている。また、住居の確保などの生活環境の整備や、雇用主によって就労条件や生活環境に極端な違いが生じないよう、両産地で統一したルールの設定なども行っている。さらに本連携協定に限らず、人材確保の選択肢を広げるため、産地間リレーのパートナーとなる新たな産地の開拓も担っている。
 本連携協定の内容は表2に示した通りである。本表を見ると、両産地での産地間リレーの具体的な内容が記載されているのではなく、異文化共生や就労・生活環境の整備など、産地間リレーに取り組む上での指針や基本的な姿勢が述べられている。本連携協定を締結した3者ともに、他の産地とも産地間リレーを行っているが、本連携協定の内容は他の産地とも同様に遵守されるべき基本的なものである。

タイトル: p057b
 
 外国人労働者にとって、季節ごとに居住地を移動し、従事する作業内容も変わる産地間リレー方式は、決して負担が小さいものではない。産地間リレー方式で彼らを安定的に確保するためには、彼らが満足できる就労条件・生活環境を提供することが必要であり、しかも、連携する産地すべてで統一的にそれらが提供される必要がある。

5 産地間リレー方式で外国人労働者を雇用する産地の実態

 本連携協定を締結している両産地が産地間リレー方式で外国人労働者を安定して確保するための具体的な取り組みと雇用の事例を紹介する。

(1)嬬恋キャベツ組合
 嬬恋村では多くの外国人労働者を必要としており、実際に多数の農業者が産地間リレー方式で外国人労働者を雇用している。そのため、嬬恋キャベツ組合は農業者間で就労条件、生活環境の一定の水準が確保されるよう、いくつかの項目の統一基準を設定している。
 まず、賃金水準を統一しており、1年目は時給1000円で、年ごとに50円ずつアップすることとしている。連携先の冬場に雇用する産地に対しても、賃金の統一を要請している。住居については、食習慣や生活習慣が異なるため、通常はプレハブの宿舎を用意している(写真2)。一般的な宿舎は個室と共同の台所で構成され、自炊できるようになっている。2024年までは米の無料支給も取り決めていた(25年は米価高騰のため中止している)。宿舎が足りない場合は、周辺のアパートを借り上げている。いずれの場合も労働者の家賃負担は月額1万5000円と取り決めており、実際の家賃との差額は雇用主が負担することになっている。

タイトル: p058a
 
 嬬恋村での就労期間は、雇用する農業者の営農実態によって多少の違いがあるが、3月末~4月末くらいに始まり、10月末~11月中旬くらいに終了する。実際には連携相手の産地との就労期間の調整が必要であり、開始と終了の時期は柔軟に対応している。特に、天候などの影響により、嬬恋村での農作業が始まる前に連携先での農作業が終了してしまった場合には、嬬恋村側で外国人労働者を受け入れている。
 このように、産地間リレー方式で多数の外国人労働者を雇用している嬬恋村では、産地間の雇用に関する共通のルールが必要であり、実際の雇用に当たってのこまごまとした調整も欠かせない。それらは嬬恋キャベツ組合が担っており、しかも、本連携協定の宮崎県のみでなく、他の複数の産地との産地間リレーに取り組んでいるため、すべての連携産地と調整する必要がある。
 嬬恋村において、産地間リレー方式で外国人労働者を雇用している農業者の事例を紹介する。この農業者は、キャベツ栽培面積は延べ20ヘクタール(経営耕地面積18ヘクタール)の大規模経営であり、カンボジア人の労働者を6人雇用している(写真3)。プレハブ宿舎は4人分のため、2人分は借り上げアパートを提供している。日本人の従事者が3人いるため、合計9人で従事している。以前は1年交代の技能実習生を雇用していたが、特定技能外国人の能力の方が高いと感じているという。雇用している外国人労働者は日本語能力が高く、作業の精度が高い上に作業効率も3~4割程度高いと感じ、農作業の多くも、日本人のサポートが不要で、外国人のみに任せることができている。

タイトル: p058b
 
(2)宮崎県法人協会
 宮崎県法人協会は、嬬恋キャベツ組合と異なり、さまざまな品目の農業経営者が加入しており、外国人労働者も多様な形態で雇用している。しかも、外国人労働者の中で宮崎県法人協会が関与している者は少なく、さまざまなルートで個々の農業者が直接雇用している。そのため、宮崎県法人協会は、嬬恋キャベツ組合のような雇用に関する共通ルールをつくっていない。宮崎県法人協会の役割は、1)本稿の産地間リレー方式での季節雇用など、他の季節雇用などのルートでは確保が難しい雇用に対する支援・調整と、2)行政と連携して空き公営住宅を活用するなど外国人労働者が定着しやすいような地域での環境整備-である。これらの取り組みは、宮崎県法人協会単独ではなく、宮崎県庁などの関係機関と連携して進めている。前述のように、宮崎県内での就労を促進するため、宮崎県庁などからウィルテックが運営する海外の学校に講師を派遣している。
 宮崎県での外国人労働者の雇用は、経営品目・形態により異なり、産地間リレーによる季節雇用は露地野菜や施設園芸で多い。ここでは嬬恋村との産地間リレーを行っている露地野菜経営を事例に取り上げる。
 この農業者は、だいこん、かんしょなどの多品目の露地野菜を主体とした20ヘクタール規模の経営面積を持ち、切り干しだいこんなどの農産加工事業も行っている。そのため年間を通じて作業はあるが、季節間の繁閑差は大きい。2024年は、繁忙期である冬季に正社員以外を15人雇用していたが、夏季は4人であった。雇用者のほとんどは外国人であるが、国籍はさまざまで、技能実習生、特定技能も直接雇用と派遣があり、雇用形態も多様である。嬬恋村との産地間リレーでの雇用者は冬季の15人の中の4人である。24年の冬季は15人を雇用したが、だいこんが不作であったため、労働力が余剰になってしまった。25年は品目ごとの栽培面積を変更したこともあり、冬季の雇用者数を半減させた。24年の嬬恋村との産地間リレーによる労働者4人のうち、25年の夏季に嬬恋村に戻ったのは1人だけで、他の3人は別の地域で就労したため、25年冬季の嬬恋村との産地間リレーによる雇用者は、1人となった。それを補完する形で、新たな形態で雇用される者が現れている。
 宮崎県の事例農業者は、嬬恋村のキャベツ経営とは異なり、多品目を栽培し、しかも品目ごとの栽培面積は年によって変化しているため、それに応じた多様な形態で労働者を雇用しており、その人数も変化している。産地間リレー方式での外国人労働者の雇用も、複数いる労働者の一部であり、その人数も一定ではない。

6 おわりに~産地間リレー方式での外国人労働者雇用の特徴と課題~

 嬬恋キャベツ組合、宮崎県法人協会およびウィルテックが締結している連携協定と両産地での取り組み、産地間リレー方式での外国人労働者雇用の実態を見てきた。最後にその特徴と取り組む上での課題を整理する。
 まず理解すべきことは、外国人労働者の産地間リレーは二つの産地間のみでの取り組みではないということであり、関係する産地全体で年間を通じた雇用を提供する必要がある。しかし、産地間リレーに取り組む二つの産地で必要とする雇用者数を完全に一致させ、両産地のみで年間を通じた雇用を提供することは難しい。各産地が過不足なく必要な時期の雇用を確保し、外国人労働者が通年で就労するためには、複数の産地間と雇用の連携・調整が不可欠である。本稿で取り上げた両産地はいずれも、他の産地とも産地間リレーを行っていた。特定技能外国人は、通常は登録支援機関がサポートしており、産地間リレーのネットワークには登録支援機関も参加することで、産地間の雇用調整に大きな役割を果たしている。その際、一つの登録支援機関が、全国のあらゆる地域で外国人労働者のサポートできるものではないため、就労する産地を移動する際に、移動先の産地でのサポートが可能な登録支援機関に交代することもある。
 産地間リレー方式での外国人労働者雇用は、季節によって従事する作業と住居が変わるため、就労する側からみれば、その負担は小さくはない。そのため、産地間リレー方式を選択してもらえるような良好な就労・生活環境を整備する必要がある。本稿で取り上げた連携協定は、そのために取り組むべき課題を示したものである。それは限られた産地間でのみ取り組めばよいものではなく、ネットワークを構成するすべての産地で取り組むことが求められる。
 農業における外国人労働者の季節雇用では、産地間リレー方式とともに派遣方式での雇用も可能である。産地間リレー方式のメリットは、人件費を抑えられることと労働者の熟練性を高められることである。一方、産地間での雇用調整と煩雑な手続きが必要となる。産地間リレー方式での外国人雇用には、手間のかかる雇用調整を引き受ける嬬恋キャベツ組合のような生産者組織が中核となる体制や、宮崎県のように自治体など産地の関係機関との連携を行うような産地の支援体制が不可欠である。