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調査・報告 野菜情報 2026年6月号

全農大分県本部による青果センターを通じた野菜出荷および 流通の効率化の取り組み

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日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 食品科学科 教授 木村 彰利

【要約】

 青果物流通においては、輸送に関する課題が存在しており、将来的に安定的な流通を実現していくためには、集出荷や輸送方法、輸送経路など多方面にわたる合理化が求められている。このため、本稿においては、全国農業協同組合連合会大分県本部が大分青果センターの設立などによって実現した流通の効率化について調査した。
 同青果センターにおいては、大分県内のJA集荷場・選果場から集荷された青果物を取りまとめるとともに、そこで出荷先別に仕分けた上で関東や関西などの卸売市場に搬出することにより効率的な流通がもたらされている。また、青果センターでは、予冷によりコールドチェーンが維持されるだけでなく、パッキングなど包装作業にも対応しているため、出荷者の労力削減にもつながっている。
 卸売市場までの輸送は、青果センター設立に際して従来の2日目販売を3日目販売へと変更しているが、これによって生じた時間的余裕によりRORO船※)の活用やトラック輸送の経路変更が可能となり、運転手の負担軽減に結び付いていた。

※車両や重機を自走で積み込み、運搬できる特殊な貨物船。RORO船やフェリーなどの海上輸送は、トラックなどの陸上輸送よりもドライバーの拘束時間が削減でき、2024年問題の対策や改善基準告示の遵守に期待されている。

1 はじめに

 野菜をはじめとする青果物の流通は、集出荷作業を担う労働力不足や流通経費の増大、トラックなど輸送手段の確保難などの課題があり、近年は労働基準法の改正に起因する2024年問題もあって、その環境は厳しさを増している。このため、青果物の産地段階における集出荷を担当する農業協同組合(JA)や全国農業協同組合連合会の県本部においても、流通合理化に向けた対応が求められている。そこで、本稿においては、全国農業協同組合連合会大分県本部(以下「全農大分県本部」という)が青果センターを設立し、県内JAが出荷した青果物を取りまとめ、予冷・保管・包装することにより、消費地の卸売市場に対する出荷拠点として機能するだけでなく、輸送の方法や経路を改善し、野菜の集出荷作業および流通の効率化を目指した取り組みについて報告する(注1)

2 青果センター設立までの経緯

 全農大分県本部が、大分青果センター(以下「青果センター」という)の設立を検討し始めたのは2015年頃からであり、その背景には、将来的に消費地までの輸送を行うトラックの手配が難しくなることを予想しただけでなく、経年的に増大する人件費や燃料代などの輸送経費をいかに抑制していくのかという課題の存在が挙げられる。また、生産段階においても、生産者の高齢化などが進行していく中で、集出荷作業の省力化が求められていた。それと同時に、実際の物流面においても、17年頃からは関西市場に出荷した商品に延着が生じたり、荷の傷みなどによるクレームが頻発するようになったことから、産地段階におけるトータルな出荷体制の見直しが求められていた。このような中で、大分県内のJAでは、集出荷施設の整備が進められるとともに、全農大分県本部に産地段階における物流の拠点施設を設立することが検討された。これにより、本稿で取り上げる青果センターが設立された(写真1)。
 このような経緯を経て、19年6月に現在の青果センター1号棟に当たる施設が取り扱いを開始している。その後、青果物流通において2024年問題への対応が求められていく中で、将来的な取扱数量の拡大を見越して、施設規模を大幅に拡大した2号棟の建設が進められ、24年5月から稼働開始した。全農大分県本部の24年度の青果物出荷額は、野菜が概算150億円、果実(いちごを含む)が同50億円である(注2)

タイトル: p050a

3 青果センターの概要

 青果センターは、大分市内でも西寄りの別府湾に面した埋め立て地にある。また、同センターと大分港新RORO船ターミナルとは、互いに隣接する位置関係にある(写真2)。青果センターの施設概要は、表1の通りである。
 
タイトル: p050b
 
タイトル: p050c
 
 青果センターの施設は主に1号棟と2号棟からなっているが、このうち1号棟は冷蔵施設面積が1056平方メートルあり、これは物流で用いられる標準的なパレット340枚を収容できる規模である(写真3)。また、施設内は時期や品目により温度3度帯または8度帯のいずれかで管理されている。同施設の入庫口は青果物を外気にさらすことなくトラックから施設内に搬入できるドックシェルター(トラックの荷台と建物の搬出入口との隙間をふさぐ気密装置)タイプが3口あり、出庫口にも同タイプのものが3口設置されている。
 一方、1号棟の2次施設に当たる2号棟は、1号棟の西側に設置されており、規模的には大幅に拡大されている(写真4)。同施設の冷蔵施設は、1号棟の2.3倍となる2435平方メートルであり、その内部は、入庫口に続く区画が15度帯、その奥に位置する仕分け・保管が行われる区画は8度帯に管理されている。2号棟の収容能力は、温度帯の異なる2区画を合わせて606枚のパレットを収容することが可能になっている。また、1号棟と2号棟の間には二つの連絡通路が設けられており、青果物を外気にさらすことなく施設間の移動が可能となっている。
 2号棟の入出庫口のうち、入庫口には前述のドックシェルタータイプが2口、入庫に係る作業効率の高いオープンバース(一般貨物や常温商品の積み込み・荷下ろしに使用される倉庫や港湾の専用スペース)タイプが2口あり、これらは季節や品目などにより使い分けられている。一方、出庫口については、ドックシェルタータイプが8口設置されており、多数のトラックへ同時に積載することが可能となっている(写真5)。また、RORO船で輸送するトレーラーへの積載を安全かつ短時間で行うため、2号棟には専用積み込みプラットホームが設けられており(写真6)、後述するように出荷市場までの輸送方法の改善に結び付いている。
 2号棟には、上記の物流関連施設のみでなく、施設の2階部分に事務所と会議室、パッキング作業などを行う加工包装作業室が設置されている(写真7)(注3)。事務所には、全農大分県本部の園芸販売課職員13人と総合農協である大分県農業協同組合(以下「JAおおいた」という)の職員3人が配置されており、このうち全農大分県本部5人とJAおおいた3人の計8人がチームとなって青果物の分荷業務を担っている。
 
タイトル: p051

タイトル: p052

4 青果センターを経由させた流通概要

(1)青果センターへの出荷
 青果センターには、大分県内のJAおおいたとべっぷ日出農業協同組合(以下「JAべっぷ日出」という)の2JAから出荷されている。JAおおいたは大分県の大部分を管轄しており、JAべっぷ日出は別府市と速見郡日出町を管轄している。このため、青果センターで扱われる青果物は、その9割がJAおおいたから出荷されたものとなっている(注4)。この2JAは、大分県内に総計31カ所の集荷場および選果場を設立しており、青果物の選別・荷造りは基本的にこれらの集荷場などで行われ、そこで予冷された後に青果センターなどへ持ち込まれている(写真8)(注5)

タイトル: p053a
 
 ここで、JAが青果物を出荷してから消費地の卸売市場で販売されるまでの期間について触れると、かつては出荷日の翌日の朝に販売する2日目販売であったものが、青果センター設立後は、モーダルシフト(トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷が小さく大量に運べる鉄道や船舶を用いるものに転換すること)に対応するため、さらに1日後の販売となる3日目販売に変更した。このため、出荷に際しては、全農大分県本部側に時間的な余裕が生じることから、物流リードタイムが適正化されるとともに、荷物をまとめてから市場に到着するまでの時間が長くなることから、市場へは着荷までに余裕をもって情報提供できるようになった。3日目販売の場合は、収穫されてから市場で販売されるまでの時間が1日長くなってしまうが、後述するように、青果センターで十分な予冷を行うことにより青果物の鮮度が損なわれることはない。
 
(2)青果センターにおける予冷・保管
 青果センターに搬入された青果物は、施設内でその品目に適した温度帯によって12時間以上予冷された後、市場に向けて出荷される(写真9)(注6)。このように、集荷場などだけでなく青果センターで十分な予冷が行われることにより、産地出荷段階から流通全体を通じたコールドチェーンが構築され、鮮度保持に結び付いている。また、品目によっては、青果センター内において一時的な保管が行われている。
 また、青果センターの加工包装作業室では、パッキングやラッピングなど包装作業が行われており、この対応は、青果物に付加価値を与えるだけでなく、生産者の作業負担軽減にも結び付いている。

タイトル: p053b
 
(3)青果センターにおける仕分け・搬出作業
 青果センター内においては、出荷先の市場別に青果物を仕分けた上でトラックに積載し、施設から搬出されることになる。この場合、JAの各集荷場などが個別に卸売市場に向けたトラックを仕立てる場合と異なり、複数の集荷場などからの出荷品を同センターに集めることでロットを取りまとめ、その上で市場に輸送されることから、トラックの積載効率が向上し、輸送経費の抑制に結び付いている。
 青果センターからの搬出時間は、出荷先地域によって異なる。具体的には、比較的距離が近い九州や中国地方向けは、青果センターに搬入された翌日の12~17時の搬出となるが、より遠方の関西向けなどは、それより前の8~12時に出発している。また、関東地方に出荷する場合は、RORO船が大分港を出る22時30分に合わせて同センターから搬出する。

5 青果センターから出荷先市場までの流通改善

(1)青果センターからの流通経路
 青果センターから卸売市場までの輸送方法と経路は、表2で示すように出荷先地域により異なっている。具体的には、主としてトラック(一部でフェリーを使用することあり)により行われる場合と、RORO船を主として用いる場合の2ケースに大別される。
 このトラックのみと、RORO船またはフェリーを用いた輸送方法別の流通実態について、青果センター設立に伴う流通改善と合わせて確認したい。

タイトル: p054
 
(2)輸送方法と流通改善
ア トラックとフェリー

 主にトラックにより輸送される市場は、九州や中国、関西などとなっている。このうち最も遠い関西の場合を見ると、青果センターで予冷した青果物をトラックで搬出し、その後、主に県内の臼杵港から豊後水道を挟んだ対岸に位置する愛媛県の八幡浜港までフェリーで輸送している。その後はトラックで四国および淡路島の高速道路を通り、そこからさらに明石海峡大橋を経由して関西の市場まで陸上輸送するのに12時間程度要している。
 このような流通経路となる以前は、大分市内から北九州市までトラックで北上し、その後は山陽自動車道を使って関西を目指していた。しかし、この場合には、トラックが大分市を出発してから岡山市に着く頃には、国土交通省が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)で定める運転手の1日の拘束時間である13時間以内という原則を超えることになる。
 一方、フェリーを利用した四国経由での輸送の場合は、中国経由と比較して運転時間の短縮が可能になることから、関西まで輸送したとしても、その拘束時間が問題になることはない。なお、四国経由の場合はフェリーを使うため、輸送時間の短縮には結び付かないが、前述の通り2日目販売から3日目販売へと変更することで調整を図った。
 
イ RORO船
 大分県から見て関西よりさらに遠方となる関東地方の市場に関しては、RORO船を活用した出荷が行われている。全農大分県本部が青果物を輸送する場合、RORO船内にはトレーラーの荷台部分のみを積載し(写真10)、目的港到着後はそこで新たなトレーラーヘッドを付けて最終目的地まで輸送している。
 具体的な流通経路は、青果センターで青果物を積載したトレーラーは同センターに隣接する大分港新RORO船ターミナルで船積みされ、清水港(静岡市清水区)まで輸送した後、トレーラーで関東各地の卸売市場へと運ばれる。なお、大分港からの船便は毎週火・木・土の3回、いずれも22時30分に出港し、清水港へは翌日の18時30分に到着するため、着港日の夜には消費地の卸売市場に搬入され、3日目販売が可能となっている。また、RORO船での輸送中も、トレーラー内の積み荷は冷蔵保存されることから、コールドチェーンが途切れることはない(注8)。なお、RORO船を活用した輸送は、青果センターを大分港新RORO船ターミナルの隣接地に設立したことにより、この間の輸送時間をも削減でき、より効率的な運用が可能となっている。
 以上、青果センター設立に伴って行われた流通改善について見てきたが、このような取り組みにより、トラック運転手の拘束時間が短縮されるとともに、出荷物の集約による物流効率化でコスト抑制がもたらされている。

タイトル: p055

6 おわりに

 本稿においては、全農大分県本部の青果センターを事例に、同センターの設立によってもたらされた流通効率化について調査した。大分県内のJAから集荷した青果物を青果センターで予冷・保管するとともに、出荷後もコールドチェーンを途切れさせないことで鮮度保持が図られていた。青果センター内では、多数の集荷場などからの荷を取りまとめた上で、出荷先市場別に仕分けることでトラックの積載効率が向上し、経費削減に結びついていた。また、同センター内では、生産者の作業負担軽減のため、パッキングなどの作業も行われていた。出荷先の卸売市場までの輸送に関しては、従来の2日目販売を3日目販売に変更したことにより、輸送の方法や経路の変更が可能となり、流通合理化だけでなく、トラック運転手の拘束時間の抑制にもつながっていた。
 最後に、全農大分県本部による青果センターを通じた流通改善は、流通経費の削減が求められるとともに、全国的に将来的な運転手不足の深刻化が見込まれる現況下において、その重要性はより高いということができよう。
 
謝辞:本稿に係る調査の実施に際しては、全農大分県本部米穀園芸部の松本邦博部長と同園芸販売課の須股慶一課長にご協力いただいた。また、本稿の取りまとめに当たっても資料をご提供いただくなどひとかたならぬお世話になった。ここにおいて御礼申し上げる次第である。
 
(注1) 
 本稿は主として2025年12月に全農大分県本部に対して行ったヒアリングに基づいて取りまとめている。
(注2) 
 全農大分県本部が扱う主要野菜としては、ねぎ類、トマト、いちご、ピーマンなど。果実は、梨、栗、ブドウ、柑橘(かんきつ)類などとなっている。
(注3) 
 1号棟のみの頃は、青果センターの敷地内に建てられた別棟の施設で事務作業が行われていた。2号棟が完成してからは、輸送関連会社が同施設を使用している。
(注4)
 大分県内の総合農協にはJAおおいた、JAべっぷ日出の2JA以外に、大分大山町農協があるが、同農協は全農大分県本部を通じた出荷は行っていない。
(注5) 
 大分県内のJAから大分県内や福岡県の卸売市場に出荷する場合、市場への輸送距離が近く、出荷量も多くはないことから、集荷場などから市場へ直送した方が効率的であるため、青果センターを経由せずに出荷されることも多い。また、一部の実需者に対してもJAの集荷場などから直接納品されている。
(注6)
 予冷の温度帯と品目との関係について例示するならば、3度帯はいちご・みつば・セリなど、8度帯はピーマン・にら・大葉・ねぎなど、15度帯は柑橘類・かんしょ・なすなど。
(注7)
 写真のかんしょは、2008年からJAおおいたによってブランド化が進められている「甘太くん」である。これは「べにはるか」を生産者などが収穫後40日以上定温保管することによって、糖度を上げるとともに食感を向上させるという特徴がある。
(注8)
 RORO船内には電源設備が設けられており、そこから電力を得ることでヘッドレス状態のトレーラーであっても冷蔵が可能となっている。