雪室じゃがいもと豆もやしの導入の経緯は、2014年に最初に正社員を採用する際、労働力の年間の偏りを解消し、雇用に必要な資金を調達することが必要と考えたためである。冬場の仕事の創出は、副次的な収入源の確保というよりも、雇用型経営を確立させるための基盤整備として位置付けられる課題であった。
最初に正社員として雇用したY氏は、青森県五所川原市出身である。山田氏は当初、群馬県で営農していたこともあり、Y氏を周年で雇用するに当たり、黒石市の農場に加えて、冬場でも営農が可能な地域への農場を増やすこと(複数地域での営農)も考えたが、Y氏が移転を望まなかったことから、黒石市で冬場でもできる営農を目指す方向になった。厳しい自然条件を制約と考えず、資源として捉え直し、冬季でも利用可能な施設、自然環境、労働力配置を考え直したところ、雪室じゃがいもと黒千石大豆の豆もやしの生産に着手することになった。冬作物の導入に当たって、雪室じゃがいもは山田氏、豆もやしは社員のY氏が担当することと決め、それぞれ栽培方法を確立するために試行錯誤した。
(1)雪室じゃがいも
雪室じゃがいもは、豆もやしとほぼ同時期に生産を開始した、サニタスガーデンにとっての新規導入作物である。津軽地域では、ばれいしょを販売用に生産している農家はほとんどないため、品種の選定や生産技術などはすべて山田氏の独学で導入した。試行錯誤の結果、現在はキタアカリ、はるか、メークイン、さやあかね、こがね丸、アンデス赤の6種類に絞り、1.5ヘクタール作付けしている。ばれいしょは5月末頃から
圃場の準備を行い、秋口に収穫し、降雪後に雪室で貯蔵して(写真1)、糖度が増した冬場に出荷する(写真2)。黒石市沖揚平での生産は、標高が低い園地で生産するより栽培期間が長く、収穫期が遅いため、収穫から室に入れるまでの期間が短い。そのため、特別な貯蔵施設や処理は必要なく、芽が出る前に雪室に入れることができる。
雪室は、降雪前にスタッフが手作業で組み立て、収穫したばれいしょの搬入、出荷時の搬出などもすべて手作業で行っている(写真3)。当初は試験的に小規模で行い、徐々に生産を拡大してきたが、手作業で行っているため現在の量が限界であり、これ以上の生産拡大は、ばれいしょの生産に必要な大型機械、貯蔵施設ともに新しい投資が必要となるため、現状ではさらなる生産拡大は難しいという。
雪室じゃがいもの生産を開始した2015年頃は、生産量が3トンほどで、すべてインターネット販売していた。現在は、生産量は20~30トン程(年によって変動がある)まで増加し、自社ホームページでの取り扱いの他、インターネットの大手農産物販売プラットフォームにも出品している。加えて、7~8年前に野菜くらぶと取引があった小売業者からも引き合いがあったことから、小売りだけでなく卸売りも行うようになった。現在は、青森県内の一部量販店でも取り扱いがある。
(2)豆もやし
豆もやしは、葉物野菜の育苗用としてもともとあったハウス1棟を活用して生産している。自噴する温水をハウス内に引き入れることで熱源として活用し、栽培を行っている。小スペースでの生産が可能で、加えて生育期間が短く、回転率が高い。保有している施設と自然環境を生かした生産体系で、種代以外のコストがほとんどかからないという利点がある。12月~翌3月の期間のみの栽培で、生産量が限られるため、地元販売が主で、近隣の農産物直売所、道の駅、市内の飲食店などで販売・提供されている。生産量自体は小規模だが、自分たちで栽培方法を一から確立させたという自負があり、現在の生産は社員のY氏に一任されている。