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調査・報告 野菜情報 2026年4月号

離島地域における葉物野菜安定供給体制の構築に向けて        ~沖縄県南大東村コンテナ型植物工場導入の取り組み~

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那覇事務所 大野 雅彦
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【要約】

 沖縄県では、農業産出額の向上と安定供給体制の構築を目指す中、台風の襲来などの自然条件の影響により、特に離島地域では野菜の安定供給が大きな課題となっている。南大東島では、夏場の葉物野菜の生産が難しく、価格が高騰する状況も見られていた。こうした問題の解決に向けて、南大東村はコンテナ型植物工場を導入し、天候に左右されない周年生産を可能とした。生産された野菜は、学校給食や島内商店などで販売され、島内での供給体制の強化や価格の安定に寄与している。今後はさらに生産の省力化、安定した生産体制の確立などを進めながら、地域における持続可能な農業と地産地消を支える重要な基盤として、さらなる発展が期待されている。

1 はじめに

 沖縄県では「魅力と活力ある持続可能な農林水産業」の実現に向けて、令和4年度に「新・沖縄21世紀農林水産業振興計画」を策定し、農林水産業の総合的かつ計画的な振興に取り組んでいる。この計画では、令和13年度までに沖縄県の農業産出額を1205億円に引き上げるという目標を掲げており、その達成には、農業生産の拡大と安定的な供給体制の構築が不可欠となっている。令和5年における沖縄県の農業産出額は879億円であり、そのうち野菜は136億円で全体の約15%を占める(図1)。野菜のうち農産物産出額上位5品目は、にがうり(ゴーヤー)、かぼちゃ、ピーマン、さやいんげん(未成熟)、トマトであり、同県では、亜熱帯地域特有の温暖な気象条件を生かした野菜生産が行われ、県外市場の冬春期における野菜供給産地として定着しつつある。


 
 一方で、沖縄県の農業生産は、夏秋期における台風の襲来、病害虫の多発など自然条件の影響を大きく受けやすく、周年を通じた安定的な生産・出荷が難しいという問題を抱えている。加えて、沖縄県は本土市場から遠隔地にあり、多くの離島を抱える島しょ県であることから、農産物の輸送コストが高く、流通の不安定さや価格変動が生じやすい構造となっている。
 例えば、令和6年の沖縄県中央卸売市場におけるレタス産地別取扱数量の推移を見てみると、1~5月、10~12月は沖縄県産のレタスが流通するが、夏の6~9月は県外産のみが市場に出回る(図2)。この期間における沖縄県中央卸売市場と全国の中央卸売市場平均のレタス1キログラム当たりの単価を比べてみると、県外産がメインに流通する5~11月には、沖縄県内の単価が全国平均を上回る。
 このような状況を踏まえ、沖縄県内の一部の自治体では、天候や季節の影響を受けにくいコンテナ型植物工場を導入し、夏秋期を含めた葉物野菜の安定生産・安定供給を図る取り組みが進められている。次章では、コンテナ型植物工場を活用し、地域内消費を目的とした葉物野菜の周年供給に取り組む南大東村の事例を紹介する。 

2 南大東島の概況と葉物野菜に関する課題

 南大東島は、沖縄本島から東へ約360キロメートルの太平洋上に位置する離島で、人口1204人(令和6年5月31日現在、南大東村役場ホームページより)、面積30.5平方キロメートルと、沖縄県内の市町村では20番目に大きい面積を有している(図3)。琉球王国時代には、はるか東方に位置する島を意味する「ウフアガリ島」と呼ばれており、「大東島」という名称はこれに由来するといわれている。
 
タイトル: p067a
 
 令和2年における南大東村の産業別就業人口を見ると、農業従事者は232人で全体の約28%を占めており、農業は島の基幹産業として地域経済や雇用を支える重要な役割を果たしている。
 令和5年の南大東村の農業産出額は21億3000万円で、そのうち野菜は4億4000万円(約21%)を占め、沖縄県内の市町村の中で9位である(表1)。
 
タイトル: p067b
 
 一見、同村は野菜生産が盛んな地域であるように見えるが、生産品目に偏りがある。南大東島の過去30年の平均気温は23.5度で、年間を通じて高温多湿な亜熱帯海洋性気候であること、また、土壌が「大東マージ」と呼ばれる特徴的な重粘土質で、pH4.2以下の酸性であることから、特に夏場の葉物野菜の生産が困難である。よって、夏場の葉物野菜は、沖縄本島を経由して県外産のものを仕入れざるを得ず、輸送コストの増大が価格に大きく影響している。実際に、全国的にレタスの卸売価格が高騰した平成28年10月には南大東村でレタスが1玉1350円で販売される事態になった。
 生鮮野菜を含む生活物資および食品などは、沖縄本島から月に5~6回運航する定期船で搬入される。しかし、定期船は天候の影響を大きく受ける。南大東島はサンゴ礁が隆起して形成された切り立った地形で、遠浅ではないため、波の影響を受けやすい。また、岩盤掘込み式漁港(注)は整備されているものの、大型定期船を安全に係留できる防波堤がなく、外洋に停泊せざるを得ない状況にある。このため、波が2メートル程度であっても、うねり具合によっては接岸できず、物資が荷揚げできない場合がある。さらに、夏場は台風の影響を大きく受ける。令和5年8月の台風では、23日間にわたり定期船が欠航した。生鮮食品などの不足に、島民からは不安の声が上がっていた。
 このように、夏の葉物野菜の生産が難しく、加えて物流の不安定さから需給がひっ迫しやすい南大東島では、特に夏場に葉物野菜の価格が高騰する傾向があり、島民への葉物野菜の安定供給体制の構築が大きな課題となっていた。
 
注:南大東島の外周の海岸部は断崖であることから、岩礁を掘削することにより整備された漁港。

3 コンテナ型植物工場の概要

(1)コンテナ型植物工場の設置
 このような課題を抱えていた南大東村は、葉物野菜の安定供給を確立することにより、島民が安心して生活できるよう、「離島における生活条件の不利性解消」を目的として、内閣府の「沖縄離島活性化推進事業」を活用した。南大東村は、「植物コンテナ整備事業」を立ち上げ、これに手を挙げたのが、10年以上にわたり植物工場の事業を行ってきた沖縄セルラー アグリ&マルシェ株式会社(以下「アグリ&マルシェ」という)である。アグリ&マルシェは、平成29年に沖縄セルラー電話株式会社からアグリ事業、マルシェ事業、観光事業を分割して設立され、同年に沖縄県内で初のICT(情報通信技術)を活用した完全密閉型いちご栽培事業を開始した。植物工場運営の実績とノウハウを生かして、プラントの販売、栽培から野菜販売までをパッケージ化し、サポートを行っている。平成29年度事業で1機目のコンテナ型植物工場を、令和元年度事業で2機目を設置した(写真1)。

 
(2)コンテナ内の環境制御
 南大東島のコンテナ型植物工場では、温度、CO₂濃度、光環境、養液といった植物の生育に関わる主要な要素を制御することで、外部環境に左右されない安定生産を実現している(写真2)。
 コンテナ内の温度は空調設備によって管理され、設定した適正値を上回る、または下回った場合には、アラートが発信される仕組みとなっている。温度およびCO₂濃度の制御は、既製品の機器を組み合わせて行っており、作物の生育状況や品目に応じて調整する。湿度は、機器による制御を行っていない。コンテナは密閉構造であるため、生産される植物からの蒸散により内部は比較的高湿度に保たれ、葉物野菜の栽培に適した湿度が維持される。養液は栽培棚下部に設置したポンプにより循環し、窒素・リン酸・カリウムを含む養液栽培用肥料を水または湯で希釈して一定の比率で調製する。養液は月に一度全量を入れ替え、日々の補充とともにフィルターを定期的に交換し、不純物を除去している。また、導電率(EC)やpHが基準値の範囲内にあるかを継続的に確認している。照明にはLEDを用い、16時から翌朝8時まで消灯するタイマー制御を行う。点灯時間が長い方が葉物野菜の生育は早く、生産量も増加するが、全量島内出荷で現在の生産サイクルが需要に合致していることに加え、消費電力の削減の観点から、現行の消灯時間を設けることで、省エネと安定供給のバランスを図っている。
 
 
(3)葉物野菜生産の状況
 1機目のコンテナでは、取材時(令和7年8月)、リーフレタスを中心にフリルレタス、ちんげんさい、こまつなの4品目を栽培していた。コンテナ内に入ると、まずエアシャワーでじん埃・毛髪などを吹き飛ばし、これらの室内への持ち込みを減少させる。室内には、幅約1メートル×奥行き約9メートル×高さ約2.5メートルの栽培棚が5段、通路を挟んで2列設置され、入口近くの手前から播種(はしゅ)後のパレット、定植後のパレット、収穫間近のパレットが生育段階別に品目ごとに並んでいる(写真3)。
 
タイトル: p070
 
 基本的に1年を通じて栽培品目は固定している。品目によって栽培期間に多少の差はあるが、リーフレタスは、棚の最下段に播種し、約2週間後に定植、約20日間で収穫可能となる。収穫時期が近くなるにつれて下段から上段に、そして手前から奥にパレットを移動する。播種から収穫までおおよそ35~37日間で、同じ時期に播種した場合、バラつきはほとんどなく均一に生長する。取材時の1日の生産量は、30~50株程度で、収穫後、島内商店販売用に計量し、フィルムに包装(1袋当たり160~180グラム)してヒートシール(フィルム包装に熱を加える密封方法)で密閉、商品シールを貼るところまでをコンテナ内で従業員が行う(写真4)。包装された野菜は、出荷するまで10度の冷蔵庫で保管する。

タイトル: p071
 
 2機目のコンテナでは、1機目と同じ4品目を栽培していた。取材時は学校給食用の野菜を栽培しており、これらは袋などで個装せず、定量を出荷する。2機目のコンテナは、省力化、作業性向上の観点から、アグリ&マルシェの提案により、建設時に1)LED照明の変更、2)作業スペースの拡大-を行った。1機目のコンテナと2機目では、LED照明の色が異なる。2機目のLED照明は、定植パネルが劣化せず、照明の光が養液に当たる箇所が少ないためアオコの発生(養液中の藻類やバクテリアが増殖して養液が緑色になる現象)が抑えられる仕様になった(写真5)。また、1機目のコンテナは作業スペースが狭く、一定の位置でしか収穫などの作業ができなかったが、2機目は作業効率を上げるため、作業スペースを広く確保し、さまざまな場所で作業できるようになった。
 令和6年度の上記4品目などの年間生産量は、2機のコンテナ合わせて学校給食向けが338キログラム、島内商店販売用が3281キログラムで、合計3619キログラムとなっている(表2)。


 
(4)葉物野菜の流通と販売
 コンテナ型植物工場で生産された野菜は、すべて島内で消費されている。販売先は学校給食、島内5カ所の商店、ならびに村役場に隣接するハッピーグリーンマーケット(平成29年度沖縄離島活性化推進事業を活用して設置、平成31年4月から販売開始)である(写真6)。商店およびハッピーグリーンマーケットでは、野菜は丸ごとフィルム包装された状態で販売されているが、調理の利便性から、カット加工された形態の需要も高い。そのため、規格外となった野菜や、外観上の理由で取り除かれた部分は、ハッピーグリーンマーケット内でカット加工され、カットサラダとして販売されている。ただし、加工作業は専任担当者1人で行っているため、担当者不在時にはカットサラダの販売ができない。
 
 
 販売先への輸送は、配送用の軽自動車を用い、当日または前日収穫した野菜を、午前および午後に分けて配送している(写真7)。配送時間は1時間以内と短く、冷蔵庫から取り出してすぐに配達されるため、輸送中の温度管理は特段行っていないが、車内の空調を稼働させることで品質維持を図っている。決済方法は、当初、ハッピーグリーンマーケットから卸売ルートを構築し、発注システムを介して商店からの注文を受ける体制が想定されていたが、売上管理が煩雑であったことから、現在は基本的に月締めで請求書を発行する方式が主流となっている。JAおきなわ(沖縄県農業協同組合)が運営するAコープに対しては、申込みを受けて委託販売する形態を取っているが、農産物販売に伴う資料作成や経理作業が現場の負担になっていることから、近年は他の商店と同様に買い取り方式へ移行したいとの要望もある。
 葉物野菜の販売価格は、植物コンテナ整備事業開始当初から、品目を問わず1袋180円、学校給食用は1キログラム当たり1200円に設定されており、現在も変わらない。これは、この事業が島内の葉物野菜不足を解消し、島民の健康と安心を目的として導入された経緯によるものである。近年の物価上昇に合わせてもう少し単価を上げたいところだが、価格を含め島民から好評を博していることから、今後も価格は変えられないと南大東村は考えている。学校給食における葉物野菜の島内自給率は、平成29年度の31%から令和2年度には99.4%へと大きく向上し、現在も維持されており、島内の児童・生徒は島で生産された採れたての野菜を食べることができる。
 
タイトル: p073
 
(5)管理・運営・雇用状況
 コンテナ型植物工場は、令和2年に設立された「豊かな村づくり事業促進協議会」(以下「協議会」という)によって管理・運営されている。植物コンテナ整備事業は、南大東村が主体となって開始したが、現在は運営が変わり、村は協議会の事務局として位置付けられている。協議会には13人の職員が所属し、栽培計画の作成、栽培管理から収穫、配達、カットサラダの加工、運営までの一連の業務を担っている。職員の内訳はフルタイム3人、パートタイム10人で、勤務時間はフルタイムで1日8時間、パートタイムは同4時間となっている。勤務は、1週間のうち土・日曜日を除く5日間である。売り上げは協議会の運営に必要な経費に十分に達していないが、島内に葉物野菜を安定供給することによって、島民の安心と健康を維持するという事業開始の背景を踏まえ、この不足分については事務局の南大東村が補塡している。
 人材育成の面では、事業開始時に採用された職員はアグリ&マルシェの研修を受講しているが、その後に採用された職員は、先輩職員からのOJTを通じて知識や技術を習得している。品目選定や栽培方法は、経験を踏まえながら試行錯誤が続けられている。播種計画も職員が主体となって作成しており、計画立案に当たっては、学校給食の定期的な需要を最優先とし、その上で島内5商店向けの供給量を調整している。協議会は、30~40日前に依頼があれば、播種計画に反映することができる。
 季節による需要変動への対応も、協議会の重要な管理業務の一つである。冬季はリーフレタスの需要が低下する一方、鍋料理に使用されるこまつななどの需要が高まるため、品目構成を見直す。また、冬場は島民の家庭菜園などでも野菜が栽培され、販売が伸びにくくなる傾向があるため、需要と供給のバランスについては職員間で協議し、調整を重ねている。取材時には、こまつなやリーフレタスは週5回播種・出荷し、ちんげんさいは週2回播種・収穫する体制が取られていた。
 この他、協議会は、南大東村が「令和3年度沖縄離島活性化推進事業費補助金事業」で設置した水耕栽培型農業ハウスで葉物野菜を栽培し、島内に出荷している。
 平成29年度沖縄離島活性化推進事業でコンテナ設置が決定される以前から、地産地消を推進するための協議会が村内に存在しており、これが現在の豊かな村づくり事業促進協議会の前身となっている。現在の協議会は、コンテナ単体の管理だけでなく、野菜の生産から販売までを包括的に担う組織体として位置付けられている。
 
(6)今後の課題と展望
 南大東村におけるコンテナ型植物工場は、台風などにより栽培や物流に支障が生ずる離島において、天候に左右されず葉物野菜を安定供給できる有効な手段であり、学校給食や島内消費を支える重要な生活インフラとなっている。
 一方で課題もある。第一に、非常用電源を設置していないことから、停電の場合、野菜生産を一時的に停止せざるを得ないことである。第二は、さらなる省力化である。現在の従業員13人では人手が足りず、播種・定植・収穫・調整(包装)をすべて手作業で行っていることから、これらを省力化できるシステムや栽培技術を導入したいと考えている。また、省エネできる栽培システムにアップデートすることで、経費の大部分を占めている電力コストを抑えたいと考えている。第三は、既存のレタス品種にはチップバーン(生理障害)が多いことである。現在、アグリ&マルシェからの知見を得ながら、チップバーンが出にくい品種の導入を検討しているところである。
 今後は、これら課題を一つずつ達成していくとともに、需要に応じた計画生産や栽培技術の向上を進め、地産地消の中核としての役割拡大が期待される。

4 おわりに

 夏場の葉物野菜生産の難しさや、台風などによる物流停滞は、これまで島民の生活に大きな影響を与えてきた。今回取材した南大東村の植物コンテナ整備事業は、自然条件や物流条件に大きく左右される離島地域において、安定的な食料供給体制を構築するための有効な取り組みである。コンテナ型植物工場の導入により、天候に左右されることなく、安定した野菜生産が可能となり、島内で採れた新鮮な野菜を、1年を通して日常的に手に取れる環境が整いつつある。取材時に、島民の方々から「工場で作っているから衛生的で手軽に購入でき、料理に使いやすく、よく購入している。」との声を聞いた。コンテナ型植物工場は、今や島民にとって欠かせない存在となっている。
 特に、学校給食における葉物野菜の自給率が大きく向上したことは、島の子どもたちが地元で育った野菜を食べながら成長できる環境づくりにつながっており、地域にとって大きな成果と言える。アグリ&マルシェの人工光植物工場の導入事例は、沖縄県の離島7地域に拡大しており、今後も、島民の暮らしを支える大切なインフラとして成長し続けると考える。また、このような取り組みが離島に限らず、同じような問題を抱える市町村・地域単位で広がっていくことが期待される。
 
謝辞
 本稿の執筆に当たり、ご多用中にもかかわらず取材にご協力いただきました南大東村役場の城間 恭様をはじめ関係者の皆さまに、この場を借りて深く御礼申し上げます。