(1)MVM商事株式会社の概要
MVM商事株式会社(以下「MVM商事」という)は、青果物専門商社として多様な品目を取り扱っているが、中でも、かぼちゃについては、産地開発から品質基準の策定、加工、販売までを一貫して手がける垂直統合型のサプライチェーンを構築している。
現在、MVM商事は、国内16道府県にわたり生産・流通ネットワークを展開しており、かぼちゃの生育適温とされる25度前後の「かぼちゃ前線」を追う形で産地を切り替える「産地リレー方式」を採用している。この方式により、南は沖縄から九州、本州、そして国内最大の生産地である北海道へと生産エリアを北上させることで、年間を通じた安定供給を実現している(表1)。特に北海道産は夏季から秋季にかけての主力供給源となり、貯蔵技術の発達により品質を維持したまま長期出荷が可能となっている。
また、1月以降は国内産の供給が減少するため、輸入品を組み合わせることにより、供給の平準化を図っている。こうした調達体制により、MVM商事は季節変動の大きいかぼちゃ市場において、年間を通じた安定供給と品質維持を両立させている。
(2)品質基準による差別化
MVM商事では、独自の流通網の付加価値を高める取り組みとして、独自ブランド「ほめられかぼちゃ」を展開している。従来、かぼちゃは品種・産地・収穫時期によって食味の差が大きく、消費者からは「当たりはずれが多い」品目として認識されてきた。こうした特性を踏まえ、同社は光センサーを活用した全量選別体制を導入し、糖度・水分量・比重といった内部品質を非破壊測定することで、個体ごとの品質ばらつきを極小化した(写真1)。これにより、従前は外 観から判断できなかった内部品質の均質化を実現し、ブランドとしての信頼性を高めている。
「ほめられかぼちゃ」は特定の品種に限定せず、食味の指標として重要な甘味とホクホク感を最優先に評価する点が特徴である。具体的には、1)糖度12度以上、2)水分75%以上、3)比重1.0以上という三つの基準(図2)を満たしたもののみをブランド品として認定し、市場に供給している。このことが、結果として「いつ・どれを選んでもおいしい」というブランド価値を確立することにつながった。
一方、光センサー選別によって規格外と判断されたかぼちゃについても、同社は有効活用の可能性を積極的に検討している。規格外品は、外観や一部の品質基準を満たさないものの、加工用途としては十分な品質を有する場合が多い。このため、加工会社との連携強化や新たな加工品開発を通じて、フードロスの削減、生産者の収益向上、さらにはSDGsの観点からも持続可能なサプライチェーンの構築が期待されている。こうした取り組みは、単なるブランド展開にとどまらず、青果流通全体の効率化と価値創出に寄与するものとして注目されている。
(3)子会社設立による北海道のかぼちゃの生産拡大と産地リレー
北海道は、日本最大のかぼちゃの生産地であり、収穫量は全国の約5割を占めている(図3)。特に上川地域は作付面積が道内の約4割を占めており、このほかに空知、オホーツク地方などでも盛んに栽培されてきた(図4)。これらの地域は、気候や土壌特性がかぼちゃの生育に適しており、北海道の主産地として、安定した生産基盤を形成している。しかし、近年、労働力不足が深刻化する中で、かぼちゃは重量があって収穫作業の負担が大きい「重量作物」であることから、道内の作付面積は直近10年で17%減少するなど、年々減少傾向にあった(図5)。
こうした中、MVM商事は令和5年6月、野菜農場の経営を行うHOKKAIDO農業テラス株式会社(以下「農業テラス」という)を設立した。農業テラスは、上段のような状況の中、南は函館から北は天塩まで、道内での「産地リレー」を行い、長期間にわたり道内で安定したかぼちゃの供給体制を構築できないかと考え、その対応策として、自社によるコントラクター事業(農作業受託)を導入した。この事業では、農業テラスが収穫や選果の機械化と作業を請け負うことにより、生産者が作付けや病害虫・雑草防除などの生育管理に専念できる仕組みを整えた。農業テラスの担当者によると、「生産規模の拡大のためには、現在、一緒に取り組んでくれている生産者としっかりと信頼関係を築いていくことが重要」であり、農業テラスでは、収穫代行に加え、品種選定や栽培技術などについても生産者と日頃から意見交換を行い、二人三脚でかぼちゃの生産拡大に取り組んでいる。こうした支援体制は、生産者の負担軽減だけでなく、品質の均一化や安定供給にも寄与している。
なお、農業テラスは、農業協同組合(JA)からの出荷や道内の契約生産者、自社
圃場を含め、年間1万トンのかぼちゃを出荷する計画を掲げている。そのうち約7割を青果用として市場に出荷し、残りの3割を冷凍かぼちゃの加工用原料として、同系列の北海道AGRI FROZEN株式会社に提供する計画である(図6)。