野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 加工・業務用野菜の安定的供給への取り組み ~北海道の冷凍かぼちゃを全国へ~

調査・報告 野菜情報 2026年3月号

加工・業務用野菜の安定的供給への取り組み ~北海道の冷凍かぼちゃを全国へ~

印刷ページ
札幌事務所 加瀬 美郷
★記事の感想を募集しています★
(回答フォームに遷移します)

【要約】

 食の外部化や簡便化が進み、加工・業務用野菜の需要が高まる一方、国産原料の確保は大きな課題となっている。青果物専門商社のMVM商事株式会社では、北海道旭川市に冷凍野菜加工工場を設立し、独自の流通網を活かし、冷凍かぼちゃの国産原料比率向上と安定供給に取り組んでいる。

1 はじめに

 日本における野菜の需要は、かつては家計消費用が主であったが、徐々に加工・業務用の割合が拡大し、現在では全体の約6割を占めている。
 単身世帯数の増加や食の外部化の進展など、ライフスタイルの変化に伴い加工・業務用野菜の需要が増している一方で、定時・定量・定価格の供給を必要とするこの需要に国産原料が対応し切れていないことから、現状としては加工・業務用の約3割が輸入品であると推計されている(図1)。このため、農林水産省は、食料安全保障の観点から「国産野菜シェア奪還プロジェクト」を立ち上げ、令和7年4月に閣議決定された新たな「食料・農業・農村基本計画」においては、加工・業務用野菜の国産野菜シェア奪還の取り組みを推進する旨が手厚く記述され、併せて、食料自給率目標に関連したKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として、「加工・業務用野菜の国産切替量」が設定され、令和12年までに32万トンを目標に切り替えることとされている。こうした中、さまざまな関係者が、この目標に向かって取り組んでいる。
 本稿では、兵庫県神戸市に本社を置く青果物専門商社のMVM商事株式会社が、北海道に野菜農場の経営を行う会社や野菜の冷凍加工・販売を行う会社を設立し、かぼちゃの生産から加工までを一元的に行う仕組みを構築して加工・業務用向けの国産野菜のシェア拡大に取り組んでいる事例について紹介する。
 
タイトル: p089a

2 MVM商事株式会社とかぼちゃの関係

(1)MVM商事株式会社の概要
 MVM商事株式会社(以下「MVM商事」という)は、青果物専門商社として多様な品目を取り扱っているが、中でも、かぼちゃについては、産地開発から品質基準の策定、加工、販売までを一貫して手がける垂直統合型のサプライチェーンを構築している。
 現在、MVM商事は、国内16道府県にわたり生産・流通ネットワークを展開しており、かぼちゃの生育適温とされる25度前後の「かぼちゃ前線」を追う形で産地を切り替える「産地リレー方式」を採用している。この方式により、南は沖縄から九州、本州、そして国内最大の生産地である北海道へと生産エリアを北上させることで、年間を通じた安定供給を実現している(表1)。特に北海道産は夏季から秋季にかけての主力供給源となり、貯蔵技術の発達により品質を維持したまま長期出荷が可能となっている。
 また、1月以降は国内産の供給が減少するため、輸入品を組み合わせることにより、供給の平準化を図っている。こうした調達体制により、MVM商事は季節変動の大きいかぼちゃ市場において、年間を通じた安定供給と品質維持を両立させている。
 
タイトル: p089b
 
 
 
(2)品質基準による差別化
 MVM商事では、独自の流通網の付加価値を高める取り組みとして、独自ブランド「ほめられかぼちゃ」を展開している。従来、かぼちゃは品種・産地・収穫時期によって食味の差が大きく、消費者からは「当たりはずれが多い」品目として認識されてきた。こうした特性を踏まえ、同社は光センサーを活用した全量選別体制を導入し、糖度・水分量・比重といった内部品質を非破壊測定することで、個体ごとの品質ばらつきを極小化した(写真1)。これにより、従前は外 観から判断できなかった内部品質の均質化を実現し、ブランドとしての信頼性を高めている。
 「ほめられかぼちゃ」は特定の品種に限定せず、食味の指標として重要な甘味とホクホク感を最優先に評価する点が特徴である。具体的には、1)糖度12度以上、2)水分75%以上、3)比重1.0以上という三つの基準(図2)を満たしたもののみをブランド品として認定し、市場に供給している。このことが、結果として「いつ・どれを選んでもおいしい」というブランド価値を確立することにつながった。
 一方、光センサー選別によって規格外と判断されたかぼちゃについても、同社は有効活用の可能性を積極的に検討している。規格外品は、外観や一部の品質基準を満たさないものの、加工用途としては十分な品質を有する場合が多い。このため、加工会社との連携強化や新たな加工品開発を通じて、フードロスの削減、生産者の収益向上、さらにはSDGsの観点からも持続可能なサプライチェーンの構築が期待されている。こうした取り組みは、単なるブランド展開にとどまらず、青果流通全体の効率化と価値創出に寄与するものとして注目されている。
 
タイトル: p090
 
タイトル: p091
 
(3)子会社設立による北海道のかぼちゃの生産拡大と産地リレー
 北海道は、日本最大のかぼちゃの生産地であり、収穫量は全国の約5割を占めている(図3)。特に上川地域は作付面積が道内の約4割を占めており、このほかに空知、オホーツク地方などでも盛んに栽培されてきた(図4)。これらの地域は、気候や土壌特性がかぼちゃの生育に適しており、北海道の主産地として、安定した生産基盤を形成している。しかし、近年、労働力不足が深刻化する中で、かぼちゃは重量があって収穫作業の負担が大きい「重量作物」であることから、道内の作付面積は直近10年で17%減少するなど、年々減少傾向にあった(図5)。
 こうした中、MVM商事は令和5年6月、野菜農場の経営を行うHOKKAIDO農業テラス株式会社(以下「農業テラス」という)を設立した。農業テラスは、上段のような状況の中、南は函館から北は天塩まで、道内での「産地リレー」を行い、長期間にわたり道内で安定したかぼちゃの供給体制を構築できないかと考え、その対応策として、自社によるコントラクター事業(農作業受託)を導入した。この事業では、農業テラスが収穫や選果の機械化と作業を請け負うことにより、生産者が作付けや病害虫・雑草防除などの生育管理に専念できる仕組みを整えた。農業テラスの担当者によると、「生産規模の拡大のためには、現在、一緒に取り組んでくれている生産者としっかりと信頼関係を築いていくことが重要」であり、農業テラスでは、収穫代行に加え、品種選定や栽培技術などについても生産者と日頃から意見交換を行い、二人三脚でかぼちゃの生産拡大に取り組んでいる。こうした支援体制は、生産者の負担軽減だけでなく、品質の均一化や安定供給にも寄与している。
 なお、農業テラスは、農業協同組合(JA)からの出荷や道内の契約生産者、自社()場を含め、年間1万トンのかぼちゃを出荷する計画を掲げている。そのうち約7割を青果用として市場に出荷し、残りの3割を冷凍かぼちゃの加工用原料として、同系列の北海道AGRI FROZEN株式会社に提供する計画である(図6)。
 



 
 
タイトル: p093
 

3 北海道AGRI FROZEN株式会社の設立と取り組み

(1)北海道AGRI FROZEN株式会社の概要
 北海道AGRI FROZEN株式会社(以下「北海道AGRI FROZEN」という)は、MVM商事の子会社として令和5年6月に農業テラスとともに設立され、翌6年12月、旭川市に国内最大級の冷凍かぼちゃ工場を竣工して大きな注目を集めた(写真2)。設立当初から、国産冷凍かぼちゃの安定的な供給拠点として期待されており、国内外の食品関連企業からも高い関心が寄せられている。
 
タイトル: p094a
 
 同工場の所在する旭川市は、道北地域における主要な農産物集積地であると同時に、道北・道東・道央を結ぶ交通の要所として発展してきた。周辺産地からのアクセスが良好で、製造した冷凍製品を全国各地へ効率的に配送できる物流網が確立されている。また、面積5000坪(約1万6529平方メートル:1坪=3.3058平方メートル)の広大な敷地には、選果場に加えて加工工場や運送施設が一体的に整備されている。さらに、冷凍加工において極めて重要な要素である収穫後の原料搬入について、同工場では、鮮度を保ったまま搬入できる環境を整えており、産地から搬入されたかぼちゃを選別、加工し、最終製品として出荷するまでの工程を一気通貫で行うことを可能としている。工程間の移動ロスを最小限に抑え、品質管理の徹底と生産効率の向上を同時に実現する体制が構築されている点は、同工場の大きな強みである。
 
(2)冷凍加工工程の概要
 現在の北海道AGRI FROZENの冷凍工場の生産能力は、年間約4800トンであるが、今後、同約5000トンとすることを目標としており、これは、冷凍かぼちゃの年間国内消費量の4分の1に相当するという。選果場から工場に運び込まれたかぼちゃは、改めて外観や熟度、傷の有無などを確認する受け入れ検査を行い、品質基準を満たしたものだけが次の工程へ進む。検査を通過したかぼちゃは、表面についた土や汚れを落とすために上下からシャワーを当て、15~20秒ほどかけて洗浄され、清潔な状態に整えられる。洗浄後は、専用機械で果梗(実につながる付け根)部分をカットしドリルで穴を開けた後、カッターで半分に割り、内部のワタや種を取り除く。工場では現在、6種の製品(表2)を製造しており、製品の仕様に応じて皮をむく場合もあり、皮むきは一つ一つ手作業で行われている(写真3)。その後、スライスや角切りなど、用途に合わせた形状にカットされる。かぼちゃは硬いため、工場では安全かつ均一に切るための専用機械が使われる。
 
タイトル: p094b
 
タイトル: p095
 
 カットされたかぼちゃは、再度洗浄され、短時間だけ加熱する「ブランチング」と呼ばれる工程に進む。ブランチングは、80度以上の高温で加熱することで酵素の働きを止めて変色を防ぎ、冷凍後の食感を安定させるために欠かせない処理である。ブランチングを終えたかぼちゃは、粗熱を取ってからすぐに急速冷凍機に送られ、個々の片がバラバラの状態で凍結される。これは、調理時に必要な分だけ取り出しやすくすることへの配慮である。凍結後は、形が崩れたものやサイズが不ぞろいなものを取り除く選別作業が行われ、金属探知機で異物混入がないかも確認される。選別を終えたかぼちゃは、顧客ニーズや用途に応じた重量ごとに袋やパッケージに詰められる。包装後にも再度、異物検査や表示確認が行われ、品質が保証されたものだけが出荷される。最終的に、製品はマイナス18度以下の冷凍庫で保管され、全国の食品メーカー、外食チェーン、スーパーなどに出荷される。
 なお、ペーストの場合は、ブランチング後に専用の釜に入れ、1ミリメートルのメッシュで裏ごしされる。こちらは5キログラム単位で袋に充塡された後、カット製品と同様に金属探知機で異物混入がないか検査され、冷凍保管される。

4 北海道の冷凍かぼちゃ生産拡大に向けて

(1)冷凍かぼちゃの現状
 日本に輸入される生鮮かぼちゃは、年間約7万トン(令和6年)あり、輸入先の約9割をニュージーランドおよびメキシコが占めている。かぼちゃは、長距離輸送の過程で水分が抜けやすく、硬度が変化しやすいという特性を有するため、生鮮状態で輸入し、国内で加工を行う方式が長年主流となってきた。一方で、国内の外食産業や中食市場の拡大、調理現場の省力化ニーズの高まりなどを背景に、冷凍かぼちゃの需要は年々増加している。とりわけ、安定した品質と調理のしやすさが評価され、業務用としての引き合いは非常に強い状況にある。
 しかしながら、近年は、国際的な物流コストの上昇や為替相場の変動の影響に加え、海外の主要供給業者の倒産などが重なり、加工・業務用野菜の輸入原料を確保することが困難になってきている。さらに、日本の消費者の食の安全に対する意識の高まりや国産志向の強まり、食味へのこだわりといったニーズを踏まえると、安定的に国産原料を確保する体制の構築が急務となっている。MVM商事によれば、現在の冷凍かぼちゃ市場における国産原料の比率は約10%にとどまっており、国内供給体制の脆弱さが問題となっている。
 こうした状況を受け、MVM商事は国内のかぼちゃの生産基盤の強化に向け、かぼちゃの加工・業務用需要に対する供給原料の国産比率を20%まで引き上げることを目標に掲げ、農業テラスと北海道AGRI FROZENを設立した。現在、北海道AGRI FROZENは、従来手作業で行ってきた皮むき工程をはじめとする加工プロセスの見直しを進めており、機械化・自動化の推進による生産効率の向上と安定供給体制の確立を目指している。
 
(2)産地と冷凍加工工場の連携
 北海道AGRI FROZENでは、日本一の冷凍かぼちゃ工場の実現を目指し、北海道における安定的な冷凍かぼちゃ原料の確保に向けた取り組みを強化している。その一環として、令和6年には、主に十勝地域の生産者を主体とした「ひなたかぼちゃ生産組合」を設立した。同組合には、現在8人の生産者が加盟しており、十勝管内において合計50ヘクタールの圃場でかぼちゃを栽培し、令和6年度の生産量は536トンとなった。今後は、組合員の増加や栽培技術の向上を通じて、さらなる増産を図ることとしている。生産されたかぼちゃは、農業テラスが運営する芽室町内の集荷場において粗選別を実施した後(写真4)、北海道AGRI FROZENへと出荷され、冷凍加工が行われる。この流れは、産地と加工工場が密接に連携することで、品質の均一化や鮮度保持を図る仕組みとして機能している。また、6年度には、独立行政法人農畜産業振興機構の「大規模契約栽培産地育成強化推進事業」を活用し、生産体系の構築や作柄安定にも取り組んだ。
 さらに、豊作・不作にかかわらず、同組合の生産物を全量買い取りする契約方式を採用している点は、生産者にとって大きな安心材料となっている。いわゆる規格外品と呼ばれるB級品やオフグレードのかぼちゃについても、ペーストとしての需要があり、無駄なく原料として加工に回されている(図7)。生産者の営農計画に基づき、買取価格や買取数量を明確に約定することで、生産者の収入の安定化を図るとともに、全量契約取引により、生産者の長期的な作付けの継続を促す仕組みが構築されている。
 また、北海道AGRI FROZENは、冷凍かぼちゃ工場を整備したことにより地域における雇用機会を創出し、地域経済の発展や人口定着にも寄与するなど、産地と加工工場の連携は、地域社会全体の活性化にも大きく貢献している。
 
タイトル: p097

5 おわりに

 私たちにとって、今やカット野菜や冷凍野菜は非常に身近な存在となり、食生活をより便利で豊かなものにしてくれた。核家族や共働き世帯は今後も増加傾向で推移すると推測されることから、加工・業務用野菜の需要は、さらに高まっていくと予想される。消費者は、加工・業務用で提供される食材に対しても安全・安心を求めることに加え、その食味やさらなる利用の手軽さなどの付加価値を求める時代になっている。
 このようなニーズに対し、労働力の不足や農業就業者の高齢化により重量野菜の生産が敬遠されがちな状況の中で、省力化技術の導入や作業受託体制の整備を進めるなど、持続的な生産基盤を再構築する動きが着実に広がってきている。そうした動きの一つとして、生産者と企業との連携強化により、生産者が安心して作付けのできる環境整備を挙げることができる。MVM商事を中心としたこのような取り組みは、北海道産、ひいては国産かぼちゃの価値をさらに高めるだけでなく、地域・農業全体の未来を切り開く力にもつながるだろう。産地・企業・地域社会が一体となって挑戦を続けることが、今後の発展につながることを期待したい。
 
謝辞
 最後に、本調査にご協力いただいたMVM商事株式会社の安藤元貴常務取締役、冨田愛美様、HOKKAIDO農業テラス株式会社の井村拓司様、株式会社北海道AGRI FROZENの皆さまはじめ関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。
 
 
(参考)
・農林水産省「野菜をめぐる情勢(令和8年1月)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/attach/pdf/index-102.pdf
・北海道庁「北海道の野菜をめぐる情勢(令和7年7月)」
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsk/megurujousei.html
・農林水産省「国産野菜シェア奪還プロジェクト(令和7年5月)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/attach/pdf/kokusan_shea_dakkan-85.pdf
・農林水産省「野菜生産出荷統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/
・MVM商事株式会社ホームページ
https://mvm.co.jp/
・北海道AGRI FROZEN株式会社ホームページ
https://www.agrifrozen.co.jp/