直売所の経営は、「品ぞろえ対策」と「集客対策」の二つの柱によって成り立つ。なぜこれらが柱になるかというと、地元産の農産物を豊富に取りそろえたとしても、来客が少なければ売れ残りが増えて出荷者の出荷意欲を低下させる。一方、広告宣伝に力を入れて来客が増えたとしても、地元産の農産物が少なければ再度の来店は見込めない。両方を車の両輪のように同時に推し進めてこそ、直売所の経営は発展するのである。
ここからは、それぞれの柱を補強する手法を詳しく紹介する。
(1)地元産の農産物の「品ぞろえ」を充実させる四つの視点
【視点1】人気野菜、売れ筋野菜を確実に確保する
直売所の人気者といえば、取れたての状態が最高においしく感じられる野菜である。スイートコーン(とうもろこし)とえだまめがその代表で、新鮮野菜を扱う直売所だからこそ販売可能な物として、栽培できる期間は絶えず売場に並べておきたい(写真1)。
また、子どもの好きな野菜を取りそろえておくことも大切である。それらが豊富にあると、祖父母や両親が孫や子どものために買いに来てくれるからである。タキイ種苗の「2025年度野菜に関する調査」によると、子どもが好きな野菜はかんしょ(さつまいも)、トマト、スイートコーン、ばれいしょ(じゃがいも)、ブロッコリーが上位に該当する。
そして、家庭での購入量がもともと多いものは、積極的に出荷者に栽培拡大を呼びかけたい。国の家計調査の直近のデータ(2024年)によると、生鮮野菜では、上位からキャベツ、たまねぎ、だいこん、トマト、ばれいしょの順で多く購入されている。キャベツやたまねぎが旬の期間ながらも早くに売り切れるようでは、直売所であっても買い物の利便性が低下してしまう。
自給率の低い野菜も狙い目である。特にゴマの自給率は0.1%以下で国産品が入手しづらいため、直売所にゴマがあれば、少々高価でもまとめて買っていく人があり、隠れた人気商品だと言える。
【視点2】珍しい品種の栽培に取り組む
消費者が直売所を訪れる目的の一つに、普段はあまり見かけない野菜を買えることがある。例えば、黒いだいこんやジャンボサイズのピーマン、果肉がゼリーのようなミニトマトや種ごと食べられる小玉すいかなどが挙げられる。まだまだ一般的ではなく、売れる量はそれほど多くないが、直売所の魅力の一つとして、出荷者にはそのような野菜も栽培に組み入れてほしい(写真2)。
【視点3】時期をずらした栽培を拡大させる
直売所の消費者は、地元産の野菜を買い求めることが目的で直売所を訪れてくれる。そのような消費者の期待に応えるためにも、同じ品目が売り場に並ぶ期間を長くするよう、直売所は対策を講じなければならない。
図1は、筆者が出荷者向けの栽培講習会の講師を務める際に使っている、品種を組み合わせたはくさいの栽培暦の例である。はくさいを長期にわたって出荷できるよう、早生種から晩抽性までの四つの品種ごとに、
播種と定植の時期を具体的に示している。これに基づき栽培すれば、出荷者は10月中旬から3月初旬まで直売所にはくさいを出荷することが可能になる。市場出荷の生産者にとっては普通の栽培方法であるが、直売所の出荷者には栽培経験の浅い人も多く、ここまで示してあげてこそ実際に行動に移してくれるのである。
はくさい以外のキャベツやブロッコリー、スイートコーンやえだまめなどの他の野菜にしても、品種を組み合わせたり、種を何回かに分けてまいたりし、直売所への出荷期間を長くすることに何ら変わりはない。
【視点4】野菜がどの時期にどれほど足りないのかを把握して栽培に取り組む
図2と図3は、ある直売所におけるある年のえだまめとかぼちゃの月別の売り上げを、それぞれ委託品(地元産)と仕入品に分けてグラフ化したものである。
えだまめでは、6月と7月の売り上げの4分の1ほどを仕入品が占めていることから、この時期に収穫する地元産の栽培面積を3割程度増やしても売れる見込みが立つ。8月も仕入品が多いが、この時期は高温障害が影響して地元産が少ないと思われる。ところが、10月になると、地元産が再度増えていることがわかる。西日本で人気が急上昇している、丹波黒豆のえだまめが売れているのだ。6月と7月のえだまめの売上実績を勘案すると、10月のえだまめの栽培を2倍程度に拡大しても売れることは想像に難くない。
かぼちゃはどうかというと、通年的に仕入品が目立つことから、地元産の栽培株数を1.5倍に増やしても売れることが予想される。注目するのは12月で、この時期は冬至かぼちゃとして需要が高まるにもかかわらず、地元産が極めて少ない。この作型への取り組みを出荷者に呼びかけると、その時期の地元産の販売を拡大できることがわかる。
筆者が直売所の経営改善を支援する際、真っ先に作成するのがこのグラフである。主要な25品目の野菜でグラフ化するのであるが、これがあれば、その直売所でどのような野菜がどの時期にどれほど足りないのかが、一目瞭然に把握できる。把握できれば、気候的に栽培が可能ながら足りない時期において、地元産をどの程度増やせるのかを具体的な数字で出荷者に示せるようになる。地元産の野菜の今後の栽培の方向性を決める上で、これほど重要なデータはほかにない。
(2)対象者を明確に分類して実施する四つの「集客対策」
【対策1】固定客を対象とした「来店頻度を高める対策」
直売所の集客力を高める上では、すでに買い物に来てくれている、いわゆる固定客の来店頻度を高めることがまず重要となる。週に1回の来店を2~3回に、月数回の来訪を毎週に増やしてもらうよう、効果的な対策を打つのである。
方法の一つは、ポイント会員制の導入と活用である。ポイントがたまってうれしいのは直売所のお客さまも同様で、通常の買い物時のポイント付与とともに、ポイントアップ日として、例えば毎週水曜日と土曜日をポイント2倍デーに設定する。平日または休日にしか来店できない人たちに平等に特典を提供するとともに、曜日に関係なく来られる人たちの来店を週2回に増やすためである。
直売所ではまた、売れ残りを減らすためにポイント会員制が活用できる。大量に出荷されて売れ残りが予想される品目に関し、それを2袋以上買えばレジですべての購入品にポイントを2倍進呈するのだ。その品目を買う予定のなかった人にも買ってもらえるとともに、2袋以上とすることでさばける量が格段に増える。システムの改修費用は必要になるが、直売所独自の方法として検討する価値は大きい。
ポイント会員制とともに、SNS会員制も導入したい。特にLINEの公式アカウントがお勧めで、商品情報やイベント情報を直接会員の携帯電話に送ることができ、これほど効果的な宣伝方法はほかに見当たらない。
来店頻度を高める点では、イベントを定期的に開催することも効果が高い。例えば毎週第1土曜日は抽選会の日で、第2日曜日は農家の軒先市の日などと決めておくと、固定客はその日は直売所へ行く日と予定を決めてくれるからだ。それゆえ、スポット的ではなく、定期的に開催することが重要となる(写真3)。
【対策2】まだ来てくれていない地域住民を対象とした、「行ってみたくなる対策」
地域住民の中には、その直売所の存在を知らなかったり、知っていても行ったことがなかったりという人たちが必ずいる。そのような人たちにも足を運んでもらうためには、新聞折り込みチラシで直売所の存在と特色を知ってもらうことが欠かせない(図4)。
目的がそのことゆえ、チラシは毎回同じ地域に折り込む必要はない。一度でも訪れてもらい、ポイント会員やSNS会員に申し込んでもらうことによりつながりができれば、少なくともその人にとってチラシは必要でなくなる。
また、チラシの内容は、価格ではなく商品情報を中心とするとともに、地図を大きく載せることが重要である。スーパーのように価格競争のためではない上、場所をわかってもらうことが優先されるからである。
さらに、費用を抑えるためにも折り込む範囲を限定する。お勧めは、比較的古い新興住宅地やマンション団地である。平日の来店が期待できる、リタイアした人たちが多く住むと考えられるからだ。
もし、イベントカレンダーを作成しているなら、チラシの裏面に印刷して「保存版 壁や冷蔵庫に張っておいてください」と大きく書き込む。1カ月分のカレンダーは、家庭で保存してもらってこそ役立つからである。
【対策3】前面道路や近隣道路を偶然通りがかった人たちを対象とした、「立ち寄ってみたくなる対策」
直売所の前面道路や近隣道路の通行者の中には、観光や仕事、所用などで偶然通りがかった人たちがいる。そのような人たちにも立ち寄ってもらうためには、道路看板で直売所の存在を知らしめるしかない。
道路看板には、店名とともに新鮮野菜の直売所であることを明記する。偶然通りがかった人たちゆえ、店名だけでは何の店かわからないからだ。その点でも、知名度のある大手スーパーの店名看板とは設置目的が異なる。
写真4は、農協の直売所(岩手県奥州市)の開設コンサルタントを担当した際に設置してもらった看板で、フレームを取り付けてプレートを差し替えられるようにしてある。車での通行者に店舗情報を具体的に伝え、来訪を促すためであるが、別の目的もある。
道路看板は、店の場所を知っている人には無用なものでしかない。それを無用なものにせず、イベント情報や旬の農産物情報を伝える役目を持たせ、場所を知っている人にも有用なものにしようとするのがこの看板の考え方である。
【対策4】前面道路を毎日行き来している人たちを対象とした、「買いに行きたくなる対策」
直売所の前面道路の通行者の中には、通勤などで毎日行き来している人たちもいる。そのような人たちに来店を促すためには、のぼり旗が効果的に働く。
写真5で、詳しく説明したい。この写真では、「いちご」ののぼり旗が多数並んでいる。毎日の通行者にとっては、ある日を境にこのような風景に変わり、いちごがたくさん出始めたことが車の中からでもわかる。「たけのこ」ののぼり旗に変わるとたけのこが、「ぶどう」や「新米」に変わるとそれらが並び始めたことが伝わり、来店のきっかけになることが期待できるのだ。場合によっては、仕事先や家庭で、そのことを話題にしてくれるかもしれない。
直売所ののぼり旗は、何種類も設置するのではなく、旬の農産物を中心にそれだけを多数掲げる。車で通過する短時間でも瞬時に文字を読めるともに、数の多さからたくさん取り扱っている店とのイメージを持ってもらいやすいからである。