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調査・報告 野菜情報 2026年3月号

「行列のできる農産物直売所」の実現のために

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地産地消プロデューサー/株式会社シンセニアン 代表取締役 勝本 吉伸
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1 はじめに

 農産物直売所が1兆円産業の仲間入りを果たしたのは、平成28年度である(農林水産省「6次産業化総合調査」)。以来、1兆円を一度も下回ることがなく、令和5年度の販売金額は1兆1264億円にも達している。直売所は、消費者の安定した支持を受けながら確実に成長し続けているのだ。
 この成長が今後も維持されるためには、直売所の運営者や出荷者が、直売所の有する特質を理解しながら、その特質に基づいた行動を確実に実行し続けなければならない。直売所でありながら、直売所本来の姿とかけ離れた方向に進めば、客離れや売り上げの減少につながるので、その実行は当然である。
 では、直売所の特質とは何であろうか。それは、消費者の買い物の様子をつぶさに観察することで自然に見えてくる。
 直売所の消費者は、例えばほうれんそうを購入する場合、ある一つを手に取ればいったん売場に戻し、また別のものを手にしては戻すといった行為を何度か繰り返し、最終的に一つのほうれんそうを買い物かごに入れる。直売所のほうれんそうは、草丈の長いものや短いもの、袋にたくさん入っているものや少ないもの、あるいは葉の形が違っていたり根っこが付いていたりするもの、さらには、外見上はまったく同じながら価格が違っているものなど、実に多様性に富んでいる。そのため、自分の買いたい物やお気に入りの物を選び出そうとして、消費者はそのような行為に及ぶ。スーパーでは、こうはいかない。たいていの店では、規格も価格もそろった1種類のほうれんそうしか並んでいないため、選び出す行為はそもそも発生しないのだ。
 直売所とスーパーでは、売っているものが違っていることがわかる。小売業という業種は同じでも、業態は全く別物なのだ。あえて同じ部分を探すと、それは売っている野菜や果物の名前だけと言っても過言ではない。
 業態が異なるゆえ、商品の品ぞろえ方法も売り方も、宣伝方法にしてもイベントの内容にしても、あるいは従業員の接客方法にしても、直売所には直売所独自の手法や独特の対応方法が存在することになる。これが、直売所経営の底流をなす特質なのである。
 筆者は平成11年、開設されたばかりの直売所(奈良県明日香村の「あすか夢販売所」)で店長に就き、以来8年近くにわたって同職を務めた。今から27年前になる当時は、全国的な直売所ブームの(れい)(めい)()で、急激な勢いで店舗数が増えていた時期でもある。黎明期ゆえ、手本となるような運営事例が少なかったこともあり、自身で工夫と試行錯誤を重ねながら、直売所の経営を軌道に乗せてきた。店長を退職後は、直売所の支援を専門に行う会社を設立し、新店舗の開設や経営内容の改善、出荷者講演会や従業員研修会などで各地の直売所と関わってきた。このように、27年もの間、直売所の歴史に身を置き、直売所の現場を肌で感じてきた者として、すべての直売所のにぎわいの継続に必要なことを、直売所の持つ特質の観点から具体的かつわかりやすくお伝えしたいと思っている。

2 直売所経営の二つの柱

 直売所の経営は、「品ぞろえ対策」と「集客対策」の二つの柱によって成り立つ。なぜこれらが柱になるかというと、地元産の農産物を豊富に取りそろえたとしても、来客が少なければ売れ残りが増えて出荷者の出荷意欲を低下させる。一方、広告宣伝に力を入れて来客が増えたとしても、地元産の農産物が少なければ再度の来店は見込めない。両方を車の両輪のように同時に推し進めてこそ、直売所の経営は発展するのである。
 ここからは、それぞれの柱を補強する手法を詳しく紹介する。
 
(1)地元産の農産物の「品ぞろえ」を充実させる四つの視点
【視点1】人気野菜、売れ筋野菜を確実に確保する
 直売所の人気者といえば、取れたての状態が最高においしく感じられる野菜である。スイートコーン(とうもろこし)とえだまめがその代表で、新鮮野菜を扱う直売所だからこそ販売可能な物として、栽培できる期間は絶えず売場に並べておきたい(写真1)。
 
タイトル: p065
 
 また、子どもの好きな野菜を取りそろえておくことも大切である。それらが豊富にあると、祖父母や両親が孫や子どものために買いに来てくれるからである。タキイ種苗の「2025年度野菜に関する調査」によると、子どもが好きな野菜はかんしょ(さつまいも)、トマト、スイートコーン、ばれいしょ(じゃがいも)、ブロッコリーが上位に該当する。
 そして、家庭での購入量がもともと多いものは、積極的に出荷者に栽培拡大を呼びかけたい。国の家計調査の直近のデータ(2024年)によると、生鮮野菜では、上位からキャベツ、たまねぎ、だいこん、トマト、ばれいしょの順で多く購入されている。キャベツやたまねぎが旬の期間ながらも早くに売り切れるようでは、直売所であっても買い物の利便性が低下してしまう。
 自給率の低い野菜も狙い目である。特にゴマの自給率は0.1%以下で国産品が入手しづらいため、直売所にゴマがあれば、少々高価でもまとめて買っていく人があり、隠れた人気商品だと言える。
 
【視点2】珍しい品種の栽培に取り組む
 消費者が直売所を訪れる目的の一つに、普段はあまり見かけない野菜を買えることがある。例えば、黒いだいこんやジャンボサイズのピーマン、果肉がゼリーのようなミニトマトや種ごと食べられる小玉すいかなどが挙げられる。まだまだ一般的ではなく、売れる量はそれほど多くないが、直売所の魅力の一つとして、出荷者にはそのような野菜も栽培に組み入れてほしい(写真2)。
 
タイトル: p066a
 
【視点3】時期をずらした栽培を拡大させる
 直売所の消費者は、地元産の野菜を買い求めることが目的で直売所を訪れてくれる。そのような消費者の期待に応えるためにも、同じ品目が売り場に並ぶ期間を長くするよう、直売所は対策を講じなければならない。
 図1は、筆者が出荷者向けの栽培講習会の講師を務める際に使っている、品種を組み合わせたはくさいの栽培暦の例である。はくさいを長期にわたって出荷できるよう、早生種から晩抽性までの四つの品種ごとに、()(しゅ)と定植の時期を具体的に示している。これに基づき栽培すれば、出荷者は10月中旬から3月初旬まで直売所にはくさいを出荷することが可能になる。市場出荷の生産者にとっては普通の栽培方法であるが、直売所の出荷者には栽培経験の浅い人も多く、ここまで示してあげてこそ実際に行動に移してくれるのである。
 はくさい以外のキャベツやブロッコリー、スイートコーンやえだまめなどの他の野菜にしても、品種を組み合わせたり、種を何回かに分けてまいたりし、直売所への出荷期間を長くすることに何ら変わりはない。
 
タイトル: p066b
 
【視点4】野菜がどの時期にどれほど足りないのかを把握して栽培に取り組む
 図2と図3は、ある直売所におけるある年のえだまめとかぼちゃの月別の売り上げを、それぞれ委託品(地元産)と仕入品に分けてグラフ化したものである。
 
タイトル: p067
 
 えだまめでは、6月と7月の売り上げの4分の1ほどを仕入品が占めていることから、この時期に収穫する地元産の栽培面積を3割程度増やしても売れる見込みが立つ。8月も仕入品が多いが、この時期は高温障害が影響して地元産が少ないと思われる。ところが、10月になると、地元産が再度増えていることがわかる。西日本で人気が急上昇している、丹波黒豆のえだまめが売れているのだ。6月と7月のえだまめの売上実績を勘案すると、10月のえだまめの栽培を2倍程度に拡大しても売れることは想像に難くない。
 かぼちゃはどうかというと、通年的に仕入品が目立つことから、地元産の栽培株数を1.5倍に増やしても売れることが予想される。注目するのは12月で、この時期は冬至かぼちゃとして需要が高まるにもかかわらず、地元産が極めて少ない。この作型への取り組みを出荷者に呼びかけると、その時期の地元産の販売を拡大できることがわかる。
 筆者が直売所の経営改善を支援する際、真っ先に作成するのがこのグラフである。主要な25品目の野菜でグラフ化するのであるが、これがあれば、その直売所でどのような野菜がどの時期にどれほど足りないのかが、一目瞭然に把握できる。把握できれば、気候的に栽培が可能ながら足りない時期において、地元産をどの程度増やせるのかを具体的な数字で出荷者に示せるようになる。地元産の野菜の今後の栽培の方向性を決める上で、これほど重要なデータはほかにない。
 
(2)対象者を明確に分類して実施する四つの「集客対策」
【対策1】固定客を対象とした「来店頻度を高める対策」
 直売所の集客力を高める上では、すでに買い物に来てくれている、いわゆる固定客の来店頻度を高めることがまず重要となる。週に1回の来店を2~3回に、月数回の来訪を毎週に増やしてもらうよう、効果的な対策を打つのである。
 方法の一つは、ポイント会員制の導入と活用である。ポイントがたまってうれしいのは直売所のお客さまも同様で、通常の買い物時のポイント付与とともに、ポイントアップ日として、例えば毎週水曜日と土曜日をポイント2倍デーに設定する。平日または休日にしか来店できない人たちに平等に特典を提供するとともに、曜日に関係なく来られる人たちの来店を週2回に増やすためである。
 直売所ではまた、売れ残りを減らすためにポイント会員制が活用できる。大量に出荷されて売れ残りが予想される品目に関し、それを2袋以上買えばレジですべての購入品にポイントを2倍進呈するのだ。その品目を買う予定のなかった人にも買ってもらえるとともに、2袋以上とすることでさばける量が格段に増える。システムの改修費用は必要になるが、直売所独自の方法として検討する価値は大きい。
 ポイント会員制とともに、SNS会員制も導入したい。特にLINEの公式アカウントがお勧めで、商品情報やイベント情報を直接会員の携帯電話に送ることができ、これほど効果的な宣伝方法はほかに見当たらない。
 来店頻度を高める点では、イベントを定期的に開催することも効果が高い。例えば毎週第1土曜日は抽選会の日で、第2日曜日は農家の軒先市の日などと決めておくと、固定客はその日は直売所へ行く日と予定を決めてくれるからだ。それゆえ、スポット的ではなく、定期的に開催することが重要となる(写真3)。
 
タイトル: p068
 
【対策2】まだ来てくれていない地域住民を対象とした、「行ってみたくなる対策」
 地域住民の中には、その直売所の存在を知らなかったり、知っていても行ったことがなかったりという人たちが必ずいる。そのような人たちにも足を運んでもらうためには、新聞折り込みチラシで直売所の存在と特色を知ってもらうことが欠かせない(図4)。
 
タイトル: p069
 
 目的がそのことゆえ、チラシは毎回同じ地域に折り込む必要はない。一度でも訪れてもらい、ポイント会員やSNS会員に申し込んでもらうことによりつながりができれば、少なくともその人にとってチラシは必要でなくなる。
 また、チラシの内容は、価格ではなく商品情報を中心とするとともに、地図を大きく載せることが重要である。スーパーのように価格競争のためではない上、場所をわかってもらうことが優先されるからである。
 さらに、費用を抑えるためにも折り込む範囲を限定する。お勧めは、比較的古い新興住宅地やマンション団地である。平日の来店が期待できる、リタイアした人たちが多く住むと考えられるからだ。
 もし、イベントカレンダーを作成しているなら、チラシの裏面に印刷して「保存版 壁や冷蔵庫に張っておいてください」と大きく書き込む。1カ月分のカレンダーは、家庭で保存してもらってこそ役立つからである。
 
【対策3】前面道路や近隣道路を偶然通りがかった人たちを対象とした、「立ち寄ってみたくなる対策」
 直売所の前面道路や近隣道路の通行者の中には、観光や仕事、所用などで偶然通りがかった人たちがいる。そのような人たちにも立ち寄ってもらうためには、道路看板で直売所の存在を知らしめるしかない。
 道路看板には、店名とともに新鮮野菜の直売所であることを明記する。偶然通りがかった人たちゆえ、店名だけでは何の店かわからないからだ。その点でも、知名度のある大手スーパーの店名看板とは設置目的が異なる。
 写真4は、農協の直売所(岩手県奥州市)の開設コンサルタントを担当した際に設置してもらった看板で、フレームを取り付けてプレートを差し替えられるようにしてある。車での通行者に店舗情報を具体的に伝え、来訪を促すためであるが、別の目的もある。
 道路看板は、店の場所を知っている人には無用なものでしかない。それを無用なものにせず、イベント情報や旬の農産物情報を伝える役目を持たせ、場所を知っている人にも有用なものにしようとするのがこの看板の考え方である。
 
タイトル: p070a
 

【対策4】前面道路を毎日行き来している人たちを対象とした、「買いに行きたくなる対策」
 直売所の前面道路の通行者の中には、通勤などで毎日行き来している人たちもいる。そのような人たちに来店を促すためには、のぼり旗が効果的に働く。
 写真5で、詳しく説明したい。この写真では、「いちご」ののぼり旗が多数並んでいる。毎日の通行者にとっては、ある日を境にこのような風景に変わり、いちごがたくさん出始めたことが車の中からでもわかる。「たけのこ」ののぼり旗に変わるとたけのこが、「ぶどう」や「新米」に変わるとそれらが並び始めたことが伝わり、来店のきっかけになることが期待できるのだ。場合によっては、仕事先や家庭で、そのことを話題にしてくれるかもしれない。
 直売所ののぼり旗は、何種類も設置するのではなく、旬の農産物を中心にそれだけを多数掲げる。車で通過する短時間でも瞬時に文字を読めるともに、数の多さからたくさん取り扱っている店とのイメージを持ってもらいやすいからである。
 
タイトル: p070b

3 出荷者自身で実践する六つの売り方の工夫

 直売所では、委託販売方式が採用されているのが一般的である。売れたものだけ売り上げに集計し、直売所が手数料を差し引いて残りの売上金を出荷者の口座に振り込む。
 これが何を意味するかというと、商品は売れるまで出荷者のものであるいうことだ。出荷者は商品をただ売場に運び込んで並べるだけでなく、消費者に選んで買ってもらえるよう売り方をあれこれ工夫しなければならない。表現を変えると、売る努力が出荷者にも求められていることになる。
 ここでは、その売る努力としての売り方の工夫を六つ、詳しく紹介する。

【工夫1】“鮮度の良さ”と“品質の良さ”で売り上げを伸ばす
 直売所では、写真6のように全体を袋に入れないで販売されている野菜を見かけることがある。はみ出た部分の鮮度が急激に失われ、売れ残ればたった1日で廃棄することになりかねない。直売所の野菜は、全体を袋に入れて口を閉じておく。その理由は二つ、鮮度の良好な状態で消費者に届けるためと、売れ残りを減らすためである。
 また、写真7のような野菜が並んでいることもある。虫の害をひどく受けたなすで、売れるものでない。農産物の品質を高めることは出荷者の永遠の目標と捉え、栽培講習会への出席や専門書によって知識を蓄え、栽培技術を向上させなければならない。
 
タイトル: p071
 
【工夫2】“見た目の良さ”で選んでもらう
 きゅうりやオクラなどの細長い野菜は、まっすぐなものはまっすぐなものだけを、曲がったものは曲がったものだけをそろえて袋に入れる。
 かんしょやばれいしょなどは、少なくとも大、中、小の三つのサイズに分けて袋詰めする。大きさのそろった中にたとえ1個でも小さなものが入っていると、なかなか買ってもらえない。
 また、ほうれんそうやこまつななどの袋に、たとえ小さくても枯れた葉が入っていると売れにくくなる。レタスやちんげんさいなどの葉に土が付いたままだと、ほとんど売れ残ってしまう。
 野菜の味に自信はあっても、まずは見た目の良さで選んでもらうことが先決なのだ。
 
【工夫3】“商品のPR”に努める
 珍しい野菜には、食べ方はたいてい書かれているが、それだけでは不十分である。消費者は食べたことがないからこそ、甘さや苦さなどの味に加え、軟らかさや硬さなどの食感も気になるからである。
 一般的な野菜であっても、品種などの特長の説明書きがあるかないかによって売れ行きが大きく変わってくる。写真8のように、説明書きのあるにんじんの方が、隣の物よりよく売れていることがわかる。
 また、消費者が違和感を持つものにも必ず説明書きを付ける。表面のいぼが多く見慣れない形の四葉(すーよー)きゅうりや、食べごろを示すキズの入った菊まくわ(写真9)などは、その特性を説明しないと売れるものではない。
 
タイトル: p072a
 
タイトル: p072b
 
【工夫4】“価格付け”に細心の気配りを
 直売所では、同じ野菜でも本数と価格の異なるものを用意するのが大原則である(写真10)。
 
タイトル: p073a
 
 例えば、なすの5本入りを280円で売るなら、3本入って180円のものも横に並べる。5本入りばかりだと家族の少ない人には多すぎるが、3本入りもあるとそのような人にも買ってもらえる。
 本数と価格の異なるものを並べることは、買ってくれるお客さまの範囲を広げることにほかならない。スーパーの売り方とは対極にある、直売所独自の売り方である。
 また、そのように価格の異なる商品がある場合、低価格のものを手前に並べるようにする。
 例えばトマトを280円、380円、480円に設定した場合、280円のものを一番手前に置くと、ほとんどの人が立ち止まってくれる。しかし480円を手前に並べてしまうと、たとえその価値があったとしても、価格を見ただけでその場を離れるお客さまが多くなってしまうのである。
 
【工夫5】“包装資材”で売れ行きが変わる
 直売所の店長時代のことであるが、外見も価格も同じながら、袋に「きゅうり」と印刷された商品の売れ行きが悪いことがあった。当時考えたことは、消費者は印刷された袋を普段どこで目にしているかということ。それはスーパーにほかならず、そのような商品が直売所にあれば、スーパーと同じ物かと勘違いする人たちが少なからずいることを意味している。それ以来、直売所の袋は完全に透明の物でなければならないと、出荷者に伝えるようにしている。
 また、最近は少なくなったが、袋の内側が曇って中身の見えづらい野菜が並んでいることが今でもある。これは、曇り止めの施されていないビニール袋を使っているからで、中身のはっきり見えないものは買ってもらえないことが多い。
 
【工夫6】“アイデア満載の売り方”を考える
 写真11は、直売所で実際に並んでいた商品で、いちご用のパックに黄色いミニトマトを敷き詰め、その上に2個の赤いミニトマトと1個の中玉トマト、そして少し曲がったきゅうりで人の顔を形作っている。
 
 また、写真12は、小さなきゅうりや小さなばれいしょ、ミニトマトやミニにんじんなどの野菜ばかりを詰め合わせた「野菜のピクルス用セット」である。一度に何種類もの野菜を味わうことができ、お得感満載の売り方になる。
 直売所では、規格が定められていないのが普通で、よほどのことでない限り自由な売り方が許されている。これが意味するところは、売り方が無限に存在していることにほかならず、出荷者は創意工夫によってお客さまに喜ばれる商品作りに取り組まなければならない。
 
タイトル: p073b

4 おわりに

 総体としての直売所は成長を続けていても、個別の直売所の中には売り上げを減らしているところが少なくない。そのような直売所の経営者からよく聞かれるのは、近くにスーパーができたことで影響を受けたという言葉である。
 果たして、そうだろうか。直売所とスーパーは、前述のように業種は同じでも業態が異なる。業態は異なるのに売り上げ減少の理由をスーパーに求めるのは、あたかもラーメン店の開店で売り上げが減ったと寿司屋が言っているようなものだ。
 売り上げ減少の真の理由は、直売所そのものに内在することを強調しておく。鮮度管理がおろそかになっていたり地元産がすぐに売り切れたり、野菜に多様性が見られなかったり価格がそろっていたりして、直売所らしい品ぞろえになっていなかったことが考えられる。
 イベントや新聞折り込みチラシの中身が画一的だったり、看板ものぼり旗も設置していなかったりしたことで、固定客離れとともに新たな来客の獲得も進まなかったに違いない。出荷者にしても、野菜の種類や量を増やさなかったり、同じ売り方を漫然と続けてきたりしたことで、直売所を魅力ないものにしてしまったのかもしれない。
 すべては、直売所の特質に沿っていなかったことに起因すると筆者は思っている。その特質をここで詳しく述べてきたので、直売所経営の決まった形として参考にしてもらい、売り上げの減っている直売所は売り上げの回復に努めることは無論のこと、順調な売り上げの直売所も、一層売り上げを伸ばしていってほしいものである。
 
 
 
 
 
タイトル: p075
 
勝本 吉伸(かつもと よしのぶ)
地産地消プロデューサー/株式会社シンセニアン代表取締役
【略歴】
昭和34年(1959年)奈良県香芝市生まれ。千葉大学園芸学部卒。
奈良県農業改良普及員から会社員、JA営農指導員を経て、奈良県明日香村の農産物直売所「あすか夢販売所」の店長をオープン時より8年近く務める。また、店長を務めながら地域特産品の開発や販路開拓、イチゴ狩り園の開設や都市との交流、あるいは学校給食への地元農産物の提供や農業オーナー制度等の地産地消活動およびグリーンツーリズム活動全般にも携わる。
平成19年に、農産物直売所コンサルティング事務所「オフィス シンセニアン」を設立。講演や執筆において、出品者が身近に感じられる具体的な直売所情報の提供や、現場主義に基づく直売所の経営改善策の提案に重点を置くとともに、直売所出荷者への野菜の栽培指導や商品の出荷アドバイスも得意としている。平成24年、株式会社化。
農産物直売所や道の駅に関し、これまでJAならけん「まほろばキッチン」やJA岩手ふるさと「産直来夢くん」、道の駅「天空の郷さんさん」(愛媛県)や道の駅「たのうらら」(大分県)をはじめとした開設コンサルティングを14カ所、経営改善支援および講演はそれぞれ数百カ所に及ぶ。
 
・農林水産省「全国地産地消推進協議会幹事」
・農林水産省選定「地産地消の仕事人」
・内閣府 元「地域活性化伝道師」
 
・著書
『農産物直売所 出品者の実践と心得100』(家の光協会)
『行列のできる農産物直売所 運営の法則80』(  〃  )
『農産物直売所で稼ぐ70の極意』(  〃  )