糖含有珪藻土を用いた土壌還元消毒技術は、化学農薬に依存することなく、種々の土壌病害虫に対して高い防除効果を示す環境保全型の消毒方法として、多くの高い成果を挙げている。特に、地下深層部までの還元化が可能である点において、従来資材の限界を克服し、青枯病、基腐病、ネコブセンチュウなどの難防除病害に対して有効性を示したことは、技術的にも実用的にも大きな意義を有する。
本技術は、作業工程においても特段の複雑性を伴わず、資材の散布・混和・かん水・被覆といった一連の処理は、既存の農業機械や施設設備を活用することで十分に対応可能である。また、糖含有珪藻土は食品製造工程において副生される資材であり、資源循環の観点からも持続可能な農業の構築に資する。
いくつかの地域では、本技術を活用した「グリーンな栽培体系」への転換が進められており、実証試験に基づく技術マニュアルも公開されている(鹿児島県 2023
(5)、埼玉県 2023
(6))。これらの取り組みは、みどりの食料システム戦略の実現に向けた先導的事例として位置付けられ、今後の全国的な普及に向けた礎となる。
一方で、さらなる普及に向けては、露地圃場への展開、処理適期の拡大、少量かん水による還元形成技術、簡易被覆法の開発、ならびに土壌微生物叢の機能解明などの技術的な課題が残されている。これらの課題を克服することにより、本技術は将来的に安定的な農業生産の維持に貢献し得るものと期待される。
以上、本稿において、糖含有珪藻土を活用した土壌還元消毒技術の原理、資材特性、処理手順、作物への効果、ならびに今後の展望について述べた。本技術が持続可能な農業の一助となることを願うものである。
謝辞
ここに紹介した成果は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:生研支援センター)および生研支援センターの戦略的スマート農業技術等の開発・改良(JPJ011397)「輸出拡大のための新技術開発」、「かんしょ輸出産地を支えるサツマイモ基腐病総合的防除体系の開発」(2022~24年度)の支援を受けて得られたものである。
本記事は、著者の許可を得て、独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖類・でん粉情報2025年12月号」に掲載された記事を転載したものです。
【参考文献】
(1)農林水産省(2021)「みどりの食料システム戦略トップページ」〈
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/index.html〉(2025年11月3日アクセス)
(2)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(2021)「新規土壌還元消毒を主体としたトマト地下部病害虫防除体系標準作業手順書―サンプル版―」
〈
https://sop.naro.go.jp/document/detail/12〉(2025年11月3日アクセス)
(3)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(2025)「サツマイモ基腐病を防除する苗床の土壌還元消毒技術標準作業手順書―サンプル版―」
〈
https://sop.naro.go.jp/document/detail/72〉(2025年11月3日アクセス)
(4)野見山孝司(2025)「新規資材「糖含有珪藻土」を活用した土壌還元消毒技術」『農研機構研究報告』第20号:53~60.doi: 10.34503/naroj.2025.20_53、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(5)鹿児島県(2023)「グリーンな栽培体系への転換(県園振協曽於支部)」〈
https://www.pref.kagoshima.jp/ao11/2022gurisapo/2022gurisapo.html〉(2025年11月3日アクセス)
(6)埼玉県(2023)「グリーンな栽培体系への転換サポート」〈
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0905/documents/20230726.html〉(2025年11月3日アクセス)

野見山 孝司(のみやま こうじ)
農林水産省 農林水産技術会議事務局 研究企画課 イノベーション戦略室 課長補佐
【略歴】
2002年 独立行政法人農業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター 研究員
2021年 農研機構 植物防疫研究部門 主任研究員を経て
2025年から現職