(1)受け入れ機関の概要
○受け入れ機関:株式会社くしまアオイファーム(宮崎県串間市)
○登録支援機関:なし(自社)
○主な作物:かんしょ(生産、加工、販売)
○栽培面積:30ha(自社+借地)、(契約農家=280ha、農家の事業継承を支援)
○売上高:25億円/令和6年7月期、(輸出3億円=シンガポール、香港、台湾等がメイン+欧州、中東)
○社員構成:日本人58人、外国人56人(令和6年10月時点)
〈在留資格等〉
○特定技能外国人:43人(男性17人、女性26人)、(インドネシア、フィリピン、ベトナム。令和4年2月~順次雇用開始)
○技能実習生:12人(インドネシア、フィリピン)
○技術・人文・国際業務:1人(ベトナム、海外営業担当)
 
(2)導入のきっかけ・取り組みなど
 株式会社くしまアオイファーム(以下「くしまアオイファーム」という)では、経営規模の拡大に伴い、人手不足が徐々に深刻化したことから、外国人材の採用を始めました。当初は同社がベトナムで海外生産を行っていたこともあり、技術・人文・国際業務の在留資格を持つベトナム人エンジニアを受け入れたことが始まりです。その人材が優秀だったため、ベトナム人の技能実習生の受け入れを始め、フィリピン人やインドネシア人にも採用を広げています(写真5、6)。
 
 
 
 特定技能1号の採用は、令和4年2月から開始しました。登録支援機関を通さず、すべて自社で受け入れを行っています。
 リクルート方法としては、国内外の特定技能試験合格者を中心に、知り合いの農業法人などから、他社の技能実習2号修了者を紹介されるケースも増えています。その他、人材紹介会社に紹介料を支払い、紹介してもらうこともあります。
 
(3)雇用契約・支援内容
 在留資格は1年単位で更新するため、契約も1年単位で行っています。基本的に会社側から雇用を打ち切ることはなく、毎回、本人に更新の意思があるかをヒアリングしています。
 支援計画は自社で作成しており、所得税、住民税などの税金と、年金などの制度については理解が難しいところもあるため、入国前のガイダンスに限らず、随時説明を行っています。また、外国人材には転職が可能であることを伝えており、希望があれば会社としても協力しています。一方で、一度転職した人材から、くしまアオイファームに戻りたいという相談を受けることもあるそうです。
 
(4)住環境について
 一戸建てをはじめ、複数の物件を賃貸契約しています(写真7)。男性寮と女性寮に分かれていて、特定技能外国人には個室を準備しています。いずれもWi-Fi設備を完備しています。
 家庭ゴミについては、地域での分別が厳しいため、会社に持ってきてもらって、会社で処分を行っています。
 
(5)コミュニケーション・苦情対応など
 朝礼は業務開始前に毎朝実施しています。各セクションに日本語能力が高いリーダーが配置されており、分からないことがあれば確認してもらうようにしています。連絡手段のメインになっているのはスマートフォンのチャットツールで、翻訳アプリを使用しています。
 長時間働きたいという要望もありますが、基本的に残業はしない方針であることを伝えています。
 苦情対応の一環として、個室の住環境を求める声があったため、個室の確保に努めました。
 
(6)労働条件とキャリアアップ・処遇
 給与は月給制で、令和6年8月に改定され、月額18万600円になりました。時給換算で1050円の設定(特定技能の初任給)で、勤続年数に応じて昇給があります。賞与は本人の実績により、年2回5~10万円を支給しています。
 休日は、土日休みにプラス1日として、月9日を基本としています。有給休暇は100%の取得を促しており、長期休暇は1~2カ月単位での取得も可能です。
 以前はリーダー手当があったものの、外国人材からの要望もあり、現在は基本給に盛り込んでいます。一人暮らしの場合には、家賃手当もあります。
 キャリアアップの支援として、日本語能力試験のN3やN2
(注2)を取得した場合には、報奨金を支給しています。特定技能2号に移行すれば、給与プラスのメリットがあります。実力のある人材には、技術・人文知識・国際業務への在留資格の変更を提案することもあります。
 セクションごとにリーダーを決めており、寮生活において私生活面でのリーダーがいます。車やフォークリフトの免許を取得すれば業務の幅が広がり、それに応じて給与がアップすることも伝えています。
 
(注2)日本語能力試験にはN1~5の五つのレベルがあり、最も難しいレベルがN1で、一番優しいレベルがN5となっており、N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができ、N4、N5の人と日本語で「橋渡し」ができるレベルです。
(7)効果と今後の動向
 外国人材の受け入れにより、労働力の強化や職場の活性化といった効果が出ています。明るい性格の人材が多く、雰囲気が良くなっており、ベテラン社員とも良好な関係を築いています。
 採用に当たっては、登録支援機関任せにするのではなく、受け入れ側が制度をしっかり学び、採用を進めることが重要だと考えています。
 元技能実習生の中には、監理団体や外国人技能実習機構による管理を受けていた経験から、今後も同様の対応を受けられると考えている人もいます。しかし、特定技能では、基本的に自分で対応する必要があることを理解してもらう必要があります。