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調査・報告 野菜情報 2025年10月号

たまねぎをはじめとする北海道の野菜生産者の経営安定に寄与~野菜価格安定制度の取組状況などについて~

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北海道 農政部 生産振興局 農産振興課
 本稿では、北海道での野菜生産のあらましや野菜価格安定制度の取り組み状況などについて報告します。また、新たな取り組みである「新顔作物」「新顔冬野菜」について紹介します。

1 北海道内での野菜生産のあらまし

 令和5年の本道の品目別の野菜作付面積を見ると、ばれいしょ(4万8500ヘクタール)、たまねぎ(1万4900ヘクタール)、スイートコーン(6910ヘクタール)、かぼちゃ(6410ヘクタール)、にんじん(4280ヘクタール)、ブロッコリー(3230ヘクタール)、だいこん(2640ヘクタール)などが全国第1位となっています(図1)。
 
タイトル: p043
 
 また、本道の野菜の農業産出額は全国1位となる2489億円で、全国の10.7%を占めています(表1)。このように生産規模が大きいことから、生産者の経営安定や消費者への安定供給を図るためにも、野菜価格安定制度を利用する道内の産地は、指定産地で82、特定産地で17に上っています(表2、3)。
 
タイトル: p044a

2 本道の持続的な野菜産地の発展と野菜価格安定制度

 本道の野菜生産は、水田における転作作物として、また、畑作における輪作作物として作付けが拡大し、その産出額は耕種作物全体の4割を超えるなど、生産者の所得確保のみならず、本道農業にとって重要な位置付けとなっています(表4)。
 
タイトル: p044b
 
 今後とも、本道の野菜産地の持続的な発展と経営の安定を図っていくためには、野菜価格安定制度による生産・出荷の安定や需給調整の役割が発揮されるとともに、産地によるスマート農業などの新技術の導入や、需要が拡大している加工・業務用の生産を強化していくことなどが重要と考えております。

3 道内利用の大宗を占める指定野菜価格安定対策事業

 北海道での野菜価格安定制度の利用の多くは、指定野菜価格安定対策事業が占めています(表5)。近年の生産者交付金の交付状況を見ると、「たまねぎ」への交付が多く、豊作やコロナ禍の影響で価格が下落した令和元年から2年にかけて、それぞれ22億円、13億円を超える金額が交付されており、本道の野菜生産者の経営安定に寄与しています(表6、7)。
 北海道としては、野菜生産者の経営安定に向け、今後とも計画的に交付予約数量を積み上げることとしています。
 
タイトル: p045
 

4 新たな戦略作物の創出に向けて:「新顔作物」「新顔冬野菜」の取り組み

 冒頭で本道の品目別の野菜作付面積について、「たまねぎ、ばれいしょ、にんじん、だいこん、ブロッコリー、かぼちゃ、スイートコーンなどが全国第1位」と記しましたが、近年では、これまで気象条件や作物の特性上、道内において育てにくいとされてきた作物の栽培が拡大しています。
 道では、令和4年度に「にんにく」「さつまいも(かんしょ)」「らっかせい」を、新たな戦略作物の可能性を有する「新顔作物」として選定しました。また、令和6年度には、冬季無加温栽培により生産した「こまつな」や「ちぢみほうれんそう(寒締め)」など、また、都府県産のない端境期に道内で生産される「伏せ込みアスパラガス(※)」などを「新顔冬野菜」として選定し、生産の拡大と認知度の向上に取り組んでいます。
※春から秋に畑で育てたアスパラガスの根を、冬にビニールハウスに移して成長させ、国産のアスパラガスが市場に少ない冬の時期の出荷を可能とする栽培方法。

 こうした取り組みを契機に、地域の特産物として付加価値を高めること、施設の稼働率を向上させること、道内の消費者に一年を通して地場産の新鮮な野菜が供給されることなどにより、農業者の所得確保に結び付くことが期待されています。しかしながら、現時点では作付けが少ないことや、道内外の消費者や小売事業者などの認知度が低く、販売先も限られている状況です。
 道としては、生産と需要の拡大を図るため、生産や販路の拡大などに向けた取り組みを一体的に推進しています。これまでに、先行産地における栽培方法などに関する事例調査を行い、事例集を農産振興課のホームページで公表しています(図2)。また、認知度向上や需要開拓などに向け、令和7年度には、首都圏での催事販売やレストランでのメニューフェアなどを実施することとしています。
 


「新顔作物産地事例集」
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsk/171757.html

「新顔冬野菜産地事例集」

https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsk/217194.html
 

5 最後に

 本道の野菜は、農業産出額が全国1位であり、道内の耕種作物産出額の約4割を占めるなど重要な位置付けにあるとともに、多くの品目で全国一の生産量となるなど、国民の健康で豊かな食生活を支えていると考えております。
 道としては、生活スタイルの多様化などによる需要の変化に応じ、高品質な野菜の安定生産・供給を図るため、今後とも、野菜価格安定制度をはじめとするセーフティネット対策など各般の施策を着実に推進し、生産者の経営安定や力強い野菜の生産・供給体制の確立により、本道農業の持続的な発展が図られるよう、取り組んでまいります。