真室川町における促成山菜の出荷実績を示したのが、表1である。2023年のたらの芽の生産者数は17人、作付面積は786アール、販売額1611万円であるが、さかのぼると10年頃が、たらの芽生産のピークであった。現在では品目別だった4品目の部会を統合して「促成部会」とし、促成山菜生産者間の連携を強めている。促成部会では、地元の山菜の魅力を子供たちに実感してもらうことを目的に、00年から毎年町内の小・中学校の給食にたらの芽とうるいを無償で提供している。
促成部会長の渡部義隆氏(写真6)は70代で、夫婦2人で水稲3ヘクタールとたらの芽1ヘクタールを生産している。たらの芽の穂木の圃場管理や穂木の収穫作業を義隆氏が行い、その後の伏せ込み、収穫、出荷調製作業を夫婦2人で行っている。伏せ込みや収穫作業は重労働ではなく、出荷調製作業も室内で座って実施することが多いため、高齢者にとっても行いやすい作業であるという。12月中旬から2月下旬まで年6回の伏せ込みを行っているという。たらの芽は07年から始め、1.3ヘクタールまで増加した時期もあったが、たらの芽の穂木(たらの木)に立ち枯れ症状などが出始め、現在は1ヘクタールとなっている。
山形県最上総合支庁農業技術普及課と最上広域促成山菜部会では、促成山菜の生産者数減少を危惧して、生産者を増やすために、23年から促成山菜栽培に興味のある生産者や若手生産者を対象に「促成山菜スタートアップ研修会」を実施している。24年12月9日に実施した研修会は、半日のスケジュールで、たらの芽とうるいの生産者の圃場をそれぞれ見せてもらいながら、栽培方法や栽培時の注意点・工夫点などを、ベテランで熟練の技術がある生産者から話を聞くという方法で進められた。たらの芽のベテラン生産者として研修先に選ばれた小野茂美氏(写真7)は80代で、たらの芽の栽培を夫婦で行っている。農業経営としては50代の息子に継承しており、水稲15ヘクタールとたらの芽1ヘクタールを生産し、水稲栽培は息子が実施している。
また、同促成山菜スタートアップ研修会でうるいの研修先に選ばれたのは、70代の髙橋一幸氏であった。農業経営としては水稲6ヘクタール、うるい30アール、うど30アールを生産している。農繁期は他の仕事をしている40代の息子が農作業を手伝っているが、基本的には一幸氏が1人で行っている。妻も山菜のパック詰め作業は行っている。山菜は専用の道具が少ないことから、自分で使いやすい収穫器具を製作するなど、作業効率を上げる工夫をしている。
真室川町で促成山菜を生産している促成部会員の野菜と山菜の栽培面積を示したのが、表2である。高齢でもたらの芽やうるいの栽培面積が大きい生産者もおり、若手の生産者も出てきている。後継者が水稲作業を担当して、促成山菜は高齢のベテラン生産者が担当するという経営もある。総じて促成山菜の生産者の経営構造としては、水稲栽培を基軸に、たらの芽か、うるいを生産し、さらに真室川地域の主な園芸作物であるにら、ねぎ、きゅうりなどを組み合わせて、水稲+促成山菜+園芸作物を複合的に生産する農家が多い。水稲と園芸作物は夏秋季の作物であることから、促成山菜は冬季の貴重な出荷品目(収入源)となっている。
