
ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 加工・業務用野菜の国産シェア奪還に向けた品目別課題調査について
これらの調査結果をまとめた冊子を基に、令和7年3月10日(月)に「加工・業務用野菜における国産シェア奪還に向けて」をオンラインにて開催し、174人(食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業、生産者、農業法人、JA、自治体など)が参加した。
国産シェア奪還のための具体策などについて、石川県立大学の小林茂典名誉教授から基調講演いただくとともに、国産シェア奪還に向けた取組などの事例発表として、実需側からは、デリカフーズホールディングス株式会社の大﨑善保氏、生産側からは、有限会社四位農園の四位栄介氏に登壇いただいた。その後、基調講演・登壇いただいた3者と農林水産省とで「なぜ国産の加工・業務用野菜が選択されないのか、国産品の選択においてはどのような障壁があったか、国産シェア奪還のために日本の産地や卸、食品加工、外食業者は何ができるのか」などの内容をテーマに、パネルディスカッションを行った(図4)。
パネリストからは、実需側の視点で、
・国産野菜へ切り替えるメリットを顧客に具体的に提案(消費期限の延長や安全性・衛生面での優位性を強調するなど)するとともに、国産野菜の旬や質の良さ(フレッシュ野菜の風味や栄養価の優位性、地域特性を活かした独自の品種や栽培方法などを前面に出すなど)により差別化を図ることで、付加価値を創出する必要がある。
・国産野菜の価値を発信するために、国を挙げてテレビ番組やSNSなど多様なメディアを活用し、旬の野菜の魅力や栄養価、生産者のストーリーなどを継続的に発信することが重要。そうすることで、消費者の関心が高まり、多角的な価値観(価格だけでなく、食の安全性、環境への配慮、地域経済への貢献など)の醸成にもつながる。
・業界全体で連携し、国産野菜の価値向上と消費拡大を推進する。生産者、流通業者、小売業者、外食産業など、サプライチェーン全体で一貫したメッセージを発信し、国産野菜の魅力を多面的に伝える取組を展開することが重要である。
などの意見があった。また、生産側の視点では、
・農産物の安定供給を実現するための多角的なアプローチ(気候変動や自然災害のリスクを考慮した生産計画の立案、多品種栽培によるリスク分散、IoT技術を活用した精密農業の導入など)を実施するべき。
・品質基準や納品スケジュールの調整、情報共有システムの構築など、生産者と加工業者が密接に連携し、考え方を合わせることで、一貫した供給体制の確立が可能となる。
・革新的な取組(複数の生産者と加工業者が連携した広域的な生産・供給体制の構築、AIを活用した需給予測システムの導入など)を推進することで、新しい連携モデルを構築すべき。
・産地見学ツアー、消費者参加型の収穫イベント、SNSを活用した交流、定期的な意見交換会や共同プロジェクトなどの実施により、生産者側の抱える見解や課題、取組について実需者や消費者へ積極的に発信し共有することで、相互理解と信頼関係を深めることが重要である。
などの意見があった。
さらに、学術的視点では、
・生育予測システムを活用した生育・作柄情報を関係者間で共有することが重要。AI技術やビッグデータ解析を活用し、より精度の高い生育予測を実現すれば、計画的な生産・出荷調整が可能となり、需給バランスの安定化につながる。
・一時貯蔵や冷凍確保を行い、必要な品質形態での現物確保を図りつつ、最新の貯蔵技術や冷凍技術を導入し、品質劣化を最小限に抑えつつ長期保存を可能にすれば、需給変動に柔軟に対応できる体制が構築できる。
・天候不順などのリスクに備え、計画生産量に加えて一定の余裕を持たせた作付けを行い、余剰分は加工用途や新商品開発に活用するなど、効率的な運用を図るべき。
・施設共同利用を含めた関係者の連携・行動調整が求められる。生産者や加工業者が共同で利用できる施設を整備し、稼働率の向上とコスト削減を実現するとともに、関係者間で定期的な情報交換会を開催し、需給動向や課題を共有することが必要。
・異常気象の発生頻度増加を考慮した安定供給の仕組み作りが必要。気候変動に強い品種の開発・導入、複数産地での分散栽培、ハウス栽培の拡大など、リスク分散と安定供給を両立させる取組を推進すべき。
などの意見があった。