(1)ばれいしょ大規模産地における物流の効率化【北海道 士幌町農業協同組合】
十勝北部近郊の5JA(士幌町、上士幌町、音更町、木野、鹿追町)は「士幌馬鈴薯施設運営協議会」を設立し、ばれいしょの共同集出荷(年間取扱量:18万トン(トレーラー約9千台))を実施している。
(ア)パレットの合理化
・高齢化、人口減少に伴う労働力不足に対応して、いち早く生食用ばれいしょのパレット化を開始(現在99%パレット化)
・平成15年に、農産物では前例がなかったレンタルパレット化を進め、併せてパレット管理システムを導入し、JAで生産履歴などの情報を段ボールに貼り付けたバーコードで管理することにより、原料から製品までの一貫したトレーサビリティ体制を構築
・16年に11型パレット(標準仕様)に合わせて、段ボールサイズを変更
・24年にばれいしょ選果プラント内にパレタイズロボットを導入し、パレットへの段ボール積みを自動化した(写真1、写真2)。併せて、パレット自動倉庫を導入し、パレットの入出庫管理の自動化により、トラックへの積込時間を大幅に短縮し、ドライバーの荷待ち時間を削減するとともに、段ボールの破損・汚損、荷間違いを防止
(イ)コンテナ
・加工用ばれいしょは、鉄コンテナで出荷しているが、従前から使用していた鉄コンテナを折り畳み式に改良(写真3、4)
・折り畳み鉄コンテナなどの取り組みにより50%以上の物流効率化を実現(表2)
(ウ)モーダルシフト
・平成15年以前はフェリー輸送が8割、JR貨物輸送が2割であったが、現在はJR貨物輸送の比率を5割まで増やすことで、環境対策(CO2削減、省エネ)にもつながる鉄道モーダルシフトを推進(写真5)
・平成30年に産地から貨物ターミナルまでの輸送に、JRコンテナ4基積載可能な28.4トントレーラー(15メートル)を併用することで、輸送の効率化を実現(写真6)
(エ)産地集荷
・生産者の
圃場から集荷場までのファーストワンマイル(製造施設や農場などから集荷施設までの第一段階の輸送)の輸送力が不足
・現在主流の13トン車からトレーラー(20トン)輸送の割合を増やす車両の大型化を検討
・生産者のばれいしょを集荷するストックポイント(700~800平方メートルの地盤整備)の増設・拡張を検討中
・生産者がストックポイントまで運搬し、JAがトレーラーなどで集荷
・日々の集荷予定において、最も効率的輸送が可能な経路をAI活用の対応で検討中
(2)アスパラガス・ほうれんそうなどの閑散期における積載率向上のための混載【JA全農いわて】
・全国農業協同組合連合会岩手県本部(以下「JA全農いわて」という)管内では、1~5月の閑散期は出荷できる品目が限られ、1JAの集荷場では10トン車を満載にできない。ドライバー不足と燃料代高騰の中で、積載率の向上が不可欠となり、令和4年度からJA全農いわてが各JA間の枠を超えた集約輸送(混載輸送)の実証実験を開始
・JA全農いわては運送会社とは
車建契約、各JAとは
個建契約を実施
(注)
(注)車建契約とはトラック一台当たり、個建契約とはパレットや段ボールや通い箱などの輸送単位1箱当たりの料金体系
・4~5年度にかけて、混載する集荷所の対象エリアを拡大(4年度:6集荷場→5年度:12集荷場)したことに伴い、積載量を大幅に改善(4年度は、1台当たり平均8~8.5パレット→5年度は、同14~16パレット)
・物流2024年問題への対応のため、各JAで集荷場の予冷庫に一晩貯蔵し翌日出荷するように切り替えた結果、前日に荷量が確定するため、運送業者でのトラックの計画配車、効率輸送が可能となり、出発時間も早まったことで各市場へのトラック到着時間帯の早期化につながった。
・従前から使用している雑パレットの流通量が減少する中で、パレット輸送体制維持のため、標準仕様のT11型レンタルパレットの本格運用を進めている。
(3)トラック予約受付システムを活用した待機時間の削減【横浜市中央卸売市場本場】
・生産地、流通事業者および働き手から選ばれる市場になるために、市場での待機・荷降ろしの時間短縮に向け、トラック予約受付システムを活用した実証実験を行った。
・対象としたバース(荷物の積み降ろしのための場所)の時間帯別入場台数、各種作業に係る時間、場内外でのトラック待機時間を明らかにした。
・1日の中で特定の時間帯に入荷時間が集中している一方で、作業人員などの処理能力が適切に配分できていないことがトラック待機の原因と判明し、今後対応策を検討予定
(4)キャベツやアスパラガスなどの共同輸送による幹線出荷便の削減【JAあいち経済連(愛知県青果物物流改善推進協議会※)】
・JAあいち経済連では、尾張・西三河地域(5JA)の京浜向け青果物および東三河地域(5JA)の輸送効率の悪い出荷先の青果物を4カ所のJA集荷拠点にて集約し、市場に出荷する共同輸送の検証を実施し、地域物流と幹線物流を分離する。
・共同輸送により、各JAがそれぞれ出荷するよりも幹線便数の削減(最大9台減)、ドライバー拘束時間の削減(1台当たり30~60分減)、積載率向上(6%増)の効果を確認
・集荷拠点において課題となったピーク時のフォークリフト不足、集荷拠点のキャパシティに応じた集荷量の調整などは検討中
※本実証は、JAあいち経済連と名古屋青果株式会社、東海ローディング株式会社で設立した愛知県青果物物流改善推進協議会が生鮮食料品等サプライチェーン緊急強化対策事業を活用し実施
(5)産地から出荷される荷の確保に向けた荷待ち混雑度や荷降ろし場所などの可視化【神戸市中央卸売市場 神果神戸青果】
・神戸市中央卸売市場では、産地から出荷される荷の確保を図るため、開設者、卸売業者、仲卸業者が連携をし、大屋根下の荷降ろし場にトラックバースの増設(4→5台)、バース位置の明示(白線枠)、通路の荷の整理を実施。買荷保管場所も今後整備予定
・神果神戸青果では、ドライバーが分かりやすいよう、荷受対応時間および混雑状況や受付場所や待機方法、問合せ番号などの案内をホームページで公表・可視化
・また、産地や運送会社に物流改善のPRや相談を実施
(6)九州と関西をつなぐ中継共同物流拠点の整備【広島市中央市場物流改善推進協議会】
・広島市中央卸売市場は、九州の農作物を関西方面にトラック輸送する中継共同物流拠点として、また中四国管内への配送を行うための集約拠点として、ストックポイントを整備予定
・当該施設は、閉鎖型施設の整備によりコールドチェーンを確立するほか、中央市場と東部市場を統合し、集荷力を強化するとともに物流の効率性を向上
・今後の物流革新に向けて、場内関係事業者および関係団体・機関が中継共同物流拠点について今後必要となる取組策を検討・実施するため、広島市中央市場物流改善推進協議会を設立
・今後、連携する出荷者や他市場との効率的な物流を検討(共同配送の荷のコーディネート、輸送システム整備、輸送効率化・荷役省力化、他市場との市場便の構築、効果的な中継料や利用ルールなどの設定)
(7)こまつなのパレット出荷による荷役時間の削減【JAみい園芸流通センター(福岡県)】(写真7、8、9)
・こまつな、リーフレタスなどの軽量の葉物野菜を中心に多品目(67品目)を生産しており、従来はバラ積み出荷であったが、物流2024年問題対応のため、令和6年3月からパレット出荷を開始(多品目のためすべては困難だが、最低半分はパレット化する方針)
・自動搬送冷蔵倉庫のパレットが専用サイズであり、現状では集出荷場内での輸送用パレットへの積み替えが必要となるが、出荷量の多いこまつなについては、トラックの荷待ち時間削減のため前日のうちに輸送用パレットへの積み替えを行い、明朝8時半の出荷に向けてスタンバイ
・パレット化により積載率は2~3割低下するものの、卸売市場での荷降ろしの時間は、3時間→30分に短縮
・長距離輸送を削減するための出荷先の見直しにも取り組み
(8)集荷と幹線の分離によるトマト、なすなどの積載率の向上【JAさが・全農物流】
・従来は七つの各地区からバラバラに出荷していたが、令和5年10月以降、各集出荷場単位では10トントラック1台に満たない出荷量のトマト、なす、きゅうりなどについて、いったん、JAさが青果物コントロールセンターに集約
・同センターで1晩冷却保管した上で、翌朝から卸売市場などへの出荷を開始
・上記のような集荷トラックと幹線トラックとの役割分担により、積載率は従来の60%→80~90%へと大幅に向上
・リードタイムは1日延びたが(関西は3日目販売、関東は4日目販売)予冷の効果もあり、価格への特段の悪影響はない。
・出荷量の多いたまねぎについては、従来どおり各集出荷場から直接、大型トラックでパレット輸送
・たまねぎについては、モーダルシフト(JR貨物での輸送)を実施
(9)すいかのパレット出荷による荷役時間の削減【JA熊本市北部柑橘選果場】
・集出荷施設の整備(平成22年)に続き、令和4年3月にロボットパレタイザーを導入(写真10)。標準仕様の11型プラスチック製レンタルパレットで、すいかの出荷を開始
・トラック1台当たり(750~800ケース)の積込み時間は、2.5時間→30~60分に短縮。以前は出荷ピーク時以外でも出荷作業が22時まで行われていたが、パレタイザー導入以降は17時までに終了
・運送会社作業員からドライバーに積み込み可能時間をきめ細かく連絡。荷待ち時間ほぼゼロを実現
・集出荷場には運送会社から派遣されたフォークリフト作業員2人が常駐し、トラック到着と同時に荷積み作業を開始(写真11)
・出荷先を最大2カ所に絞り、トラックの実運行時間を確保。中国地方で2日目販売、関東でも3日目販売を確保