以上に指摘したように野菜価格安定制度は、消費者にとっても大きな意義・メリットがあります。今後もそうした意義・メリットが失われないようにすることが重要ですが、そのためには社会の変化に留意する必要があります。特に今後重視すべき変化は高齢化、単身化と女性の就業率のさらなる上昇でしょう。これらの変化は内食比率の低下と中食・外食比率の上昇、および加工食品利用比率の上昇でもあります。
加工食品や中食・外食の利用が増えるということは、野菜取引においては契約取引比率が上昇することを意味します。平成14年に契約野菜安定供給制度を新設したことは、その点でまさに適切であったと言えます。
しかし契約取引はその多くが市場外流通であるため、生産量が契約分を上回ると卸売市場に出荷し、逆に下回ると不足分を卸売市場から仕入れるということが珍しくありません。これらは卸売市場における荷の過剰時の過剰感をさらに強め、不足時の不足感をさらに強める方向に作用し、価格の騰落をより激しくすることになります。
市場外流通が拡大する中、野菜価格安定制度が野菜の契約取引を支援するのは重要ですし、今後その重要度はますます高まるとみて間違いないと思います。が、その支援は市場経由率の低下を促し、市場価格を乱高下させる可能性も含んでいることに留意しなければなりません。それゆえ、今後は契約取引も支援しながら市場価格の安定化も図るという難しい舵取りが大きな課題になるのではないでしょうか。
<参考文献>
(1)独立行政法人農畜産業振興機構編『野菜価格安定制度と野菜産地の進展』農林統計出版・2021年
(2)独立行政法人農畜産業振興機構『野菜情報』vol.245・vol246・2024年
(3)藤島廣二『輸入野菜300万トン時代』家の光協会・1997年
(4)藤島廣二・小林茂典『業務・加工用野菜』農山漁村文化協会・2008年
藤島 廣二(ふじしま ひろじ)
東京聖栄大学 客員教授(常勤)
【略歴】
昭和24年生まれ
農林水産省入省後東北農業試験場、中国農業試験場、農業総合研究所流通研究室長を経て
平成8年~ 東京農業大学農学部教授
平成26年より現職