ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 環境保全型農業による野菜生産と販売の動向~JAとうや湖における「YES(イエス)!clean(クリーン)」の取り組み~
(1)YES!cleanマークの概要
YES!cleanマーク(北のクリーン農産物表示制度、図3)は、2000年に北海道が独自に定めた環境保全型農業に基づいて生産された農産物を対象とした表示制度である(参考3)。YES!cleanマークの主要目的は販売面、消費者への訴求にある。
2000年代中頃以降、小売側は各々で設定したGAP基準に基づく産地点検を実施するようになり、その後、主要取引先の量販店A社が、プライベート・ブランド(以下「PB」という)商品の調達要件として、将来的なグローバルGAP取得を掲げたことにJAとうや湖は前述のとおり対応した。当時、価格低迷が続いていた卸売市場ではYES!clean産品の有利販売は困難であったため、同JAは大手量販店の販路維持を志向したのである。クリーン農業の取り組み拡大・定着には、生協や大手量販店向けのPB商品としてのYES!clean産品の販売の伸長があった。
(2)YES!cleanマークの要件
YES!cleanマークの表示は、「農産物」と「登録生産集団」の二つの側面から要件が設けられている。「農産物」については、(1)北海道内での生産(2)全道一律で設けられた化学肥料の使用量と農薬の使用回数に関する登録基準の遵守(3)生産集団の定める栽培基準に基づく生産(4)他の農産物と混合しないための分別収穫・保管・出荷―が求められる。「登録生産集団」については、(1)表示する農産物を対象とした生産集団の管理体制の整備(2)生産集団の構成員が依拠すべき栽培基準の作成(3)生産集団の構成員間での栽培協定の締結(4)生産集団の構成員による栽培履歴の記帳(5)生産集団全員による対象農産物の登録基準に適合した前年の生産実績(6)市町村クリーン農業推進協議会による指導体制の整備-が要件となる。なお、化学肥料や化学合成農薬に関する基準は地域や土質、作物と作型ごとに細かく規定されており、総窒素投入量に上限が設けられているという特長がある。
(3)登録集団について
2024年7月時点のYES!clean登録集団278件のうち、野菜(畑作物に分類されているばれいしょも含める)の生産登録集団数は計203集団である。そのうち10年以前に登録された集団数は181であり、14年間で22件増加している。この集団数には同一の登録集団が複数含まれており(例:A部会のだいこんの「露地・春まき」と「露地・夏まき」で2集団とカウント)、実際の集団数は少なくなる。また、地域的な偏在・集中が見られることも特徴である。旭川青果物生産出荷協議会が32集団、JAとうや湖が19集団、南幌町蔬菜園芸組合が14集団、七飯町野菜生産出荷組合が13集団、ニセコビュープラザ直売会クリーン農業研究会が11集団、とままえ特定蔬菜生産部会が10集団、伊達市農協野菜生産部会協議会が9集団となっており、これら7組織で計108集団と、登録集団の半数以上を占める。品目別では、多い順に、トマトが20集団、ブロッコリーが17集団、ばれいしょとたまねぎが各16集団、かぼちゃが13集団、ほうれんそうが各11集団と、特定の品目に集中している。