当地域では、昭和10年に鉄道(小海線)が開通したことで、作物を遠方まで出荷できるようになったことにより、昭和35年頃からレタス、キャベツなどの高原野菜の生産が始まりました。
レタスは、露地で栽培されるため天候の影響を受けやすく、天候次第で作柄や品質が左右され、価格にも大きく影響します。価格が大きく変動すれば農家経営が不安定となるため、農家にとって販売価格の安定は非常に重要です。このため、JA長野八ヶ岳管内では、多くの生産者が野菜価格安定制度を活用した需給バランスをかんがみた計画生産と、消費者への安定供給に努めています。また、生産計画から流通、販売に至るさまざまな場面での対策や取り組みを行い、市場ニーズに合わせた信頼と競争力のある産地づくりを進めています。
以下にその重点的な取り組みを紹介します。
(1)品質対策
全国に先駆けて、全面マルチ栽培(写真1)を行っていることが大きな特徴です。根腐れ病対策として、抵抗性品種の導入、輪作、土づくり対応を進めています。これらの取り組みがレタスの品質安定につながっています。適地や適期に合わせた最適な品種選定に向けて、毎年栽培試験を重ねて有望品種を選定し、
播種期に応じていくつもの品種を使い分けています。天候や作柄にも大きく左右されるため、品種選定は非常に重要です。
(2)産地のブランド化
JA長野八ヶ岳では、年間約590万ケース(約5万9000トン)のレタスを全国に出荷し、夏秋期においては大きな供給ウエイトを占めています。夏場でも冷涼な気候を生かした野菜生産と、大都市圏が近いため鮮度を保持したまま届けられるというメリットもあります。高冷地で生産される高原野菜という特徴を生かし、「太陽に一番近い野菜たち」として高原野菜のブランド化を進めています(写真2)。
(3)品質保持流通
産地の採れたてのおいしさをそのまま消費地に届けられるように、品質保持流通に取り組んでいます。流通過程における鮮度劣化を抑制するため、収穫からすぐに集荷所に持ち込み(写真3)、短時間で冷却できる真空予冷施設(写真4)を活用することで、輸送中の劣化を防止しています。その後も低温輸送車(写真5)を活用することで収穫から市場到着までのコールドチェーンを構築し、品質保持流通に取り組んでいます。
(4)計画生産・計画出荷
生産者から取りまとめた生産計画を基に、長野県、全農長野と連携し、需給バランスをかんがみた「長野県野菜基本計画」を策定し、全農長野を通じた戦略的な全県分荷
(注)により、全国の市場へ出荷しています。近年流通量が伸びているブロッコリーなど、実需者要望に沿った品目誘導も行い、魅力ある産地づくりにも取り組んでいます。また、産地情報を実需者と共有し、販売提案に役立てています。
(注)県内の出荷物を一元的に集計して、分荷すること。
(5)契約取引
量販店や加工・業務用需要に対応するため、卸売市場を経由した契約取引に取り組んでいます。安心してJA長野八ヶ岳の野菜を使っていただけるよう安定生産に努め、ロスが少なく、陳列や取り出しの点などでも取り扱いやすく、効率的な輸送ができるといったメリットがあることから、実需者からの要望の高いコンテナ流通にも取り組むなど、柔軟な対応をとっています。現在、野菜を取り巻く環境は大きく変化し、流通も多様化する中で、時代のニーズを的確につかみ、生産者の所得確保を図っています。
(6)安全・安心
安全・安心の取り組みとして、地区で組織する「南佐久野菜協議会」が毎年更新発行する「栽培防除日誌」に基づく農薬の適正使用と、防除履歴の記帳を生産者に徹底しています。そのデータはコンピューターシステムに栽培履歴として蓄積しています。出荷前に生産者が記帳した防除日誌をJA担当者がチェックし、検査機関による残留農薬検査を行い、安全性が確認された農産物を出荷しています。また、実需者からの要望を受け、グローバルGAPの認証取得にも取り組んでいます。さらに、土壌診断を実施し、診断結果に基づいた適正施肥を行いコスト低減と環境に配慮した持続的な農業生産を進めています。現在、資材費の高騰や人手不足が問題となっていますが、農業情報(営農支援)システム「あい作」などを導入し、効率的な栽培管理に努めています。
(7)消費拡大
たくさん食べてもらえるように、もっと野菜が身近なものになるようにと、食育活動や食べ方の提案(写真6)を積極的に実施しています。食育活動では、県外の小学生を産地に招き、種まきから定稙作業までを体験してもらい(写真7)、収穫したものを彼らに都内のスーパーで販売する体験をしてもらっています。
今後、日本の人口が減少する中で、野菜消費量の維持・拡大に向けて消費宣伝活動にも力を入れていきます。