キャベツは露地栽培のため天候の影響を受けやすく、天候次第で価格が変動しやすい。また、出荷の最盛期が7~10月の4カ月間であるため、生産農家にとって価格安定と経営安定が非常に重要である。このため、JA嬬恋村ではキャベツ出荷量の約8割で野菜価格安定制度を活用して経営安定を図るとともに、市場ニーズに合わせた信頼と競争力のある産地づくりを推進している。
(1)「嬬恋高原キャベツ」のブランド化
JA嬬恋村では、年間約1800万ケース(10キログラム箱と15キログラム箱の合計)、20万トンのキャベツを全国各地の市場へ出荷し、全国出荷量の約5割を占めるブランドとなっているが、平成20年に「嬬恋高原キャベツ」の商標登録をし、さらなる消費促進に取り組んでいる。
家庭では、サラダや千切りなど生食で食べられることも多く、柔らかい食感が好まれることから、食味を重視した品種の選定に取り組み、市場ニーズに対応している。
毎年出荷が始まる6月下旬にJA嬬恋村とJA全農ぐんまが共催し、東京の大田市場で「キャベツ試食宣伝会」を開催している。出荷シーズン中には、大都市圏のスーパーを中心に店頭にて消費宣伝を行い(写真3)、またテレビCMや交通広告などのメディアを活用するなど、広く嬬恋高原キャベツのPR活動に力を入れている(写真4)。
(2)新品種の開発
安全・安心なキャベツの安定供給に向け、種苗会社を視察し、産地に適した品種をJA嬬恋村の試験圃場で栽培し、その中からさらに厳選したものを野菜研究会の生産者(約100人)が自らの圃場で栽培し、商品化の可能性を模索している。また、試験圃場では約50種の品種が栽培され、食味・形状・在圃性(品質などに問題なく収穫し続けられること)・耐病性などを確認しながら、品種開発を行っている。また、近年の猛暑対策として、早生品種から晩生品種への品種の切り替えと、平準出荷に向けた計画的な作付けを推奨している。
(3)環境保全型農業の推進
嬬恋村では、生産者・嬬恋村役場・JAが一丸となり、「嬬恋村環境保全型農業推進協議会」を設け、農業用廃資材の回収を年に数回実施し、環境に配慮した取り組みを積極的に行っている。また、トレーサビリティーシステムの導入や、ドリフト(農薬散布時に散布対象の作物以外に農薬が飛散すること)対策として、収穫予定日の1週間前に圃場に黄色い旗を設置し、近隣圃場への注意喚起を行っている(写真5)。また、出荷期間に合わせて残留農薬検査を80検体実施するなど、農産物の安全性の確保にも取り組んでいる。
嬬恋村は山なりの傾斜の強い圃場が多く、近年頻発している集中豪雨の影響により、圃場の表土の流亡が深刻化している。このため、グリーンベルト(圃場などの周辺に植物を帯状に植栽したもの)の設置(写真6)や収穫後のカバークロップ(緑肥)の作付けなど、表土流亡防止対策を積極的に行っている。