山形青菜は、地区を限定しているわけではないが、
本沢地区で多く生産されている。本沢地区は、1997年にJAやまがたに広域合併する前は、本沢農業協同組合の事業地区であった。本沢農業協同組合の婦人部によって、1984年に青菜漬けの加工販売事業が始められた
(1)。これまで各家庭で青菜漬けを作っていたが、漬物を作る家庭が少なくなってきたこともあり、青菜漬けの加工販売事業がスタートした。1987年には、(1)農産物の付加価値を高める(2)冬期間における婦人労働力の活用・確保(3)原料の契約栽培による生産者の所得の向上(4)米の生産調整に伴う水田転作作物の確保―を目的として、山形市の補助事業により整備を充実させ、農協直営として進められることとなった。1991年には、今後も事業を継続拡大しながら、安定した加工事業を営むことを目的に、農協事業から独立し、「有限会社エーコープもとさわ」を設立した。その後、ガソリンスタンド事業、LPガス販売事業、葬祭事業などと統合して、1999年に「株式会社ジェイエイあぐりんやまがた」となった。
あぐりんやまがたのエーコープもとさわ事業部 横尾貴之部長(写真1)によると、青菜の品質の均一化を図るため、肥料・農薬・種子は農協のものを利用することとし、市内の農家約20戸と契約栽培している。また、生産工程管理表の提出および残留農薬検査を行うことで、農作物病害虫防除基準を順守した生産物であることを確認している。1株500グラムを基本とし、虫食い・病気のないもの、汚れ・折れのないものを、1束8~12株の束にして出荷している。
2023年度の契約価格は、1キログラム当たりA品で、出荷開始(10月上旬)~10月31日は90円、11月1~10日は80円、11月11~17日は90円、11月18日~12月上旬は100円であった。1株のサイズが大きいものは、A品の下の等級のⒶ品として、20円引きの取引価格となっている。青菜漬けは1株丸ごと漬けたものを販売するため、サイズが大きく、食感が硬くなるものは細かく刻んで「おみ漬け」(写真2)などに利用している。収穫後、すぐに束ねると葉が折れてしまうため、生産者は天気の良い日に収穫し、1~2日畑で干し、少ししんなりしたものを集荷場に持参する(写真3)。
本沢地区内にある前明石地区の横尾文夫氏(70代、写真4)は、20アールの畑で青菜を栽培している。2023年度は、
播種時期の8月下旬~9月上旬が異常な高温となって播種を遅らせるしかなく、収穫量が2~3トンと前年度の7割ほどになってしまったという。青菜以外の栽培品目としては、きゅうりの指定野菜産地となっているため、春作と秋作できゅうりを20アール(100坪ハウス4棟)、それ以外に水稲を1ヘクタール栽培しており、主な収入源はきゅうり栽培となっている。青菜は8月下旬から9月上旬に播種し、収穫期が10~12月上旬であるため、昔からこの地域できゅうりの後作として栽培されてきた。昔は青菜以外にも、干しだいこんにして漬物にして食べる堀込大根を栽培している農家も多くいたが、だいこんの収穫や干す作業が重労働であることや、高齢化の影響もあり、生産者がほとんどいなくなってしまった。堀込大根の名前の由来となっている堀込地区は、前明石地区の隣で、両地区では、堀込せりという伝統野菜がまだ残っている(写真5)。
あぐりんやまがたでは、青菜の生産者の高齢化や減少を受けて、自社でも農業参入し、自社農地50アールで青菜を17トン栽培している。2023年度の青菜全体の集荷量が130トンであり、したがって自社栽培割合は13%となっている。2023年度は夏の高温の影響により全体的に集荷量が少なく、エーコープもとさわ直売所(写真6)でも午前中ですぐに売り切れてしまう状況であった。
青菜漬けは最初に2~3日塩漬けし、その後、水洗いして3~4日間しょうゆベースのたれに漬けて、1週間ほどで完成する(写真7)。加工所では、漬物シーズンになると約30人を雇い製造している。青菜漬けは、エーコープもとさわ直売所、JR山形駅での直売、JAやまがたの直売所、地元スーパーなどで販売するほか、注文を受けて地方発送なども行っている。2023年度は青菜の原料不足により、注文を断ったり、直売所に出荷する数量を限定したりなどして対応していたという。